稲WCSの生産事例(みらい耕社:三重県桑名市長島町)

稲WCSの生産事例 ( みらい耕社 :三重県桑名市長島町 )
1.地域の概要
三重県
桑名市
三重県桑名市長島町は、県の北東端に位置
し、東北部を愛知県、北部を岐阜県と接し、
揖斐川、長良川、木曽川の三大河川の河口部
の海抜ゼロメートル地帯で、その周囲を堤防
に囲まれている。
水利は昭和58年の木曽川総合用水事業によ
り全ての水田へのかんがい用水をパイプライ
ン化し、豊富な用水を水田に利用している。
木曽三川流域のデルタ地帯の耕地では、都市
近郊型の施設とまとや、施設花き栽培が行われている。水田地帯では、ブロックロ
ーテーションにより、小麦、大麦及び大豆が集団で栽培されている。
2.取組とその背景
(1)麦わらの取組
三重県桑名市の旧長島町では、町域でのブロックローテーションによる担い手
への面積集積と不作付地の解消を図ることが課題であった。このため、町は普及
機関、JAながしまと連携し、町内の17名の農作業受託者を構成員とする任意組
織である「みらい耕社」を担い手集団として位置づけた。
みらい耕社は、不作付地への麦及び、大豆等の栽培に取り組んでいる中で、麦
収穫後に麦わらを土壌にすき込んでいたが、夏場にすき込まれた麦わらが土壌内
で腐植し、ガスが発生し問題となっていた。そのため、関係者の指導により、麦
わらをほ場から搬出することとし、その活用を模索したところ、桑名市の肉牛農
家が利用を希望し、麦わらの収集
を始めた。また、この麦わらの利
用をきっかけに、早期栽培の水稲
の収穫後の農閑期に、稲わらの収
集にも乗り出した。
取組当初は、収集機械であるロ
ールべーラーを所有していなかっ
たため、近隣の機械所有者から借
り受け、作業を行っていたが、平
成19年にみらい耕社が機械を購入
し、わら収集の取組が本格的に始ま
稲わらの収集作業
った。稲わらの供給先は、当初、
県内の2か所の肉牛農家であった
が、普及機関等の協力を得て、現
在では県内3か所、県外3か所の
肉牛農家に販売先が拡大した。
収穫した稲わら
(2)稲WCSの取組
平成18年に、JAながしま、桑名
取組面積の推移
市役所長島総合支所産業課、三重県
H21年
(単位:ha)
H22年
H23年
桑名農政事務所(農政課、経営普及
稲わら
20.1
21.0
20.5
課)
、中央農業改良普及センターの
麦わら
6.4
6.8
7.8
関係者が参集し、みらい耕社の将来
稲WCS
23.0
21.7
21.5
的な法人化を見据え、効率的な水
田の生産体制を目指すビジョンを作成した。その中で、麦後作地に稲WCSを生
産し、水田の高度利用と畜産農家への飼料供給を行う耕畜連携型の水田利活用に
ついて検討を行い、翌年19年からは10haで試験栽培が始まった。
当時はみらい耕社では収穫機械を持たなかったため、鈴鹿市の農業法人に収穫
・調製を委託し、生産された稲WCSは、三重県御浜町の大規模酪農家に供給し
た。また、19年に国の補助事業を活用し、専用収穫機及びラッピングマシンを導
入し、現在、稲WCSの作付面積は22haへと大きく拡大した。
このように、みらい耕社では、平成19年から稲WCSの生産を行うとともに、
稲WCSを利用する酪農家で生産された家畜堆肥を水田に還元する資源循環の取
組を始めた。
3.取組の問題点とその対応
(1)保管場所
稲わらは、降雨により品質が低
下することから、稲わらの保管施
設を整備することが必要となって
いた。そこで、JAながしまは、
平成22年4月にわらの保管倉庫を
3棟建設した。稲WCSについて
は、降雨による品質の低下はない
稲WCSの収穫風景
ものの、屋外で保管している際
に、サイレージの発酵臭の苦情
が寄せられたことから、稲わら
と同様に施 設 の 保 管を行ってい
る。
収集したわらは、みらい耕社
が収穫時に品質確認を行い、J
Aながしまが品質別にロールの
分別管理を実施している。
倉庫に保管した稲WCS
(2)担い手の作業時期の調整
当地域では、担い手が行う食用米、麦、大豆の生産、みらい耕社が行う稲WC
Sの生産、わら収集について、年間スケジュールを立てて作業を効率的に行って
いる。
例えば、わらの収集の場合、JAながしまが収集場所と日程を調整を行い、み
らい耕社が稲わらの収集作業を行うといったように、関連機関が連携することに
より効率的な作業を行っている。
わらの収集・販売体制