プレキャストアーチカルバート現場見学

現
場
見
学
の
記
録
2008 年 4 月 24 日
プレキャストアーチカルバート現場見学
立田 安礼
折尾
Tatsuta Yasunori
修士課程1年
実物を
実物を見学に
見学に
卒業研究でプレキャストアーチカルバートを扱ってい
たが,写真などや映像しか見たことがなく,以前から実物
を見てみたいと思っていた.今回,プレキャストアーチカ
ルバートの現場見学に行く機会に恵まれ,中島高架(福岡
中島高架
県),玉名地区(熊本県),折尾地区(福岡県)の3箇所
を見学できた(図1).プレキャストアーチカルバートと
玉名
は,組み立て式のアーチカルバートのことであり,部材を
工場で生産するため品質が保証され,現場での工期短縮が
可能といった利点がある.また,後述の中島高架のように,
図1
見学場所
モジュラーチを縦断方向に連続して設置し,高架橋のよう
な盛土も新しく建設されており,施工事例が増えている.
中島高架
中島高架は有明海沿岸道路の一部で,矢部川斜張橋に連
結する高架構造である.のりの乾燥に必要な風通しの必要
性から,この高架構造にはPC高架橋が予定されていたが,
経済性の観点より見直され,アーチカルバートを橋軸方向
に連続的に設置する7ユニットアーチカルバート盛土が採
用された.側壁はコンポジットパネル,断面の空間が大き
写真1
中島高架
くて,石橋のアーチ橋に似ており,これは盛土なのかと思
った(写真1).続いて,隣接の矢部川斜張橋を見学した.
この斜張橋は矢部川内に橋脚を設置しないため,中央支間
長は261 mで国内最大である.斜張橋の桁の上を歩いてみ
ると,斜めに傾いていて,主塔鉛直まっすぐではなく斜め
に傾いていた.これは橋が直線ではなく曲線であることに
よる水平反力を低減させるため,主塔を傾けているそうだ.
反射板
また,主桁を歩いているときに,主桁の中央(写真2)に
反射板のようなものがいくつも見られた.これは,気温な
写真2
主桁の上
どの影響による主桁の変動を管理するためにあるそうで,
計測器が主塔に設置されていた.
玉名地区
玉名地区
玉名地区は,開削して道路を建設していたのだが,開削
部周辺に井戸があり,その影響で開削斜面から水が漏れて
いた.そのため,開削斜面の崩壊する恐れがあり,対策と
してプレキャストアーチカルバートによるトンネルに変
更となったそうだ.この現場では,埋め戻し前の,組み立
写真3
て終わった状態でのアーチカルバートを見学することが
できた(写真3).組み立てられたアーチカルバートは全
玉名モジュラーチ
遮水シート
遮水シート+保護
シート 保護シート
保護シート
体の大きさに対して薄く,部材がぴたりとかみ合わされ,
縦断方向の部材同士の接合部分には遮水シートが貼られ
ていた.この設置されたアーチカルバートを,開削された
斜面の上から眺めて,「プラモデルみたい」と思った.
折尾地区
折尾地区では,JR折尾駅周辺の交通結節機能の強化など
写真4
を目的として筑豊本線,鹿児島本線,福北ゆたか線の立体
西折尾トンネル(外から)
交差工事が行われている.このうち,西折尾トンネルの総
延長は540 mで,そのうちの196 mがプレキャストアーチカ
ルバートによるトンネルである(写真4).こちらの現場
でも,アーチカルバートの組み立ては終わっており,埋め
目地に
目地にシーリング
戻しの途中であった.トンネルはカーブしていて,これは
左右の部材幅を変えることでカーブさせるそうだ.また,
玉名地区のアーチカルバートに比べて,接続部に遮水シー
ト,その上に保護シート,トンネル内部の目地にシーリン
グが施されていた(写真5).本トンネルは先述の玉名地
写真5
区に比べて,より厳重に施工されていることが伺えた.
西折尾トンネル(内から)
感想
実物を見ることができ,プレキャストアーチカ
ルバートの理解が深まったとともに,トンネルも
このように建設することができるのだ,と,土木
の技術のすばらしさに感心した.最後に,今回の
見学に際して各現場へ案内,説明をしてくださっ
たジオスター株式会社の藤井氏,水本氏,新江州
株式会社の須山氏(写真6)に深く感謝いたします.
写真6
玉名モジュラーチにて集合写真