別紙様式第2号 横浜国立大学 学位論文及び審査結果の要旨 氏 名 中村

別紙様式第2号
横浜国立大学
学位論文及び審査結果の要旨
氏
名
中村 章
学 位 の 種 類
博士(工学)
学 位 記 番 号
工府博甲第483号
学位授与年月日
平 成 28年 3月 24日
学位授与の根拠
学位規則(昭和28年4月1日文部省令第9号)第4条第1項及び横浜国
立大学学位規則第5条第1項
学府・専攻名
工学府
システム統合工学専攻
学位論文題目
下水汚泥燃焼におけるN2O排出濃度低減に関する研究
(A study on reduction of N2O emission in sewage sludge
combustion)
論文審査委員
主査
横浜国立大学
教授
石井 一洋
横浜国立大学
教授
松本 裕昭
横浜国立大学
教授
西野 耕一
横浜国立大学
教授
松井 純
横浜国立大学
准教授
酒井 清吾
論文及び審査結果の要旨
下水汚泥は安定したバイオマス資源であり、燃焼による有効活用が期待されているが、燃
焼ガスには N2O が含まれることがある。N2O は地球温暖化物質として CO2 の約 300 倍の温
室効果があるとされており、その排出削減対策が急務となっている。
本研究では、流動層式汚泥焼却炉において排出ガス測定を行い、とくにガス温度と HCN
濃度に着目して N2O の生成分解挙動について考察を行っている。また実験結果と素反応数
値シミュレーション結果との比較から、燃焼改善検討ツールとしての数値シミュレーショ
ンの有効性と、N2O の低減方法について検討を行っている。
本論文は全 10 章で構成され、各章の内容は以下のとおりである。
第 1 章では、研究背景、従来の研究について触れ、本研究の目的を述べている。第 2 章で
は、実炉における実験について、実験装置、実験条件等について述べている。第 3 章では、
0 次元数値シミュレーションについて、計算方法、計算条件について述べている。
第 4 章では、数値シミュレーションで用いた素反応機構について、従来の研究と開発経緯
について説明し、本研究で採用した Leeds 素反応機構と Konnov 素反応機構の選定理由につ
別紙様式第2号
横浜国立大学
いて述べている。
第 5 章では、初期反応領域からフリーボードにわたる温度・滞留時間と N2O 濃度の関係
について調べ、炉出口の N2O 濃度を 50 ppm 以下とするためには、850 ℃以上となる燃焼
ガスのフリーボード滞留時間を 4 秒以上確保することが必要であることを示している。
第 6 章では、N2O の前駆体とされている HCN のフリーボード下部における濃度に着目
し、HCN 濃度と炉出口 N2O 濃度には正の相関があることを明らかにし、 Leeds 素反応機
構と Konnov 素反応機構が有効な温度範囲を示している。
第 7 章では、空気比を変化させた燃焼実験と数値シミュレーションから、炉内空気比自体
は N2O 濃度には大きな影響を及ぼさないものの、 空気比の変化に伴うフリーボード下部
における温度変化が N2O 濃度を支配していることを明らかにしている。
第 8 章では、1 次元数値シミュレーションにより炉体高さ方向の N2O および HCN 濃度
変化を求め、HCN 濃度分布は Leeds 素反応機構により良好に再現されること、Konnov 素反
応機構では N2O の前駆体である NCN の素反応が N2O 濃度を過大評価していることを明ら
かにしている。
第 9 章では、前章までの考察をもとに、実際の汚泥焼却設備での N2O 排出低減を実現す
る燃焼方法として、燃焼用空気の二段階供給を提案し、N2O 低減効果を数値シミュレーショ
ンで確認した上でパイロットプラントを用いた実験と比較し、その妥当性を検証している。
第 10 章は、本研究の総括を行っている。
以上のように、本論文は汚泥焼却炉における N2O 低減に大きく貢献するものであり、審
査委員全員一致して博士(工学)の学位論文として十分な価値があるものと認めた。