a z u m in o n o d a ic h i k a ra

a
a z u m i n o n o d a i c h i k ar a
安曇野の大地から
持続可能な農的くらし自然農
目次
1.自然農 私の場合
・・・
文=小田詩世
2.存在としての自然農
文=村松知子
レポート=こうぷみん
3.安曇野自然農学習会
自休自足 記事 ①〜④
4.シャロムヒュッテの自然農
5.シ
ッテ
テの
の田
田ん
んぼぼ ・・・ 春
シャ
ャロ
ロム
ムヒュッ
文=
・・・・・
・・・・・
・・・・・
・・・・・
・・・・・
--
シ
ャ
ロ
ム
ヒ
ュ
ッ
テ
の
自
然
農
~
ことをテレビで見たのは、ちょうど
業をしたいと思っていた。自然農の
を汚す農薬や化学肥料は使わない農
と に か く 私 は、 農 業、 そ れ も 自 然
今まで知らなかった新しい世界が
まっている感じがした。
もおいしく、いのちがぎゅうっと詰
たすら感動した。採れた作物はとて
自然農との出会い
野 に 移 り 住 み、 何 年 か 経 っ た 頃 か
私は、20代の半ばに大阪から長
そんな頃だった。
いることを感じた。これが、神さま
いところに、何か大きな力が働いて
そこにはあった。人間の力の及ばな
ら、漠然と農業をたいと思うように
なった。きっかけのひとつは、アジ
というものなのかなと思った。
知らなかった新しい世界
わゆる「発展途上国」と呼ばれる国
アへ旅行に行ったことだと思う。い
実際、自然農は簡単である。私のよ
くても、野菜は立派に育つのである。
も、耕 さ な く て も、肥 料 な ど 施 さ な
うに、農業の知識がまったくなくて
の自然農の学びの会が年4回行なわ
たま、隣町で川口由一さんを招いて
人々の暮らしは、物がなくてもゆっ
れていることを知った私は、それに
に 住 む、 私 た ち よ り 貧 し い は ず の それから半年くらい経って、たま
に私はカルチャーショッ
た り と し て 豊 か だ っ た。 そ の こ と
解 決 は な い と 思 っ た。 こ
こ と な し に、 南 北 問 題 の
あ り、 私 た ち が 自 立 す る
ているのは私たちの側で
と い う け れ ど、 援 助 さ れ
い る こ と を 知 っ た。 援 助
貧困とが密接に関係して
率 の 低 さ と、 第 三 世 界 の
り、 日 本 国 内 の 食 糧 自 給
いう言葉を知るようにな
問 題 」 や「 第 三 世 界 」 と
ま で 知 ら な か っ た「 南 北
ク を 受 け た。 ま た、 そ れ
つ る が 巻 か な い タ イ プ の 豆 だ っ た、
向につるが巻かない、実は金時豆は
張って立派な支柱を組んだのに、一
金時豆を蒔いたところにせっせと頑
れ ば い い の か さ え わ か ら な か っ た。
どのように立てるのか、いつ収穫す
どのように蒔けばいいのか、支柱は
か ら な い こ と だ ら け で、 何 を い つ、
は学んだが、最初のうちは本当にわ
準備校にも行って少しは農業のこと
長野や三重で行なわれた新規就農
りを始めた。
何もわからないまま手探りで野菜作
参 加 し て 学 び、 近 所 に 畑 を 借 り て、
だったと思う。化学肥料や農薬で汚
で始められたことはラッキーなこと
とを体験できたから、そういう土地
地だった。自然農は簡単、というこ
の初めて借りた畑も、そのような土
のちが満ちあふれているからだ。私
小動物、微生物など、たくさんのい
うのも、そういう土地には、草や虫、
ばあるほど理想的なのである。とい
長い間放置され、草ぼうぼうであれ
い わ ゆ る「 荒 れ た 農 地 」 の よ う に、
められるのだ。しかも、その土地は、
を蒔く場所さえあれば、今すぐに始
も、お金も何もなくても、種とそれ
マと、鍬とスコップくらいで、機械
ま た、 必 要 な 道 具 は、 草 を 刈 る カ
--
・・・
小
= 田詩世
れ 以 上、 南 の 国 の 人 た ち
した。野菜作りの本を畑で広げなが
という笑えるような失敗もたくさん
作物がちゃんと健康に育つようにな
の足を踏み続けるのはい
るまで、何年かかかるという。その
やだと思った。
かき分けて種を蒔いただけで、キュ
何年かが待てずに、自然農では作物
そ の 土 地 が 自 然 の 働 き で 浄 化 さ れ、
ウリや大豆が立派に育っていく姿を
染 さ れ た 土 地 を 借 り て や る 場 合 は、
思った。デスクワークよりも、身体
見て、自然農は簡単! とも思った。
それでも、初めて借りた畑で、草を
を動かす仕事がしたかったこと、何
ができないと、あきらめてしまう人
らの農作業だった。
かものを作り出すような仕事をし
蒔いた種から芽が出ただけで感動
私 が 今 借 り て い る 畑 は、 4 年 目 に
も多いからだ。
そ れ に は ま ず、 せ め て 自 分 で 食 べ
た か っ た こ と、 そ し て、 一 日 中 建
し、それが私の知らないうちにひと
なる。3年目から畑全体の調和がと
物の中に居て今日の天気がどんな
草がやさしいものに変わってきた
ても取れてきた感じがする。生える
りでに育って、みるみる成長してい
がスイカとなる不思議さに、ただひ
たくさんの実を結ぶことに、スイカ
き、たったひとつぶの小さな種から
など、農業をしようと思った理由は
な毎日はいやだと思っていたこと
他にもたくさんある。
だったかさえ知らずに過ごすよう
る も の は 自 分 で 作 ら な く て は、 と
リアとニュージーランドのパーマカルチャーサイトでウーフ体験。
帰国後、山梨県にある自然農の専業農家で1年間研修を受ける。
自然農
私
~ の場合
文
私 が「 自 然 農 」 を 初 め て 知 っ た
の は、 数 年 前 に た ま た ま あ る テ レ
米作りが紹介されているのを見た
ビ 番 組 で、 奈 良 の 川 口 由 一 さ ん の
と き で あ る。 農 業 を し た い と 思 っ
てはいたけれど、怠け者で面倒なこ
と が 嫌 い な 私 に は、 耕 さ な い、 草
を取らない 実
( 際は草刈り日々なの
だが で
) すむ農法なんて、夢のよう
な農法に思えた。
1999 年、パーマカルチャー・センター・ジャパン (PCCJ) でパーマ
カルチャーについて学ぶ。同じ頃、川口由一さんの提唱する自然
農に出会い、実践を始める。2000 年冬〜 2001 年春、オーストラ
シ
ャ
ロ
ム
ヒ
ュ
ッ
テ
の
自
然
農
めはいなかった虫たちの姿も多く見
し、 カ マ キ リ や テ ン ト ウ ム シ な ど 初
草は外へ持ち出さずその足元に敷い
る、もしくは刈る。そして、刈った
菜もその仲間に入れてもらい、そし
巡っているところで、私のお米や野
ざまな生きもののいのちが生死に
草や虫や小動物、微生物などのさま
のお米、私の野菜以外の草や、虫や、
な問題を引き起こすことになる。私
ランスを崩し、結果としてさまざま
ものを敵とし排除した時、自然はバ
ない。それら全てのいのちが生死を
ておく。刈って敷かれた草は、自然
に入れてもらう。自然農をしている
米、私の野菜、そして私自身が生き
巡る自然の営みの中でのみ、私のお
か け る よ う に な っ た。 そ し て、 畑 に
次のいのちの糧となる。
)
一部に組み込まれ、その循環の輪の
と、いつのまにか私も自然の営みの
てそのお米を食べる私も、その仲間
元 来 怠 け 者 の 私 だ が、 こ の 草 刈 り
ていくことができるのだ。自然農の
のマルチとなって作物の足元を乾燥
の 見 る 限 り、 野 菜 た ち は 草 に 囲 ま れ
が 案 外 楽 し い の で あ る。 余 計 な こ
中で、生かされていることに気がつ
田畑はいのちにあふれていてそこに
から守り、朽ちたあとは、そのまま
てとても気持ちよさそうに見える
とは何も考えずにただ黙々と目の
く。
立 っ て い る と と て も 心 地 よ く、 作 物
し、実際すくすくとよく育っている。
前の草を刈り続ける。後ろを振り返
も よ く で き る よ う に な っ て き た。 私
私 が 心 地 い い と い う こ と は、 作 物 に
ればそこには自分のやった成果が見
小動物を、決して邪魔にしてはいけ
とっても心地いいということなのだ
える。そしてこの瞑想のような作業
心地よさが体を包む。全てのいのち
立っているだけでなんともいえない
自 然 農 は 楽 で 簡 単 そ う だ か ら、 と
ろうと勝手に思っている。
きな違いだと思う。田畑に立ってい
この考え方が、他の農法との一番大
に出会えた幸せを、ただただ感謝す
くれる、道しるべだと思う。自然農
い。私たちに、その生き方を教えて
かってきた。自然農は、農法ではな
はつながり、全てのいのちは巡って
大いなるその営みの中で
ると、自然は常にバランスを取るよ
る日々である。
いる。そのことが、最近ようやくわ
うに働いていると感じる。草も、虫
のおかげで、終わった後は頭の中が
も必要があってそこに存在する。ア
耕さず、肥料、農薬を用いず、草や虫を敵と
思 っ て 始 め た が、 実 際 は 畝 作 り や 種
ブラムシが発生するのは、過剰な栄
しない自然の営みに沿った農のあり方。
空っぽになり、達成感と心地よい疲 自 然 農 で は 草 や 虫 を 敵 と し な い。
養を浄化してくれるため。スギナが
労感が体を包むのだ。
多いのは、土壌の酸性をやわらげて
川口由一
蒔 き、 草 刈 り な ど、 機 械 は 使 わ ず す
身の丈にあった栽培の仕方だからだ
くれるため。それらの虫や草があっ
べ て 手 作 業 な の で、 体 力 は 結 構 必 要
り方は、余計なエネルギーや機械を
と思う。自然の営みに沿ったこのや
いえども、まったく自然任せの放任 私が自然農を好きなのは、それが
草 刈 り ば か り の 毎 日 だ。( 自 然 農 と
使 わ ず、 自 然 の 働 き と、 そ し
て初めて田畑は調和が保たれ、作物
1939年、奈良県桜井市に専業農家の長
男 と し て 生 ま れ、中 学 卒 業 後 農 業 を 引 き 継
される。特に草の生育が旺盛な夏は、
だ。 作 業 の 半 分 は 主 に 草 刈 り に 費 や
で は、 野 生 の、 生 命 力 の 強 い 雑 草 に
て私というひとりの人間の能
益虫もなく、またどんな草にも役割
も健康に育つことができる。
害虫も、
私も自然の中の一部
負けてしまい目的の作物が育たない
力が最大に発揮される。また、
ることか。草も虫も敵としなくなっ
いうのは、どんなに安心な世界であ
いた。現在直接指導されているのは、奈良、
赤目 三( 重 、
東
) 京の3ヵ所だけになっている。
当時、川口由一さんを年に数回招いての自
然農の学習会が、全国数ヵ所で行なわれて
自然農学びの会
とした農業入門講座。
大学などで行なわれている、社会人を対象
農 水 省 の 委 託 事 業 と し て、 農 業 高 校 や 農 業
就農準備校
取り組み始める。現在は、自身の田畑での
勉強会と、赤目自然農塾 三
『賢
( 重県 や
) 東京
治の学校』などで自然農の指導に当たる。
身を損ねる。1978年頃に
『複合汚染』 有
(
吉佐和子著 や
『自然農法』
『わら一本の
)、
革命』 福
( 岡正信著 な
) どの本に出会い、い
の ち の 営 み に 沿 っ た 農 を 模 索 し、自 然 農 に
ぐが、化学肥料、農薬を用いた農業の中で心
自然農
の で、 作 物 が 負 け な い 程 度 に 草 は 取
手作業でやる仕事というのは
ある時、自然農を長くやって
た時、私も自然の一部となり、大い
があるのだ。この、草も虫も敵とし
き た あ る 人 が、 種 を 蒔 く 時 や
なるその営みの中で生きていくこと
機 械 で や る の と 違 い、 流 れ る
苗を植える時はそこに生えて
ができるのだ。人間と、人間にとっ
ないという考え方が、どれほど心を
いる草たちの仲間に入れても
て有用なものだけで世界は決して成
時 間 が ゆ っ く り で、 自 然 の 中
らうような気持ちで蒔いたり
虫も、全てがつながっている世界と
植 え た り す る、 と 言 っ て い た
り立たない。全ての生命は複雑に絡
穏やかにさせることか。私も、草も
の を 聞 い て か ら、 私 も そ の よ
る。人間にとっては害になると思う
み合い、生かし生かされる関係にあ
に い る と い う 実 感 が 持 て る、
うな気持ちでやるようになっ
豊かで楽しい時間なのである。
た。 一 枚 の 田 ん ぼ や 畑 の 中、
--
シャロムヒュッテの自然農
・・・
文
出すだけで、なんだか胸の辺りがざ
ぼんやりと夜景を見ながらふと思い
を、 自 宅 の マ ン シ ョ ン の ベ ラ ン ダ で
菜の芽が顔をのぞかせている風景
草なんてないのですが)と一緒に野
いる草花(本当は「雑草」っていう
て! 自分のまさに「足元」にその「答
り様 のヒミツが隠されていたなん
こ こ の 畑 に す べ て の〝 い の ち の あ
し合っている」そんな畑であった。
のち」が緩やかに連関しながら存在
生し、「調和」
しながらそれぞれの
「い
そんな意識が生まれてきた。
るものであってほしい。
〝いのちのゆらぎやうごめきが生じ
きられないのではなくもっと自由な
い。型にはまった均一なものしか生
かすことができるものであってほし
もできるならその土は〝いのちを活
とはただそれを見守るだけ。けれど
人 間 も、 虫 も、 草 も ど の い の ち も
え」
はあったんだ!そんな気がした。
自分とまさか「自然農」がこんな
けていたことがあった。それは今の
私の身体は、皮膚という外壁によっ
平等にこの世界には存在している。
実はこの数年間、私はずっと問い続
にリンクするなんて不可思議としか
私の職業と密接に絡んでいるのだけ
わざわしてくる。
いいようがない。いっ
れど。
い戸惑いとそんな自
ぬ自分に出会った軽
調をきたした方々のサポートをし
はストレスなどが原因で心身に不
と呼ばれる仕事をしていて、日常で
中で浮かび上がっている〈何か〉な
張り巡らされたさまざまないのちの
ているのではなく、網の目のように
とつの〈個〉として突出して存在し
が、別の次元からみると、たったひ
て一見他とは区切られているようだ
たい自分に何が起き
分をどこかおもしろ
ている。そしてそのような方々との
て い る の か … 予 期 せ 私 は い わ ゆ る「 こ こ ろ の 専 門 家 」
がっている自分がい
になったのが、単にその人の「ここ
数多くの出会いを通して感じるよう
る「 雑 草 だ ら け の い い か げ ん な 畑 」
それはあるのだが、一見すると単な
情 景 だ。 お 行 儀 の い い 畑 に 囲 ま れ て
の「 自 然 農 」 の 畑 は そ れ と は 異 な る
ように思っていた。一方、シャロム
しい田舎の風景」の
あり「畑」であり、「正
わ ゆ る「 田 ん ぼ 」 で
し て き た。 そ れ が い
の姿をいくつも目に
耕された田んぼや畑
は多くの整然と並び、
これまでもちろん私
たような気がする。
に出会ったのだった。シャロムの土
そんな時にシャロムの畑と自然農
思いがどんどん膨らんでいった。
になっているのではないか、そんな
のちにとって生きづらく窮屈なもの
のもの、環境そのものがもはや〝い
こころやいのちを育んでいく土壌そ
「 こ こ ろ 根 」 が 弱 い の で は な く、
だった。
現れているのではないかということ
その〝ゆがみが〝こころの病として
ちが本来もっていたリズムを失って
れた、というのではなく、近代社会
ではく、人間存在、ひいては〈いの
は私にとって単なる
「農法の一技法」
ん」とおっしゃっていたが、「自然農」
然農〉は〈自然農法〉ではありませ
先 さ せ る よ う に な っ た 結 果、
〝 い の いみじくも今回、
舘野さんは「
〈自
が効率を重視しそれをあまりにも優
くる確かな〈存在知〉である。
ちそのもの〉のあり様にまで迫って
る生き方」について語られている。
を生きる生き方」から「答えを生き
ろ根」が弱くて、そうした病になら 自然農の提唱者川口さんは「問い
のかもしれないと思った。
て、今私は初めて「畑
にしか見えない。けれども、シャロ
は、本当に黒々していて、やわらか
理に人間も飲み込まれています。引きこも
り も 登 校 拒 否、 自 殺 願 望 も 自 分 の せ い で は
なく社会のしくみの結果であるかもしれま
せん。むしろ、繊細な気持を持っている人
ほど社会にとけ込めないのです。そろそろ
しくみを変えていく必要があるのでしょう。
分断して競争させるから、融合して共生す
り出したしくみは人が変えられます。 ケ( ン
る。略奪的な農法から、草も仲間とする農
へ。奪い合う暮らしから、
与え合う暮らしへ。
社会は今変革の時に来ています。人間が作
)
--
というもの」に出会っ
ムの臼井さんや講師の舘野さんのお
く種たちにとってはふかふかのお布
分断して競争させる、資本主義の競争の原
話を聞くと、同じ畑なのにそれはこ
「 雑
( 草といういわば 「敵
) 」や「他者」 晩どんな夢をみているのだろう?
を排除するのではなく、
それらと〝共 私ができることは種を蒔いて、あ
団みたいだった。そこで種たちは毎
つながりに深く関心を持ち、現在は「 いのち” が生き生きと育
つ場」としてのコミュニティー作りに興味がシフトしてきている。
れまでとはまったく異なる表情を現
のセラピーを行う。個人の内的世界と個をとりまく外的世界との
し始める。そこで私が出会った畑は
る傍ら、心理系大学院に再度進学し、臨床心理士となる。総合病
院心療内科で震災後のこころのケアやストレス関連疾患の人たち
「存在知」として
の自然農
「いのち」の緩やかな連関
村松知子
=
シャロムと出会うまで都会育ちの
私 は「 農 業 の 営 み 」 と い う も の と は
まったく無縁にこの世界に存在して
い た し、 ま し て は「 自 然 農 」 と い う
コトバすら知らずに生きてきた。
けれども、5月にシャロム畑のこ
と を 知 り、 そ し て「 自 然 農 」 の 講 座
に 参 加 し て か ら は、 雑 草 だ ら け の 土
鎌 」 を 持 っ て 草 を 刈 り、 種 を 蒔 き た
地 を 見 る と、 も う 無 性 に「 の こ ぎ り
い…そんな衝動にかられている自分
が い る。 シ ャ ロ ム の 雑 草 と 呼 ば れ て
小学校教諭を経て、不登校児のフリースクールや教育相談に携わ
シ
ャ
ロ
ム
ヒ
ュ
ッ
テ
の
自
然
農
・・・
安曇野
自然農学習会
春 夏 秋 と 季 節 の 巡 り と と も に、 農 が 身 近 に
な り つ つ あ り ま す。 草 も 虫 も 敵 と し な い、
耕 さ な い 畑 に 種 を ま き、 実 を 結 ぶ ま で を 体
験 す る と、 草 の あ る 畑 は 特 別 な こ と で は な
く当たり前のこととして受け入れている私
が い ま す。 身 の 丈 に あ っ た 農 は 楽 し い も の
うす い けん じ
続きできる素敵な暮らし方だと思います。
たけうちあつのり
畑の観察
余計な草がないすっきりきれいな
畑です。覚えているでしょうか。6
月にはたくさんの草で覆われていま
したね。夏の間に生茂った草は、太
陽の強い陽射しをいっぱい浴びてエ
ネルギーを貯えます。夏の終わりに
一 面 に 繁 っ た 草 を 刈 っ て 伏 せ ま す。
そこに秋口、秋野菜を植え替えます。
レタスの苗床。
くのもよい。はじめは集団で育てて、
小さいままベビーリーフでいただ
移植した方が健やかに育つ。このま
ま冬を越し、春4月に定植、5月に
収穫。ハウスがあれば、そちらに移
植すれば冬にも収穫できる。
ニンニク。
養分を貯えて冬を越す。
春5 月にニンニクの芽をぬきと
り、下の部分を肥大させる。翌年7
ニクは、冬の寒さにあたって美味し
月に収穫。レタス、タマネギ、ニン
くなるといわれている。凍らないよ
うに糖度をあげて身を守っている。
いただいています。
臼井さん。シャロムヒュッテのオーナー。
自 然 農 を は じ め パ ー マ カ ル チ ャ ー、 バ イ
オ ダ イ ナ ミ ッ ク 的 農 法、 有 機 農 法 を 田 畑
で 実 践 さ れ て い ま す。 安 曇 野 自 然 農 学 習
会にて自然農を分かち会う場を提供して
穀類、胡麻などを自給しています。
あまりにも自分自身にできることが何も
な い、 と 気 づ い た そ う で す。 自 然 農 を 実
践し、今ではお米、野菜の他に味噌、醤油、
農 を 物 語 っ て い ま す。 世 界 中 を 旅 し て、
されています。
佐 伯 さ ん。 教 え る の は 苦 手 と の こ と で す
が、 暮 ら し 方 や 田 ん ぼ 畑 そ の も の が 自 然
自分自身で実践して学んだものを分かち
合 い た い。 松 本 市 梓 川 で 自 給 ス ク ー ル を
竹 内 さ ん。 川 口 さ ん の 自 然 農 と 出 会 い、
講師の紹介
冬の寒さにあたって美味しく
で す。 無 理 せ ず、 楽 し く 続 け る こ と が、 長
さ えきあきら
こ
= う・ぷみん
講師 佐伯彰・竹内孝功・臼井健二
レポート
今 回 は、 畝 作 り、 レ タ ス の 種
ま き、 小 麦 大 麦 の 種 ま き、 草 の
2ヶ月前 8
(月 に
)
そ ば
播いた蕎麦。
蕎麦の刈り時は難しい。一斉に熟
さず、徐々に熟すので、8割熟した
ら収穫。刈り取った後、保管してお
そのまま畑に置いてもよい。追熟し
け ば 追 熟 す る。 畑 に 場 所 が あ れ ば、
たら脱穀する。
--
シャロムヒュッテの自然農
中に種をまく方法。田んぼでは、
稲刈りをしました。
自然農学習会
畑の観察
レタスの苗床
2ヶ月前にまいた蕎麦
シ
ャ
ロ
ム
ヒ
ュ
ッ
テ
の
自
然
農
[ 畝の作り方 ]
い 畑 で は、 草 が 覆 い、
←
微生物・小動物が棲む。
←
物が育ちやすいように環境を整え
一 方、 耕 す こ と で 有 機
畝作り
る。レタスの苗 床 作 り と 同 じ 。 安 曇
畝というのは 、 野 菜 の ベ ッ ド 。 作
野の黒ボク土の よ う に 水 は け が よ い
解 し、 微 生 物 や 小 動 物
の す み か で な く な り、
物があっという間に分
砂漠の様なやせた土地になってしま
通路と区別する た め 。 自 分 一 人 だ と
畝も通路も必要 な い が 、 第 三 者 が 来
土 地 で は 平 畝 が 一 般 的。 畝 作 り は、
たとき、ここが 通 路 で こ こ に 野 菜 が
が起こる。自然農では畝を一度作る
う。耕した畑は雨が降ると土砂流失
と壊れない限り作り直さない。
植えてあると分 か る よ う に す る 。
畝作りには、自然農の考え方が凝縮
秋 の う ち に 畝 を つ く る。 今 の 時 期、
草や作物が枯れ て い く 流 れ の 中 で 土
されている。
←
と い う 行 為 は、 自 然 界
は 起 こ ら な い。 耕 さ な
6
2
で は、 土 砂 崩 れ 以 外 で
5
←
)
を動かしたほう が 周 り に 与 え る 影 響
1
が少ない。畝作 り の あ と は 、 も う 土
を動かさない。土を掘り返す 耕
(す
4
3
畝作りの手順
① 畝をつくる部分の草を刈る。前進しながら草を刈り取る。後で畝になる部分に土をのせるので、刈り取った草は脇に除けておく。草を刈るときは根を残し、
地際で刈る。自然農では地上部の草は地上で枯らし、地下部の根は土の中で枯らします。土の中では根が張りめぐらされ、根穴構造がつくられています。根が
朽ちて腐食を作り出します。腐食はマイナスの電気を帯び、土のプラスの栄養素と結びつき、団粒化が起こります。空気層が生まれ、土がふかふかになります。
これをまねたのが鍬で耕すことでありトラクターなのです。②畝の両側に紐を張る。通路と畝の境目を作ります。畝幅を決め、その両側に紐を真っ直ぐにはります。
足で一跨ぎできる幅、手が届く幅など作業しやすい畝幅を自分で決める。一般的には、畝幅60〜120㎝。③溝を掘り通路をつくる。紐に沿って、スコップま
たは鍬で溝を掘ります。掘りあげた土は畝の上に盛ります。草の上に土をかぶせると、土のなかで草が嫌気発酵し、虫が湧く原因になるので注意。事前に草を除
けておくのがポイント。通路を作ることでモグラ除けにもなる。④ 軽く耕す ( 畝に鍬を入れる )。畝の部分に土をのせたので、のせた上の土と元々あった下の土
との二層構造になっている。そのため、⑤ 平らにし、鎮圧する。畝に凹凸があると野菜同士で競争し生育に差がでます。平らにして、発芽する環境を揃えます。
⑥刈った草を敷く。敷草をすることで、微生物や小動物のすみかができる。草を土の中に鋤こまず、土の上に敷くことで、ゆっくり分解し作物に悪影響を与えない。
草などの有機質が分解され、堆肥になり土が柔らかくなっていく。草の量に余裕があれば、通路にも敷く。畝作りも、みんなでやると楽しい。自分の畑で作るとき、
近所の人や知人に呼びかけて手伝いに来てもらう。みんなですれば楽しむことができる。農村では近所の農家同士で手伝いあう「結い」という伝統があります。
日本では昔からみんなで助け合いながら農をしていたのです。
--
先ほど作った畝の端に、レタスの
①平らにする。苗床を平らにします。
レタスの種をまく。
②種をまく。
こす。
苗床を作り、種を播きました。
③ -a 覆土する。苗床の脇から土を掘り起
[ 草刈り ]
5
6
←
2
←
←
1
←
然農は、経済、効率でみると60か
を悪くして病院通いをしたり、どこ
もしれませんが、年々数値が上がっ
かに無理が生じているようです。自
草の中にどうやって種をまくの
てきます。長い目で見ると、無理せ
草の中に種をまく。
か。誰でもでき る 簡 単 種 ま き 。 種 を
ず、楽しく続ける
まくのが身近に な り ま す 。
る持続可能な暮
ことが、長続きす
らし方だと思いま
化学肥料・農薬を使い、単一作物
す。
を栽培すれば、効率良く栽培できま
す。大規模な畑にレタスだけを作る
がいます。農薬や化学肥料を使った
ことで経済的に 潤 っ て い る 農 家 の 方
単 一 栽 培 は、 経 済 や 効 率 で 見 れ ば、
はじめは100なのかもしれませ
せていったり、農薬を使うことで体
ん。ところが、だんだんと土地がや
4
3
草刈り
①草を刈る。草があるのは有難い。草を活用して草を抑える。草の芽が出るのには、光、温度、空気、水どれもが必要。刈った草を脇に厚く積み重ねると、下に
は光があたらないので、新しい草は生えてこない。有機質マルチ。そして微生物、小動物のすみかになり、草を押さえ堆肥を作っていると同じ。 ②土を1㎝く
らいかきとる。表土には発芽できる状態で草の種が落ちています。そこに野菜の種を播くと草と野菜で競争してしまいます。そのため、種をまく前に、表土の土
を1㎝くらいかきとり、草の種を除きます。なぜ、土はこんなに柔らかいのでしょうか。自然農の畑では、耕さず、草を刈るときも土の中に根を残したまま刈り
取ります。そのため、耕さない土の中は、根が朽ちた後にできる根穴構造というミリオーダー単位の隙間でいっぱいなのです。朽ちた根は、微生物のすみかにな
り、団粒構造という隙間ができあがります。
③空気を入れる。土が固い場合は、よく根切りと称して鍬を入れることもあります。有機質のない土は、頑 ( かた
く ) なに手を結んでいます。その手をほどいてあげるのです。それは人間でも同じです。初対面だと頑なに手を結んでいる人も、会話をすることで打ち解け、手
が開きます。人間関係では会話が重要です。それは理解を生み、人を結びつけます。土にとっての会話は空気層なのです。自然農の畑は団粒化が進み、いつも手
を広げている状態です。もしも固いようなら土の中に空気を入れる ( 耕す ) ことで、頑なに手を結んでいる土がほぐれて懐を開けてくれます。 ④種をまく。種
をまく以外のところは耕しません。耕すことで地中のバランスが崩れることがあります。⑤鍬を使って覆土、鎮圧する。鍬の背を使い鎮圧します。⑥草を敷く。
乾燥が激しいときには、草をもっとかける。2・3日後、発芽していれば、草がじゃまであればどける。
⑤草を敷く。厚く敷きすぎると、もやし
④鎮圧する。鍬の背で鎮圧する。鎮圧し
③ -b 覆土する。③ -a で掘り起こした土
になる ( 徒長する ) ので注意。草がない
水みちを通すことで、作物の根をしっか
を手でほぐし覆土する。
ときには、近所の草を分けてもらう。
り下まで張り巡らせるようにする。
シャロムヒュッテの自然農
--
②麦を播く。指の間からこぼすように播く。ほどよい間隔で。一度に播かず、往復して播くと均一になる。種まき
とで育ち方が違ってきます。
麦をまく。
自然農の基本的な種の播き方に
は、バラ播き、スジ播き、点播きの
3通りがあります。
ばら播きは、畝一面にバラ播く方法
で、密植させてもよく育つ葉菜が主
で、 間 引 き 菜 が 多 く 収 穫 で き ま す。
そのため、苗床を作って移植するレ
タスなどの野菜に適しています。す
じ播きは、約10㎝ 幅のスジに種を
播きます。スジ播きは、葉菜やニン
ジンや小麦といった比較的小さな種
6月下旬に収穫。大麦の穂が出てきた時期が、夏野菜 ( トマト、キュウリなど ) の定植時期。
で、幼いうちに支え合い、競い合い
生 長 し て い く 野 菜 に 適 し て い ま す。
例 え ば、 野 沢 菜・ ホ ウ レ ン ソ ウ・
二十日大根・種の小さなアブラナ科
などです。点播きは、種の比較的大
きなものや、豆類のように地上部が
大きく繁るものなど、適当に間隔が
保てるものに適しています。
例えば、
キャベツ・ブロッコリー・大豆・大
根など。利点は、間引く手間が省け
ることです。種が少ないときや、な
かなか畑に行けない場合には便利で
す。
まき方には、それぞれ特徴があり
ますので、試してみて、自分にあっ
た播き方を見つけてみるのも楽しみ
ですね。
たおすすめの麦があります。安曇野
麦は、土地によって、風土にあっ
では、
しらね 小
( 麦 、し
) ゅんらい 大
(
麦 。) 近 所 の 人 に 分 け て も ら う と い
いでしょう。今回は、すじ播きとば
ら播きの2通りです。
--
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[ すじ播き ]
すじ播き
①草を刈る。麦を播くところに、まっすぐ紐を張る。その紐に沿って、鍬で草とともに表土をはぎ取ると、すじ状にできる。これを丁寧にするこ
を丁寧にすると、後々作業が楽になるだけでなく、収穫量にも差がでます。③鍬で軽く耕す。軽く耕すことで覆土されます。④種を播いたすじを
踏んでいく。覆土した土をしっかり下の土と密着させることで、乾きにくくなり、地中の水分が上がってきて発芽が揃うようになります。 ⑤鍬で
草を刈りながら、すじ上に刈草を敷く。いっそう乾きにくくなると同時に、鳥が種を見つけにくくなります。⑥敷草を踏む。
ばら播き。
小麦の種を草の上からそのまま播きました。一度に播かず、往復して播くと均一に播きやすい。草の上から踏んでいき、しっかり種を着地させます。
草の中に麦の種があるので、鳥に見つかりにくい。種が土に着地して1週間程で発芽する。翌年7月上旬から中旬にかけ収穫。大麦の場合、翌年
・・・
農薬はもちろん、肥料も使わない。
がいるという。
土 を 耕 さ ず に、 野 菜 作 り を し て い る 人 た ち
畝を作る・種を蒔く
春
そ れ で 実 り が も た ら さ れ る な ら、 こ れ ほ ど
素晴らしいことはない。
それこそが「自然農」
。
しかし、果たしてどうやって?
それを確かめたくて、
信州安曇野の地を訪ねた。
文●わたなべようこ
写真●キッチンミノル
ヤロムヒュッテの自然農の畑は、こ
付けを待っている。その一方で、シ
焦げ茶色の土が、夏野菜の苗の植え
らかく耕され、堆肥が鋤き込まれた
安曇野の4月。周囲の畑では、柔
人が何もしなくても、毎年大きくな
を参考にすればいいんです。木々は
ることで、
その実りをいただく。
「森
共存・共生し合うのが本来の自然の
われる野菜の栽培。生き物すべてが
虫を敵としない」という考え方で行
持ち込まない、持ち出さない、草や
かずに、
表面を刈るだけ。『根穴構造』
いるから。自然農の畑では、根は抜
かけることなく、少しだけ手を加え 「 そ れ は、 地 中 に 草 の 根 を 残 し て
姿。その中で、人間が環境に負担を
といって、土の中で腐った根が空気
耕していないというのに。
し 込 む と、 す っ と 潜 り 込 ん で い く。
その柔らかさに驚かされる。指を差
実 際、 自 然 農 の 畑 の 土 に 触 れ る と、
香りが高くて、
生命力豊かなものが」
美しき自然農の畑
の通り、まるで緑の絨毯。一面を覆っ
かになる。また、苗の植え付
朽ちて肥料になるので土が豊
んです。その上、積んだ草は
遮断して、草の生長を抑える
は、 隣 に 置 い て お く。
「光を
種を蒔くときに刈った草
偉大なる草の役割
することもない。
畝は、雨が降っても土砂流出
す」その上、根が残っている
なバランスが生まれるので
さないことになるので、絶妙
微生物や小動物の住みかを壊
造になるから、土が柔らかい。
や水の通り道になり、団粒構
て い る の は、オ オ イ ヌ ノ フ グ リ、ハ
コベ、
ヒメオドリコソウなど、
作物を育てる人達にとって、
「雑草」と呼ばれる植物ばか
り。 し か し、 こ の 畑 に 立 つ
心地よさと風景の美しさは、
むしろ「草原」に似ている。
「きれいでしょ」そう言いな
がら畑を案内してくれるの
は、臼井健二さん。
よ く 見 る と、 草 と 並 ん で、
小さなニンジンやレタスが
顔 を の ぞ か せ て い る。 臼 井
さ ん は 敷 地 内 の 畑 で、 川 口
由 一 さ ん の 自 然 農、 岡 田 茂
吉のMO A自然農法 福岡正
のバイオダイナミック農法、
信の自然農法 シュタイナー
その体験から「自給用の畑なら自然
践している。
と、 さ ま ざ ま な 方 法 で 野 菜 作 り を 実
自然でいいと思う」と臼井さんは続
収穫できればいいんだから、もっと
も多い。自給用なら、できた分だけ
自然の絶妙なパランスをくずすこと
ば、
一時的に収穫量は上がるけれど、
りますよね。畑を耕し肥料を与えれ
さんに、自然農の畝の作り方と、種
安曇野自然農学習会講師、竹内孝功
も し れ な い。 今 回 は、 臼 井 さ ん と、
なった栽培法。それが自然農なのか
の必要がありません」自然の理にか
効果があるから。おかげで、水やり
敷き詰めますが、それは保温、保湿
け 種 蒔 き 後 に、 刈 っ た 草 を
農が一番いい」という。
ける。そして「ちゃんと実るんです
耕さない畑
蒔きの方法を教えていただいた。
パ ー マ カ ル チ ャ ー、 有 機 農
●臼井健二 / 宿、レストラン、
ショップが集まったコミュニティ・舎爐夢 ( シャロム )
ヒュッテのオーナー。900 坪の田畑では、あらゆる農法で作物を栽培、比較を試
みている。http://www.ultraman.gr.jp/~sizennou/
●竹内孝功 / 自然農法菜園アドバイザー。松本市にて
「自給自足の休日倶楽部」
設立、
食卓に感動を伝える野菜作りを教えている。http://www.happyjj-mydns.jp/
よ。 そ れ も、 普 通 の 野 菜 と は 違 う、
そ も そ も 自 然 農 と は「 耕 さ な い、
--
シャロムヒュッテの自然農
シ
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の
自
然
農
[ 畝の作り方 ]
4
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1. 畝を作る場所を決めて、スコップで四角く筋を入れておく。畝幅は、作業がしやすいよう通路から手が届く範囲にすること。2. 草の地上部をノコギリ鎌で刈
り取り、刈った草はよけておく。3. 草刈り終了。4. 草の種が落ちていることがあるので、表土を軽くかき出す。その後、大きな根を断ち切る ( 根切りをする )。
宿根草類の根は取り除く。5. 土が露わになってきた。後に草が出にくくなるよう、ここまでの作業を丁寧に行うことがポイント。6. 畝を囲むように、通路にな
る講を作る。畝幅を決めたら、両側をスコップで突き刺して筋を入れ、10cm ほど深く掘る。掘った土は畑 畝に盛る。7. 盛った土をほぐして、元の土となじま
せる。8. 土を平らにならして軽く押さえる ( 鎮圧 )。9. 土が崩れないよう、両脇もしっかり鎮圧すること。10.2 で刈った草 ( 種がないところ ) を表面に敷き、風
で飛ばないよう鎮圧する。11. 痩せた土の場合は、草の上から米ぬかをまく ( 微生物のえさになる )。12. 畝の完成。畝作りは、翌春に備えて軟の農閑期 (11 月頃 )
に行うのがペスト。
今回のまとめ
作業は丁寧に
自然農という言葉から
は粗い作業をイメージし
が ち だ が、 実 は と て も 繊
細。 特 に、 種 蒔 き 作 業 を
丁 寧 に 行 う こ と で、 後 々
の作業が楽になるとい
う。これは子育てのとき、
生まれた直後はたっぶり
と 手 を か け、 大 き く な っ
- 10 -
たら自由にのぴのぴと育
てるのと同じこと。
草の刈り方
ポ イ ン ト は、 ノ コ ギ リ
鎌を使って地際すれすれ
を刈ること。刈る場所は、
種や苗を植え付ける場所
だけ。
地 表 だ け を 取 り 除 け ば、
種を蒔いたばかりの作物
の生長を邪魔する草の
自然農の畑からシヤロムヒュッテを望む .
[ 種芋の植え付け方 ]
3
1. 斜めに微を差し込み、土を持
ち上げる。2.10cm くらいの深
さのところに、
種芋を置く。3. 鍬
を抜いて土を戻す。作業はたっ
たこれだけ。どこに植えたかわ
かるように、表面の草を刈って
マークを立てておく。
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2
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3
1. 苗床は畝の一部に作る。2. 苗床にする場所 ( 幅 30cm くらい ) の草を地際から刈り取り、片側によけておく。3. 表
土に草の種が落ちていることがあるので、表土を軽くかき取る。4. 草の根を断ち切る ( 根切り )。5. 土が平らに
なるよう、鎮圧する。6. 苗床に種を蒔く。密にならないよう、指と指の間からバラパラと均一に。7.3 種類の種
を蒔いたので小枝で仕切り、それぞれの名前を書いておく。草の種が混ざっていない土を種の上にかける。鎌の
背で軽く土をたたいて、種と土をなじませても良い。8. 上から押さえて種と土を鎮圧する。9. 保温、保湿のため
に種のない草を土の上に敷き、風で飛ばないよう鎮圧する。
* すじ蒔きで育てる場合は、手順 2 のときに幅を 15cm ほどにし、同様の作業を行う。
発生を抑えることができ
る。
種蒔き後の管理
発 芽 の 頃、 保 温・ 保 湿
のために敷いた草が作物
の生長を邪魔するような
ら、 少 し 取 り 除 い て 薄 く
す る。 そ の 後 は 自 然 の 力
に 任 せ、 作 物 が 負 け て し
まうほど草が生い茂った
ら、 刈 り 取 る 程 度 に。 草
は、 肥 料 や バ ン カ ー プ ラ
- 11 -
害
( 虫の天敵を貯え
草の間からこぼれ種で芽吹いたニンジン
ンツ
シャロムヒュッテの自然農
9
る と
) な り、 野 菜 の 生 長
に役立つ。
自然農の畑なら、草の上で昼寝もできる。
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1
[ 苗床の作り方、種の蒔き方 ]
・・・
草を刈る・種を蒔く
夏
はびこる夏草を
土を耕さず、農薬も使わない自然農。
どのように対処しているのだろう?
豪雨の影響はあるのか?
訪れるたびに
驚きと発見を与えてくれる。
文●わたなべようこ
写真●キッチンミノル
豪雨あとの信州・安曇野へ
やニンジンの葉があちこちに。さら
に視線を上げると、支柱にからまる
ポジティブ農法
や堤防決壊などの被害が起きたこと
長野県内で、豪雨のために土砂崩れ
い7月下旬。少し前のニュースでは、
ちを見ていると、肝心なことを忘れ
言わんばかりに、豊かに実る野菜た
ん で い る。
「そんなの当たり前」と
ロ コ シ ......
、 お な じ み の 夏 野 菜 が、
雨上がりのたっぷりとした水滴を含
もしれない。
に理想の姿よりも荒れているのか
ま っ て い る 場 所 も ち ら ほ ら。 確 か
が で き ず、 草 と 作 物 が 混 在 し て し
て い る と は い え、 雨 の た め に 作 業
年 の 畑 は、 ス タ ッ フ た ち が 手 伝 っ
キ ュ ウ リ、 ト マ ト、 ナ ス、 ト ウ モ 臼 井 さ ん が 手 を か け ら れ な い 今
を伝えていた。
た の は、 異 例 の 長 梅 雨 が ま だ 明 け な
私たちがシャロムヒュッテを訪ね
松葉杖姿で出迎えてくれたオーナー
い う。 山 菜 採 り に 山 へ 出 か
の も、 豪 雨 が 原 因 だ っ た と
農 の 畑 は、 植 物 と 草 が 共 生
れ や す い。 で も 本 来 の 自 然
らかしにすることと誤解さ
「 自 然 農 と い う と、 放 っ た
て し ま う。 こ こ で は、
「 耕 さ な い、
け た と こ ろ、 崖 崩 れ が 起 き、
そ の た め に は、 ち ゃ ん と 世
しあって本当にきれいです
の臼井健二さんが骨折した
バスケットボール大の岩が
話 を し て あ げ る こ と。 夏 の
太ももに直撃したのだ。痛み
が 残 る 足 を さ す り な が ら も、
な ん で す。 草 刈 り ば か り し
間 も『 草 を 刈 っ た ら 種 を 蒔
て い て も、 次 々 と 草 が 出 て
く』という作業をセットに
は荒れ放題になっちやつて
く る だ け。 だ か ら、 刈 っ た
やはり気になるのは、夏の畑
ね」
ところに野菜の種を蒔けば
の様子。
残念そうに語る臼井さんを
し て、 常 に 行 う こ と が 大 事
残し、私たちは自然農講師・
い い ん で す。 野 菜 が 育 ち だ
「 手 が か け ら れ な く て。 今 年
竹内孝功さんと共に、畑へと
す と、 根 が 張 っ て 草 を 押 さ
持ち込まない、持ち出さない、虫や
ですよ」と臼井さん。
ず ら し て 収 穫 も で き る し、 理 想 的
え る こ と が で き る。 時 期 を
向かった。
実り多き自然農の畑
草を敵としない」という考えが基本。
比べ、明らかに景色が違っている。
に敷いて土に還し、野菜を育てるの
刈る。そして、刈った草はその場所
る か ら。 悪 い 時 が あ っ て も、 複 合
刈 っ て マ ル チ に す れ ば、 土 が 肥 え
た め に は こ れ も い い ん で す。 草 を
肥料も農薬も使わず、草は抜かずに 「 今 年 の 夏 は 草 が 多 い け ど、 秋 の
足元には夏草が青々と生い茂り、ま
だ。この春、初めてここを訪れたと
が る こ と も あ る。 小 さ な 側 面 で 評
的に長期的見たら良いことにつな
自然農の夏の畑は、一般的な畑に
たは刈ったばかりの草が敷かれ、茶
つのか?」という不信感は、嬉しい
きに頭をかすめた「本当にそれで育
価をしないことだね」
色い土が見えている場所は、全くと
ことに、みごとに覆された。
いっていいほど見当たらない。しか
しよく見ると、草の間からキャベツ
- 12 -
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の
自
然
農
[ ソバの種蒔き ]
3
1. ソバは肥料がなくても育ち、
痩 せ た土地向き。まずは草 が
茂 っ て い る 上 か ら 種 を 蒔 く。
2. 草を根元から刈る。3. 刈っ
た草をその場に敷けば、種は土
に着地する。ソパは草よりも早
く成長するので、草を抑えるこ
とができる。
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2
3
3
1 草刈りは頻繁に行うが、あま
1. ダイコンの種を蒔く場所だけ草を刈る。直径 15cm 程度の円形が目
安。周りの草はダイコンの生長を邪魔しそうなものだけ刈る。2. 表土を
1cm ほどかき分けて既に落ちている草の種を取り除き、土を平らにする。
3. 円の中に種を 3 〜 4 粒ほど蒔く。4. 近くを掘って種が混ざっていな
い土を取り出し、種の 2 〜 3 倍の高さになるよう上からかける。5. 手の
り神経質にならずに、野菜と草
丈が均衡して野菜が負けそうに
な っ た ら 刈 る。2. 刈 っ た 後 の
土を見ると、コロコロと小さい
粒になっている。これが団粒構
造。3. 刈 っ た 草 は 同 じ 場 所 に
ひらで平らにする。6. 刈った草を敷く。点蒔きは、少量でもいいから確
実に収穫したいときにおすすめの方法
敷いておく。
今回のまとめ
草刈りは頻繁に行う
草の刈りどき
が、 夏 の 草 刈 り で 特 に 大
切な時期がある。それは、
安 曇 野 で は7 月 中 旬 の 約
2週間。
冬草が終わり夏草が出
て く る 時 期 で、 こ こ で
しっかり革を刈って野菜
の 種 を 蒔 く と、 夏 草 は 出
だ し を く じ か れ、 そ の 間
- 13 -
に 野 菜 が 根 を 張 り、 草 の
生長を抑えられる。
生気溢れる畑。左は種取り用に咲かせているニンジンの花。誘引用の麻ひもも準備 OK!
シャロムヒュッテの自然農
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2
[ 草の刈り方 ]
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1
[ ダイコンの点蒔き ]
[ 生き物の宝庫 ]
[ 芽かき・誘引 ]
自然農の畑には、鳥や虫がたくさ
ん訪れる。それは、自然界そのも
のの営みを大切にしているから。
当然作物を食べられることもある
けれど、それもよし。取れた分だ
け戴ければいいのだから。
トマトは枝と葉の聞から出てくる
わき芽を小さなうちにかき取る。
大きなわき芽はそのまま土に差す
と再び生長。誘引は紐を 8 の字に
回して横側の輸はゆったり、支柱
側は二重巻きにしてしっかり。
[ 互いの成長を助け合う ]
トウモロコシとカボチャとインゲ
ンは仲良しトリオ。インゲンの根
粒菌はトウモロコシの栄養となり、
トウモロコシはインゲンの支柱に。
日陰を好むカボチャは、トウモロ
コシの木陰で草を押さえる。
春の取材の時に植え付けたジャ
ガイモを収穫。ちょっと小ぶり
だけれど、風味豊かで美味しい!
自然農の野菜は、保存性が高い
のも特徴。シャロムヒュッテの
五日市保之さんが、早速お料理。
草が育つ 豊
= かな畑
自然農の畑にとって、草
は邪魔なものではなく、そ
れが生えることで豊かな畑
だと知らせてくれる存在。
その草は肥料にもなるのだ
から。敷き草のおかげでミ
ミズがいっぱいの土から
は、大きな実をたくさんは
採れないけれど、毎年常に、
通 常 の 畑 の 6 0 〜7 0 % は
収穫できる。それで十分。
豪雨の後でも崩れない畑
長野県を襲った豪雨の影
響が、自然農の畑ではまっ
- 14 -
たく見られない。隣家の畑
より一段高くなっているシ
ヤロムの畑だが、草の根が
張っているため、まったく
土崩れが起きなかった。ま
ので水はけが良く、土に水
た、根が水の抜け道になる
がたまることもなかった。
豪雨の後でも崩れない畑
種を採る
・・・
秋
とってもおいしい野菜が育ったとき、
「これを来年も育てたい!」
と思ったことはありませんか?
そんなときは自家採種。
自然農はもちろん、
そうでなくても、
ぜひ知っておきたい、
種採りの意味とその方法。
文●わたなべようこ
写真●キッチンミノル
い 状 態 で 育 て る 自 然 農 で は、 日 本
こ と。 無 肥 料、 無 農 薬 で 自 然 に 近
受 け 継 が れ、 伝 え ら れ て き た 種 の
穫 が で き る。 一 方、 固 定 種 は 代 々
きるというのだ。
に も 合 っ た、 オ リ ジ ナ ル の 種 が で
人 の や り 方 に も、 そ し て 味 の 好 み
の 土 地 の 気 候 や 風 土 に も、 育 て る
種は買うもの?
然農を取材するために初めて安曇
私たちがシャロムヒュッテの自
いという。
か ら、 自 然 農 で は 自 家 採 種 は ご く
野 を 訪 れ た 今 年 の 春、 オ ー ナ ー の
「 で も、 最 初 は F 1 種 だ っ て い い ん
当 た り 前 の こ と な ん で す。 そ の 上、
の国定種 在来種 が一番育てやす 「『持ち込まず、持ち出さず』 で、
(
)
永 続 し て い る の が 自 然 界 の 姿。 だ
の は、 倉 庫 の 中 か ら 取 り 出 し て き
臼井健二さんがまず見せてくれた
買 っ て く る 種 は 消 毒 し て あ っ た り、
遺伝子組み換えしてあった
で す。 F 1 種 か ら 採 れ た 種 を 蒔 く
り。 種 だ っ て 安 心 で き る も
と、 次 に 生 ま れ て く る 子 供 は 親 の
るものはカゴの中に房のま
のがいいですよね」
た、 あ り と あ ら ゆ る 野 菜 の 種 だ っ
まごつそりと積まれた何種
た。 あ る も の は 小 さ な 封 筒 に、 あ
類 も の 種 は、 前 年 の 秋 に 畑
の 種 を 蒔 い て 野 菜 を 育 て、
豊かさ
手間をかけることの
で 採 種 し た も の。 そ し て こ
また秋に種を採って…と繰
実は、種採りの作業は少々
り返すのだという。
ま ま 熟 さ せ る た め、 旬 の 季
「種は買うものと思われがち
節 が 終 わ っ て も、 し ば ら く
面 倒 な と こ ろ が あ る。 実 が
応していて育てやすいんだ
はいくつかの株だけを畑に
だ け ど、 自 家 採 種 し た 種 の
よ ね 」 以 来、 何 度 も 登 場 す
残しておかなければならな
かなり大きくなるまで株の
る 種 の 話 に、 私 た ち は 種 採
方 が、 そ の 場 所 の 環 境 に 順
りの面白さを知った。
もかかる。
たり干したりと時間も手間
い。 収 穫 し て か ら も、 洗 っ
シャロムの固定種へ
F1種から
い い ん で す。 で も、 ひ と 手 間 か け
ど の 遺 伝 子 を 受 け 継 ぐ か に よ っ て、 「 買 っ て き た 方 が よ っ ぽ ど 効 率 が
て、 と 繰 り 返 し て い く と、 そ の 場
たいと思う種を残してそれを蒔い
ち ょ う ど そ ん な 一 日 に、 夏 野 菜 の
雨 降 り の 秋 の 日 は、 種 採 り 日 和。
かさに通じるんですよね」
長 い 目 で 見 る と、 面 倒 な こ と が 豊
る こ と で、 自 給 自 足 『
=依存しな
い暮らし』 に近づくことができる。
袋 に「 ○ ○ 交 配 」 な ど と 書 か れ て
所 の 固 定 種 が で き る ん で す 」 と、
種には大きく分けてF1種 一代
株ごとに形にも味にもバラツキが
(
交雑種 と
出てくる。
) 固 定 種 が あ る。 一 般 に よ
く 売 ら れ て い る の は F 1 種 で、 種 そ の 中 か ら さ ら に、 自 分 が 残 し
い る。 こ れ ら は 異 な る 品 種 を か け
自然農講師・竹内孝功さん。
種の採り方を教えていただいた。
い だ、 い わ ば ハ ー フ の 子 供 の 種 で、
種 を 採 り 続 け る こ と に よ っ て、 そ
合 わ せ、 両 親 の 優 れ た 点 を 受 け 継
どの地でも育てやすく均一した収
- 15 -
シャロムヒュッテの自然農
シ
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ロ
ム
ヒ
ュ
ッ
テ
の
自
然
農
[ トマトの種採り ( 水選 )]
6
←
2
←
3
6
3
1. 収穫したダイコンの種。このように房のまま冷暗所に保存しておいて
も OK。2. 中の種だけを残すときは、まず箕などの上で房を割る。手で握
りつぶしても棒を使ってもいい。3. 箕を両手で持って上下に振り、種と
穀を分ける。4. 息をそっとふきかけ、軽い穀を吹き飛ばす。5. 次第に殻
がなくなってきた。6.3 〜 4 の作業を何度も繰り返し、種だけがきれいに
1. トマトは完熟のものを収穫し、さらに 10 日ほど置いて種までしっかり
熟させる ( 追熟させる )。2. まず半分に切り、スプーンの柄で種をかき出
し、ボールにあける。3. ピンに移して、直射日光が当たらないところに
4 日〜 1 週間はど置き、発酵させる。目安としては、種のまわりのゼリー
質がさらさらしてきたら OK。4. 再びボールに移し、水洗いをする。5. 新
聞紙の上で乾燥させる。風で飛ばされないように注意。6. お皿に移し、2
週間はど乾燥させて完了。
残ったら完了。風を使うので、この作業を「風選」という。ニンジン、葉
もの類など、小さな種は風選。
今回のまとめ
種の保存法
種 は、 水、 光、 温 度 の
3つの条件が揃うと発芽
す る。 だ か ら、 風 通 し の
良い冷暗所に保存するの
が ベ ス ト。 例 え ば 紙 の 封
筒 に 入 れ て 冷 蔵 庫 へ。 種
はいったん水を含んでし
ま う と、 発 芽 し よ う と し
- 16 -
て 体 力 を 消 耗 す る た め、
種は紙袋に入れて冷暗所で保存
実際に蒔いたときに発芽
率が下がってしまう。
小さな種をたくさんつけ、倒れ込むニンジン
←
←
1
5
←
2
←
5
4
←
1
←
4
[ カボチャの種採り ( 水選 )]
[ カボチャの種採り ( 水選 )]
6
3
←
3
1. キュウリは黄色くなるまで畑で育てたものを収穫し、さらに 10 日ほど
追熟させる。2. 中心に入った種を割らないよう、少しずらして縦に 2 つ
に切る。3. スプーンで種をかき出す。4. まわりのぬめりが取れるよう、
よく水洗いをする。浮いてくる種は、実が詰まっていないので捨てる。5. 新
聞紙に広げて乾燥させる。6. ある程度乾いたら、お皿に移してさらに 2
週間はど乾燥させる。大きな種は芯まで乾燥しにくいので特に注意が必要。
たカボチャの種をのこすといい。
水分を含んでいるとカビの原因に。
自然界から
敢えてもらう
ニ ン ジ ン は、 高 く 伸 び
た茎の先に小さな花をた
く さ ん 咲 か せ、 ゴ マ の よ
うな種をたくさんつけ
る。それが次第に倒れて、
種 が 散 ら ば る。 だ か ら ニ
ンジンはパラパラとたく
さ ん の 種 を 蒔 く 筋 蒔 き。
ダイコンは4粒はどの小
さ な 種 が 入 っ た 房 を、 そ
の ま ま 落 と す。 だ か ら ダ
イ コ ン は3 〜 4 粒 の 点 蒔
き。 自 然 の 姿 を 見 続 け る
- 17 -
と、育て方がよくわかる。
秋の畑
夏野菜が終わった後の
シ ャ ロ ム の 畑 に は、 大 根
や野沢菜などの秋野菜が
芽 吹 い て い た。 新 芽 の 緑
色と敷き革の茶色が交互
に ど こ ま で も 続 き、 と て
も美しい。
シャロムヒュッテの自然農
←
6
1. 収穫して追熱させたカボチャ。2. 半分に切り、スプーンで種をかき出す。
3. タマネギやミカンが入っていた網の袋に入れてゴシゴシ洗い、外側の
綿をきれいに取りのぞく。4. キュウリとは逆で、カボチャは浮いたもの
が良い種。5. 浮いた種を、ザルですくい上げる。6. 新聞紙に広げ、さら
にお皿に移して芯までよく乾燥させる。カボチャはトマトやキュウリと違
い、種が大きくなってからでも食べられる野菜なので、食べておいしかっ
秋の自然農の畑は、小さな草と敷き藁の絨毯
2
←
5
←
2
←
5
1
←
4
←
1
←
4
[ キュウリの種採り ( 水選 )]
・・・
人間も自然界の一部分であることを
私たちが普段忘れてしまっている、
野菜作りのノウハウだけでなく、
今回で最終回を迎えます。
「シャロムヒュッテの自然農」 は、
1年間を通して紹介してきた
まとめとおさらい
冬
自然農は改めて気付かせてくれました。
文●わたなべようこ
写真●キッチンミノル
冬の畑仕事
月のシャロムヒュッテは、しん
い っ ぽ う 葉 も の 野 菜 は、 寒 さ を
た り、 臼 井 さ ん に 改 め て、 自 然 農
て、「持ち出さず、持ち込まず、 草
の 素 晴 ら し さ を 伺 っ て み た。 す る
や虫を敵としない」というのが自然
しのぐために自らの体に糖分を蓄
菜は甘くておいしい)。臼井さんは、
農 の 考 え 方。 確 か に 自 然 の 中 で は、
先 に 答 え て く れ た。 自 然 界 に 習 っ
自 然 農 の 畑 は、 冬 も ま た、 と て も
と、「 つ な が り が あ る こ と 」 と 真 っ
ら 3 月 ま で は 冬 期 休 暇 に 入 り、 ペ
きれいだという。
い る( だ か ら 露 地 で 冬 越 し し た 野
ンションもレストランもすべて営
え、 暖 か く な る 日 を じ っ と 待 っ て
業 を 休 ん で い る。 い つ も は シ ャ ロ
草 も 虫 も 共 に 生 き な が ら、 循 環 し、
と 静 ま り 返 っ て い る。 毎 年
月か
ム ヒ ュ ッ テ の 森 の 中 で 走 り 回 っ て 「自然農の畑は草で覆われている
して、「これはしなくてもいいん
め ぐ っ て い る。 そ の 営 み に 感 謝 を
じ ゃ な い か 」 と 考 え、 な る べ く
手をかけずに作物を育てていく。
「つながりを断ち切ることな
く、 持 続 可 能
多様性
調和
それが自然農なんです」
そ こ で は、『 種 を 採 り、 そ れ を
蒔 く と い う 作 業 が、 非 常 に 意 味
を 持 っ て く る。 前 の 年 に 採 れ た
種 が た く さ ん あ る の を 見 る と、
臼 井 さ ん は「 素 晴 ら し い な 」 と
嬉 し く 思 う の だ そ う だ。 一 粒 の
種 は 何 百、 何 千 粒 も の 種 に 増 え
て い く。 こ れ を 蒔 け ば、 他 の 生
き 物 と 共 に ま た 暮 ら し て い け る。
例えば、収穫した豆の調整。サヤを
み で も、 畑 の 仕 事 は た く さ ん あ る。
ら 緑 色 の 葉 が 顔 を 出 す。 そ れ は も
雪 ど け と と も に、 一 面 の 白 一 色 か
す。 そ の 畑 が 雪 で 覆 わ れ、 そ し て
がどろどろになることがないんで
さにその考え方なんです」
し い 暮 ら し と 同 じ。 自 然 農 は、 ま
ともと日本にあった里山の素晴ら
す ぎ な い シ ン プ ル な 暮 ら し は、 も
しまっている気がします。物を持ち
て、 持 続 可 能 な 豊 か さ を 忘 れ て
「私たちは一時的な効率を求め
叩 い て ゴ ミ を 取 り 除 き、 豆 を き れ
う、美しいですよ」
この連載が最終回を迎えるにあ
つかを、次に紹介したい。
感 じ て き た。 そ の 中 の ほ ん の い く
通 い、 自 然 農 の 素 晴 ら し さ を 肌 で
私 た ち も、 四 季 を 通 じ て こ こ に
い に し て お く。 そ し て ク ズ の 豆 を
のだ。また、畑の根菜類は、土を掘っ
温度と湿度が保たれるので、フレッ
てむろとして埋めておく。雪の下は
つながることこそ素晴らしい
集 め て お き、 3 月 に 味 噌 を 仕 込 む
シャロムヒュッテはお休
りするんですよね」
は休んだときと同じだった
て、 俯 瞰 し て る と、 到 達 点
ばかりでは結局は続かなく
て 休 み も あ っ て ね。 忙 し い
が 楽 し く、 お い し く。 そ し
こんな時間も必要だ。
「日々
ま り に も 忙 し い。 た ま に は
の シ ャ ロ ム ヒ ュ ッ テ は、 あ
で い た。 春 か ら 秋 に か け て
ここで静かな時間を楽しん
オ ー ナ ー の 臼 井 さ ん は、
い声が遠くで響いている。
て い る そ う で、 か わ い い 笑
ストランが活動場所になっ
も た ち は、 こ の 時 期 だ け レ
い る、 屋 外 保 育『 森 の 子 』 の 子 ど
か ら、 霜 柱 が 立 つ こ と が な く、 土
12
12
シュな状態のままで貯蔵できる。
- 18 -
シ
ャ
ロ
ム
ヒ
ュ
ッ
テ
の
自
然
農
始めてみよう、自然農
その 3
その 2
その1
収穫直前の
作物が
あるなら…
芽が出た
作物が
あるなら…
これから
新たに畑を
始めるなら…
←
←
←
( ) ( ) ( )
[種採りをしてみよう]
[追肥はせずに草を敷く]
[畝作りからスタート]
収穫直前まで育っている作物が
既に何らかの方法で畑を始めて
新しく畑を手に入れて、ゼロか
あるなら、種採りをしてみよう。
いるなら、できることから自然農
ら始めようとするなら、まずは自
それが Fl 種でもまったく問題な
を取り入れてみよう。例えば、周
然農の畝作りから始めよう。基本
い。すべてを収穫せずに、種採り
りに草が出てきたら、根っこから
的に自然農の畝は、一度作ればそ
用に何株かを残しておく。豆類な
抜くのではなく、地際すれすれの
のまま使い続けることができるの
ら茶色く乾燥したら採り時、葉も
部分から刈る。根を土の中に残し
で、長いスパンでデザインを考え
のや根菜類は花を楽しみ、種を実
ておくことで、微生物などの活動
ると良いだろう。
らせる。実ものは畑で完熟させて
を活発化させるとともに、腐った
自然農の畝は、一般の畑の畝とは
から収穫する。種採りの方法は、
根は空気や水の通り穴になり、耕
見た目が明らかに違う。細い列が
前のページを見ていただきたい。
さなくても除々に土が柔らかくな
ずらりと並ぶのではなく、通路か
そして翌年、自らの畑で採った種
る。さらに、いつもは与えている
ら手が届く程度に幅広く、低い台
を蒔いて育て、またそこから種を
肥料を休み、その代わりに、刈っ
のように土を盛り上げる。いつか
採って、と繰り返していくうちに、
た草を敷いておく。
「持ち出さず、
ら始めても問題ない が春の植え付
その土地にぴったりの固定種がで
持ち込まず」の精神。本格的に自
け時に備えて、秋に畝を作り、草
きる。種採りこそが自然農の楽し
然農を始ることに決めたら、秋の
を敷いて米ぬかをまき、土作りを
さでもある。
農閑期に畝を作るといい。
しておくのがベスト。
自然農ではいっせいに土を耕すことがないの
で、種採り用にいくつかの株だけを残すこと
ができる。収穫した種は通気性の良い紙の袋
等に入れ、冷暗所に保管。写真はオクラの種
草を刈るときは、のこぎり鎌を使って、地際
すれすれを刈ること。宿根草などの大きな根
があったら取り除く。丁寧に行うと、後の草
が抑制できる。
畝を作る場所を決めたら、表面の草を刈って
おき、通路となる周囲の土を掘って畑部分に
積み上げる。表面を平らにしたら最初に刈っ
た草を敷き詰め、米ぬかをまいておく。
シャロムヒュッテの自然農
- 19 -
すばらしき自然農
虫も草も
すべてを味方に
種採りから始まる
持続可能な農法
1 種類の野菜だけ育てている
循 環 し、 持 続 す る こ と が、
と、それが好きな虫が集ま
自然農の素晴らしいところ。
る。多種類の野菜を育てれば
普段私たちは、効率を求め
虫が好きな野菜も、匂いを放
るあまり、この循環を断ち
ち虫を寄せ付けない野菜も混
切ってしまっていることが多
在し、害は少なく虫も草も一
い。自然農では自らの畑で
緒に暮らせる。虫が生きられ
種採りをし、それを蒔くこ
る環境であることも大事。
とで永遠に持続可能となる。
5 年で畑の
バランスが最高に!
「やらなくても
いいのでは」の精神
耕して肥料を与えれば 1 年日
「これをしたほうがいいん
からよく実るが、毎年肥料を
じゃないか」
「あれもしたほ
与え続けなければならない。
うがいいんじゃないか」と、
耕さず草の根を残せば微生物
複雑にするのではなく、「こ
や小動物がそれらを分解し、
れはしなくてもよかったん
団粒構造ができる。最初は苦
じゃないか」と考えてみる。
労するが 5 年も続ければ柔ら
自然は本来、何もしなくて
かくて良い土になる。
も持続しているのだから。
自然農の1年・シャロムヒュッテの場合
7月
6月
5月
3月
夏野菜の苗作り。まだ雪が残る
安曇野では、落ち葉と米ぬかに
水を与え、発酵熱で温室を作る
「踏み込み温床」 や、ビニール
の温室で苗を育てる。一方、昨
年採れたクズの豆で味噌を仕込
むのもこの頃。
中旬頃から、畑での種蒔きが始
まる。葉もの野菜の種蒔きや、
ジャガイモの植え付けを開始。
冬越したホウレンソウやチンゲ
ンサイなどが、再び青々として
きたら収穫する。きれいな菜花
も収穫可能に。
連休が明けたら、温室で育てて
いた夏野菜の苗を畑に定植。葉
ら、時期をずらして常に種蒔き
もの野菜を次々に収穫しなが
をする。畑中に春の草が生えて
くるが、この時期はそれほど気
にしなくても大丈夫。
梅雨に入り、夏草が生え始める
時期。真夏の草の生長を抑える
には、この頃の草刈りがもっと
も大事。野菜が草に負けないよ
うに、手助けする気持ちで草刈
りを。
ひたすら草刈り。夏野菜の収穫
が始まる。
- 20 -
4月
安心で安全
そしておいしい野菜
道具はのこぎり鎌
だけあれば OK
どんな理屈を重ねても、結
耕さず、草を刈って敷くのが
局おいしくなければ意味が
自然農。だから、大げさな道
ない。自然農で育てた野菜
具は必要なく、のこぎり鎌 1
は、実は小さいけれど、野
本あればスタートできる。さ
菜そのものの味が凝縮れて
らに、畝立て時には大きなス
い て 濃 い し 保 存 性 も 高 い。
コツプ 苗を移植する際の小
もちろん無農薬で、自家採
さな移植ゴテ そして鍬があ
種だから安全で安心だ。
ればすべての作業が順調だ。
自然農の畑は
美しく、心地いい
肥料は草
草を制するのも草
自然農の畑では、1 年を通し
草は畑の敵ではない。作物
て土の茶色があらわになる
の生長を妨げるようだった
ことがない。一面が緑色で草
ら、刈り取って、そこに敷く。
原のような心地よさ。春、地
肥料になるし、保湿効果も
を這う草の中から、
ニンジン、
ある。さらに、土に太陽が
ネギ、ホウレンソウなどの野
当たらなくなるため、草の
菜が列をなして芽を出して
生 長 を 抑 え る こ と に な り、
いる姿は、じつに美しい。
一石二鳥にも三鳥にも。
12 月
1・2 月
9月
8月
7月と同様に、草刈りと夏野菜
の収穫。さらに、ハクサイ、キャ
ベツ、ブロッコリーなど秋野菜
の種蒔きが始まる。下旬頃に、
漬け物用のダイコンの種蒔き。
野沢菜の種蒔きなど。この時期
になると、夏草は少しずつ減っ
てきて、優しい冬の草に変わっ
なくても大丈夫。
てくる。冬草はそれはど気にし
秋野菜の収穫。夏野菜の種採り。
空いている場所には、常に時期
- 21 -
10 月
をずらして種蒔きを。
ダイコンや野沢菜の漬け物作
り。畑に残ったダイコンなどの
根菜類は、凍らないように葉の
ところまで土に埋めて冬越し種
採り用にする。畝作りをするな
ら、翌春に備えてこの時期が望
ましい。
収穫しておいた種や大豆、小豆
など豆の調整。
雪も積もる寒い畑はしばし休
眠。作業は屋内で行う。種や豆
の整理をのんぴりと。この時期
は、秋に作った漬け物を食卓へ。
土に埋めて貯蔵しておいた根菜
類や、保存性の高い白菜、キャ
ベツなどをいただく。
シャロムヒュッテの自然農
11 月
始めてみました、自然農
①豆類は青々とした時に収穫して差やごとゆでて食べたり 乾燥するまで実らせて豆として食べたり。これは色がきれいな本金時豆 ②写真奥が有機栽培エリア
手前が自然農エリア ルッコラや種採り用のカブが花を咲かせている。 ③淡いきれいなナスの『エッグプラント・ピンタン・ロング』は、台湾原産のエアルー
ムシード(家宝種)
。丸まっちゃったね。 ④「あま−い」と、一番人気のミニトマトもたくさん収穫できた。採れたての完熟トマトは夏の乾いたのどを潤して
くれた。自然農で育てた野菜は全体的に小振りだが香り高くおいしい。 ⑤トウガラシの『福耳』は大豊作。そのまま食べてみたら……「うっ、辛いっ!」
まずは有機栽培と
自然農からスタート
つかの違いが目につくようになった。
①自然農の畑では、雨上がり、敷い
一昨年の
月に借りてから、約一年
願 の 畑 を 借 り る こ と に な っ た 筆 者。
土が、次第に崩れていくのが気になっ
② 有機の畑では、耕して盛り上げた
きれいだった
ねがなく、外側まで食べられるほど
た草のおかげで、葉もの野菜は泥は
が過ぎた。そこは30坪はどの土地
た。 草 を 刈 ら な い 自 然 農 の 畑 で は、
東京の小さな町に、友人たちと念
ど集まり、聞きかじりの知識と、
「ど
で、畑初心者ばかりが
10人は
ちでスタートを切った。いくつか決
うにかなるさ」という楽観的な気持
③ ど ち ら の 畑 で も、 十 分 に 作 物 が
草の根が土留めの役割をしている
さん実っていたのには驚いた
の畑で、こぼれた種からカブがたく
④自然農の畑のミニトマトは甘かっ
実った。ある日気がつくと、自然展
②できるだけ種から育てること
た週に度きりの作業日、せっかくみ
めたゆるいルールは、
③自然に負担をかけずに育てること
①作業は毎週土曜日に行うこと
④何よりも、みんなで楽しむこと
は土を耕して盛り上げ、落ち葉たい
て い な け れ ば 大 丈 夫「 虫 と 共 存 し、
が伸びていたって、作物の邪魔をし
畑仕事もそっけない。自然農の「草
んなが集まったのに、がむしゃらに
肥で育てる有機栽培、残りの畑では
60%収穫できればいい」という考
これらを踏まえて、畑の3分の2
自然農にチャレンジすることになっ
くれた。だが、少し度が過ぎて、夏
えは、私たちの気持ちをラクにして
草が茂りすぎ、周囲の方々に嫌な思
種を蒔いた。早春に蒔いた葉もの野
菜の種は、暖かくなるとともに、ど
草と共存するこの方法を続けるな
い を さ せ て し ま っ た こ と も あ っ た。
た。2種類の畑には、同じ時に同じ
ちらの畑でも嬉しい収穫をもたらし
ら、あえてきれいに刈るという、周
てくれた。
週末の作業のたびに、「あ、
カブが大きくなってる−」「この葉っ
りへの配慮も必要だ。
び交った。その頃それぞれの家庭で
ぱ、甘いよー」そんな歓喜の声が飛
え付けの頃になると、自然農の畑が
は、夏野菜の種を蒔き、苗作りに励 夏野菜が終わり、秋〜冬野菜の植
ん で い た。
「ナスの種ってこんなに
おいしかったトマトや、豊作だった
徐々に面積を増していった。そして、
ペッパーは、翌年のために種採りも
小さいんだ」
「 ハ バ ネ ロ っ て、 種 も
の 種 は、 新 鮮 な 驚 き の 連 続。 こ の、
然農で育ててみることにしよう。冬
してみた。それなら今年は、全部自
辛い匂いがする」
。改めて見る野菜
風で飛んでしまいそうな小さな種が
感するのはこれからかもしれない。
自然農のすばらしさも大変さも、実
習った畝に作り替えた。ほんとうの
の間に、全体をシャロムヒュッテで
大きく育って実をつけ、私たちのエ
ネルギー源になってくれるのだ 。
次第にすべてが自然農に
梅雨に入った頃、2種類の畑でいく
- 22 -
12
②種籾を水の中に入れる(水の下に沈
2
←
←
い)。
←
るので注意)
←
シャロムヒュッテの田んぼ ・・・
①バケツに水を入れる(貯めた雨水
苗代近くで、種籾を捨てると鳥が食べ
種籾の選別
苗床つくり
たねもみ
稲の種籾まきをしました。
すいせん
まずは、種籾の選別です。
今回は、水選という方法で、播く
種籾を選びました。
種籾の量は、自然農でする一本植え
の場合には、一反(300坪)で6
〜7合。今回は、田んぼでの広さが
株間30㎝ ×畝間40㎝ で一株ずつ
3畝(90坪)なので2合を準備し、
植えます。
えんすいせん
農家では、塩水を使った塩水選で
種籾を選別します。塩水の濃度は、
生卵が浮くぐらい。水から塩水に
変えることで、種籾が浮きやすく
なるので、厳しい選別方法になり
ます。同様の方法で、塩の代わり
に泥を使った泥選水という方法も
あります。
百姓が田畑に草を生やしたまま
に す る と、 怠 農 と 呼 ば れ た そ う
です。
さんは、昔、福岡正信さんが書かれ
自然農を実践されている川口由一
た『わら一本の革命』を読まれ感銘
し、3年間、福岡式自然農法を実践
されたそうです。それでも収穫には
いたらず、その後も試行錯誤された
ようです。その際、川口さんにとっ
て、稲の苗床づくりをおこなったこ
- 23 -
シャロムヒュッテの田んぼ
シャロムの田んぼにて
3
③表土を 1cm 削る。耕さなければ草の種
が表土にあります。
(草の種の発芽を防ぐ
ため)
を利用すると塩素がないのでよりよ
③上に浮いた種籾を捨てる(田んぼの
①畑でする場合はできるだけ湿潤な場所を
選ぶ。
春
1
3
1
[ 種籾選別の手順 ]
[ 苗床つくりの手順 ①〜③ ]
②丁寧に丁寧に表面の草を刈る。
2
む種籾と、上に浮く種籾があるのを発
見できる。上に浮くのは、種の中身が
入っていないものや充実していない軽
いもの。播くのは、充実した実のある
沈んだほうの種籾)。
④水の下に沈んだ種籾を取り出し、ザ
ルにあげて水をきる(種を播く前日に
すると良い
4
←
←
←
6
8
育が異ならないよう、なるべく凹凸がなく、
平らにした方が平等に育つ)
種の2〜3倍の厚さに均等にかけてあげ
る。
(種が動かないように気をつける)
で播く。密になったところは手でまばらに
していく) り、自然の水で給水して発芽できるように
してあげるため)
5
7
9
とがその後のきっかけになったそう
です。川口さんにとって、特に、稲
の苗床つくりが原点だったのかもし
れません。
今回、シャロムの田んぼの広さは3
十分とのことです。
畝なので、苗床は1.2ⅿ ×4ⅿ で
通 常、 苗 床 づ く り は、 収 穫 後 、
月 の 作 業。 安 曇 野 で は
月
を疲弊せずにした農法はないそうで
るけれども、水田ほど、何百年も土
できます。世界中に多くの農法があ
うこと)で草の生長を抑えることも
です。また、水マルチ(マルチ:覆
のに管理しやすい方法だからだそう
変化がないため、温度を一定に保つ
いうと、水は土に比べて急激な温度
させること)
。なんで水をはるかと
ます(苗代とは、種籾から苗に生育
水苗代、折衷苗代(陸→水)があり
苗代には、
陸苗代(おかなわしろ)、
にします。
10
・
11
す。
- 24 -
⑤根切りをする。(根っこを切ってあげる)
⑦種籾を均等に蒔く。(種籾を1cm の間隔
⑨上から土を押さえる。
(下の土とつなが
12
田んぼ の様子
発芽して大きくなってきた苗 6月
⑥上から叩いて整地。(条件が変わって生
⑧草の種のない、掘った深いところの土を、
シャロムヒュッテの田んぼ ・・・
[ 苗床つくりの手順 ④〜⑨ ]
春
④周りに溝をつくる。
(水位を低くし、
また、
溝に水が溜まることにより、乾燥を防げる
ため)またモグラよけにもなる。
4
[ 苗床つくりの手順 ⑩〜⑭ ]
14
⑭藁が風邪でとばされないように竹や棒を
置いて完成。
今回はパオパオを上から被せてとめまし
た。
(光と水は通すが、風は通さない)
10
⑩カットしたワラを上からまんべんなくか
けて覆う。(乾燥を防ぐため )
←
ためと表面の乾燥を防ぐためだが、まきす
ぎると発芽の邪魔をしてしまう)
さて、特別に、前々から準備のしてある苗
床作りの方法も教えていただきました。ワ
ラの積んである下の土は、生物の多様性に
富んだ豊かな土でした。藁の下にはミミズ
がおり土は団粒化が進んでいました。 基
本的には前年からの準備のない苗代と作り
方は同じです。今回の場所はとても湿潤で
水が溜まりやすく、表面に草の種も根もな
11
⑪周りの溝に草をつめ、乾燥を防ぐ。
詰める。10センチくらい。
これで保湿力が高まり藁の下はしめって発
芽には好条件となる。この藁は発芽してき
たらはずす。
夕方か曇りの日がよい。このときに鳥害に
注意する。糸を張ったり パオパオをかけ
る等しないと雀が見事に食べてしまう
自然農の考え方には、競争ではな
く共生という理念があり、どの子も
自立してそれぞれで育っていけるよ
うな援助が大切なんですね。みんな
- 25 -
が平等に育っていけるように・・・
シャロムヒュッテの田んぼ
13
⑬保湿力を高めるために、厚くワラを敷き
とても優しい農法ですね。
いので、①〜⑤の工程の必要がありません。
あとは同じです。必要のないことはやらな
い。土と会話して、必要なものを補ってあ
げる。
←
12
⑫米ぬかを表面に薄くまく。(地力を補う
田んぼの1年
稲穂がたれはじめました
稲の間に草も出てきました
稲刈り
畦塗り
発芽した苗
草と共に稲も大きくなってきています。
2回ほど稲が草に負けないように草を刈ります
ハゼ木に天日干し
草よりも稲が
勢いよく育っています
一年を感謝して記念撮影
- 26 -
自然農の田植え
みすずかる
いま、水篶信濃の安曇野は
若草が萌えている。
その一隅に、
シ ャ ロ ム
神が放った光と風に祝福された一軒の小屋があった。
小屋の名は「舎爐夢」
- 27 -
ヘブライ語で平和という意味だ。
ム
北アルプスの山小屋で小屋番をしていた男
その仲間たちが礎を築き
木を刻んで作り上げたものである。
造作は少し無骨でも、
それには確かさと温かさがあった。
昨今、人びとは額に汗し互いに協力し合って
一つのものを作るということを
忘れかけているように思えるが、
その小屋は、それを訪れる人々を覚醒させ、
さらには豊かな安息を与えてくれるのだった。
舎爐夢ヒュッテ
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シャ ロ