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2014/1/28
(厚生労働科学研究 食品製造の高度衛生管理に関する研究(2002))
牛肝臓、胆嚢内胆汁および
肝管内胆汁様液中の
Campylobacter属菌汚染調査
牛胆嚢内胆汁のカンピロバクター属菌汚染について
― 肝臓の病理組織学的アプローチ ―
岐阜県食肉衛生検査所 野崎恵子
胆嚢内胆汁
60/236 (25.4%)
肝管内胆汁
31/142
(21.8%)
肝臓
27/236
(11.4%)
胆嚢内胆汁中のカンピロバクター属菌が
肝臓実質に与える影響について
仮説①
肝臓実質へ侵入し炎症
性病変を起こす。
仮説②
胆嚢炎を起こし、その
炎症は肝管を通じて肝
臓実質まで波及する。
胆嚢
肝管
汚染
調査項目
1) カンピロバクター属菌量 (胆嚢内胆汁)
2) 病理組織像 (肝臓・肝管)
材料
採材方法
1 胆嚢内胆汁
1 調査期間
平成24年10月~11月
2 材
料
管内Yと畜場で処理された肥育牛25頭
(黒毛和種3頭、交雑種22頭)
胆嚢内胆汁、肝臓及び肝管組織
(と畜検査で合格となったもの)
と体から肝臓を摘出した直後に
無菌的に採取
2 肝臓及び肝管
5cm
肝管
肝臓
1
2014/1/28
方法
方法
1)カンピロバクター属菌量検査
2)病理組織学的検査
炎症性病変
胆嚢内胆汁
10倍段階希釈
0
CCDA寒天培地に20μ ℓずつ滴下
37℃で48時間微好気培養
10
10
1
10
10
弱い
中間
強い
肝臓実質
H-1
H-2
H-3
肝管
Hd-1
Hd-2
Hd-3
門脈域
Pr-1
Pr-2
Pr-3
4
2
10
発育コロニー数を計測
3
観察ポイント① 肝臓実質
観察ポイント② 肝管
炎症の指標
肝管粘膜における炎症性細胞浸潤
細菌性肝炎の指標
好中球を主体とした
炎症性細胞浸潤を伴う
肝細胞の巣状壊死
レベル
H-1
0-数個
Hd-1
レベル
粘膜層に0~まばらに浸潤
H-2
散在性
H-3
び漫性
組
織
像
組
織
像
Hd-2
Hd-3
粘膜層に集族
線維筋層まで浸潤
粘膜層
線維筋層
観察ポイント② 門脈域
炎症の指標
カンピロバクター属菌量検査結果
12
門脈域における
炎症性細胞浸潤
非検出群
検出群
10
8
度6
数
レベル
Pr-1
0-数個
組
織
像
Pr-2
散在性
Pr-3
び漫性
4
2
0
検出限界
未満
(50cfu/ml)
102 103 104 105 106 107
(cfu/ml)
2
2014/1/28
① 肝臓実質における細菌性肝炎
② 肝管及び門脈域における炎症性細胞浸潤
n.s.
100%
100%
80%
60%
H-1
80%
H-2
60%
40%
40%
20%
20%
0%
0%
非検出群
n=10
検出群
n=15
Hd
Pr
Hd
Pr
Pr-1
Pr-2
Hd-1
Hd-2
Hd-3
非検出群
非検出群
非検出群
n=10
検出群
検出群
検出群
n=15
n.s.: not significant
まとめ(仮説①)
まとめ(仮説②)
仮説①
カンピロバクター属菌は、肝臓実質へ侵入し
炎症性病変を起こす。
仮説②
カンピロバクター属菌は胆嚢炎を起こし、その
炎症は肝管を通じて肝臓実質まで波及する。
推論①
推論②
肝臓実質の炎症性病変
非検出群 < 検出群
結果①
肝管の炎症性病変
非検出群 < 検出群
門脈域の炎症性病変
非検出群 < 検出群
肝管の炎症性病変
非検出群 < 検出群
門脈域の炎症性病変
非検出群 ≒ 検出群
結果②
肝臓実質の炎症性病変
非検出群 ≒ 検出群
考察
・今回の調査結果において、胆嚢内にカンピロ
バクター属菌を保菌することによる肝臓実質
への炎症性病変等の影響は病理組織学的に
認められなかった。
今後の課題
・定期的に肉眼検査の精度を精密検査で検証
→ 食肉中に内在するリスクを探求
・カンピロバクター属菌による肝臓の汚染機序を究明
→ 食肉の農場から食卓までの一貫した衛生管理
・本菌の胆嚢内保菌と胆嚢炎・肝管炎発症に
何らかの因果関係がある可能性は残された。
安全で衛生的な食肉の供給
3