KURENAI : Kyoto University Research Information Repository Title Author(s) Citation Issue Date URL 両側尿管狭窄をきたしたAortic Perianeurysmal Fibrosisの 1例 金親, 史尚; 峰, 正英; 石坂, 和博; 後藤, 修一; 横川, 正之 泌尿器科紀要 (1989), 35(11): 1921-1924 1989-11 http://hdl.handle.net/2433/116743 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 1921 泌 尿 紀 要35:1921-1924,1989 両 側 尿 管 狭 窄 を き た し たAortic PerianeurysmalFibrosisの1例 帝 京 大 学 附 属 溝 口病 院 泌 尿 器科(主 任:横 川 正 之 教授) 金親 史 尚,峰 正 英,石 後藤 AORTIC 修 一,横 PERIANEURYSMAL BILATERAL URETERAL Fumihisa 坂 和博 正之 FIBROSIS OBSTRUCTION KANEOYA, Masahide Syu-Ichi 川 GOTOH and MINE, Masayuki CAUSED : A CASE Kazuhiro REPORT ISHIZAKA, YOKOKAWA Front the Department of Urology, Mizonokuchi Hospital, Teikyo University School of Medicine A 54-year-old male with the chief complaint of bilateral flank pain was admitted to our hos- pital. Blood chemistry test revealed marked azotemia and retrograde pyelogram showed bilateral hydronephrosis with median shift of narrowed ureters. Abdominal CT scan demonstrated a welldefined dense mass around the aorta implicating bilateral ureters. These findings were interpreted as aortic perianeurysmal fibrosis resulting in bilateral ureteral obstruction. On laparotomy, a large hard mass was found in the lower part of aorta, vena cava, common iliac vessels, inferior mesenteric artery and bilateral ureters. Because of the extension of the mass, ureterolysis and intraperitoneal displacement of ureters wrapped with isolated omentum was performed. Postoperative recovery from azotemia and ureteral obstruction was satisfactory. Biopsy specimen of the mass showed marked fibrosis with nen-specific inflammation. (Acta Urol. Jpn. 35: 1921-1924, 1989) Key words: Bilateral ureteral 管 狭 窄 な ど の 原 因 疾 患 と して れ ほ ど稀 な 疾 患 で は な い が,そ の病 変 が 後 腹 膜 腔 で あ る ため 充 分 な 情報 を得 に くい こ と も あ っ て 不 明 な と こ ろ も 多 い.し 降CTの 発 達 に よ っ て,患 か し,1970年 代以 者 に 与 え る 苦 痛 も 少 な く, よ り 多 くの 情 報 が 与 え ら れ る よ うに な っ て きた.aorticperlaneurysmalfibrosisは 類 され る1疾 後 腹 膜 線 維 化症 に 分 患 で 稀 と され て い る が,そ が 用 い ら れ る よ う に な っ て か ら,そ の 診 断 にCT の報 告 例 も増 して 性 主 訴:両 側 腰 背 部痛 既 往 歴 ・家 族 歴:特 記す べ き こ と な し 現病 歴:1988年2月 頃 よ り,両 側 腰 背 部の鈍 痛 が 出 現 した ため,近 医 を 受 診 した と こ ろ,腹 部 超音 波 検査 で両 側 水 腎 症 で あ る こ とが 判 明 し 当科 を 紹 介 され た. 入院時現症 身 長163cm.体 中等 度,血 圧140/go,触 重48kg,栄 養 状態 診 上 驕 を中 心 と した 腹 部 正 中 に,拍 動 性 の あ る 腫瘤 を触 知 した, か った.血 液 生 化 学 で,BuN80mg/dl,Cr.6.7mg/ 今 回 わ れ わ れ は,aorticperianeurysmalfibょ り高 窒 素 血 症 を き た した 症 例 に 遭 遇 し,尿 管 剥 離 術 に 加 えomentoplastyを 果 を 得 た1例 症 例=59歳,男 入 院 時 検 査 所 見 ・血 算,尿 所 見 に 異 常 は 認 め られ な き て い る. rosisに fibrosis 症 言 後 腹 膜 線 維 化 症 は,尿 泌 尿 器 科 領 域 で は,そ Aortic perianeurysmal り 停 緒 stenosis, Azotemia, を 経 験 した の で,報 施 行 し て,良 告 す る. 好な結 dlと 高値 を 示 した が,電 解 質 を 含め 他 の 検 査 値 は 正常 範囲 で あ った. レン トゲ ン検 査:DIPで い る もの の,腎 は,膀 胱 は 造 影 され て は ・尿管 の造 影 は不 明瞭 で あ り,結 石 陰 1922 泌 尿 紀要35巻lI号1989年 嚇 ・ を寧囁 蕩イ 簾鰍 轍 礁 一,漉 Fig.1.RetrogradepyelogramshowsbUateraI hydronephrosiswithmedianshiftof ・ 劉.盛. Fig.3.Aortographyshowsdeformity ofbilateralcommoniliacarterles narrowedureters. interpretedasspindleaneurysm iscompat五ble. 1nfe了ior Aor電aabdominali5 \.∠ rt.ureter 1n蟹erlor mesenterica了telヲ Perianeur》smaI FibrOSiS Common iliacare電e了y Fig.2.AbdominalCTscanshowsdensemass withclearmarginaroundtheaorta andthevenacavainferior.Thefinding isinterpretedasaortlcperianeurysmaI fibrosisiscompatible. 影 も認 め な か った.RP(Fig.1)で は,両 ,/'\ [nternal iliacartery 側 と も水 \▽ 」 腎 症 を 呈 し,両 側 尿 管 は 第4腰 椎 か ら仙 腸 関 節下 端 ま で,正 中 に 偏 位 し狭 窄 して い た.CT(Fig.2)で は, 腹 部 大 動 脈 下 端 か ら両 側 総 腸 骨動 脈 にお よび,ほ ぼ全 周 性 に 動 脈 を 取 り囲む よ うに 存 在す る均 一 な 濃度 の帯 Fig.4.Schemaofthiscase Schematicdrawingofthefibrousmass, perianeurysmalfibrosis、inrelationwith affectedvessclsandureters. 状 腫 瘤 が 認 め られ た.尿 管 は この腫 瘤 に 引 き寄 せ られ る よ うな 走 行 を示 し,そ の 内腔 も明 らか に 狭 くな って に 起 因 す る両 側 尿管 狭 窄 に よ って,高 窒 素血 症 が 誘起 いた.大 され た もの と診 断 し,開 腹 手 術 に 踏 み き った. 動 脈 造影 で は(Fig.3),右 総 腸 骨 動脈 が 全 長 に わ た って 大 動脈 と同 じ位 の 太 さに な り,壁 も不 整 手 術 所 見(Fig.4):CTで み られ た 腫 瘤 は,表 面 で あ る こ とか ら,い わ ゆ る紡 錘 形 の 大動 脈 瘤 と考 え ら 平 滑 で弾 性 硬 で あ り,腹 部 大 動脈 下 端 か ら両 側 総 腸 骨 れ た.ま た 左 総 腸 動 脈 も軽 度 では あ るが 同様 の 所 見 が 動脈 全 長 に わ た って存 在 し,両 側 尿管 もそ の な か に 埋 認 め られ た. 没 して いた.ま た この 腫瘤 は,下 大 静脈 と下 腸 間 膜 動 以 上 の所 見 か ら,AorticPerianeurysmalFibrosis 脈 も巻 き込 ん でい た た め,大 血 管 を 含 む 腫瘤 を 切 除 し 金 親,ほ か:両 調齢犠 轟蓮 嚢 ー 、4、 一{.」1・ 過 去 の報 告 例 を 検 討 して み る と,性 別 で は圧 倒 的 に 度 の 差 は あれ 必 発 で,症 状 で は腰 背 部 痛 や下 腹 部痛 な どな ん らか の痛 み を伴 うこ とが 多 く,ま た 下 腹 部 に 拍 一 一.御 」,ノ.㌧'覧 発達 して ぎた1970年 代 以 降の 症 男 性 に 多 く,年 齢 は50∼60歳 に 多 い.高 窒 素血 症 は 程 ノ 『ρ 動 性 の 腫瘤 を触 知 す る こ と もあ る. 御 ∵しン嘩導 ジ㌧彦 ∵鈎 簸 誉1琶 ぐ ・7.".馳 な い.し か し,CTの 例 は急 増 して きて い る こ とか ら 今後 さ らに 多 くの 報 告 が な され る と思 わ れ る. 三 鷹驚 ヤ 1923 側 尿 管 狭 窄 ・Aorticperianeurysmalfibrosis 曜 曽..,●_L肉. 診 断 に はRP,AG,CTは れ る.RPで 是 非 必 要 な 検査 と思 わ は,両 側 水 腎 症,近 位尿 管 の 拡 張 が み ら Fig.5.Biopsyspecimenofthemass れ,腰 部 か ら骨 盤 部に か け て の 尿 管 の偏 位 と通 過 障 害 shows丘brosiswithnon-specificinHammation. を 認 め る こ とが 多 い.CTで は,辺 縁 が ほぼ 平 滑 で 均 … な外 観 を もつ 対 称的 な腹 部 腫 瘤 が ,大 血 管 を 中 心 に 存 在 す る こ とが 有 用 な 所 見 で あ る.AGで は,紡 錘 形 の 動 脈瘤 が み られ る こ とが 多 く,大 動 脈 の解 離 や 血 液 の 漏 出 が な く,そ の 腹 部 大動 脈 瘤 に 関 連 して 尿 管狭 窄 が お こ って い る こ とが 認 め られ る. 治療 は,保 存 的 療 法 と して ス テ ロイ ド投 与 も行わ れ る が,あ ま り良 い 成績 は 報 告 され て い ない.手 術療 法 で は,尿 管 剥 離 術 の み施 行 した 症例 は 高窒 素 血 症 や 水 腎症 の 改善 は 芳 し くな い.尿 管 剥離 術 に加 え大 血 管 ご と腫瘤 を 切除 して,人 工血 管 に 置換 した症 例 が 最 も成 績 が 良 い よ うで あ る.本 症 例 で は,下 大静 脈 と下 腸 管 膜 動 脈 を も巻 き込 ん で い た ため,大 血 管 置 換術 は 行 い え なか っ た がt尿 管 剥 離 術 に 加 え ・mentoplastyを 施 行 し,良 好 な 成 績 を え た.こ の術 式はhighrisk の症 例 な どに は と くに 有 用 な 方 法 と思わ れ た. Fig.6.PostoperativeDIP 結 人 工血 管 で置 換 す る こ とは 不 可能 と判 断 し,両 側 尿 管 を 剥 離 した の ちomentoplastyを 病 理 組 織学 的 所見(Fig.5)生 行 った. 検組 織 像は,増 生 で,い わ ゆ る非 特異 性 の炎 症 像 で あ った. 後9ヵ 月 目のIVP(Fig.6)で CTで は,IVPと 目に は,両 管 狭 窄 も 認 め られ て い な い. 同様 の 所 見 の ほ か に 腫 瘤 そ の もの の縮 小 も認 め られ て い る. 考 50例2-11)e:満 管狭窄の原因の・ 一つ と して 知 動脈 周 囲の 線 維 化 が 尿 管 の狭 窄 を誘 目の 報 告 が あ っ て 以 来,現 た ず,本 2.こ の 病 変 の 診 断 に は,RP,AG,と 3.治 療 は,手 術 療 法 が 成 績 が 良 く,尿 加 え てomentoplastyを と く にhighriskの 邦 報 告 例11)は2例 と も にCT 在 まで に をみるにす ぎ 管剥離術に 行 う方 法 が 侵 襲 も 少 な く, 症 例 に は 有 用 な 方法 で あ る と思 わ れ た, 木論 之の 要 旨は 第456回 起 し 腎 不 全 に 陥 っ た と い う報 告 は 稀 で あ る.1935年, James1)の1例 した. 日ノ 仁泌 尿 器 手:F")':会 東京 地 力 会 に お いて 報 告 した. 察 後 腹 膜 線 維 化 症 は,尿 ら れ て い る が,大 起因 す る も有 用 な 検 査 法 で あ る と 思 わ れ た. 術 後 は,経 過 良 好 で 高窒 素血 症 は 消 失 し,14日 退院 した.術 1・Aorticperianeurysmalfibrosisに 両側 尿 管 閉塞 のた め 高 窒 素血 症 を きた した症 例 を 報 告 した 線 維 細 胞 の 間 に 炎 症 性 細 胞 浸潤 が 見 られ る の み 腎 は 良 く造 影 され,尿 語 文 1)JamesTGI:ureamiaduetoaneurysmaof abdominalaorta.BrJurol7:1571935 2)BranchWT,TurleyK,CrowellBH, ConnarRGandFinnerRP:Aorticaneu一 献 1924 泌尿 紀 要35巻ll号1989年 rysmwithretroperitonealfibrosisandure。 terobstruction rysmalfibrosisanduretericobstruction: 。Urology9:299-302,1977 casereportandreviewofliterture.Clin 3)CyneCACandAbcrcrombieGF: Nephro且18=159-162,1982 Perianeurysmalretropiritonealfibosis: 8)FebdbergMAMandHeneRJ:Perianeury- twocaresrespondingtosteroid .BrJurol smalfibrosisanditsresponesofcorticosteroid 49:463-467,1977 treatment;acomputeriziedtomography 4)PahiraJJ,weinAJ,BarkercF followupinlcase.∫Urol130:1163-II64, ,Barner MP,ArgerPH,MulhernCandPollackH: 1983 Bilateralcompleteureteralobstruction 9)KihlB,NilsonAEandPettersonS:Surgical secondarytoanabdominalaorticaneurysm alleviationofuretericobstructioninidiopa- withperianeurysmalfibrosis;diagnosisby thicretroperitoneal丘brosis:ananalys三sof computertomography.∫Urol121:103-106, 9cases.Scand∫UrolNaphro五18:317-323. 1979 1984 5)serraRN,EngleJE ,JonensREand 10)CullenwardMJ,KathleenA,MyronA, ScholwethAC=Perianeurysmalretroperito- PozniaheAM,AcherCA:Inflammatory nea且fibrosis:anunusualcauseofrenal aorticaneurysm(periaorticfibrosis).radiol・ failure・AmJMed64:149-153,1980 6)vintvc,usselmanJA ogicimaging.Rado159:75-82,1986 ,warmathMAand DilleyRBAorticperianeurysmalfibrosis: 7)Ra山R.KapoorWandKamW:Perianeu・ 出 弘 一,西 山 朝 腎,北 CTdensityenhancementandureterobstruc・ tion.AmeJRoe134:57フ 11)居 峯 潔,藤 村 惣 一 郎,小 田 い ず み,井 西 登,日 上 ticPerianeurysmalFibrosisの1例 ー580,1980 断 を 中 心 に 一.臨 毅,大 浅 義 雄=Aor一CT診 放32:957-97,1987 (1989年3月10日 受 付)
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