[06] 宮島沼における早期湛水水田における温室効果気体の動態と 中干しの効果の検証 吉田 吉田 中谷 牛山 浩平○ (酪農大・大学院酪農学研究科) 磨 (酪農大・大学院酪農学研究科,酪農大・農食環境学群) 暢丈 (酪農大・大学院酪農学研究科,酪農大・農食環境学群) 克巳 (宮島沼水鳥・湿地センター) 【はじめに】 宮島沼は, 周囲を水田に囲まれたラムサール条約登録湿地である. 周辺水田の一部は早期湛水 水田 (ふゆみずたんぼ) として, 利用されている. ふゆみずたんぼは, 化学肥料や除草剤を用いた 現行農法 (慣行田) に代わり, 環境と調和しつつ持続的な生産を可能とする農法として注目されて いる. また, ふゆみずたんぼは慣行田と異なり湛水時期が長く, より還元的環境になるためメタン (CH4) 放出が多く温暖化への寄与は大きいと考えられている. そこで本研究では, ふゆみずたんぼ における温室効果気体の挙動と中干しの効果を明らかにすることを目的とした. 【方法】 宮島沼周辺のふゆみずたんぼと慣行田をそれぞれ 1 枚ずつ観測した. 分析項目は CH4 濃度と一 酸化二窒素 (N2O) 濃度, 全窒素, 全リンを分析するための試料を採取し, 現地にて田面水 pH, 土 壌 pH, 土壌酸化還元電位 (土壌 Eh), 地温, 気温, 風速を計測した。 N2O Flux (mg m-2 h-1) 7/15 7/13 7/14 7/12 7/11 7/10 7/15 7/13 7/14 7/12 7/11 7/10 8 酸化還元電位 (mV) 酸化還元電位 (mV) CH4 Flux (mg m-2 h-1) 150.00 0 0 0.4 0 0 0.4 150 【結果・考察】 ふゆみずたんぼに 0.3 0.3 -50 100.00 -50 (50) 100 おける中干し中の土 0.2 0.2 壌Eh は, 落水するこ 50.0050 -100 -100 (100) -100 0.1 0.1 とで除々に上昇し中 干し前には-185 mV -150 -150 0.00 0 -150 00 (150) 190 192 194 196 190 192 194 196 198 を示したが, -21 mV 試料採取日 試料採取日 まで上昇した. しか Fig.2 早期湛水水田における N2O Flux (●) と Fig.1 早期湛水水田における CH Flux (●) と 4 し, 酸化的環境を示 土壌 Eh (■) の挙動. 土壌 Eh (■) の挙動. す正の値にはならな かった. また, 中干し期間中の CH4 Flux は, 7 月 13 日に 63.7 mg m-2 h-1 であったが, 7 月 15 日 には 25.6 mg m-2 h-1 と減少していった (Fig.1). CH4 生成が行われるには-200 mV 前後の土壌 Eh が必要であるため, 十分な CH4 生成が行われなかったと考えられる. また, N2O Flux は中干しによ る影響をほとんど受けなかった (Fig.2). 加えて, 検出された N2O 濃度は平均的な大気 N2O 濃度と 有意な差はなかった. これらの結果は, イトミミズが作り出す有機農法水田に特有のトロトロ層が関わ っていると考えられる.
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