質量分析とマイクロダイアリシスの統合 杉浦 悠毅 慶應義塾大学 医学部

質量分析とマイクロダイアリシスの統合
杉浦 悠毅
慶應義塾大学 医学部 医化学教室 / JSTさきがけ
近年の質量分析(MS)の技術発展により、多くの低分子代謝産物が高感度か
つ網羅的に計測可能になった。
従来は、細胞内に多量に存在する代謝産物(例えばリン脂質や主要な糖代謝
産物)のみがMSで計測可能であったが、現在は細胞間シグナリングに関わる生
理活性分子(例えば神経伝達物質)も十分に検出可能な選択性と感度を備えてい
る。
しかしながら、マイクロダイアリシスによる回収試料中には、液体クロマ
トグラフィー(LC)MS計測にとっては高すぎる濃度の塩が含まれており、これ
が質量分析とマイクロダイアリシスの統合を妨げていた。
私達は試料中の塩に対する高キャパシティの分析系として、イオンクロマ
トグラフィー(IC)を導入し、新規IC/MSによりマイクロダイアリシス回収試料
から数百に及ぶ既知因子、未知因子の検出に成功した。これにより、従来の
標的を定めたマイクロダイアリシス実験から、実験動物に対する特定の摂動
を加えた際の変動因子を網羅的に探索する事が出来る。
まだまだ未完成の技術であるが、この場を借りて、さらなる改良の方向性
と応用研究について議論したい。