臨床検査精度管理検討会 - 外部精度管理調査と内部精度管理 - 平成25年度(第41回)臨床検査精度管理調査報告 血液学検査(自動血球分析項目) 担当委員 杉山昌晃 平成26年3月29日(土) 1 自動血球分析項目概要 平成25年度(第41回)臨床検査精度管理調査 配布試料 新鮮血液(CPDA液+EDTA2K) 2試料 調査項目 CBC,(参考調査:網赤血球比率,自動血球分類) 参加施設数 CBC:265施設(95.7%),Ret%:138施設(52%) 自動白血球分類:203施設(76.6%) 評価方法 補正共通CVを適用して計算した評価用SD値 ±1SD以内(5点):A評価 ±1SD~±2SD以内(4点):B評価 ±2SD~±3SD以内(2点):C評価 ±3SD以上(0点):D評価 不参加 △ (0点) 配布試料の溶血 軽度溶血(試料10:9施設,試料11:10施設) 中等度溶血(試料10:1施設,試料11:無) 強度溶血(試料10:無,試料11:1施設),記載なし(1施設) 試料の不良(溶血・凍結)による再送付:1施設 2 配布試料の経日測定結果(11月12日~16日) 項目 試料番号 測定回数 平均値 SD CV(%) 赤血球数 (x104/uL) 10 15 467 2.28 0.5 11 15 362 2.04 0.6 ヘモグロビン (g/dL) 10 15 13.4 0.07 0.5 11 15 12.1 0.06 0.5 ヘマトクリット (%) 10 15 39.2 0.35 0.9 11 15 36.7 0.28 0.8 白血球数 (x102/uL) 10 15 44.6 1.10 2.5 11 15 60.5 1.10 1.8 血小板数 (x104/uL) 10 15 19.7 0.28 1.4 11 15 20.8 0.41 2.0 MCV (fL) 10 15 83.8 0.64 0.8 11 15 101.4 0.60 0.6 測定機器:シスメックス社 XE-5000 *試料の溶血は認めなかった 3 コメント・その他について <試料コメント> • • • • • 試料10、11に白血球の細胞崩壊を認める(5施設) 試料11に白血球凝集あり 試料11に強度の溶血有り、試料の再送依頼 試料10、11に血小板凝集あり(3施設) 試料11の赤血球で経時変化のためデータが正確で ない可能性があります。(?) 4 WVF(白血球バイアブル指数) 白血球バイアビリティの解析 膜損傷白血球あるいは脆弱白血球はセルダインサファイア®試薬の DNA 染色蛍光色素を取り込みます。 バイアビリティの指標は、脆弱白血球(膜損傷白血球あるいは脆弱白血球) の割合を測定することにより算出されます。 試薬 DNA蛍光色素 経時変化を生じた検体の測定においては特に有用です。 W V F : WBC Viable Fraction 脆弱白血球の検出 白血球バイアビリティ解析 白血球の経時変化への対応 2時間後 WBC WVF NEU LYM MONO EOS BASO 5.68 0.996 60.0 30.5 8.23 0.447 0.766 11時間後 WBC WVF NEU LYM MONO EOS BASO 5.94 0.977 62.3 28.8 7.76 0.521 0.644 24時間後 WBC WVF NEU LYM MONO EOS BASO 5. 84 0.800 60.8 31.3 6.92 0.343 0.624 36時間後 WBC WVF NEU LYM MONO EOS BASO 5. 75 0.667 60.4 32.1 7.03 0.380 0.95 48時間後 WBC WVF NEU LYM MONO EOS BASO 5. 81 0.523 63.6 29.9 5.11 0.313 1.10 経時的安定性検討データ 5DiffCBC室温保存:24時間安定 、 冷蔵保存:72時間安定 Neut Eos 好中球 60 55 4 50 3 % % 好酸球 5 45 2 40 1 35 0 30 0.5 1 4 6 12 24 48 0.5 72 1 4 6 時間(h) 12 24 48 72 時間(h) Lymp リンパ球 好塩基球 Baso 5 50 4 45 % % 3 40 2 35 1 30 0 0.5 1 4 6 12 24 48 72 時間(h) 0.5 1 4 6 12 時間(h) Mono 単球 12 % 9 室温保存 6 冷蔵保存 3 0 0.5 1 4 6 12 時間(h) 24 48 72 24 48 72 試料の溶血度別測定値について 項目 試料 溶血なし 軽度溶血 軽度/無 赤血球数 (x104/uL) 試料10 465 462 0.99 試料11 360 359 0.99 ヘモグロビン (g/dL) 試料10 13.3 13.3 1.00 試料11 12.1 12.0 0.99 ヘマトクリット (%) 試料10 38.9 38.4 0.99 試料11 36.6 36.0 0.98 白血球数 (x102/uL) 試料10 43.1 44.1 1.02 試料11 56.7 58.7 1.04 血小板数 (x104/uL) 試料10 19.4 19.2 0.99 試料11 19.4 19.7 1.02 中等度及び強度溶血を認めた施設は、評価対象外とした。 8 (23)赤血球数 赤血球数の変動係数(CV%)の推移 項目 赤血球数 試料 平成23年 平成24年 平成25年 10 2.1 1.8 1.5 11 1.9 1.6 1.6 赤血球数の機器メーカー別測定結果(極端値を除外後1回切断補正) 試料10 試料11 機器 メーカー 施設数 平均値 比率% SD CV% 施設数 平均値 比率% SD CV% S 184 465.9 100.3 4.9 1.0 184 360.7 100.3 4.2 1.2 B 21 457.9 98.5 6.6 1.4 21 354.9 98.7 4.2 1.2 A 16 469.8 101.1 8.7 1.8 16 364.3 101.3 7.0 1.9 SHCD 3 467.0 100.5 9.5 2.0 3 364.7 101.4 3.2 0.9 N 16 460.4 99.1 9.7 2.1 16 354.9 98.7 7.9 2.2 H 21 458.3 98.6 10.6 2.3 21 354.3 98.5 8.0 2.3 全体 262 464.7 ― 7.1 1.5 261 359.6 ― 5.7 1.6 D評価 : 試料10で10施設(4.1%),試料11で7施設(2.9%) 試料10と11の結果を逆に入力:1施設 9 (24)ヘモグロビン ヘモグロビンの変動係数(CV%)の推移 項目 ヘモグロビン 試料 平成23年 平成24年 平成25年 10 1.5 1.4 1.4 11 1.4 1.4 1.4 ヘモグロビンの機器メーカー別測定結果(極端値を除外後1回切断補正) 試料10 試料11 機器 メーカー 施設数 平均値 比率% SD CV% 施設数 平均値 比率% SD CV% S 184 13.34 100.2 0.13 1.0 184 12.08 100.0 0.12 0.9 B 21 13.15 98.7 0.10 0.7 21 12.00 99.3 0.12 1.0 A 16 13.46 101.0 0.25 1.8 16 12.25 101.4 0.23 1.9 SHCD 3 13.53 101.6 0.12 0.9 3 12.33 102.1 0.12 0.9 N 16 13.31 99.9 0.29 2.2 16 12.11 100.2 0.34 2.8 H 21 13.19 99.0 0.22 1.7 21 11.96 99.0 0.19 1.6 全体 264 13.32 ― 0.19 1.4 264 12.08 ― 0.17 1.4 D評価 : 試料10で5施設(2.0%),試料11で6施設(2.4%) 試料10と11の結果を逆に入力:1施設 10 (25)ヘマトクリット ヘマトクリットの変動係数(CV%)の推移 項目 ヘマトクリット 試料 平成23年 平成24年 平成25年 10 2.2 2.2 2.1 11 2.4 2.1 2.3 ヘマトクリットの機器メーカー別測定結果(極端値を除外後1回切断補正) 試料10 試料11 機器 メーカー 施設数 平均値 比率% SD CV% 施設数 平均値 比率% SD CV% S 185 38.68 99.5 0.65 1.7 185 36.57 99.9 0.64 1.7 B 21 39.57 101.7 0.65 1.7 21 37.10 101.3 0.56 1.5 A 16 39.73 102.2 0.84 2.1 16 37.09 101.3 1.11 3.0 SHCD 3 41.13 105.8 1.21 2.9 3 39.40 107.6 1.67 4.2 N 16 39.74 102.2 1.19 3.0 16 36.63 100.0 1.12 3.1 H 20 38.78 99.7 1.07 2.7 20 35.76 97.7 0.84 2.3 全体 261 38.89 ― 0.83 2.1 261 36.62 ― 0.84 2.3 D評価 : 試料10で9施設(3.7%),試料11で7施設(2.9%) 11 (26)白血球数 白血球数の変動係数(CV%)の推移 項目 白血球数 試料 平成23年 平成24年 平成25年 10 3.7 13.4 3.5 11 3.3 3.5 4.2 白血球数の機器メーカー別測定結果(極端値を除外後1回切断補正) 試料10 試料11 機器 メーカー 施設数 平均値 比率% SD CV% 施設数 平均値 比率% SD CV% S 185 43.5 100.7 1.3 3.0 185 57.4 100.7 2.3 4.0 B 21 43.4 100.5 1.0 2.2 21 56.9 99.8 1.9 3.3 A 16 41.2 95.4 2.7 6.6 16 55.3 97.0 3.1 5.6 SHCD 3 42.0 97.2 4.4 10.4 3 55.7 97.7 4.7 8.5 N 16 42.1 97.5 1.3 3.0 16 55.8 97.9 2.1 3.7 H 21 42.1 97.5 1.7 4.0 21 55.2 96.8 2.8 5.0 全体 262 43.2 ― 1.5 3.5 260 57.0 ― 2.4 4.2 D評価 : 試料10で8施設(3.3%),試料11で11施設(4.5%) 桁違い報告が1施設,試料10と11の結果を逆に入力:1施設 12 代表的な機器の白血球数 検査項目: 26.白血球数 ●JAB512(シスメックス XE シリーズ) 65. ●JAC910(堀場 PENTRA 他) ■JAJ012(ベックマン ユニセルDxH800) 60. 試料11 ◆JAR408(アボット CDルビー) ▲JAS303(日本光電 MEK-8222 他) 55. <全体平均値との比率%> 50. 45. 36. 39. 42. 45. 48. 試料 S H B A N 10 101.4 96.8 100.5 91.0 98.8 11 103.3 96.7 97.2 93.7 100.0 試料10 シスメックス(53) >日本光電(8) ≒ベックマン(8) >堀場(5) >アボット(6) 13 (27)血小板数 血小板数の変動係数(CV%)の推移 項目 血小板数 試料 平成23年 平成24年 平成25年 10 7.4 4.8 4.9 11 5.9 5.6 6.4 血漿版数の機器メーカー別測定結果(極端値を除外後1回切断補正) 試料10 試料11 機器 メーカー 施設数 平均値 比率% SD CV% 施設数 平均値 比率% SD CV% S 184 19.51 100.4 0.75 3.8 187 19.49 100.6 1.10 5.6 B 21 18.17 93.5 0.82 4.5 21 17.43 90.0 0.98 5.6 A 16 19.81 102.0 0.80 4.0 16 19.51 100.7 0.75 3.8 SHCD 3 20.30 104.5 0.30 1.5 3 19.30 99.6 0.52 2.7 N 16 20.14 103.7 1.36 6.8 16 20.14 104.0 1.34 6.8 H 21 19.29 99.3 1.11 5.7 21 19.60 101.2 1.06 5.4 全体 263 19.43 ― 0.95 4.9 265 19.37 ― 1.23 6.4 D評価 : 試料10で10施設(4.1%),試料11で6施設(2.4%) ,桁違い報告なし。 14 代表的な機器の血小板数 検査項目: 27.血小板数 ●JAB512(シスメックス XE シリーズ) 23.0 ●JAC910(堀場PENTRA) ■JAJ012(ベックマン ユニセルDxH800) 試料11 21.0 ◆JAR408(アボット CDルビー) ▲JAS302(日本光電 MEK-8222 他) 19.0 <全体平均値との比率%> 17.0 15.0 14.0 15.5 17.0 18.5 試料10 20.0 21.5 試料 S H B A N 10 99.1 100.9 89.6 100.7 104.2 11 106.6 101.3 85.4 99.1 106.9 23.0 日本光電(8)>シスメックス(54) >堀場(5) ≒ アボット(6)>ベックマン(8) 15 (28)赤血球指数 赤血球指数の変動係数(CV%)の推移 項目 MCV MCH MCHC 試料 平成23年 平成24年 平成25年 10 1.7 2.4 2.1 11 1.9 2.2 2.0 10 2.0 1.7 1.3 11 1.9 1.6 1.5 10 2.3 2.3 2.4 11 2.4 2.3 2.2 MCVの機器メーカー別測定結果(極端値を除外後1回切断補正) 試料10 試料11 機器 メーカー 施設数 平均値 比率% SD CV% 施設数 平均値 比率% SD CV% S 174 83.06 99.2 1.13 1.4 175 101.40 99.5 1.54 1.5 B 21 86.41 103.2 1.22 1.4 21 104.68 102.7 1.47 1.4 A 15 84.80 101.2 1.00 1.2 16 103.47 101.5 2.14 2.1 SHCD 3 88.13 105.2 2.65 3.0 3 108.13 106.1 4.65 4.3 N 13 86.13 102.8 1.54 1.8 13 102.88 100.9 1.95 1.9 H 17 84.47 100.8 1.45 1.7 17 100.79 98.9 2.17 2.2 全体 247 83.77 ― 1.76 2.1 245 101.92 ― 2.03 2.0 D評価 : 試料10で7施設(3.1%),試料11で16施設(5.7%) 試料10と11の結果を逆に入力:1施設 16 参考調査項目の経日測定結果 (網赤血球比率・自動白血球5分類) 網赤血球比率 (%) 好中球(%) リンパ球(%) 単球(%) 好酸球(%) 好塩基球(%) 試料番号 測定回数 平均値 S.D C.V(%) 10 15 0.78 0.03 3.9 11 15 1.29 0.07 5.5 10 15 61.6 0.92 1.5 11 15 72.2 0.56 0.8 10 15 31.8 1.15 3.6 11 15 22.9 0.51 2.2 10 15 5.1 0.58 11.5 11 15 3.6 0.43 12.0 10 15 1.0 0.19 19.3 11 15 0.9 0.18 20.1 10 15 0.6 0.20 35.4 11 15 0.5 0.13 28.2 測定機器:シスメックス XE-5000 *試料の溶血は認めなかった 17 網赤血球比率の統計値と 代表的な機器の変動係数(CV%)の推移 方法 試料 10 試料 11 施設数 平均値 SD CV% 施設数 平均値 SD CV% 機械法全体 112 0.91 0.15 16.4 114 1.44 0.21 14.5 用手法全体 20 0.97 0.28 29.2 20 1.46 0.52 35.8 機器 平成23年 平成24年 平成25年 試料10 試料11 試料10 試料11 試料10 試料11 CD Sapphia 4.5 3.5 11.0 7.0 2.8 2.6 LHシリ-ズ 25.7 37.6 14.4 19.5 35.3 26.0 ADVIA120他 11.2 10.9 21.6 12.3 17.8 7.4 XE-2100他 10.0 10.9 8.8 12.3 11.1 11.3 XT-2000i他 11.6 28.0 10.5 12.1 13.3 11.0 18 自動白血球分類の統計値 項目 Neu Lym Mon Eos Bas 試料10 試料11 試料10 試料11 試料10 試料11 試料10 試料11 試料10 試料11 件数 194 195 192 190 196 198 196 194 195 194 平均 62.2 71.5 30.3 22.9 5.6 3.8 1.07 0.96 0.70 0.51 SD 3.26 2.95 2.08 1.33 0.98 0.70 0.29 0.39 0.36 0.30 CV 5.2 4.1 6.9 5.8 17.4 18.2 26.9 40.7 50.8 59.4 *統計値は、極端値を除外後に3SD で1回切断後のデ-タを示す 19 自動白血球分類の変動係数(CV%)の推移 ● Neu ■ Lym ● Mon 19 20 21 ■ Eos ▲ Bas 120 100 CV% 80 60 40 20 0 16 17 18 22 23 24 25 調査年度 20 総 括 ◇ 全体の評価としては、例年通り概ね良好な結果であった。配布試料は ボランティアからの新鮮血を使用しており、保存安定性、濃度の面で今 後の課題となる。 ◇ 参考調査の網赤血球比率について、機械法が約85%であった。用手 法については推奨法での測定をお願いしたい。機械法については、機 種によっては収束したデータが得られているが、まだまだ大きなバラツ キがみられた。 ◇ 参考調査の自動白血球分類について、安定した試料であれば好中球、 リンパ球は日常検査の参考試料となると思われる。 ◇ 例年、桁違いなどの報告ミスがみられるが、今回の調査では2施設の みで改善されていた。また、9施設がその他の機器を選択しており、自 施設の機器の特性を理解し、内部精度管理を含め、外部精度管理の 目的を理解し、信頼される検査結果の提供に努めて頂きたい。 21
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