平成23年度予算に向けた府政に関する提言 - 民主党・無所属ネット大阪

平成23年度予算に向けた
府 政 に 関 す る 提 言
2010年12月3日
民主党・無所属ネット大阪府議会議員団
大阪府知事 橋 下
徹 様
民主党・無所属ネット大阪府議会議員団
幹 事 長 西 脇
邦 雄
政調会長 井 上
章
平成23年度大阪府予算編成時期を迎え、大阪府の将来の発展を確実なものとするために、
大胆な戦略と計画性を持った予算とすべきことを、ここに提言いたします。
私たちは、前回の政策提言において、
「大阪府財政構造改革プラン≪素案≫」に対する、民主
党・無所属ネット大阪府議会議員団の見解と、
個々の政策がどうあるべきかを提言しましたが、
継続して、執行当局の動向を注視していることを申し添えます。
大阪産業経済リサーチセンターによると、平成22年7月から9月期の大阪府が置かれてい
る状況は、景気は持ち直し傾向が続くとされているものの、国内外を取り巻く環境は依然とし
て厳しく、来年度の政府の財政収入の不確定要素も大きく、地方財政計画についても見通しが
不透明と言わざるを得ません。
一方、大阪府の周辺環境の変化として、12月1日に関西広域連合の設置が許可され、将来
の地域主権改革に大きな希望が与えられたことを挙げなければなりません。関西広域連合が政
府の地域主権改革による国の出先機関の受け皿として有効に機能するよう、大阪府が中心的な
役割を果たすことが必要です。このため、9月3日に近畿圏の民主党議員団と交流を行い、関
西広域連合についての意見交換を行いましたが、今後ともこれを継続していくこととします。
さらに、私たちは政権与党の一員として、前原前国土交通大臣、川端前文部科学大臣、片山
総務大臣などに対して、府政に関する提言を積極的に行ってきました。
平成23年度予算は、私たちの任期の中で最後の予算となりますが、昨年9月の政権交代以
来、政府の政策が人を中心とする政策に大きくシフトしていることと連動して、政策転換が必
要で、高校授業料無償化の実現は、その象徴でもあります。
また、大阪府が従来から持つ権限のうち、基礎自治体に関するものについては、受け手とな
る市町村の不安を取り除き、権限と財源をセットで移譲し、より有効に政策がすすめられるこ
とを求めるところです。
同時に、大阪の収入を増やすためには、成長戦略をどう描くかが大きなポイントになります
が、私たちは都市制度の見直しではなく、都市政策の立案による財政収入の拡大が必要だと考
えております。
今回の提言は、こうした視点に立って、私たちの政策の取りまとめを行ったものです。
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Ⅰ.アジアとともに成長する大阪(会派提案)
近年、アジア諸国は産業集積が進み、豊富な人的資源を背景に急速な発展を遂げてきた。
とりわけ、中国は、国民総生産が我が国を越えるところまでくる一方で、我が国がかつて経
験した環境問題や都市化による問題など、早急に解決すべき課題が山積している。
大阪にとって、こうした問題解決に支援することは、大きなビジネスチャンスととらえる
べきであり、我々が学んできた技術、経験をアジア諸国に移転することにより、成長エンジ
ンとしての大阪、アジアにおける大阪を確立することができる。
大阪がアジアの拠点となるためには、ベイエリアをはじめとした府域において、空港・大
学・研究施設・企業を十分に立地させた上で、これらを有機的に連携させ、その機能を最大
限に発揮させるためのインセンティブをどのように加えるかが、大きな行政課題となる。
1.関西における航空行政の変化に対応した新政策の実現
政府は関西空港を首都圏空港と並ぶ国際拠点空港として再生するために、関西空港と大阪
空港のキャッシュフローから生み出される事業価値をフル活用する政策を発表した。私たち
は政府に対して、オープンスカイ政策を両空港で実施し、アジア諸国をはじめ世界とのネッ
トワークの再構築を進めるために、
関西空港へのLCCの就航促進や貨物ハブ化を提言した。
政府がすすめるとしている、訪日外国人3000万人達成に向けた観光プロモーションに
合わせて、関西広域連合と連携し、大阪の観光戦略を立案すること。
2.即効性のあるアクセス交通の改善
関西空港へのアクセス交通の解決は喫緊の課題の一つである。
「夢に終わる関空リニア」や「なかなか実現しない、なにわ筋線の延長」ではなく、JR・
はるか、南海・ラピートの増発をはじめ、主要都市間のシャトルバスなど即効性のあるアク
セス改善に今すぐ、取り組むこと。
3.関西空港・大阪空港のベストミックスによる観光内際一体化の実現
両空港は、ひとつの空港として双方の機能活用が必要とされている。
特に、大阪空港の強みは利便性の良さであり、ビジネス利用にとっては大きな利点となっ
ている。観光インバウンドは内際一致で関西空港政策を強め、アクセス交通の改善が実現す
るまでは積極的な活用でパイを拡大し、大阪の成長に活用すること。
4.観光立国の推進
関西は自然、文化遺産をはじめ地域性など多様な観光資源を有しており、ポテンシャルは
全国のどの地域よりも高い。エコツーリズム、グリーンツーリズム、産業視察など魅力的な
メニューを提供することが必要である。
観光による国内外の交流人口の拡大は地域経済の活性化や雇用機会の創出につながる。特
に、関西広域連合とともに、関西全体での統一的な政策づくりをすすめること。
※エコツーリズム:環境問題に重点を置きながら、自然と調和した観光開発を進めようという考え方。
※グリーンツーリズム:農村や漁村での長期滞在型休暇。都市住民が農家などにホームステイして農作業
を体験したり、その地域の歴史や自然に親しむ余暇活動。
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5.宿泊観光客の拡大、国際医療交流の推進
外国人延べ宿泊数197万泊(平成21年1∼12月)を2.5倍に引き上げることをめ
ざし、大阪が持つポテンシャルを生かす工夫をおこなうこと。
その手法として、クールジャパン―大阪の伝統技術、先端産業、ポップカルチャー、食文
化などの発信やりんくうタウンに国際医療交流特区をつくり、先端医療の交流、外国人医師
スタッフの研修拠点をめざすこと。
※クールジャパン:日本の文化面でのソフト領域が国際的に評価されている現象、またはそれらのコンテ
ンツそのものを指す用語。
6.ライフイノベーション、グリーンイノベーションをアジアに
大阪の伝統である医薬品など健康、介護関連産業を近い将来、高齢社会を迎えるアジア諸
国に展開するための新しい政策を立案することや、ベトナムと提携しアジアに展開している
大阪市の水道技術につづき水ビジネスを展開する政策を広域行政体として進めること。
同時に、公害問題の解決に取り組んだ大阪の経験をアジアに移転をめざし、上下水道、環
境技術、都市計画などのノウハウで協力すること。
※ライフイノベーション:医療・介護分野における革新。
※グリーンイノベーション:環境エネルギー分野における革新
7.関西州立大学をめざして
大阪には多くの高等教育機関があり、現在(平成21年5月現在)でも123,829人の留学生
が学んでいる。しかし、拠点形成と集中投資により、関西が持つ学問分野での強みを生かす
とともに、関西州の実現をにらんで、州立大学も設立をめざすこと。
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Ⅱ.部局を横断する施策について
1.歳入確保・歳出削減に向けた取組み
(1)平成検地
府有地の一筆ごとの土地について所有者・筆界・地積などを調査し、その結果を地籍簿に
まとめる地積調査を早急に進めること。これにより、府有財産管理の適正化が図られるとと
もに、明確となる不要物件の払い下げによる歳入確保などの効果が期待できる。
(2)未登録法人の補足調査
大阪府内に事務所・事業所を有しながら設立の届出がない未登録法人の補足調査をおこな
うとともに、大阪府外に本店のある法人を中心とした高額滞納事案に対する徴収対策を講じ
ること。
(3)自治体クラウドの研究
近年、クラウド・コンピューティングの導入による新しい自治体行政のあり方が議論され
ている。総務省においては研究会を立ち上げ、電子自治体の構築を検討しているが、本府に
おいても、府民からの各種申請サービスや基礎自治体への権限移譲の進展の中、税の徴収・
滞納整理の共同化や地域保健業務、各種認定審査会などの共同化のツールとしての研究を進
めること。その際、情報漏えい対策など実施上の課題への対応についても検討すること。
※クラウド・コンピューティング:インターネットを経由して、ソフトウエア、ハードウエア、データベ
ース、サーバーなどの各種コンピューター資源を利用するサービスの総称。
2.就職困難層への支援施策の強化
特に就労支援を必要としている若年者、高齢者、母子家庭の母、障がい者、ホームレスの
方等に対して、市町村や地域就労支援事業推進協議会と連携を深め、キメ細かな取組みを強
化すること。さらに、景気悪化によって仕事とともに住居を無くした方への住宅手当の支給
に加え、府営住宅の活用など、実効ある支援施策を検討、強化すること。
また、
今年4月に施行された、
いわゆる大阪府ハートフル条例が実効あるものとなるよう、
関係機関と連携し、障がい者の雇用の促進のための取組みを強化すること。
3.中小企業が受注機会を得られるような入札制度の改善
工事契約について、入札制度の抜本的な改善に取り組み、透明性を高め、府内の中小企業
が公平に受注の機会を得られるよう考慮すること。また、学校、府営住宅については、府内
の中小企業に発注すること。
4.知事が提案する議案のあり方
地方自治法149条は普通地方公共団体の長がその団体の運営事務について、長の議会へ
の提出についてそれぞれ9項にわたり定めている。
議会は長の議案提出を受けて、第96条で議決すべきものが定められている。
長と議会は車の両輪という言葉が使われるがまさに、このことをおこなっているのではな
いか。
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仮に、地方自治法が改正され、新しい地方公共団体の運営手法が導入されても、議会とし
て、真摯な議論を妨げるものではなく、長の議案提出権と責任が回避されるものでは決して
ないものと考える。
今年5月議会での工事請負契約の件にかかる知事の発言は当然のことながら、知事が議案
提案にあたり責任を持つことは、地方自治法上、当然のことと考える。
5.咲洲・大手前まちづくり
(1)咲洲・夢洲地区まちづくり
大阪・阪神港スーパー中枢港湾とともに、府市連携の代表事業として共同フロアーの設置
を実効性あるものにするために総合特区を活用し、許認可の期限の短縮やさらなる規制緩和
を進め、府市連携で進出のためのインセンティブをさらに高め、成長戦略を底支えするまち
づくりをすすめること。
(2)大手前・森之宮まちづくり
府庁周辺地区のまちづくりは、大阪城を中心にしたにぎわい集客拠点として位置づけられ
ることになっているが、成人病センターの建設とどのようにマッチングさせるのか。
森之宮地区については、市場調査を徹底し、周辺府民とともに将来像を明らかにさせ、府
の役割を十分に発揮させること。
6.動物愛護施設の建設及び動物愛護担当部局の再編
成人病センターの移転に伴う犬管理指導所の整備にあたり、動物愛護施設の建設を推進す
ること。そのため、健康医療部と環境農林水産部とに分かれている動物愛護の所管部局を再
編し、動物に関する相談窓口を一元化すること。
7.戦略的な道路・鉄道整備
産業・経済の活性化と道路・鉄道の整備(物流効率)は比例するものと考えられる。この
ため、関空の国際物流拠点としての整備、産業地域の形成、ミッシングリンクの解消、幹線
交通網の整備等に向けた戦略的な道路・鉄道の整備に取り組むこと。
※ミッシングリンク:分断された鉄道や(高速)道路のこと。
8.道路行政の一元化
現在、国における道路の予算措置等は国土交通省と農林水産省においておこなわれており、
府における予算措置等は、一般の道路については都市整備部が、農道については環境農林水
産部が、それぞれ所管しているところである。今後は、縦割り行政の弊害を排し、効率的な
道路行政をおこなうため整備・維持管理業務等の所管部局の一元化を図ること。
9.子どもを育てるために部局横断的な取組みを
子どもを育てるためには、児童福祉、母子保健、商工労働、教育、住宅等の各分野にまた
がるものが多く、効果的な施策を推進させる上で関係部局が連携して部局横断的に取り組ん
でいくことが重要である。
子ども・未来プラン(後期計画)において、アウトカム指標(施策や事業の成果、効果を
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示す指標)が示されているが、この指標から今後の施策推進にあたって「どのような取組み
が必要か」
、
「どのような取り組みを重点的におこなうか」を包括的に判断できるかが課題と
認識するところである。
そこで、例えば、知事の下に「子ども・子育て施策推進本部」を設け、その本部において
各部局が取り組む子ども・子育て施策の点検・評価をおこない、この結果を施策の企画立案
プロセスに組み込んでいくなど、PDCAサイクルを定着させるための包括的な体制づくり
を検討すること。
10.府域全体を理解できる資料づくりを
府勢の情報開示においては、政令市、中核市を含め府内全域の状勢が理解できるようにす
ること。
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Ⅲ.部局ごとの施策について
1.総務常任委員会所管
(1)関西広域連合を大きく育てる
関西広域連合がいよいよ発足の運びとなった。東京一極集中を打破するためには、関西広
域連合を通じ関西、大阪の持つポテンシャルの活用が急務であり積極的な展開をはかってい
くこと。併せて、地方が力を発揮するためにも国の出先機関の移譲を強く求めていくこと。
また、不参加団体に対しては粘り強く加入を働きかけること。
(2)市町村への分権の更なる推進
昨年度、大阪発 地方分権改革 ビジョンに基づき、府内市町村に特例市並みの権限移譲
を進め、今後3年間の移譲計画が出された。しかし、現状の市町村の受け入れ状況は100%
から20%台と大きな開きがある。府内全市町村に特例市並みの権限移譲を進めていくため
には、移譲を受けていない市町村に対しても移譲が進むよう、引き続きアプローチをおこな
い、市町村間の行政サービスにバラつきが生じることのないよう努めること。
また、市町村への分権をより一層推進するためにも、昨年度市町村との協議の対象としな
かった事務について、積極的に移譲を進めていくこと。
(3)低額発注に歯止めを
公共工事の発注においては予定価格、調査基準価格、失格基準価格などを事後の公表に切
り換えること。さらに、低額発注に歯止めをかけるため、現状を踏まえた具体的な制度を検
討すること。
(4)新公会計制度の導入
新公会計制度の導入にあたっては、府民にとってわかりやく、透明性の高いものとする点
に十分留意すること。
2.府民文化常任委員会所管
(1)男女共同参画推進の取組み
①男女共同参画の推進にあたって、大阪府男女共同参画推進財団が長年蓄積してきた知識や
ネットワークを有効に活用して施策推進に努めること。
②身近な市町村でのDV被害者支援の体制作りが円滑に進むよう、支援を強化すること。
③DV被害者が自立に向けて踏み出せるよう、就労支援、就労環境整備、すぐに入居できる
住宅など、生活支援について強力に取り組むこと。
(2)文化施策について
大阪府内でおこなわれている全ての文化・芸術行事を網羅し、大阪アートフェスティバル
として日程・地域ごとに大阪府のホームページで情報を発信すること。
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また、路上ライブなど若者の文化・芸術活動に、発表する機会を提供し、優秀なグループ、
作品を表彰すること。
3.教育常任委員会所管
(1)家庭の教育力サポート
子どもの生活習慣と学力には相関関係があると言われており、子どもが勉強に集中できる
家庭環境、将来にむけてがんばる気力を持てる支援が必要である。そのためには、スクール
ソーシャルワーカーの拡充やその人材育成をおこなうとともに、スクールソーシャルワーカ
ーが活動しやすい環境を整えることにより、福祉施策の活用も視野に入れた支援ができるよ
う取り組むこと。
(2)学力向上に向けた取組み
一人ひとりの子どもたちに確かな学力を育むためには、毎年「学力テスト」のために時間
や費用を費やすのではなく、学校現場の実情に合わせた効果的な取組みが各学校現場から創
出されるよう、環境整備に努めること。
また、教職員が授業内容をよりよいものにするための時間の確保や子どもと向き合うため
の時間の確保については、本年6月から実施している教育職員の勤務時間把握の結果を踏ま
え、すみやかに有効な対策を講じること。
(3)少人数学級拡充に伴う諸課題の検討
教員の役割が授業に特化されている傾向がある諸外国と比較して、我が国では教員が生徒
指導や進路指導、部活指導など授業以外にも様々な職務を担っている。また、来年度から新
学習指導要領に基づいて授業時間増が実施される。教師の負担軽減を図り、子どもと向き合
う時間を確保するためにも、少人数学級の拡充は不可欠である。先日、文部科学省が、30
年ぶりに40人学級を見直し、35・30人学級の実現など10年ぶりの新たな教職員定数
改善計画を策定ところである。具体的な数字は示されていないが、現行の40人から35人
(小学校低学年は30人)に引き下げられることが予想される。府教育委員会は、早急に少
人数学級拡充に伴い新たに必要となる教室など学校施設の整備調査、教師及び財源の確保に
向けた検討をおこなうこと。
(4)キャリア教育の推進
キャリア教育の推進は、不登校や中途退学、進路未決定、さらには卒業後の不安定就労を
防止する視点が大切なのはもちろんのこと、そうした課題をかかえていない児童生徒にとっ
ても不可欠の教育である。様々な理由から「志」を持てない児童生徒に「志」を持ってもら
うことと同様に、そうではない児童生徒がすでに心に秘めているであろう「志」を、さらに
深化・具体化させるという点も重要視しながらキャリア教育の展開をはかること。
(5)インクルーシブ教育に向けた条件整備
障害者権利条約の批准に向けて、政府は国内法の整備のため新たな障害者三法を検討して
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いる。条約では「障害のある人が、他の者との平等を基礎として、自己の住む地域社会にお
いて、インクルーシブで質の高い無償の初等教育及び中等教育にアクセスすることができる
こと」と記されている。これは、全ての障がいのある子が地域の小中学校に全員就学するこ
とを意味している。しかし、わが国の現状は障がいのある子は、特別な学校でその子の障が
いに応じた教育を受けるべきだとする分離教育がとられてきた。条約の批准を控え、国際社
会のコンセンサスであるインクルーシブな教育を実現するためにも、府教委は障がいのある
子及び、その保護者が希望する場合は全て地域の小中学校に入学でき、かつ通常の学級に在
籍できるよう条件整備に取り組むこと。
※インクルーシブ教育:「障害者の権利に関する条約」が求める、障がい者を包容する教育。
(6)障がいのある生徒への対応
各行政区単位での高等学校への入学を可能にすること(各1校)
。進学を希望する生徒の進
学準備については、進学前段階における中学・高校間での連携を含めた進学指導の充実を求
める。何を学び身につけるかが、この生徒の一番の重要課題であることに鑑み、各段階で本
人はもとより、家族、教師、学校が関わり合える体制を整えること。
(7)府育英会奨学金の滞納者への対応
近年、府育英会においては奨学金・入学資金の返還金の滞納が増加しており、その結果、
教育のセーフティネットとしての奨学金制度を維持することが困難になりつつある。府育英
会においては、今年度から、
「滞納ゼロ作戦」を展開され、奨学金等の返済モラルの向上を図
るとともに、
返済資力がありながら返還に応じない悪質な者に強い姿勢で臨むとされている。
教育の機会均等を図ることを目的とする奨学金制度は、厳しい経済情勢下において、さらに
重要性を増している。
そこで、
将来にわたって奨学金制度を持続可能なものとする観点から、
悪質な滞納者に対して、滞納金の増額や滞納者対策に要した費用の転嫁などのより厳しいペ
ナルティを課すことについて検討をおこなうこと。
また、滞納が発生してから、経費をかけて滞納対策を実施するのではなく、借りる前から、
奨学金の意義や、返還の重要性について十分認識させるため、学校に責任感を持って生徒の
返還意識の向上に取り組むよう働きかけること。
(8)幼児教育の充実
府において学力向上に向けた諸施策を講じられてきたが、いまだ期待したまでの成果が上
がっていない。就学前教育の取組みにより、小学校以降の生活や学習の基盤が育成されると
考えられることから、高等学校の授業料無償化が実施されている中、就学前3か年(3・4・
5歳児)における保護者の負担軽減と、より効果的な幼児教育に係る経費に対する補助をお
こなうこと。
(9)公立高校の中途退学を防止する仕組み
本府の中退率は、全国平均値を大きく上回っている。平成20年度府立高校全日制における
中退の状況に関する調査データによると、
「もともと高校生活に熱意がない」
、
「人間関係がう
まく保てない」といった、
「学校生活不適応型」の原因については大きく改善しているが、
「学
業不振」
、
「授業に興味がわかない」といった、
「
(基礎)学力不足型」の原因については横ば
い・悪化傾向であった。これを踏まえると、中退にいたる生徒は、様々な複合的要因をかか
9
えて高校を辞めるものの、やはり最低限の基礎学力の担保というニーズが満たされていなか
ったのではないか。今後、中学校時代(あるいは小学校時代も含めて)からのつまづきや遅
れまでフィードバックして再学習できるシステムを構築する等、実効的な取組みを実施する
こと。また、基礎学力の向上対策について現状では、各高校の発意に依拠している部分が多
いと聞くが、高校間で取組みの差が出ないようにすること。
(10)進学指導特色校の教育実践
「豊かな感性と幅広い教養を身に付けた、社会に貢献する志を持つ、知識の重要性が一層
増すグローバル社会をリードする人材を育成する」目的で進学指導特色校が設置される。
本目的にあるとおりの大きな器をもつ人材を現実的に養成しなければならないが、その教
育実践にあたっては、単なる知識の習得だけではなく、様々な社会・文化的、技術的ツール
を活用して、将来の複雑な課題に自律的に対応でき得る力を獲得させなければならない。す
なわち、進学希望を実現したその先を見すえ、恵まれた才能を自らの幸福追求のみに使うよ
うな小人ではなく、自己犠牲の精神を有し、広く社会の幸福に貢献できる真の「人財」を育
むような教育プログラムを具体的に実践されたい。進学希望実現はひとつの通過点である。
(11)安全な給食
大阪産の安全でおいしい給食を子どもたちが味わえるようにするためにも、府内農産物の
使用率を高めること。
(12)部活動の活性化
公立中学校において沈滞している部活動を、幼い頃から集団や社会生活の規律を身につけ
られる場として活性化させる。そのために、外部指導員の確保や地位の明確化を一層進める
こと。
(13)夜間中学校への支援
夜間中学校における就学援助制度及び補食(府費負担)を復活すること。
4.健康福祉常任委員会所管
(1)虐待死ゼロへ―早期発見システムの確立と未然防止策の充実―
保護者による暴力によって幼い命が奪われるなど、重篤な事件が続発する中、大阪府でも
通告件数が増え続けている。
児童虐待が起こる背景には、保護者の経済的困窮や地域からの孤立、子育て経験の不足や
育児不安など様々な要因に加え、
「望まない妊娠」という深刻な状況も増えている。妊娠、出
産、子どもの養育に関わり、長期にわたるフォロー体制の確立が急務である。
子どもを虐待から守るため、以下の取組みを行うこと。
①妊娠初期からの様々な支援策の周知や相談体制を強化し、妊婦健診の未受診や飛び込み出
産等を回避すること。特に助産制度の国庫負担金基準額の引き上げについて国に要望する
とともに、ケースによっては助産制度の事後申請を認めるなど、柔軟な対応をおこなうこ
10
と。
②子育て支援と同時に児童虐待の早期発見を図る乳児家庭全戸訪問事業及び養育支援訪問事
業の全市町実施を推進すること。
③急増する虐待通告を一次的に受理し対応する市町村の相談体制の充実と、要保護児童対策
地域協議会の機能の充実に向けて支援すること。
④重篤な事案に対応する子ども家庭センターが、的確な対応ができるよう職員体制を充実す
るとともに、一時保護の受け入れ体制の強化を図ること。
(2)貧困ビジネス対策
9月議会で「大阪府被保護者等に対する住居・生活サービス等提供事業の規制に関する条
例」が全国に先駆けて制定されたことは評価している。
しかし、目的とされている「被保護者等の生活の安定と自立の助長を図る」点で、その実
効性に十分ではないと思われる点があることから、附帯決議案に示されたとおり、特定商取
引法など関係法令の競合適用を明確にして、被害者の転居などに対する市町村の取組みへの
支援など、明記された府の責務を確実に遂行すること。
(3)精神障がい者に対する支援の充実
身体・知的に比べ、精神障がい者への施策はまだまだ不十分である。三障がいともに同様
の対応となるよう関係機関への働きかけとともに、府自らも取組みを強化すること。
(4)発達障がい児、重症心身障がい児・者等への施策
発達障がい児、重症心身障がい児・者等への施策をさらに充実すること。
(5)共生介護
これまで府は、街かどデイハウス事業や行政の福祉化など、全国に先駆けて地域の力を活
かすことや、縦割り行政の壁を破る取組みを進めてきたが、今後とも新しい発想で福祉行政
に取り組むことが必要である。高齢者や障がい者、子どもなど誰もが住み慣れた地域でデイ
サービスを受けることができる共生介護の取組みが、
「富山型デイサービス」として全国的な
広がりを見せてきているが、府としても、市町村が取り組めるよう、情報提供を含め積極的
に働きかけること。
(6)未受診や飛び込みによる出産対策
母体と胎児の健康を確保する上で、妊婦検診を受けることは当然であるにもかかわらず、
近年これをまったく受診しない、あるいは2∼3回しか受診しないまま、分娩に至る「未受
診妊婦」
、または「飛び込み出産」と呼ばれる事例が見られ、社会問題となっている。
さらに経済的困窮者、医療保険未加入者、外国人等を中心にした妊婦検診未受診によるハ
イリスク分娩が増加している。このような事態を解消するため、以下の取組みをおこなうこ
と。
①助産制度についての周知徹底と、市町村窓口でのきめ細やかな対応をおこなうよう働きか
けること。
②産婦人科の救急搬送受け入れ態勢の整備をおこなうこと。
③助産制度の国庫負担金基準額の引き上げについて国に要望するとともに、ケースによって
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は助産制度の事後申請を認めるなど、柔軟な対応をおこなうこと。
④望まない妊娠を防ぎ、互いの尊厳を認め合える関係作りのためにも小、中、高校と発達段
階をふまえた性と生の教育を実施すること。
5.商工労働常任委員会所管
(1)制度融資による中小・零細企業支援
従来どおり中小・零細企業への円滑な資金提供を図るとともに、エンドユーザーである中
小・零細企業のニーズに応えられるよう、さらなる融資メニューについて検討をおこなうこ
と。
(2)中小・零細企業への支援
大阪の経済を支える中小・零細・地場産業の活性化に向けて、府の商工振興策は重要な施
策である。
そのためにも中小・零細企業の現状を的確にとらまえ柔軟な支援策が必要である。
これまでのタテ割り予算や二重投資を疑う予算については、検証したうえで思い切った見直
しをおこなうこと。そのうえで効果のある施策をたて、販路開拓及び企業誘致等が有効に機
能する支援を図ること。
(3)雇用の創出・労働行政施策の取組み強化
3カ年にわたり展開されている緊急雇用創出基金事業のほか、府内中小企業の需要促進
を図るなど、雇用の創出に力を入れること。また、大阪労働局や経営者団体、労働団体
などとも連携を深め、労働政策と産業政策の両面から相乗効果が期待できる施策を構築
すること。
(4)大阪府の工事を府内企業に優先発注させる
公共工事の発注は、
経営資源の脆弱な中小企業にビジネスチャンスを提供するものであり、
府内中小企業へのさらなる優先発注をおこなうこと。併せて「大阪府建設工事競争入札参加
資格等級」B2以上工事については、下請けも大阪府内企業とすること。
(5)下請二法の遵守とガイドラインの周知徹底
中小企業との公正取引の確立に向けて下請二法を更に浸透させるとともに、下請取引に関
する相談事業等を活発化させること。また、相談内容についての検証を、フォローと併せて
おこなうこと。
(6)改正貸金業法の改善
6月から改正法の完全施行により、年収の3分の1規制が導入され、近畿でも125万人の利
用者がこの規制に抵触し、新規借入れができなくなると言われている。
過払ビジネスの隆盛、不十分な生活再建などの課題解決として、府は貸金業特区の提案を
しているが、このままではあまりにも影響が大きいため、時限的に独自の融資制度の設計を
立案し「借り手」が多重債務に陥らないよう「借り手」が保護されるセーフティーネットを
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確立すること。
(7)企業立地促進制度の継続
第二種産業集積促進地域の地域指定は既に9市に及び、産業振興やまちづくり施策と連携
している。さらに第二京阪沿道まちづくりや、特区制度により地域指定されたエリアの活性
化を促進するため、産業集積促進税制(不動産取得税の軽減)や府内投資促進補助金制度は
引き続いて継続すること。
(8)中小企業の環境・新エネルギー技術の支援
日本が海外とのビジネス競争に打ち勝つには環境・新エネルギー技術の優位さといわれて
いる。今、関西、とりわけ大阪府は環境・新エネルギー技術を有する企業の集積地である。
その中でも大阪の中小企業部材メーカーの技術力は、国内外から高い評価を受けている。
こうした中小企業を躍進させるために府は、中小企業と海外や国内企業とのコーディネー
ター機能を発揮すること。併せて、こうした技術の裾野を広げるため産学官連携して、人材
の育成に取り組むこと。
(9)バイオクラスターの実現
古くより大阪は製薬の街としても名を馳せてきた。大阪に製薬企業が定着し、進出するた
めにはビジネス環境やバイオベンチャーへの支援が欠かせない。北大阪地域で展開されてい
る北大阪バイオクラスターは製薬企業、
バイオベンチャーなどのバイオ関連企業や大阪大学、
医療製造研究所、国立循環器病研究センターなどの優れた研究機関が集積しておりその強み
を活かすことが求められている。そのために、産学官あげての取組みに対し支援すること。
※バイオクラスター:バイオテクノロジー関連の企業や機関などが集中している地域。
6.環境農林水道常任委員会所管
(1)農林水産業を成長産業に育てる
地産地消、緑地保全、食料自給率向上、CO2対策などを推進するためにも府内の農林水
産業を育てることは大きな課題である。府においても食料自給率の目標値設定や、6次産業
化(生産・加工・流通の一体化等)に向けた研究をJAや、環境農林水産総合研究所、農と
緑の総合事務所、府立大学の連携で進めること。
(2)遊休農地の解消
増加傾向にある遊休農地の解消と都市農業の振興に向け、リタイヤ世代への貸農園の短期
貸付が可能となる仕組みを構築するとともに、農業と製造業・小売業などとの融合により生
産物の価値を高める「6次産業化」の視点からの取組みを進めること。
(3)街灯及び防犯灯のLED化の推進
電気料金の節減のみならず環境対策にも寄与することから、街灯及び防犯灯のLED化を
推進すること。また、節減された電気料金が地域のコミュニティ事業に充当されるなどの波
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及効果も見込まれることから、府として、その普及に取り組むとともに、自らも府有施設や
府道の街灯などへの導入を進めること。
(4)大阪府営水道のあり方
大阪市の余剰水も活用し、府水道一元化したうえで2010年4月に実施された10円/
㎥からさらなる値下げを追求すること。
(5)二酸化炭素(CO2)削減の取組み
ハードルの高いCO2削減値達成のためには、産業、運輸、業務、家庭での削減はもとよ
り、広く府民にも省CO2の考えを浸透させるよう努力をすること。
民間事業者ではどうしても減らせない排出量について、中小企業を対象とした「大阪版カ
ーボンオフセット制度」を引き続き推進すること。また、事業排出者としての府は有効な対
策をたて、環境行政の担い手としてイニシアティブを発揮すること。
(6)流入車規制
二酸化窒素及び浮遊粒子状物質対策として、排出基準を満たさないトラック・バス等の府
域の対策地域内への発着を禁止するいわゆる「流入車規制条例」の公布後、流入車の排出基
準非適合車の割合が大幅に減少するなど、一定の効果がみられている。さらに、この実効性
が定着するよう、以下の対策をおこなうこと。
① 他県からの流入が多い車の発着地における検査を、さらに強化すること。
②「工事等個々の事業所」の件数を改善するため、建設業界に対し、流入車規制の取組みに
ついて周知・徹底を図り協力を求めること。
7.都市住宅常任委員会所管
(1)道路渋滞の解消
①大阪における経済的損失の一つとして、
「道路渋滞」が挙げられる。その解消に向けた取組
みが重要であることから、早急に対策を講じること。また、そのための予算については、
政治判断において特別に考慮すること。
②特に、道路渋滞の解消のため必要とされるべき道路整備事業については、個別事業の優先
順位の検討をおこない、その推進を図っていくこと。
③生活道路と密接な関係がある幹線道路については、整備凍結を見直すとともに、解消し得
る道路渋滞に対しては積極的にその対策に取り組むこと。
④国道1号における慢性的な渋滞解消のため第二京阪道路が供用開始されたが、一方で、そ
の供用による新たな渋滞が懸念される。このため、インターチェンジ周辺道路、新たなア
クセス道路、市道などの生活道路への影響を調査し、新たな渋滞が見られる場合には、早
急にその対策に取り組むこと。
(2)府営住宅等のあり方
①世帯数の減少動向や住宅市場全体の状況を勘案し、今後の必要とされる管理戸数の見極め
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を適切におこなう中で耐震化を実施し、将来のストック戸数を具体的に定めるとともに、
活用するストックの具体的な箇所付けをおこなっていくこと。また、これらの取組みにつ
いては、対応可能なものから、順次、速やかに取組みを進めていくこと。
②府営住宅における指定管理者制度のモデル事業については、永年にわたる管理方法の変更
による悪影響が生じることのないよう留意すること。また、指定管理者制度拡大の方針に
ついては、モデル事業の導入効果についての十分な検証をおこなった上で定めること。
(3)大阪府都市開発株式会社の株式の一括売却
大阪府都市開発株式会社の株式の一括売却については、精査が不十分であることから、再
検討をおこなうこと。
(4)治水対策
府の河川整備計画など、治水対策に関するものについては、事前に市町村への説明・意見
交換を十分におこなった上でその策定をおこなうとともに、府民への説明責任を果たすこと
を考慮すること。
(5)河川の水質浄化
寝屋川水系や大和川などの府内河川の水質浄化は府民の大きなニーズである。水質浄化は
市町村との連携が重要であることから、協議会の設置など、具体的な取組みを進めること。
(6)区域区分の定期見直しにかかる弾力的な運用
都市環境の改善と都市活力の向上に資する計画的な開発事業については、定期見直しによ
らない、プロジェクト対応型の区域区分の見直しが可能となるよう、都市計画制度のさらな
る弾力的な運用をおこなうこと。
(7)第二京阪道路沿道まちづくり
先に開通した第二京阪道路の沿道の北河内5市では、各地区のまちづくり協議会が計画的
なまちづくりを進めている。これを進めるには、産業の核となる製造業・流通業の誘致や農
地の保全など土地利用の方針が重要となる。また、土地利用の混在を防止するためにも必要
な都市計画の決定、企業のニーズ調査の情報提供やまちづくり事業の支援など、各市と府の
関係部局が連携しまちづくり事業の推進を図ること。
(8)四大緑地への防犯カメラの設置
府営公園の四大緑地における安心安全確保の観点から、防犯カメラを設置すること。
8.警察常任委員会所管
(1)地域防犯力日本一をめざして
全国でも発生件数が多いひったくり犯罪や、後を絶たない女性を狙った性犯罪などに対処
するためにも繁華街、及び大規模公園を中心に防犯カメラを増設すること。犯罪抑止と取り
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締まり強化のために引き続き警察官の増員と、パトカーをはじめとする装備資器材の重点的
な整備をおこなうこと。
(2)必要ある個所への信号機の設置をおこなうこと
交通安全において重要な役割を果たす信号機の設置については、府民からの設置要望に十
分に応えられるよう、予算枠の拡大などにより設置数を大幅に増やすこと。
特に、子どもや高齢者の事故を防ぐため、地元の意見を聞きながら歩行者と車両を完全に
分離する歩車分離信号も設置すること。
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