新入社員を迎える直前期の注意点 - SMBCコンサルティング

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編集・発行 三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング株式会社
2008.3.4 第851号
SMBC経営懇話会
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-採用に関するQ&Aシリーズ④-
新入社員を迎える直前期の注意点
古澤社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士
古澤 和哉
(メンターネットワーク会員)
・(ポイント1)新入社員を迎える直前期における会社の留意事項とは。
・(ポイント2)入社時健康診断をめぐる費用負担などの諸問題について。
Q
入社直前の留意事項についてお尋ねします。労働条件通知の時期はいつが適当でしょう
か。また、各種提出物の提出の時期、入社前に就業規則の関連事項の通知は必要でしょ
うか。
A.労働条件の通知は就労前、同時に就業規則の開示・説明.に関しても行うのがトラブルの少ないやり方
です。
本Q&Aシリーズ②でもご説明しましたが書面(労働条件通知書など)による労働条件の明示が法的
に義務づけられています。「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他
の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚
生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない」(労
働基準法第15条)とされています。
●明示の時期
この条文の「労働契約の締結に際し」は事務上の都合にかかわらず、就労前と考えてください。必須
記載労働条件は「①契約期間(期間のない場合は、その旨を明示)」「②就業の場所および従事すべき
業務」「③始業および終業の時刻など」「④賃金の決定など」「⑤退職に関する事項」というものです
から、就業を開始してから通知したのでは意味のないものだからです。
●文書提示が必要なのか、メールなどは可能か
明示という字義は、必ずしも文書での提示を意味していませんが、厚生労働省令で定める方法として
上述の労働条件が明らかとなる「書面の交付」が義務づけられていますので、この点は厳守してくださ
い。
●各種提出物に関して
採用内定者に求める提出物は、大きく分けて2種類です。
①卒業証明など、内定取り消しにつながる資料
②年金手帳など、入社手続きに必要となる資料
これらに関しても時期を逸しては意味のないものですので、それぞれの提出時期を明確に知らせ遵守
させることが必要です。なお、入社時健康診断に関しては第2問で解説します。
(次頁に続く)
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●就業規則の開示
就業規則は労働者に周知し、いつでも閲覧できるようにすべきものとされています(労働基準法第1
06条)。労働者には、就業規則を知り、内容を確認する権利が定められています。閲覧させないこと
に関しては、同法第120条の罰則に基づいて事業主は30万円以下の罰金に処せられます。
入社時においては、単なる開示から一歩進めて、新入社員教育の一環として、就業規則の内容を周知
する研修を実施することをお勧めします。就業規則をトラブルが起きたときの対処や、労働者の権利・
義務の確認として使用するのではなく、会社の理念により定めた規則には従う、という前提を入社の段
階で教えるべきです。
Q
入社時健康診断は事業主の義務であると聞いておりますが、どの程度の健康診断を行え
ば足りるのか、またその費用は事業主が負担するのか教えてください。
A.入社時健康診断の実施は、労働安全衛生法で規定され、当該費用は通達によって事業主負担が求め
られています。
労働安全衛生法では、会社の規模や労働者の数にかかわらず、一般労働者に関しては「雇入れ時(入
社時)健康診断」と年1回「定期健康診断」の義務が会社にあることを定めています(労働安全衛生法
第66条、同規則43条以下)。
●入社時健康診断11の項目
「入社時健康診断」「定期健康診断」では実施項目にそれほど差があるわけではありません。入社時
の健康診断項目は「(1) 既往歴及び業務歴」「(2) 自覚症状及び他覚症状の有無」「(3) 身長、体
重、腹囲、視力及び聴力」「(4) 胸部エックス線検査」「(5) 血圧の測定」「(6) 貧血検査」
「(7) 肝機能検査」「(8) 血中脂質検査」「(9) 血糖検査」「(10) 尿検査」「(11) 心電図検査」
の11となっております。
●健康診断の目的
健康診断の目的は、社員の健康管理もありますが、それは単なる福利厚生制度ではなく、適正配置を
し、以後の就業に耐えうるか否かの一点に集約され、労働災害の防止なども目的になってきます。また、
もともと発症していた病気を隠して入社し、休業してしまうということがあった場合、社会保険や労災
保険制度自体が適正に機能しないという考え方もできるでしょう。
●費用負担
労働安全衛生法に義務付けられている健康診断ですが、同法では会社が健康診断の費用を負担すべき
と明示していないため、入社予定者に自費で受診し、診断書を提出することを求めるケースもまだ多い
ようです。しかし、費用負担は厚生労働省の通達に以下のとおり明記されております(昭和四七年九月
一八日 基発第六〇二号)。「健康診断の費用については、法で事業者に健康診断の実施の義務を課し
ている以上、当然、事業者が負担すべきものであること」。よって、「入社時健康診断」「定期健康診
断」の費用負担に関しては争う余地はありません。
なお、ここで注意が必要なのは、入社選考時の応募書類として健康診断書を出させることがあると思
いますが、これは当社従業員としてふさわしい健康状態であるかを見極めるためで、上述の「入社時健
康診断」とは別のものです。ですから費用負担に関しても、応募に際して健康診断書の提出を求める場
合、会社負担が義務づけられるものではありません。また、直近(3か月以内)に「入社時健康診断」
実施項目を網羅する健康診断を受けた者に関しては当該診断書の提出をもって「入社時健康診断」の提
出に変えることは問題ありません。
【本稿に関するご照会窓口】 SMBCコンサルティング・経営相談部 TEL:0120-874-809