ストレス時にVaRは機能するのか? - 日興フィナンシャル・インテリジェンス

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2009 年 7 月
*** 論
文 ***
ストレス時にVaRは機能するのか?
~ リーマンショックを振り返る~
資産運用研究所
-------------------------------------------- 要
約
二俣
新
--------------------------------------------
昨年 9 月のリーマンブラザーズの破綻を契機に、9 月から 12 月に掛けて大きくマーケ
ットが混乱した。有価証券のリスク管理には”Value at Risk”(以下 VaR)が利用されて
いる。VaR とは、ある保有期間・ある一定頻度を元に推計した最大予想損失額である。リ
ーマンショックでは VaR を上回る損失を出した例が多いといわれるが、VaR は機能不全に
陥り、想定よりも頻繁に VaR 以上の損失を出したのであろうか。
一般的には、100 年に一度の金融危機という名の元に、有価証券全般で VaR は機能不全
に陥ったと捉えられがちであるが、有価証券の種類による違いがないのかファンドを利用
して検証することにした。
最初に、VaR の定義や利用方法そして課題等に触れて、その後、具体的な検証を行った。
検証方法は、主要な分類を代表するファンドについてバックテストを行うことにした。
その結果、リーマンショックの場合には、マーケットの影響が強いファンドは VaR が機
能せず、マーケットの影響が弱い戦略のファンドは、VaR が機能する傾向が認められた。
その検証結果を踏まえて、日本株に投資しているファンドについて詳細に調査した。マ
ーケットの影響が強いファンドとして、日本株ファンド・日本株ロングショート(日本株
LS)、マーケットの影響が弱いファンドとして、日本株マーケット・ニュートラル・ファ
ンド(日本株 MN ファンド)を利用して、VaR が機能していたのか確認した。
その結果、やはり、リーマンショックにおいては、マーケットの影響が強いファンドよ
り、マーケットの影響が弱いファンドの方が、比較的 VaR が機能していたことが確認され
た。しかしながら、マーケットの影響が弱いファンドであれば、必ずしも VaR が機能して
いるわけではない。例えば 2007 年頃には、機能していない時期が存在した。
2009/07/21
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本レポートは、信頼性の高いデータから作成されておりますが、当社はその正確性・確実性に関し、いかなる保証をするもの
ではございません。本レポートは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではございません。証券投資に関す
る最終判断は、投資家ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。本レポートの転用および販売は固く禁じられておりま
す。本レポートの著作権は、当社に帰属いたします。
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目
次
1. はじめに
2. VaR について
2.1 VaR の定義
2.2 VaR の利用方法と課題
3.ファンドの VaR の検証について
3.1 VaR の検証方法
3.2 VaR の検証結果
3.3 日本株に投資するファンドの検証方法
3.4 日本株に投資するファンドの検証結果
3.5 異なる時期の状況
4. まとめ
1.はじめに
昨年 9 月のリーマンブラザーズの破綻を契機に、9 月から 12 月に大きくマーケット
が混乱した。そのようなショック時には、リスク管理する際に従来から利用されてき
た VaR は、本当に機能しなかったのであろうか。
一般に、VaR は統計の想定を超えるようなショック時に機能しない可能性が高いと
言われている。だからと言って VaR を全て否定する必要もなく、少なくとも一部の有
価証券では、そのようなショック時でも、VaR が機能する場合もあるのではないかと
考えた。そこで、市場リスクや信用リスクにさらされている各種有価証券に投資して
いるファンドについて考えることにし、日本株ファンドやグローバル債券ファンド、
グローバル株式ファンド、そして、マーケット・ニュートラル戦略等のヘッジファン
ドでも、一律に VaR が機能しなかったのか検証することにした。
2. VaR について
2.1
VaR の定義
VaR とは日本語で、
「最大予想損失額」と表現されるが、VaR を推計するには、3 つ
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の条件(「保有期間」
、「観測期間」、
「信頼区間」
)を考慮する必要がある。
「保有期間」とは、ある有価証券を保有し続ける期間を意味している。仮に保有期
間 1 ヶ月の VaR であれば、その有価証券を、1 ヶ月間保有した場合の、最大予想損失
額となる。株式で考えてみると、保有期間が 1 日であれば、高々ストップ安程度であ
ると考えられる。しかし保有期間が 1 ヶ月となると予想は難しい。ひょっとしたら株
式の発行会社が倒産し紙くずになるかもしれないし、さすがにそれはないとしても、
3 割ダウン程度は見込んだほうがよいかもしれない。保有期間により、VaR の金額は
大きく変わるのである。
「観測期間」とは、どの程度の期間の過去データを利用して、VaR を推計したかと
いうことを意味している。仮に 2009 年 3 月末を基準として、観測期間が 1 年の VaR
といえば、2008 年 4 月から 2009 年 3 月末までデータを利用して VaR を推計すること
になる。観測期間が 5 年間であれば、2004 年 4 月から 2009 年 3 月末までのデータを
利用することになる。それらには大きな違いがある。仮に、観測期間が 1 年であれば、
リーマンショックの影響による混乱したマーケットデータが多く含まれる。しかし、
5 年でみれば、その混乱したデータは、ごく一部となる。2009 年 3 月末を基準とする
ならば、観測期間が 1 年の VaR の方が、大きな最大予想損失額を推計することになる
であろう。
「信頼区間」とは、どの程度の頻度で VaR を越える損失額が発生するかを表してい
る。仮に、保有期間を 1 年、信頼区間を 90%と想定しよう。大雑把に言えば、10 年に
1 度は、実際の損失金額が VaR を上回ることを想定している。従って、保有期間を 1
年、信頼区間が 99%の VaR は、100 年に 1 度、実際の損失額が VaR を上回ることを想
定することになる。
信頼区間の違いにより VaR は異なる金額となるが、その金額を推計するために資産
の価格や損失額の分布を利用する。その分布を推計することは難しいが、VaR を推計
するには、様々な形状の分布から選定する必要がある。最も代表的な分布は、連続的
な確率分布である正規分布である。正規分布は、人間の身長や体重のばらつき具合な
どを表現する時など、多くの場合に利用される。また、正規分布よりも裾が広い t 分
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布なども挙げられる。他では、ヒストリカル・シミュレーションと呼ばれる方法があ
り、実際に過去観測されたデータをそのまま適用している。この方法では、保有期間
を 1 ヶ月とし、観測期間が 100 ヶ月であれば、信頼区間が 90%の場合は、下から 10
番目に悪い月の実際のデータをそのまま VaR として利用する。
2.2
VaR の利用方法と課題
VaR はどのように利用したら良いであろうか。例えば、今は 2009 年 2 月末だとし、
株式を 100 万円保有しているとする。そこで、保有期間 1 ヶ月、観測期間が 12 ヶ月、
信頼区間は、91.7%(=11/12)の VaR を推計したところ、10 万円であったとしよう。
すると、最近 1 年間で、最も悪い月が、来月たまたま訪れなければ、2009 年 3 月末
は、90 万円以上で迎えることが出来ることを意味する。
但し、たまたま、悪い月が訪れた場合は、90 万円以下になることを意味しており、
その場合に、80 万円になるのか、ひょっとしたら 0 円になってしまうのかを推計し
ているわけではない。
VaR を利用するにあたっては、実際の損失額が信頼区間を前提とした VaR 内に収ま
らない場合があるため、収まらない場合を想定した対応が別途必要となる。
そこで良くあげられるのが、そのような市場混乱時を想定した「ストレステスト」
である。例えば、9.11 のテロ/バブル崩壊等の実際のシナリオの適用、99.9%の VaR/
相関を 1 とする/最大下落の統計的なシナリオの適用等がある。ストレステストを行
いストレス値を推計すれば、平常時は VaR でリスクを管理し、VaR に損失が収まらな
い混乱時には、ストレス値によりリスクを管理することになる。そのため VaR とスト
レステストは車の両輪であり、平時の VaR、混乱時のストレステスト等と表現される
こともある。それ以外にも、C-VaR(Conditional-VaR)を利用する方法がある。C-VaR
は、VaR を越える損失額の平均値を意味する。そのため、VaR を越えた場合に、C-VaR
で平均的には損失額を見積もれることになる。しかしながら、C-VaR を上回る損失が
発生する可能性も、平均値という定義上、半分あることになり十分ではないであろう。
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次に、「バックテスト」について簡単に触れる。VaR は、将来の損失額の「予測
値」であるため、実際の損失金額が、事前に想定した損失金額やその発生頻度の通り
になるとは限らない。そこで、推計した VaR が想定通り、一定の頻度で VaR に実際の
損失金額が収まっていたか確認する必要がある。その確認作業のことをバックテスト
と呼んでいる。具体的な内容については次項の「VaR の検証方法」に委ねる。
バックテストにより、VaR の妥当性を確認した結果、想定以上に頻繁に実際の損失
金額が VaR を上回っていたとしよう。その場合の対応としては、VaR の推計方法に問
題があるため見直す、または、平常時ではなく混乱時であったため VaR でなくストレ
ス値で対応すべきだった、などが考えられる。
3. ファンドの VaR の検証について
3.1
VaR の検証方法
VaR のモデルを検証するために、バックテストを行う。すなわち、推計した最大予
想損失額(VaR)に、実際にその後に発生した損失額が収まっていたかどうかをテスト
する。VaR を実際の損失額が超過した「超過回数」を数えて、推計方法(モデル)の
良し悪しを判断する。
図表 1
バック・テスティングについて
・バック・テスティングの結果、発生した超過回数に応じて、以下のような対応を
行っているか。
①超過回数が10回以上の場合は、適切に対応しているか。
②超過回数が5回以上の場合は、それぞれについて、その原因を分析した事項を記載した
書類を作成し、保存しているか。また、その理由を明確に説明できる体制となっているか。
(注)「超過回数」とは、内部モデル方式を用いる部分について、算出基準日を含む直近
250 営業日の日ごとの損益を、実際に発生した損益又はポートフォリオを固定した場合
において発生したと想定される損益として算出し、その日ごとの損失の額が保有期間
を1日、信頼区間を99%としてリスク算出した日ごとのVaRを上回る回数をいう。
出所:金融庁 H16.2 市場関連リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト
金融庁の検査マニュアルのチェックリスト(図表1)を参考にすると、VaR のモデ
ルを検証する際には、保有期間 1 日、信頼区間 99%を前提にした VaR を利用している。
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当分析でも金融庁のチェックリストに倣い、
「保有期間 1 日」、
「信頼区間 99%」の VaR
を推計して検証する。検証の回数は、250 営業日と記載があるため 250 回行う。観測
期間に関しては特段触れられていないが、一般的に 1 年以上は必要と考えられている
ため 1 年間とする。なお、通常、モデルの見直しは、年一度程度行われるため「基準
日を 2009 年 3 月末日」とし「250 営業日遡って 250 回」検証することにした。
~
検証対象ファンド
~
ファンドは、多くの種類の有価証券に投資しているため、各種分類のファンドを検
証することにした。各種分類を代表するファンドとして、公募ファンドのうち分類毎
に純資産総額が最大のファンドを分析することにした。但し、設定後の期間が十分で
ない場合、期間が十分であり純資産総額が大きいものを選定した。以下、分析対象の
10 種類の分類及びそれを代表するファンド名である。
①日本株式
(TOPIX連動型上場投資信託)
②グローバル株式
(ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型))
③エマージング株式(JPM・BRICS5・ファンド)
④グローバル債券
(グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)
)
⑤エマージング債券(グローバル・エマージング・ボンド・オープン)
⑥ハイイールド債券(ピムコ
ハイ・インカム毎月分配型ファンド)
⑦日本株MN
(GS
日本株式マーケット・ニュートラル・ファンド)
⑧グローバルLS
(クレディ・スイスGTAAファンド)
⑨コモディティ
(野村コモディティ投信(DJ・AIG商品指数))
⑩グローバルリート(グローバルREITオープン)
~
検証方法
~
2008 年 3 月 25 日から 2009 年 3 月 31 日(250 営業日)のリターン(日次の対数リタ
ーン)を検証する。仮に、2008 年 3 月 25 日のリターンを検証するためには、2007 年
4 月 2 日から 2008 年 3 月 24 日(240 営業日)のリターンの標準偏差に信頼区間 99%の
係数(-2.326:正規分布を前提)を掛けた値を VaR と捉えて、2008 年 3 月 25 日の
リターンと比較する。VaR より大きな損失が発生していれば超過したと捉え、その超
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過した回数を調査する。なお、正規分布を前提に VaR を推計する方法は一般的である
ため、当分析では正規分布を前提とした VaR を利用することにする。
ここでは、超過回数が 4 回以下であれば、VaR は機能していたと判断し、一方、10
回以上であれば、VaR は機能していなかったと判断することにする。
ファンドの分類の違いをより詳細に把握するために、VaR の水準や修正決定係数に
ついても調査する。修正決定係数は、単純に TOPIX 等にて回帰分析を行い算出される
値ではなく、ファンドの分類に応じたマーケットファクターに対する説明力を調査す
る。修正決定係数については、NBA1の分析結果を利用することにした。修正決定係数
が高ければ、その分類は、より多くのマーケットエクスポージャーをとっておりマー
ケットの影響が強いと理解できる。
3.2
VaR の検証結果
以下に、検証対象ファンド 10 種類の検証結果を図表にまとめた。図表のパフォー
マンスは、日次の対数リターンを表しており、VaR を下回る場合に、超過日としてピ
ックアップしている。
図表 2-1
①日本株式の検証結果
超過回数
15.0%
10.0%
9回 (250回のうち)
0.989
VaR
パフォーマンス
0.988
超過日
修正決定係数
0.987
0.0%
0.986
-5.0%
0.985
-10.0%
0.984
-15.0%
0.983
-4.06%
-4.24%
-4.39%
-4.52%
-5.08%
-5.26%
-5.38%
-5.45%
-5.93%
2008/03/25
2008/04/07
2008/04/18
2008/05/02
2008/05/19
2008/05/30
2008/06/12
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2008/07/08
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2008/09/10
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2008/10/08
2008/10/22
2008/11/05
2008/11/18
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2008/12/15
2008/12/29
2009/01/15
2009/01/28
2009/02/10
2009/02/24
2009/03/09
2009/03/23
5.0%
超過日
パフォーマンス VaR
2008/09/16
-5.27%
2008/10/06
-4.52%
2008/10/08
-8.06%
2008/10/10
-7.39%
2008/10/16
-10.81%
2008/10/22
-7.24%
2008/10/24
-7.62%
2008/10/27
-6.41%
2008/11/06
-6.28%
1NBA
とは、日興コーディアル証券及び日興シティグループ証券により提供されている資産・負債の管理ツールであり、ファンド
のリスク管理機能が備わっている。ファンドの分析には定性・定量分析により選定したファクターによる重回帰分析を用いている。
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図表 2-2
②グローバル株式の検証結果
超過回数
20.0%
15.0%
10.0%
9回 (250回のうち)
0.8
VaR
パフォーマンス
0.75
超過日
修正決定係数
0.7
5.0%
0.65
0.0%
0.6
0.55
0.5
-15.0%
0.45
-3.00%
-3.13%
-3.35%
-3.53%
-4.05%
-4.92%
-5.17%
-5.39%
-6.00%
2008/03/25
2008/04/07
2008/04/18
2008/05/02
2008/05/19
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2008/06/12
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2008/07/08
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2008/08/15
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2008/09/10
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2008/10/08
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2008/11/05
2008/11/18
2008/12/02
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2008/12/29
2009/01/15
2009/01/28
2009/02/10
2009/02/24
2009/03/09
2009/03/23
-5.0%
-10.0%
超過日
パフォーマンス VaR
2008/09/08
-4.87%
2008/09/17
-4.42%
2008/10/07
-5.76%
2008/10/09
-7.26%
2008/10/14
-13.35%
2008/10/16
-5.24%
2008/10/23
-8.01%
2008/10/27
-10.18%
2008/11/21
-6.99%
図表 2-3
③エマージング株式の検証結果
超過回数
20.0%
VaR
パフォーマンス
15.0%
超過日
修正決定係数
10.0%
11回 (250回のうち)
0.93
0.92
0.91
5.0%
0.9
0.0%
0.89
0.88
0.87
-15.0%
0.86
-4.76%
-4.79%
-4.91%
-5.39%
-5.68%
-6.23%
-6.32%
-6.79%
-7.05%
-7.31%
-8.10%
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2008/04/07
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2008/05/02
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-5.0%
-10.0%
超過日
パフォーマンス VaR
2008/09/05
-4.72%
2008/09/10
-5.17%
2008/09/18
-6.74%
2008/09/24
-6.48%
2008/09/30
-12.20%
2008/10/07
-13.80%
2008/10/09
-7.51%
2008/10/16
-14.52%
2008/10/23
-12.37%
2008/10/27
-13.45%
2008/11/07
-9.15%
図表 2-4
④グローバル債券の検証結果
超過回数
6.0%
4.0%
14回 (250回のうち)
0.99
VaR
パフォーマンス
0.985
超過日
修正決定係数
0.98
0.0%
0.975
-2.0%
0.97
-4.0%
0.965
-6.0%
0.96
-1.24%
-1.30%
-1.38%
-1.43%
-1.47%
-1.49%
-1.57%
-1.60%
-1.65%
-1.71%
-1.81%
-1.82%
-2.12%
-2.27%
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2009/03/23
2.0%
超過日
パフォーマンス VaR
2008/09/05
-1.88%
2008/09/09
-1.84%
2008/09/30
-2.43%
2008/10/07
-2.07%
2008/10/09
-2.30%
2008/10/10
-1.66%
2008/10/15
-1.79%
2008/10/16
-2.03%
2008/10/22
-2.18%
2008/10/23
-3.06%
2008/10/27
-3.96%
2008/10/28
-1.81%
2008/11/11
-2.15%
2009/01/13
-2.58%
2009/07/21
日興フィナンシャル・インテリジェンス
本レポートは、信頼性の高いデータから作成されておりますが、当社はその正確性・確実性に関し、いかなる保証をするもの
ではございません。本レポートは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではございません。証券投資に関す
る最終判断は、投資家ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。本レポートの転用および販売は固く禁じられておりま
す。本レポートの著作権は、当社に帰属いたします。
8
NFI リサーチ・レビュー
2009 年 7 月
図表 2-5
⑤エマージング債券の検証結果
超過回数
6.0%
4.0%
10回 (250回のうち)
1
VaR
パフォーマンス
0.98
超過日
修正決定係数
0.96
0.0%
0.94
-2.0%
0.92
-4.0%
0.9
-6.0%
0.88
-1.60%
-1.64%
-1.72%
-1.81%
-1.85%
-1.88%
-1.97%
-2.05%
-2.14%
-2.34%
2008/03/25
2008/04/07
2008/04/18
2008/05/02
2008/05/19
2008/05/30
2008/06/12
2008/06/25
2008/07/08
2008/07/22
2008/08/04
2008/08/15
2008/08/28
2008/09/10
2008/09/25
2008/10/08
2008/10/22
2008/11/05
2008/11/18
2008/12/02
2008/12/15
2008/12/29
2009/01/15
2009/01/28
2009/02/10
2009/02/24
2009/03/09
2009/03/23
2.0%
超過日
パフォーマンス VaR
2008/09/16
-2.73%
2008/09/18
-1.73%
2008/09/30
-2.89%
2008/10/07
-2.74%
2008/10/09
-2.68%
2008/10/10
-2.37%
2008/10/16
-2.57%
2008/10/23
-3.35%
2008/10/27
-3.98%
2008/11/13
-2.66%
図表 2-6
⑥ハイイールド債券の検証結果
超過回数
6.0%
VaR
パフォーマンス
4.0%
超過日
修正決定係数
10回 (250回のうち)
0.55
0.5
0.45
0.0%
0.4
-2.0%
0.35
-4.0%
0.3
-6.0%
0.25
-1.72%
-1.66%
-1.74%
-1.97%
-2.09%
-2.18%
-2.20%
-2.35%
-2.60%
-2.84%
2008/03/25
2008/04/07
2008/04/18
2008/05/02
2008/05/19
2008/05/30
2008/06/12
2008/06/25
2008/07/08
2008/07/22
2008/08/04
2008/08/15
2008/08/28
2008/09/10
2008/09/25
2008/10/08
2008/10/22
2008/11/05
2008/11/18
2008/12/02
2008/12/15
2008/12/29
2009/01/15
2009/01/28
2009/02/10
2009/02/24
2009/03/09
2009/03/23
2.0%
超過日
パフォーマンス VaR
2008/07/16
-1.90%
2008/09/08
-1.80%
2008/09/17
-3.18%
2008/10/07
-5.58%
2008/10/09
-4.64%
2008/10/23
-2.77%
2008/10/24
-2.25%
2008/10/27
-5.58%
2008/11/21
-4.90%
2009/01/22
-3.68%
図表 2-7
⑦日本株MNの検証結果
超過回数
2.0%
1.5%
1.0%
VaR
パフォーマンス
超過日
修正決定係数
3回 (250回のうち)
0.55
0.5
0.45
0.4
0.0%
0.35
-0.5%
0.3
-1.0%
0.25
-1.5%
0.2
-2.0%
0.15
-0.78%
-0.78%
-0.80%
2008/03/25
2008/04/07
2008/04/18
2008/05/02
2008/05/19
2008/05/30
2008/06/12
2008/06/25
2008/07/08
2008/07/22
2008/08/04
2008/08/15
2008/08/28
2008/09/10
2008/09/25
2008/10/08
2008/10/22
2008/11/05
2008/11/18
2008/12/02
2008/12/15
2008/12/29
2009/01/15
2009/01/28
2009/02/10
2009/02/24
2009/03/09
2009/03/23
0.5%
超過日
パフォーマンス VaR
2008/09/16
-1.17%
2008/09/18
-0.94%
2008/09/19
-1.13%
2009/07/21
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NFI リサーチ・レビュー
2009 年 7 月
図表 2-8
⑧グローバルLSの検証結果
超過回数
1.0%
VaR
パフォーマンス
超過日
修正決定係数
0.5%
4回 (250回のうち)
0.25
0.2
0.15
-0.5%
0.1
-1.0%
0.05
-1.5%
0
-0.88%
-0.92%
-0.89%
-0.87%
2008/03/25
2008/04/07
2008/04/18
2008/05/02
2008/05/19
2008/05/30
2008/06/12
2008/06/25
2008/07/08
2008/07/22
2008/08/04
2008/08/15
2008/08/28
2008/09/10
2008/09/25
2008/10/08
2008/10/22
2008/11/05
2008/11/18
2008/12/02
2008/12/15
2008/12/29
2009/01/15
2009/01/28
2009/02/10
2009/02/24
2009/03/09
2009/03/23
0.0%
超過日
パフォーマンス VaR
2008/03/26
-1.19%
2008/07/09
-0.95%
2008/09/25
-1.00%
2008/10/15
-0.91%
図表 2-9
⑨コモディティの検証結果
超過回数
10.0%
8.0%
VaR
パフォーマンス
6.0%
超過日
修正決定係数
11回 (250回のうち)
0.9
0.88
0.86
0.84
2.0%
0.82
0.0%
0.8
-2.0%
0.78
-4.0%
0.76
-6.0%
0.74
-8.0%
0.72
-10.0%
0.7
-3.34%
-3.41%
-3.69%
-3.82%
-4.00%
-4.11%
-4.25%
-4.32%
-4.62%
-4.76%
-5.00%
2008/03/25
2008/04/07
2008/04/18
2008/05/02
2008/05/19
2008/05/30
2008/06/12
2008/06/25
2008/07/08
2008/07/22
2008/08/04
2008/08/15
2008/08/28
2008/09/10
2008/09/25
2008/10/08
2008/10/22
2008/11/05
2008/11/18
2008/12/02
2008/12/15
2008/12/29
2009/01/15
2009/01/28
2009/02/10
2009/02/24
2009/03/09
2009/03/23
4.0%
超過日
パフォーマンス VaR
2008/07/16
-3.57%
2008/09/19
-3.59%
2008/09/30
-8.59%
2008/10/03
-6.12%
2008/10/07
-7.89%
2008/10/16
-5.94%
2008/10/23
-6.97%
2008/10/27
-5.93%
2008/11/06
-4.67%
2008/11/21
-5.10%
2008/12/02
-5.35%
図表 2-10
⑩グローバルリートの検証結果
超過回数
15.0%
1
10.0%
0.98
5.0%
0.96
0.0%
0.94
-5.0%
-10.0%
0.92
VaR
パフォーマンス
0.9
超過日
修正決定係数
0.88
超過日
パフォーマンス VaR
2008/09/05
-4.48%
2008/09/16
-7.59%
2008/09/18
-4.85%
2008/09/24
-5.56%
2008/09/30
-9.37%
2008/10/07
-8.92%
2008/10/09
-6.31%
2008/10/10
-7.83%
2008/10/16
-9.27%
2008/10/23
-9.22%
2008/10/27
-10.73%
2008/11/11
-6.74%
2008/11/20
-7.23%
2008/11/21
-7.83%
-4.23%
-4.37%
-4.46%
-4.68%
-4.88%
-5.17%
-5.27%
-5.39%
-5.83%
-6.02%
-6.22%
-6.79%
-6.96%
-7.04%
2008/03/25
2008/04/07
2008/04/18
2008/05/02
2008/05/19
2008/05/30
2008/06/12
2008/06/25
2008/07/08
2008/07/22
2008/08/04
2008/08/15
2008/08/28
2008/09/10
2008/09/25
2008/10/08
2008/10/22
2008/11/05
2008/11/18
2008/12/02
2008/12/15
2008/12/29
2009/01/15
2009/01/28
2009/02/10
2009/02/24
2009/03/09
2009/03/23
-15.0%
16回 (250回のうち)
出所:日興フィナンシャル・インテリジェンス
2009/07/21
日興フィナンシャル・インテリジェンス
本レポートは、信頼性の高いデータから作成されておりますが、当社はその正確性・確実性に関し、いかなる保証をするもの
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10
NFI リサーチ・レビュー
2009 年 7 月
どの分類にも共通して言えることは、やはりリーマンショックが原因と考えられる
昨年 9 月の後半や 10 月頃に、多くの超過日が発生している。①日本株式と②グロー
バル株式は、超過回数が 9 回であり、VaR が機能していなかったと判断するには至ら
なかったが、機能していたとは言えないような高水準であった。次に、③エマージン
グ株式、④グローバル債券、⑤エマージング債券、⑥ハイイールド債券、⑨コモディ
ティと⑩グローバルリートについては、超過回数が 10 回を上回っており、VaR は機
能していなかった。⑦日本株 MN と⑧グローバル LS は、超過回数が 4 回を下回ってお
り、VaR は概ね機能していた。しかし、超過回数が 2.5 回(250 回の 99%だから)を下
回る分類はひとつもなかった。
続いて、それら分析結果を、一覧表にまとめて記載する。
図表 3
分類
日本株式
グローバル株式
エマージング株式
グローバル債券
エマージング債券
ハイイールド債券
日本株MN
グローバルLS
コモディティ
グローバルリート
VaR の検証結果の一覧
平均修正
平均VaR
超過回数
決定係数
0.986
-4.88%
9
0.619
-4.50%
9
0.909
-6.57%
11
0.981
-1.73%
14
0.934
-1.95%
10
0.431
-2.13%
10
0.354
-0.98%
3
0.102
-0.82%
4
0.811
-4.11%
11
0.956
-5.70%
16
出所:日興フィナンシャル・インテリジェンス
上の図をみると、興味深いことに気が付く。修正決定係数が高い分類は、超過回数
が多く、修正決定係数が低い分類は、超過回数が少ない傾向がみられた。唯一、ハイ
イールド債券は、その傾向に反しているように読み取れる。それは、ハイイールドマ
ーケットを表すリスク・ファクターが、重回帰分析を行う際のユニバースに含まれて
いないため、修正決定係数が低く算出されていたことが原因と推測される。
リーマンショックが発生した際には、VaR を超過する損失が多々発生しており、シ
2009/07/21
日興フィナンシャル・インテリジェンス
本レポートは、信頼性の高いデータから作成されておりますが、当社はその正確性・確実性に関し、いかなる保証をするもの
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る最終判断は、投資家ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。本レポートの転用および販売は固く禁じられておりま
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11
NFI リサーチ・レビュー
2009 年 7 月
ョック時には VaR が機能していなかったことが改めて確認された。しかしながら、ど
のような分類のファンドでも一律に VaR が機能しなくなるわけではなく、修正決定係
数が低い分類のファンド、即ちリスク・ファクターで説明出来る割合が低い、マーケ
ットの影響が弱いファンドについては、リーマンショック時においても VaR が機能し
ていた可能性が高いことがわかった。反対に、マーケットの影響が強いファンドは、
VaR が機能していなかったため、ストレステスト等での対応が求められるだろう。
3.3
日本株に投資するファンドの検証方法
『リーマンショック時にマーケットの影響が強いファンドは VaR が機能せず、マー
ケットの影響が弱いファンドは VaR が機能していた。
』という仮説をより詳細に確認す
るために、日本株に投資するファンドを用いて検証することにした。
日本株ファンドは投資金額のほとんどを日本株に費やし、マーケットの影響が強い
ファンドと捉えることが出来る。また、日本株 MN ファンドは、金額ベースや、マーケ
ットに対する感応度ベースで、日本の株式マーケットに対しニュートラルな戦略をと
っているため、マーケットの影響が弱いファンドと捉えることが出来る。
分析対象は、日本株式に投資する公募ファンドとする。具体的には、概ね日本株に
全額投資するファンドとして、NFI 分類2の「国内株式 一般 市場型」・「国内株式 一
般 大型グロース」
・「国内株式 一般 大型バリュー」・
「国内株式 一般 小型」のそれぞ
れ純資産総額上位 10 本、合計で 40 本を分析対象とする。また、
「オルタナ投資 国内
株式マーケット・ニュートラル」・「オルタナ投資 国内株式ロング・ショート」に所属
し、設定後 2 年を経過している、合計 22 本を分析対象とする。
それら合計 62 本に対し、「VaR の検証方法」と同じ方法で、VaR が機能していたかど
うかを確認することにする。但し、修正決定係数に関して NBA の結果を利用せず、単
純に、TOPIX に対する相関係数の 2 乗とすることにした 3。
2
NFI 分類とは、日興フィナンシャル・インテリジェンスによるファンドの分類である。
NBA では、業種のアクティブファクターを利用し精緻に日本株 MN のリスクを捉えるが、当分析では、単純にマーケットリスクを
捉えられれば十分であるからである。
3
2009/07/21
日興フィナンシャル・インテリジェンス
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12
NFI リサーチ・レビュー
2009 年 7 月
3.4
日本株に投資するファンドの検証結果
以下の図表 4-1 に、超過回数と決定係数を比較したグラフを記載した。決定係数が
高い、上に位置するプロットが、日本株ファンドや、日本株 LS ファンドであり、下に
位置するプロットが、日本株 MN ファンドである。
図表 4-1
超過回数と決定係数の関係
超 過 回 数 vs 決 定 係 数
1.0
y = 0.1084x - 0.0908
2
R = 0.3245
0.9
0.8
決定係数
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
超過回数
出所:日興フィナンシャル・インテリジェンス
全体的な傾向を把握するために、単回帰の直線を引いた。図表の左上に、回帰分析
の結果の切片や傾きが記載されている。傾きは、0.1084 となっており、決定係数が高
いと超過回数が多く、決定係数が低ければ超過回数が少ない傾向がある。
言い換えれば、マーケットの影響が強いファンドより、マーケットの影響が弱いフ
ァンドの方が、VaR が機能していた事を示している。
図表 4-1 では、日本株ファンドと日本株 MN を一まとめにして分析を行ったため、
実は、日本株 MN だけで束ねると異なる傾向がある可能性を残している。
そこで、以下の図表 4-2 は、日本株ファンドと日本株 LS を一まとめにし、また、
日本株 MN を一まとめにして、プロットした。どちらの図表でもプロットを単回帰分
析した結果、傾きが正の値になっている。よって、区切り方に依存しない傾向であっ
たと考えられる。
2009/07/21
日興フィナンシャル・インテリジェンス
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NFI リサーチ・レビュー
2009 年 7 月
図表 4-2
超過回数と決定係数の関係(日本株,LS と MN との比較)
超 過 回 数 vs 決 定 係 数
超 過 回 数 vs 決 定 係 数
(日本株,LS)
(MN)
0.25
y = 0.0510 x + 0.5279
R2 = 0.7023
y = 0.0115x + 0.0008
R2 = 0.2458
0.90
0.20
0.80
0.15
決定係数
決定係数
1.00
0.70
0.60
0.10
0.05
0.50
0.00
0
2
4
6
8
10
0
2
4
超過回数
6
8
10
超過回数
出所:日興フィナンシャル・インテリジェンス
3.5
異なる時期の状況
以下に、日本株 MN に該当する 19 本のファンドの超過回数の推移状況を示した。
基準日をスライドさせて、常に 250 回検証を行った結果を表示した。
図表 5
日本株 MN の超過回数の推移
日 本 株 MN 超 過 回 数 推 移
最大
平均
最小
超過発生(右軸)
100%
2009/2/1
2008/12/1
2008/10/1
2008/6/1
2008/8/1
2008/4/1
2008/2/1
0%
2007/8/1
10%
0
2007/10/1
2007/12/1
20%
2
2007/6/1
4
2007/4/1
30%
2006/12/1
2007/2/1
40%
6
2006/8/1
50%
8
2006/10/1
60%
10
2006/6/1
70%
12
2006/2/1
2006/4/1
14
2005/12/1
80%
2005/8/1
90%
16
2005/10/1
18
2005/4/1
2005/6/1
超過回数
20
出所:日興フィナンシャル・インテリジェンス
2009/07/21
日興フィナンシャル・インテリジェンス
本レポートは、信頼性の高いデータから作成されておりますが、当社はその正確性・確実性に関し、いかなる保証をするもの
ではございません。本レポートは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではございません。証券投資に関す
る最終判断は、投資家ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。本レポートの転用および販売は固く禁じられておりま
す。本レポートの著作権は、当社に帰属いたします。
14
NFI リサーチ・レビュー
2009 年 7 月
まずは、2008 年 10 月頃を見てみよう。リーマンショックによりマーケットが混乱
した時期に超過回数が増えている。その頃分析対象の 18 ファンドの超過回数の平均値
は、250 回のうち 3 回程度から 5 回を超える水準にまで高まっている。
次に、2007 年 8 月頃を見てみよう。記憶されている方もおられると思うが、その時
期は、MN 系のファンドに大きな損失が発生した時期であった。2007 年 8 月 8 日
(70%=12 本超過/17 本中)、2007 年 8 月 9 日(70%=12 本超過/17 本中)、2007 年 8 月 10
日(83%=14 本超過/17 本中)と、連日多くのファンドで実際の損失が VaR を超過した。
その影響で、平均的な超過回数も急激に増加した。100 年に一度の金融危機と呼ばれ
るリーマン・ショック時よりも急激に VaR が機能しなくなっていた。
実は、2006 年 6 月頃を見ると、平均的な超過回数は 250 回のうち 9 回程度になって
いる。2007 年 8 月と異なり、VaR を若干上回る程度の損失が小刻みに発生した結果で
ある。サンプルファンド数は 9 本で十分とはいえないが、VaR が機能しているとは言
えない時期が確認された。
このように、リーマンショック時には、VaR が機能していたかもしれないマーケッ
トの影響を受けにくいファンドも、違う時期には VaR が機能しなくなることもあった。
4. まとめ
昨年 9 月のリーマンブラザーズの破綻を契機に、9 月から 12 月掛けて大きくマーケ
ットが混乱した。こういうショック時においては、有価証券全般について、従来から
利用されている VaR のリスク管理指標としての機能が失われたものと考えられている。
リーマンショックでは、マーケットの影響が強いファンドの場合は、VaR が機能し
なかったため、ストレステスト等の対応が必要であったと考えられるが、マーケット
の影響が弱いファンドであれば、VaR が概ね機能していた。
但し、これらはどのようなショック時でも共通の傾向というわけではなく、マーケ
ットの影響が弱いファンドでも、VaR が機能しない時期の存在が確認された。
今後のショック時においても、VaR によるリスク管理だけではなくストレステスト
も行い、それらを組み合わせて対応することにより、VaR は、引き続き有効なリスク
管理指標として活用できるであろう。
2009/07/21
日興フィナンシャル・インテリジェンス
本レポートは、信頼性の高いデータから作成されておりますが、当社はその正確性・確実性に関し、いかなる保証をするもの
ではございません。本レポートは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではございません。証券投資に関す
る最終判断は、投資家ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。本レポートの転用および販売は固く禁じられておりま
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NFI リサーチ・レビュー
2009 年 7 月
NFI 分類
大分類名
国内株式
中分類名
国内株式 一般
小分類名
大分類名
グロー バル債券
(ヘッジなし)
国内株式 一般 市場型
国内株式 一般 大型グロ ー ス
国内株式 一般 大型バリュー
中分類名
小分類名
グロー バル債券 グロ ーバル (ヘッジなし)
グロー バル債券 日本含まず (ヘッジなし)
グロー バル債券 短期 (ヘッジなし)
グロー バル債券 短期 日本含む (ヘッジなし)
グロー バル債券 エマージング (ヘッジなし)
グロー バル債券 エマー ジン グ (ヘッジなし)
国内株式 業種 医薬・食品
グロー バル債券 ハイイー ルド (ヘッジなし)
グロー バル債券 ハイイー ルド (ヘッジなし)
国内株式 業種 化学・繊・紙
グロー バル債券 米ドル建債券 (ヘッジなし)
グロー バル債券 米ドル建債券 一般 (ヘッジなし)
国内株式 業種 電気・精密
グロー バル債券 欧州通貨建債券 (ヘッジなし)
グロー バル債券 欧州通貨建債券 (ヘッジなし)
国内株式 業種 自動車・機械
グロー バル債券 オセアニア通貨建債券 (ヘッジなし) グロー バル債券 オセアニア通貨建債券 (ヘッジなし)
グロー バル債券 インデ ックス (ヘッジなし)
グロー バル債券 イン デックス Citigroup WGBI (ヘッジなし)
国内株式 一般 小型
国内株式 業種
グロー バル債券 短期 日本含まず (ヘッジなし)
国内株式 業種 建設・不動産
国内株式 業種 石油・非鉄
グロー バル債券 米ドル建債券 短期 (ヘッジなし)
国内株式 業種 鉄鋼・造船
グロー バル債券 米ドル建債券 短金 (ヘッジなし)
国内株式 業種 商業
国内株式 業種 金融
グロー バル債券 イン デックス Citigroup WGBI ex Japan (ヘッジなし)
国内株式 業種 公益
国内株式 テーマ
国内株式 テー マ
国内株式 イン デ ックス
国内株式 インデ ックス 225
グロー バル債券 イン デックス その他 (ヘッジなし)
グロー バル債券
(フルヘッジ)
国内株式 インデ ックス TOPIX
国内株式 インデ ックス その他
国内株式 その他
国内債券
国内債券
国内債券 イン デ ックス
グロー バル債券 その他 (ヘッジなし)
グロー バル債券 その他 (ヘッジなし)
グロー バル債券 グロ ーバル (フルヘッジ)
グロー バル債券 日本含む (フルヘッジ)
グロー バル債券 短期 (フルヘッジ)
グロー バル債券 短期 日本含む (フルヘッジ)
グロー バル債券 日本含まず (フルヘッジ)
国内株式 その他
グロー バル債券 短期 日本含まず (フルヘッジ)
国内債券 一般
グロー バル債券 エマージング (フルヘッジ)
グロー バル債券 エマー ジン グ (フルヘッジ)
国内債券 短期
グロー バル債券 ハイイー ルド (フルヘッジ)
グロー バル債券 ハイイー ルド (フルヘッジ)
国内債券 短金
グロー バル債券 米ドル建債券 (フルヘッジ)
グロー バル債券 米ドル建債券 一般 (フルヘッジ)
グロー バル債券 欧州通貨建債券 (フルヘッジ)
国内債券 インデ ックス NOMURA-BPI(総合)
グロー バル債券 米ドル建債券 短期 (フルヘッジ)
国内債券 インデ ックス その他
グロ ーバル株式
(ヘッジなし)
グロー バル債券 米ドル建債券 短金 (フルヘッジ)
国内債券 その他
国内債券 その他
グロー バル債券 欧州通貨建債券 (フルヘッジ)
グロー バル株式 グロ ー バル (ヘッジなし)
グロ ーバル株式 日本含む (ヘッジなし)
グロー バル債券 オセアニア通貨建債券 (フルヘッジ)グロー バル債券 オセアニア通貨建債券 (フルヘッジ)
グロー バル債券 インデ ックス (フルヘッジ)
グロー バル債券 イン デックス Citigroup WGBI (フルヘッジ)
グロー バル株式 エマー ジン グ (ヘッジなし)
グロ ーバル株式 エマー ジン グ (ヘッジなし)
グロー バル株式 北米 (ヘッジなし)
グロ ーバル株式 北米 (ヘッジなし)
グロー バル株式 欧州 (ヘッジなし)
グロ ーバル株式 欧州 先進国 (ヘッジなし)
グロ ーバル株式 日本含まず (ヘッジなし)
グロー バル債券 イン デックス Citigroup WGBI ex Japan (フルヘッジ)
グロー バル債券 イン デックス その他 (フルヘッジ)
グロー バル債券 その他 (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 欧州 新興国分散 (ヘッジなし)
複合
グロー バル債券 その他 (フルヘッジ)
複合 国内複合
複合 国内複合
グロ ーバル株式 欧州 トルコ (ヘッジなし)
複合 国内 CB
複合 国内 CB
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア 各国分散 日本含む (ヘッジなし)
複合 グロー バル
複合 グロ ーバル
グロ ーバル株式 欧州 ロ シア (ヘッジなし)
グロー バル株式 アジア・オセアニア (ヘッジなし)
複合 国内複合 その他
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア 各国分散 日本含まず (ヘッジなし)
複合 グロ ーバル 北米
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア 台湾 (ヘッジなし)
複合 グロ ーバル 欧州
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア 中国・香港 (ヘッジなし)
複合 グロ ーバル アジア・オセアニア
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア インド (ヘッジなし)
複合 グロー バル CB
複合 グロ ーバル CB
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア シンガポー ル (ヘッジなし)
複合 3資産(株式、債券、オルタナ)分散型
複合 株式、債券、不動産 分散型
複合 ライフスタイル
複合 ライフスタイル アクティブ
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア マレー シア (ヘッジなし)
複合 3資産分散型 その他
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア タイ (ヘッジなし)
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア インドネシア (ヘッジなし)
複合 ライフスタイル パッシブ
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア フィリピ ン (ヘッジなし)
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア オー ストラリア (ヘッジなし)
複合 その他
オルタナティブ投資 オルタナ投資 リー ト
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア 韓国 (ヘッジなし)
複合 その他
オルタナ投資 Jリー ト アクティブ
オルタナ投資 Jリー ト パッシブ
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア ベトナム (ヘッジなし)
グロー バル株式 中南米 (ヘッジなし)
オルタナ投資 グロー バルリート (ヘッジなし)
グロ ーバル株式 中南米 各国分散 (ヘッジなし)
オルタナ投資 グロー バルリート (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 中南米 メキ シコ (ヘッジなし)
オルタナ投資 コモデ ィティ
オルタナ投資 コモデ ィティ アクティブ (ヘッジなし)
グロ ーバル株式 中南米 ブラジル (ヘッジなし)
オルタナ投資 コモデ ィティ アクティブ (フルヘッジ)
グロー バル株式 イン デックス (ヘッジなし)
グロ ーバル株式 イン デ ックス MSCI WORLD (ヘッジなし)
オルタナ投資 コモデ ィティ パッシブ (ヘッジなし)
グロー バル株式 資源 (ヘッジなし)
グロ ーバル株式 資源 (ヘッジなし)
オルタナ投資 国内株式ロ ング・ショー ト
グロー バル株式 その他 (ヘッジなし)
グロ ーバル株式 その他 (ヘッジなし)
オルタナ投資 グロー バル株式マーケット・ニュー トラル (ヘッジなし)
グロー バル株式 グロ ー バル (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 日本含む (フルヘッジ)
オルタナ投資 グロー バル株式マーケット・ニュー トラル (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 日本含まず (フルヘッジ)
オルタナ投資 グロー バル株式ロ ング・ショー ト (ヘッジなし)
グロー バル株式 エマー ジン グ (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 エマー ジン グ (フルヘッジ)
オルタナ投資 グロー バル株式ロ ング・ショー ト (フルヘッジ)
グロー バル株式 北米 (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 北米 (フルヘッジ)
グロー バル株式 欧州 (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 欧州 先進国 (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 イン デ ックス MSCI KOKUSAI (ヘッジなし)
オルタナ投資 コモデ ィティ パッシブ (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 イン デ ックス その他 (ヘッジなし)
グロ ーバル株式
(フルヘッジ)
グロー バル債券 日本含む (ヘッジなし)
グロー バル株式 アジア・オセアニア (フルヘッジ)
オルタナ投資 ヘッジファン ド
オルタナ投資 国内株式マー ケット・ニュー トラル
オルタナ投資 複合グロ ー バル ロン グ・ショー ト
オルタナ投資 ヘッジファンド その他
グロ ーバル株式 欧州 新興国分散 (フルヘッジ)
オルタナ投資 戦略分散
オルタナ投資 戦略分散
グロ ーバル株式 欧州 ロ シア (フルヘッジ)
オルタナ投資 ブル・ベア
オルタナ投資 ブル・ベア
グロ ーバル株式 欧州 トルコ (フルヘッジ)
オルタナ投資 その他
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア 各国分散 日本含む (フルヘッジ)
その他
オルタナ投資 その他
ミリオン
ミリオン
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア 各国分散 日本含まず (フルヘッジ)
財形
財形
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア 中国・香港 (フルヘッジ)
マネー プー ル
マネー プール
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア シンガポー ル (フルヘッジ)
分類外 分類しない
分類外 分類しない
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア マレー シア (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア タイ (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア イン ドネシア (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア フィリピ ン (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア オーストラリア (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア 韓国 (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 アジア・オセアニア ベトナム (フルヘッジ)
グロー バル株式 中南米 (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 中南米 各国分散 (フルヘッジ)
グロー バル株式 イン デックス (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 イン デ ックス MSCI WORLD (フルヘッジ)
グロー バル株式 資源 (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 資源 (フルヘッジ)
グロー バル株式 その他 (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 その他 (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 中南米 メキ シコ (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 イン デ ックス MSCI KOKUSAI (フルヘッジ)
グロ ーバル株式 イン デ ックス その他 (フルヘッジ)
参考資料
金融庁(2004.2)、「市場関連リスク管理態勢の確認検査用チェックリストリスク」
2009/07/21
日興フィナンシャル・インテリジェンス
本レポートは、信頼性の高いデータから作成されておりますが、当社はその正確性・確実性に関し、いかなる保証をするもの
ではございません。本レポートは情報提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではございません。証券投資に関す
る最終判断は、投資家ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。本レポートの転用および販売は固く禁じられておりま
す。本レポートの著作権は、当社に帰属いたします。
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