(1) 自然災害の概要 - 京都大学

2011年度「危機管理特論」
1
2
自己紹介
近藤宏二
京都大学防災研究所
巨大災害研究センター客員准教授
鹿島建設(株)技術研究所
主席研究員
(略歴)
1981年3月京都大学工学研究科修士課程修了
防災研究所耐風構造部門(建築学科)
1981年4月鹿島建設(株)武藤研究室
1986年4月鹿島建設(株)小堀研究室
1987年4月鹿島建設(株)技術研究所
2000年2月東京大学博士(工学)
自然災害に対する構造物の危機管理
京都大学防災研究所 巨大災害研究センター
客員准教授 近藤宏二
本日の講義の内容
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
3
自然災害の概要
ハザードとリスクの関係
地震リスク評価
リスクマネジメント
事業継続計画(BCP)
建設会社の震災BCP
東日本大震災時の鹿島建設の活動事例
自然災害の種類
4
(1) 自然災害の概要
5
世界の地域別自然災害
6
平成21年度防災白書より
1.地震:地震動,液状化,崖崩れ,津波,火災等
2.台風:強風(台風,温帯低気圧,寒冷前線,竜巻,
ダウンバースト),高潮,波浪等
3.豪雨:洪水,崖崩れ,土石流,地滑り等
4 豪雪 積雪 雪崩 寒波等
4.豪雪:積雪,雪崩,寒波等
5.火山:火砕流,火山泥流,溶岩流,津波,火砕物
(降灰,噴石),火山ガス,山体崩壊等
6.火災:建物火災,都市火災,森林火災等
7.異常気温:熱波,寒波
1
7
世界の自然災害の経年変化
8
世界と日本の自然災害の比較
平成21年度防災白書に加筆
日本
アジア(日本以外)
米国
アメリカ(米国以外)
ヨーロッパ
オ
オセアニア
アフリカ
平成21年度防災白書より
自然災害による被害額の割合(1990~2005年)
9
自然災害による死者の割合(1990~2005年)
地震
強風
洪水
波浪
異常高温
その他
地震
強風
洪水
波浪
異常高温
その他
全世界
1970年~2004年
地震
強風
洪水
波浪
異常高温
その他
日本
全世界
土木学会 平成18年11月北海道佐呂間町竜巻緊急災害調査報告会資料より
11
10
地震
強風
洪水
波浪
異常高温
その他
日本
土木学会 平成18年11月北海道佐呂間町竜巻緊急災害調査報告会資料より
工学におけるハザードとリスクの定義
12
■ハザード
(2) ハザードとリスクの関係
・危険や損失をもたらす外乱の大きさと発生頻度
(確率)の関係
・外的な与条件
・地震ハザード、強風ハザード、火山ハザード等
■リスク
・危険や損失の大きさと発生頻度(確率)の関係
・管理や制御の対象
・地震リスク、強風リスク、火山リスク等
・直接被害:構造的被害等の物理的被害
・間接被害:直接被害による操業停止等の二次的被害
2
13
ハザードとリスクの関係
ハザード
建物の状況
各種ハザードと事業への影響度の関係
14
リスク
火災
高
大
発生頻度
小
建物がまばら
中
小
大
建物が密集
妨害
窃盗
詐欺
暴力
集団食中毒、集団感染
雷
雹
山火事
干ばつ
猛暑
渇水
大寒波
風水害(台風,洪水,集中豪雨)
科学技術災害
(事故等)
地震
低
大
小
大
事業への影響
中小企業庁ホームページより
15
16
地震リスクの表現
■イベントカーブ
・ある期間における地震による損失の超過確率を
示す曲線(評価における不確実さを考慮せず)
■地震リスク曲線
(3) 地震リスク評価
・ある期間における地震による損失の超過確率を
示す曲線(評価における不確実さを考慮)
■予想最大損失率
・PML(Probable Maximum Loss)
・地震リスクの大小を表す一つの指標
・[建設業界]再現期間475年の地震が発生したとき
の90%非超過確率に相当する物的損失額の再調
達費に対する割合
地震リスクの活用
■不動産等の資産管理
・資産全体(ポートフォリオ)の地震リスクの管理
・地震リスクの大きな不動産の処理
■耐震設計・耐震安全性の確認
・構造物の地震リスクをあるレベル以下になるよ
構造物の地震リスクをあるレベル以下になるよ
うに設計・補強
・既存構造物の耐震安全性の確認
■企業の地震防災
・地震リスクを踏まえて事業継続計画(BCP:
Business Continuity Plan)を策定
17
18
地震リスクの評価フロー
解析モデル
評価対象
確率分布の表現
震源モデル
地震動伝播モデル
(確率モデル)
地震動強さ
地震ハザード
簡易手法
建物モデル
(確率/確定モデル)
損失モデル
(確率/確定モデル)
建物応答に基づく手法
最大応答
損失
最大応答の
超過確率
地震リスク
3
地震ハザードの定義
19
■地震ハザードとは
20
地震ハザードの表現
■地震ハザードの面的分布
・地震ハザードマップ
・地震動強さ(震度、最大加速度、最大速度等)
と発生頻度(確率)の関係
■特定地点の地震ハザード
■具体的には
・地震ハザード曲線
・今後30年間に東京で震度6弱以上が発生する
確率は10%[震度6弱の超過確率は10%]
ある期間においてどの程度の揺れがどの程度の
頻度(確率)で発生するか
・一様ハザードスペクトル
■参考:降水確率
地震動の周期特性も表現
・今後の6時間以内に1mm以上の降水がある確
率は30%
地震ハザードの活用
21
地震ハザード曲線の評価モデル
22
■地震ハザードを決める要素
■地震対策
・震源
・地震動伝播
・地盤増幅
・地震発生過程
・地域や地点の地震の起こりやすさを示す指標
として評価
・施設の立地の検討等
■地震リスク評価
地盤増幅
・構造物や地域等の地震リスク評価のための入
力として評価
・企業の地震リスク評価、原子力発電所の耐震
安全性評価等
地震発生過程
地震動伝播
震源
時間軸
地震ハザードマップ
23
地震ハザード曲線(最大加速度の年超過確率)
24
100
10-1
10-2
年超過
過確率
年超過確率
今後30年間に震度6弱以上
の地震動が発生する確率
10-3
地震動が500cm/s2以上
になる確率は -44
になる確率は10
10-4
10-5
10-6
10-7
0
500
1000
2)
最大加速度 (Gal)
最大加速度(cm/s
1500
文科省地震研究推進本部平成21年7月21公表資料より
4
25
地震リスクの評価手法
26
建物の被害率曲線
■簡易的手法
1.0
・地震動強さから直接、損失を推定
・地震被害率曲線(被害を受けた建物の割合)、
地震損傷度曲線(個々の建物の損傷の程度)等
を使用
一部損壊以上
0.8
半壊以上
被害率
全壊
被
被害率
0.6
0 4
0.4
■建物応答に基づく手法
地震動が1000cm/s2
になると4割弱の建
物が全半壊
0.2
・地震動強さから建物の最大応答を評価し、最大
応答から損失を推定
・等価線形化法、時刻歴解析手法等
0.0
0
500
2000
1971年以前のRC造建物の例
27
建物の損傷度曲線
1000
1500
最大加速度(cm/s
最大加速度
(cm/s2)2)
28
地震リスク曲線
0.4
0.2
1.0
50年超過確率
非 超 過 確 率 p = 90%
年超過確率
50
0.8
損傷
傷度
損傷度
0.6
%
50%
地震動が1000cm/s2に
なると平均的建物の損
傷の程度は5%
0.4
0.2
0.1
0.2
50年間に損傷度が0.2を超え
る確率は6%
0.05
0.06
10%
0
0.05
0.0
0.15
00
0
500
1000
1500
2000
最
大 加 速 度 (cm 2/s
最大加速度(cm/s
) 2)
0.2
0.6
0.4
0.6
損傷度
総損傷度
0.8
0.8
1
損傷度=(建物被害額)/(再調達価格)
1971年以前のRC造建物の例
地震リスクに基づく耐震性能評価
29
耐震性能マトリクス(JSCA)
30
■性能設計
・従来の仕様規定から性能規定による設計への流れ
仕様規定:材料や寸法などの仕様による規定
性能規定:性能による規定
■耐震性能マトリクス
・構造物の耐震性能:どの程度の地震動に対してど
の程度の損傷まで許容するか
・耐震性能マトリクス:耐震性能のグレードを満たすべ
き性能により示すもの
JSCA資料(北村:建設工業調査会寄稿文より)
5
31
地震による予想最大損失(PML)
■定義
100
・再現期間475年の地震が発生したときの90%非超
過確率に相当する物的損失額の再調達費に対す
る割合
・再現期間475年の地震動=50年間で10%の超過
再現期間 年
震動
年間
超
確率で発生する地震動
・ポアソン過程の場合
pex=1−exp(− 50/475)≈0.1
ユーザー
活用内容
投資家
不動産の証券を購入する際に収益資
産としての価値を判断するための情報
保険会社
震災時における地震保険の支払金額
を推計するための情報
企業
建設業界
財務
リスク
インフレ
損傷度
年超過確率
0.4
10%
10-33
10-4
0
0.45
0.2
800
500
1000
1500
最大加速度 (Gal)
0.0
2000
再現期間475年(年超過確率
0.0021)の最大加速度は800Gal
800
0
500
1000
1500
最大加速度 (Gal)
2000
最大加速度は800Galのとき非超過
確率90%の損傷度(PML)は0.45
地震損傷度曲線(RC造、1971以前)
地震ハザード曲線
34
(4) リスクマネジメント
金銭的価値に基づく耐震性能の指標
35
企業を取り巻く様々なリスク
金融
0.0021
50%
0.6
不動産等の資産の収益力や信用力に
よる融資(アセットファイナンス)を行う
際の判断材料(PML=15%がボーダーラ
イン)
震災時における資金調達や財務に対
する影響を分析するための情報
金融機関
為替
10-2
33
PML情報の活用
金利
1.0
非超過確率90%
0.8
10-1
(年平均発生頻度が1/475の地震動が50年間に発
生する確率は10%)
32
PMLの算定
経済
環境
投資
債務
不履行
資金繰り
会社
戦略
策定
M&A
36
ミュンヘン再保険会社が提唱する世界の大都市の
自然災害リスク指数
ポリティカル
テクノロジー
製品
戦略
リスク ライフサイクル
組織
競合
資源
他社
配分
30
167
100
20
42
710
25
41
45
31
地震
強風
火山
火災
環境
自動車
事故
一般
賠償責任
製造物
賠償責任
災害
リスク
労働
災害
水害
過失
健康
雇用慣行
不正
操業
従業員 リスク
非効率
92
情報
リコール
コンプライアンス
影響の大きさ順番
②危険性
③脆弱性
①リスクにさらされる資産価値
地震、強風、洪水、火山、
森林火災、凍結のリスク
を考慮
ミュンヘン再保険会社
ホームページ(2002)資料に加筆
6
37
リスクマネジメントとは?
なぜリスクマネージメントが必要か
38
人間を取り巻く社会環境には、様々なリスクが存在
■リスクの種類
100%の安全はありえない!
・純粋リスク:損失のみを生じる不確実さ
・投機的リスク:損失または利益を生ずる不確実さ
被害の発生、許容を前提に考える必要性
■リスクマネジメントの定義
情報をあいまいにせず正確に提示
・個人、企業および自治体等の組織が直面する純
個人 企業および自治体等の組織が直面する純
粋リスクや投機的リスクを合理的に処理するため
の科学的管理手段
・できるだけ少ないコストで組織に与える偶発的損
失の影響を最小化するため、組織の資産ならび
に活動を計画・組織・指揮・統制するプロセス
情報開示:Information disclosure
建物の安全に対する性能水準を明確に説明
説明責任:Accountability
建物の安全が損なわれた時の責任の所在を明確化
自己責任:Liability
性能評価と維持管理の方策
リスクによる損失を軽減する有効な対策
リスクマネジメントサイクル
39
リスク処理の方法
■リスクの保有
リスクの認知
・リスク処理を行なわない(資金の準備)
・リスクが十分小さい場合
各種ハザードによる被害
■リスクの低減
リスクの測定
各種リスクの評価
リスクの保有
リスクの低減
リスクの移転
リスクの回避
リスクの処理
40
リスク
マネジメント
サイクル
・リスク低減の対策を講ずる
対策費用がリスク低減効果に見合う場合
・対策費用がリスク低減効果に見合う場合
■リスクの移転
・保険、証券化等により損失を移転
・リスクが低確率、大損失の場合
建物補強・保険加入等
■リスクの回避
リスクの監視
・リスクを有する対象を所有しない
・リスクが高確率、大損失の場合
建物の維持・管理
リスク処理の事例
41
リスク処理の概念
42
■リスクの保有
■リスクの低減
・建物:耐震補強、重要施設の分散・移転
・人間:避難経路、避難場所を確認
人間 避難経路 避難場所を確認
■リスクの移転
・建物:保険に入る、代替的リスク移転
・人間:移転できない
■リスクの回避
・建物:強度不足の建物を取り壊す
・人間:災害のない国へ移住する
リスク曲線
回避
50
年超過確率
・建物:危機管理マニュアル策定、建物をその
まま維持、被災時に補修
・人間:災害を気にしない
保
有
移転
被害額
7
リスク曲線に基づくリスク指標
43
リスク曲線の意味
44
■リスク曲線
・損失額とその発生確率を用いて、対象物の潜在的リスクを
表現した曲線
・対象物の被害を発生させる可能性のある全てのイベントに
対する損失予測結果から求める
頻繁に小さい損失が発生するが、
大きな被害はめったに発生しない
年超過確率
50
■損失の期待値
・損失額と年間発生確率を乗じた損失期待値を全てのイベン
トについて足し合わせて、対象物の年間損失期待値を計算
・リスク曲線と横軸で作られる領域の面積 s に等しい
・最も一般的であるが、損失のばらつき(特に大損失の領域)
の情報を無視することになる
小さい損失の発生は少ないが、大
きな被害が発生する可能性が比
較的高い
■ある超過確率に対する損失の値
被害額
・例えば、50年超過確率10%の損失の値
・複数の超過確率やその範囲による定義も考えられる
リスク曲線と損失期待値
45
リスク曲線に基づくリスク処理の検討
保有限度額の超過確
率 を許容範囲 p1 以下
に低減しよう
リスク曲線
50
年超過確率
年超過確率
50
面積=損失期待値
s
p0
超過確率 p0 に
対応する被害額
46
これ以上の被
害額は保険で
対応しよう
低減対策実施
p1
被害額
建物のライフサイクルコスト
被害額
47
保有限度額
ライフサイクルコストの比較
48
■ライフサイクルコスト(LCC)
ライフサイクルコスト
(1) 建物の供用期間において発生する総費用
CT=CI+CR
CI:イニシャルコスト
CR:ランニングコスト
(2) イニシャルコスト
・土地取得費、設計費、構造・外装材・設備・外構
等の費用、施工費等の初期建設費用
・ほぼ確定値
(3) ランニングコスト
・光熱費、修繕費、災害補修費等の維持管理費用
・確率変数、損失期待値
耐震構造
傾き=損失期待値
免震構造
初期コスト
このケースでは10年以上使用
すると免震構造の方が安い
10年
供用期間
8
49
マルチハザードを考慮したリスクマネジメント
■災害リスクマネジメントの現状 今後の課題
・地震、火災、台風、洪水等の各種災害に対するリ
スクマネジメント実施例は増えつつある
・しかし、ほとんどのケースでは、各災害に対する
個別検討のみ
限られた予算で最大の効果を得るためには?
マルチハザードを考慮したリスクマネジメント
■マルチハザードを考慮する意味
・影響の大きな災害リスクを抽出
・限られたリスク対策費用を合理的に配分
51
耐震性能決定における顧客と専門家の関係
リスクマネジメントのポイント
50
・金銭価値を標準としたリスクの定量化
・将来予測の不確定性を意思決定に積極的に
取り込む
・リスクの構成要素、リスクを被る主体、リスク
をマネジメントできる主体の関係の明確化
・ある一定規模のリスクでも、リスクを被る主体
によって、対策の判断が異なることを考慮
・リスク分析結果は、対策最適解を与えるもの
ではなく、あくまで意思決定者への情報提供
が目的
リスク関連用語
52
■リスクコミュニケーション
・地震リスクの正確な情報に関して専門家と市民や
企業の間で行なわれる情報交換過程
・建築主が建物の耐震性能や耐震補強の実施を意
思決定するときにリスクコミュニケーションが必要
顧客
リスク
リテラシー
リスクコミュ
ニケーション
■リスクリテラシー
・リスクの本質を認識し、具体的な対処方法を検討し、
実行可能解の中から次のステップを決定する力
専門家
意思決定
■意思決定支援
意思決定支援
・専門的知識を要する地震リスクマネジメントに関す
る判断を意思決定者の主観的な意見を活かしつつ、
地震リスク等の客観的事実を勘案して総合的に意
思決定を支援することが重要
耐震性能
53
BCPとは?
54
Business Continuity Plan:事業継続計画
(5) 事業継続計画
Business Continuity Plan (BCP)
テロなどの「不測の事態」を想定して、対処方法につ
き体系化したマネジメントシステム
リスク管理意識の高い欧米で発達
業務が中断した場合であっても、短時間で重要な業
業務
中断
場合 あ
も、短時間 重要な業
務を再開させ、業務中断による顧客の流出や企業評
価の低下を防ぐための
★経営戦略★
例えば、震災時の指揮命令系統の整備、バックアッ
プシステム・オフィスの確保、安否確認の迅速化等、
具体策を規定・文書化したもの
9
最近日本の企業が取り入れようとしている
リスク管理の考え方
55
56
内閣府・中央防災会議
企業のリスクマネジメントへの展開
従来:国・自治体への指導が重点
BCM (Business Continuity Management)
BCP (Business Continuity Planning)
事業継続計画
BRP (Business
(B i
Resumption
R
ti Planning)
Pl
i )
BIA (Business
Impact Analysis)
対企業
⇒2005年8月「事業継続ガイドライン
2005年8月「事業継続ガイドライン
第一版」を発表。事業継続計画
BCPの考え方を明記し民間企業へ
の指導も強化。
BRP (Business
Recovery Plan)
指揮系統
ICS (Incident
Command System)
経産省:リスク新時代の内部統制(指針)2003.6
関係各機関によるBCP促進
57
東京湾北部地震M7.3による経済被害
58
平成21年度防災白書より
経済産業省:リスクマネジメントJIS化(2001年3月)
日本銀行:金融機関業務継続体制の整備(2003年7月)
経団連:企業の地震対策の手引き(2003年7月)
日建連 建設BCP検討WG設置(2005年9月)
日建連:建設BCP検討WG設置(2005年9月)
中小企業庁:中小企業BCP策定運用指針公開
(2006年2月)
国土交通省:BCP策定予算・概算請求(2006年4月)
企業防衛の観点からも自助努力によるBCP
策定の気運が急速に高まっている
上町断層帯の地震M7.6による被害想定
59
企業がBCPで想定する有事
90%
80%
コンピュータなどIT関連トラブル
地震・台風などの自然災害
火災
インターネットなどの通信トラブル
従業員・社員の労働災害
人命の喪失
環境リスク
78% 78%
70%
60%
58% 57%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
39%
29%
60
26%
インターリスク総研調査
2005年3月
国内上場企業533社
平成21年度防災白書より
10
民間企業のガイドラインの策定状況
61
経営判断
・守るべきコア業務の選定
利益の大きな業務、取引先に大きな影響を与える業務など
・復旧方針設定
方針:顧客に対して平等な対応を行う。
具体的復旧目標の設定:発災後、10日間で50%の業務回復
2ヶ月で100%の業務回復する。
■建設BCPガイドライン
■半導体産業向け事業継続ガイドライン
■金融機関になどにおけるコンテインジェン
シ プラン策定手引書
シープラン策定手引書
■日本百貨店協会
■不動産協会
■電子情報技術産業協会(JEITA)
地震リスク分析
導入
63
震災BCP策定の流れ①
被害
予測
ビジネ
ス影響
分析
どこまで守るのか?
【経営的観点】から守る
べき業務や施設を選定
■機能維持
周知
教育
更新
訓練
64
耐震補強
■復旧期間
データ
守る必要のないものは無処置
立案
・建物の耐震・制震補強
による直接被害の低減
・施設の分散立地による
リスク分散
人
オフィス
戦略
震災BCP策定の流れ②
何を守るのか?
・貢献度
・社業への影響度
財務 の影響度
・財務への影響度
・立地危険度 等
を考慮して判断
62
BCPの基本的な流れ
・事業中断期間の短縮に
よる間接被害の低減
・復旧支援体制の確立
生産施設
工場B
工場C
生産施設
工場A
目標の設定・問題点の抽出
65
震災BCP策定の流れ③
目標をどう達成?
どう運用?
■ハードの対策
■マニュアル化
・耐震・制震補強
・施設分散
■BCP体制の構築
震災対策組織
耐震補強
・震災対策組織の構築
震災対策組織の構築
・社内連絡網の整備
・サプライチェーンの再構築
■リスクファイナンス
生産施設 サプライチェーン
工場B
工場C
最適なリスク処理法を選択
マニュアル化
・誰でも対応できる簡易
なマニュアルの整備
■教育・訓練
社内連絡網
・保険加入
66
震災BCP策定の流れ④
工場A
・BCPを動かすのは人
を動かす は人
・組織全体による定期訓
練による習熟
■点検・見直し
訓練
教育
・訓練結果の点検
・経営陣による見直し
経営陣による見直し
11
67
震災BCP策定効果のイメージ
機
能
低
下
幅
これまでの防災の基本的な考え方
震災BCP実施後の業務レベル
発災
業
務
稼
働
率
68
■人命の確保を最優先
■初期被害の低減
■応急対策
業務立ち上げ
期間の短縮
遺漏なき万遍なき対応
発災直後の業務 従前の業務レベル
稼働率の向上
これらに加えて・・・事業継続への要求
復旧期間の短縮
BCM・BCPの概念が台頭
時間の経過
メリハリのある合理的対応
69
従来の防災対策とBCPの違い
BCPの視点から見た大地震への備え
70
■重要機能(ボトルネック)の特定
従来の防災
BCPの特徴
従来の防災に加えて、
・人命の安全
・物的被害の軽減 ・事業継続可能レベルの設定
と早期復旧目標の明確化
・拠点レベルでの
視点 対応と対策
・重要業務、ボトルネックの特
定 事業継続への影響評価
定、事業継続への影響評価
・安全 施設部門
・安全、施設部門
の取り組み
・サプライチェーンを含む総合
対策
・死傷者数
・復旧時間、復旧目標、レベル
の定量化
・物的損害額
指標
・経営や株主に及ぼす影響、
損失額の評価
・3つの視点から(経営戦略、地震危険度、建物機能)
・重要機能の許容損傷レベルと復旧目標
■有効な資源配分
①事前対策:重要機能の耐震化
拠点施設の分散、代替化、対策の優先順位付け
・拠点施設の分散、代替化、対策の優先順位付け
②最中の対策:リアルタイム対応(想定外対応)
・人的対応力と危機管理システム、社員の安全、被災
情報の即時収集、共有化、支援ツールの活用、2次
災害の軽減
■震災後の早期復旧活動
BCAO資料より
71
・復旧シミュレーションによる人、もの(資材)、必要資
金の確保、重要機能の早期復旧と優先順位
72
首都直下地震に備える建設会社の震災BCP
建設BCPガイドライン
首都直下地震に備えた建設会社の行動指針(第2版)
(平成18年11月:日本建設業団体連合会)
(6) 建設会社の震災BCP
・建設会社におけるBCP
⇒自社の危機管理体制の強化と事業継続
自社の危機管理体制の強化と事業継続
・本社、建設現場、各部署
⇒建設業の社会的使命の達成
・公共インフラ・民間企業等の復旧工事を通し
て、政治経済・社会活動の早期回復に大きな
役割を担う
12
建設業の特性
73
74
建設業の災害時の役割
社会の早期復旧に資する建設活動の推進
■労働集約型産業の典型
◆大規模災害が発生した場合、建設会社の事業活動そ
のものが、社会から大きく期待されている
■特別な集中拠点は持たない
■資源(人材・資機材)は広域に分散
資源
資機
散
(社)日本業団体連合会「建設BCPガイドライン」より
■インフラ復旧工事の迅速な実施
■施工中現場における2次災害の防止と工事の早期再開
■竣工物件の被災状況調査と復旧支援
BCPの的確な発動には・・・
■人(労働力)の早期確保
■情報の伝達・共有・分析
災害時特有の業務の発生!
75
76
発災時・社会活動のイメージ
建設業・BCP発動のイメージ
発災
発災
消防・レスキュー
災害時特有の
復旧・復興業務
業
務
稼
働
率
警 察
自衛隊
建設業BCP
人材・資材・機材
通常の新築業務
一般企業BCP
時間の経過
時間の経過
生産施設を持たない建設会社のBCPとは
77
事前
平常時と災害時の事業内容が大きく異なる
①社員・家族の災害
対応能力の向上
人・情報・資機材が全て
まず、企業自身の社員・家族を守り、震
災対応能力を高める
78
震災対策とアクション支援技術
・社員の防災教育
・訓練防災
・意識の向上
最中
事後
②社員、家族の
安全確認・確保
④会社機能回復と
事業継続
③地域住民と
の連携・支援
⑤公的機関、関連
企業との連携による
社会への貢献
震災対策本部の立ち上げ
社員・家族の安否確認
本支店間のネットワーク:連携と相互支援
即座に支援体制を整え、得意先への迅
速な対応が事業継続と社会的信頼に
被害
予測
BCP策定
事前対策
発災時アクション支援
早期復旧
支援
活用する支援技術
13
発災後に建設会社に期待される役割
79
80
■役割
・施工中現場における二次災害の防止と工事の
早期再開
・竣工物件の被災状況調査と復旧支援
・社会基盤、災害拠点施設の早期復旧支援
・公的機関、民間企業の早期事業再開支援
(7) 東日本大震災時の鹿島建設の活動事例
■必要なアクション
・本社への重要機能、情報、データの集中
・活動可能人数の把握
・膨大な対応物件、被災情報の分散、集中
鹿島建設のBCM体制
81
BCP策定
82
震災対策本部
災害調査班
復旧班
被災度判定班
得意先班
情報基盤班
広報班
救命・
安否 班
従業員自宅耐震診断
支店
工事事務所
従業員参集・帰宅評価
支援システム
鹿島建設ホームページより
鹿島建設ホームページより
BCP策定
83
BCP訓練
84
従業員自宅耐震診断
従業員参集・帰宅評価
鹿島建設ホームページより
鹿島建設ホームページより
14
85
BCP訓練
警報発報時の現場での対応訓練
86
鹿島早期地震警報システム
88
様々な状況を想定した
訓練を年2回実施
(毎月訓練の部署も)
鹿島建設ホームページより
87
BCP支援技術
ハニカムダンパ
免震装置
ユーザーの所掌
気象庁の所掌
制震装置
○時○分○秒・
震源○○・M○○
の地震が発生!
建物被災モニタ
感知
地震
発生
震度○が
○秒後!
通報
EV停止!
避難開始!
P波の揺れ
が到着
鹿島早期地震
警報システム
S波の揺れ
が到着
分析
数秒
数秒
余裕時間(震源からの距離に依存)
観測点位置で変動
広域被災マップ
情報統合バインダ
リアルタイムモニタリングシステム
89
■地震時のリアルタイム情報を利用して、建物の防災管理
をサポートするシステム
鹿島建設ホームページより
緊急地震速報
RDMS(Real time Data Mitigation System)
90
■鹿島早期地震警報とリアルタイムモニタリングシステムを
組み合わせたシステム
秋葉原UDXでの適用事例
15
東日本大震災への対応履歴①
91
3月11日
・地震直後に震災対策本部を立ち上げ(本社、関東、東北、東京土木、東京建築、
横浜)
・社員の安否、社有施設・建設現場・得意先の被災状況の調査を開始
3月12日 10:00現在
・社員の安否確認の結果、東北支店内1現場(釜石)と連絡取れず。
・東北支店への救援物資(防寒具・食料・水・MCA無線等)の運搬準備中。
3月12日 13:00現在
・12:30頃
12 30頃 本社ならびに中部支店から、救援物資を積載したトラック第一陣が東
本社ならびに中部支店から 救援物資を積載したトラ ク第 陣が東
北支店へ出発。
・12:50 安否未確認だった東北支店内1現場(釜石)の社員について無事が確認
されました。
3月12日 14:00現在
・救援物資を積載したトラック第二陣(3台目と4台目)が、本社から東北支店に向
けて出発。
3月12日 18:30現在
・救援物資を積載した先発隊ワゴン(北陸支店出発)が、東北支店に到着しまし
た。
東日本大震災への対応履歴②
3月13日 10:30現在
・救援物資を積載したトラック11台が到着し、荷降ろし準備
を開始しました。他のトラックも既に東北地方に入ってお
り、数十台のトラックが受入体制に合わせ順次到着予定
です。
・防寒具・食料・水・MCA無線等に加え、工事用照明、土嚢
袋、ブルーシートなどの救援物資を積載したトラックの出
発準備を行っています。
3月13日 17:00現在
17 00現在
・東北地方の社員の安否は、震災時休暇中の社員1名を
除き、全員の無事を確認しました。
・本社からの支援要員は、3月13日までに21名派遣しまし
た。明日14日に技術系社員を更に18名派遣する予定で
あり、今後も現地の要請に応じて増員を検討していきま
す。
・救援物資を積載したトラックは、3月13日までに29台が出
発しており、既に18台が東北支店に到着しています。
・ワゴン(北陸支店出発)が、東北支店に到着しました。
鹿島建設ホームページより
東日本大震災への対応履歴③
93
3月14日 10:00現在
・東北地方の社員全員の無事を確認しました。
・救援物資を積載したトラックは、現在までに33台(本社・東京土木支店・東京建
築支店17台、横浜支店6台、北陸支店2台、中部支店6台、関西支店2台)が出
発しており、30台が東北支店に到着しています。
・支援要員(技術系社員9名)を乗せたバスが、10:00に本社を出発しました。
3月15日 17:00現在
・昨日出発した本社圏の技術系社員19名(陸路9名、空路10名)は、昨夕、東北
支店に到着しました これまでに土木系技術者16名 建築系技術者40名を派
支店に到着しました。これまでに土木系技術者16名、建築系技術者40名を派
遣しています。
・当社施工の建造物を中心に、被災状況の確認依頼(約400件)に対して現況確
認を行っており、安全等に応急処置が必要なものについては鋭意対応を進め
ております。
鹿島建設ホームページより
東日本大震災への対応履歴⑤
95
3月22日
・救援物資の輸送、支援要員の派遣、復旧対応、被災状
況確認等を継続的に実施しています。
・クリネックススタジアム宮城では、クレーン車や重機が
到着し、照明塔、事務スペースなどの復旧工事が始まり
ました。
92
鹿島建設ホームページより
東日本大震災への対応履歴④
3月16日
・本社ならびに各支店から出発した支援車両は、本日ま
でに延べ61台となっています。支援物資は、食料、カ
セットコンロ、毛布、簡易トイレ等の生活支援品から投
光器、ポンプ等の復旧支援品や燃料まで多岐に渡って
おります。
・得意先からの支援要請は、1200件を超えており、逐次
対応を進めています。
・本社圏のオフィスは、照明・空調の設定変更やエレベー
本社圏のオフ スは 照明 空調の設定変更やエレベ
タの稼働台数を減らす等を行い、14日(月)から節電に
努めております。
3月18日
・東北支店震災対策本部では、震災直後から得意先の
災害復旧に向けて、資機材、人員の手配、燃料、食料
の補給等について具体的な作業を進めています。
・当社は、これまでに得意先から様々な支援要請を受け、
約1,500件に対応しております。今後も、協力会社ととも
に被災地の復旧・復興へ向けて全力で取り組んで参り
ます。
94
鹿島建設ホームページより
東日本大震災への対応履歴⑥
96
3月25日(震災後2週間の主な活動報告)
震災対策本部
・地震発生直後に、中村満義社長を本部長とする震災対策本部を本社に設置し、
東北支店内に赤沼聖吾支店長を本部長とする現地対策本部を設置しました。
・本部内の各班からの情報整理、一元化を図るため、本部事務局の組織強化を
実施しました。
・社内の震災関連システムに、被災地地図や支援人員・物資の状況などの支援
情報を一元的に管理し、全社的に活用できる機能を追加しました。
活動拠点 物資拠点の整備
活動拠点・物資拠点の整備
・物資支援を継続的に運搬できるように拠点を整備しています。―東京地区の
集積ヤードは、本格的に稼動を開始しました。
・広域にわたる災害に対応するため、東北地方に4箇所の前線基地(物資の集
積や宿舎)を整備しました。
被災物件への対応
・得意先などから依頼のあった約1800件の建造物の被災度判定や調査を実施
し、緊急度に応じて建物の耐震補強、壁・天井復旧など緊急対応工事を実施し
ています。
・鉄道・道路などの交通インフラの復旧支援を実施しています。
鹿島建設ホームページより
鹿島建設ホームページより
16
東日本大震災への対応履歴⑦
97
3月25日(震災後2週間の主な活動報告)
支援人員・支援物資の状況
・全国から技術系社員を中心に延べ130名の支援人員を派遣しています。
・地震発生翌日に支援物資を積載したトラック4台が被災地に向かったのを皮切
りに、25日までに約200台のトラック等で支援物資(飲料水、食料、日用品、燃
料、資材など)を運搬しています。
・今後も被災地の状況に合わせ、支援人員の派遣、支援物資の運搬を継続的
に実施していきます。
社員安否 事業所の状況
社員安否・事業所の状況
・全従業員の無事を確認しています。また、被災地域の事業所において、事業継
続に影響を及ぼす被害はありませんでした。
節電対策
・本社圏のオフィスは、照明・空調の設定変更やエレベータの稼働台数を減らす
等の節電対策を実施しています。
98
おわり
鹿島建設ホームページより
17