S-2 乳癌におけるセンチネルリンパ節生検を用いた腋窩郭清省略の成績 慶應義塾大学 医学部 外科1)、慶應義塾大学 医学部 放射線科2)、慶應義塾大学 医学部 病理診断部3) ○神野 浩光1)、麻賀 創太1)、坂田 道生1)、北島 政樹1)、久保 敦司2)、向井萬起男3) 乳癌治療における腋窩郭清に代わる腋窩ステージング法としてのセンチネルリンパ節(SLN)生検の当 院における成績を報告する。2001年9月から2006年5月までの間に腫瘍径3cm以下、N0でインフォーム ドコンセントの得られた原発性乳癌患者558例を対象とし、術中病理診断にてSLN転移陰性の場合、腋窩 郭清を省略した。SLN同定には、Tc-99m標識小粒子化スズコロイド(粒子径:200-400nm)とisosulfan blueを用いた。術中転移診断はH&E染色にて行なった。術後転移診断にはさらにサイトケラチンに対する 免疫組織染色を行った。552例(97.8%)においてSLN同定可能であり、平均SLN個数は2.7個であった。 406例(73.5%)は術中迅速にて転移陰性であり、腋窩郭清を省略した。術中病理診断にて転移陰性であ った406例中術後にH&Eあるいは免疫組織化学染色にて微小転移を40例(9.9%) 、isolated tumor cellsを 18例(4.4%)に認めた。微小転移40例中14例に二期的腋窩郭清を施行したが、13例(92.9%)ではさら なる腋窩リンパ節転移は認めなかった。観察期間中央値23ヶ月の時点で微小転移群40例とn0群353例の健 存率に有意差を認めなかった。腋窩郭清省略群392例中の7例に遠隔転移、1例に鎖骨上および内胸リン パ節再発を認めたが、腋窩リンパ節再発は認めていない。SLN生検を施行した558例の予後を2001年以前 に腋窩郭清を施行した腫瘍径3cm以下、N0の542例と比較したところ、生存率および健存率ともに両群に 有意差は認めなかった。以上より、SLN生検を用いた腋窩郭清省略は腋窩郭清に代わる有効な低侵襲治 療であることが示唆された。
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