(はじめに) 阪神大震災や新潟中越地震の報 告により各透析施設による防災対 策の重要性がさけばれている。当 院では開院以来1年が経過し、防 災対策マニュアルを作成し患者さ んを含めた避難訓練を行ったので 報告する。 (方法) (1) 地震、停電、火災それぞれを想定しスタッフの動 きをマニュアル化した。 (2) 緊急離脱セットを揃えマニュアル化し患者さんに 説明した。(写真1~3) (3) 2004年9月に患者さんを含めた避難訓練を行っ た。 (4) 月1回防災について院内カンファレンスを行った。 (5) 防災担当スタッフを選任し(2名)近隣の消防施設 への見学又周辺自治会へ災害時の協力を求めた。 (6) 患者さん各自にそれぞれの透析条件・体重管理 を記載出来る手帳を渡した。 優人クリニック緊急離脱フローチャート 院長・担当医師 担当配置につき離脱を行う (配置表は勤務表に明記) 避難 透析室スタッフ 院内損傷確認 事務②が緊急リュック 背負い田柄公園にて 待機する ①自立歩行者②介助歩行者 ③歩行困難者の順番で避難する 院長・担当医師が最終確認を行い 避難終了を確認する 順時、田柄公園へ移動する 災害発生 事務① 規模・場所の把握 待機又は離脱の判断 離 脱 待機 田柄小学校へ 問い合わせる 事務② 院内避難ルート を確認する 待機1・待機2 待機1-回収しベッド上にて待機 待機2-QB↓コンソールバイパス運転 にて待機 1) ③歩行困難者の避難は各フロアーごとに 交代で、おんぶにて避難 2) ②介助歩行者の避難時はリーダーが付き添う 避難後は二次災害防止の為、特別の指示が ない場合は院内には戻らないようにする 田柄公園到着後は止血の手当てを行い 体調不良者の有無を確認し、医師に報告する (火災時の対応) (1) 出火場所の確認(初期消火) 消防署への連絡 (2) 院長へ報告 (3) 緊急離脱の判断 以下は緊急離脱フローチャートに 準じて行動する。 (停電時の対応) (1) QBを100ml/minまで下げ、 除水停止運転とする。 (2) 停電後5分を経過しても復旧 しない場合は血液回路内を 生食で満たす。 (3) 停電後10分を経過しても復 旧しない場合は回収とする。 (地震時の対応) (1) (2) (3) (4) (5) 地震発生時は患者さんはベッド柵に掴まり転落 を防ぐ。毛布を頭迄かぶり落下物より身を守る。 スタッフは揺れがおさまるまで待機する。 地震規模の確認(受付事務) (近隣小中学校への問い合わせ) 被災程度評価(透析室スタッフ) (院内の損傷) 院長へ報告 緊急離脱の判断<※1> 以下は緊急離脱フローチャートに準じて行動する 避難訓練 • 院内ホールにて当院における避難方法、避難場 所及び地震、火災、停電時の対応についてパン フレット(資料1参照)を用いて説明した。 • 透析室へ移動し、緊急離脱について説明した。 (写真4・5) • 患者さんにベッド上で臥床していただき、地震を 想定した緊急離脱訓練を行なった。 • 一次避難場所の田柄公園迄スタッフと共に移動 し、公園内にて止血方法、質疑応答を行い解散 した。(写真6・7) ※1 優人クリニック地震発生時 緊急離脱判断基準 • 震度6以上の揺れ • 断水(パイプラインの損傷含む) • 火災 • 機器損傷 • 停電 自己離脱操作の手順 (1) 揺れがおさまる迄はベッドの上でお待ち下さ い。 (2) 緊急離脱の指示をお出しします。 (3) 上半身を起こしコンソール側に足を出し腰 掛け、離脱セットを取り出します。 (4) 血液ポンプ、補液ポンプの窓を開け、ブザー 停止ボタンを押します。 (5) 離脱セットを袋から取り出し鉗子を取り出 します。 (6) 赤、青の回路を手のひらに持ち手の中で一 本づつはさみます。 (7) 動脈側、静脈側をそれぞれ2本づつ鉗子 ではさみます。 (8) 鉗子と鉗子の間をハサミで切断します。 (9) 保護帯を巻き自己離脱完了となります。 <次の指示があるまでベッド上でお待ち下さい> 写真1 写真2 写真3 緊急離脱セット シールの色による区別 赤いシールは介助歩行者を示す 自己離脱手順 写真4 写真5 写真6 写真7 写真8 <避難リュック中身> 名簿(スタッフ、患者)、懐中電灯(ラジオ付き)、電池、ろうそく、発光体、笛、メガホン シート、ゴミ袋、施設名簿、アルコール綿、生食10パック、針、テープ、点滴セット(5) ガーゼ、駆血帯、圧迫綿 (結果) (1) 災害時の動きをマニュアル化し、避難方法を繰り返し 練習する事で スムーズに行動する事ができるように なった。 (2) 一ヶ月に一度防災についての院内カンファレンスを行 う事でスタッフの中での防災に対する意識づけにつな がった。又多くの患者さんにとっても実際の避難訓練 は初めてであり貴重な経験を得たとの意見が聞かれ た。 (3) 患者緊急自己離脱を担当スタッフ指導のもと繰り返し 行う事で、当初はとまどっていたが次第に手順を理解 し実施できるようになった。逆に自己離脱からスタッフ による離脱へと変更したケースもみられた。 結語 (1) 災害を予想した院内での動きはスムーズに なったが、震災により当院での治療に支障が 生じた際に他施設との連携及び患者連絡・ 輸送手段の確立が今後必要と考えられた。 (2) 災害は透析日以外の被災も予測される。患 者情報カードの見直し、普段からの自己管理 教育の重要性も含め今後更に検討を重ねて いきたい。
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