論文内容要旨 Effects of Lactoferrin and Lactoperoxidase-containing Food on the Oral Hygiene Status of Older Individuals: a Randomized, Double blinded, Placebo-controlled Clinical Trial (高齢者を対象としたラクトフェリン+ラクトパーオキシダーゼ配合食 品の口腔衛生改善効果の検討:ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間 比較試験) Geriatrics & Gerontology International(投稿中) 口腔衛生学 森田優 【目 的】 ラクトフェリン(LF)とラクトパ-オキシダーゼ(LPO)は唾液中に存在し 口腔内細菌に対する抗菌作用を有する.これまでに口臭や歯周病に対する 臨床試験が行われてきたが,高齢者を対象とした臨床試験は実施されてい ない.本研究では,LF+LPO 配合錠菓を用いて高齢者が日常的に行える口 腔衛生状態の維持改善方法の検討を目的とした. 【対象と方法】 意思疎通が可能で明らかに舌苔があり,事前に研究内容を十分説明し同 意を得た特別養護老人ホーム入居者 31 名および健康高齢者 15 名の計 46 名を対象とした.ランダム化二重盲検プラセボ対称並行群間比較試験で行 い LF+LPO 配合錠菓もしくはプラセボ錠菓を摂取する群に分けた.1 日 3 回毎食後に摂取を指示し摂取前,4 週,8 週に口腔内診査や舌苔とプラー ク中細菌数,口腔粘膜湿潤度,口臭の測定を行った.なお,本研究は本学 歯学部医の倫理委員会の審査を受け承認されている (承認番号 2014-016) . 【結 果】 解析対象は 37 名(男性 12 名,女性 25 名,試験群 20 名:平均年齢 80.4 ±6.4 歳,プラセボ群 17 名:平均年齢 85.9±6.7 歳)となり,年齢に群 間差がみられたがその他の項目に有意な差はみられなかった.舌苔スコア では両群とも,摂取前と比べ 4 週と 8 週に有意な改善を示したが,群間差 はなかった.Probing Pocket Depth は両群とも 8 週に有意に減少し, Breeding on Probing も試験群は 8 週,プラセボ群は 4 週で有意に減少し たがどちらも群間差はなかった.舌苔中の細菌数は,試験群で 4 週と 8 週 の総菌数,8 週の P. gingivalis(Pg)数および,F. nucleatum(Fn)数 が有意に減少した.プラセボ群では,8 週の総菌数が有意に減少し,4 週 の Fn 数が有意に増加した.歯肉縁上プラーク中の細菌数は,試験群で 8 週の総菌数および,Pg 数が有意に減少しプラセボ群で 4 週の Fn 数が有意 に増加した.Pg 数の変化量においては,試験群とプラセボ群の間に有意 差がみられた.また,全対象者において錠菓に起因する有害事象は認めら れなかった. 【考 察】 舌苔スコアは両群ともに 4 週,8 週で有意に改善した.これは錠菓を舐 める際の機械的刺激によるものと考えられた.舌苔中の総菌数は両群とも 8 週において減少したが,試験群のみ Pg 数と Fn 数が有意に減少した.こ れは LF+LPO の抗菌作用やバイオフィルム抑制作用が発揮されたためと考 えられた.また,歯肉縁上プラークの Pg 数の変化量に有意な群間差がみ られ,試験群で低下した.このことから,LF+LPO の効果による歯肉縁上 プラーク中の細菌数の抑制が示唆された.以上より,高齢者における LF+LPO 配合錠菓の安全性が確認され,本錠菓の継続摂取が高齢者の日常 的な口腔衛生改善方法の一つとして有用である可能性が示唆された.
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