地盤工学演習試験 解答および採点基準 1. 地盤材料の締固めに関する以下の問い全に答えなさい。ただし、土粒子の比重、間隙比、含水 比、飽和度、水の単位体積重量をそれぞれ Gs、e、w、Sr、γw で表すとする。解答に必要なパラ メータがあれば各自定義して用いなさい。(25 点満点) (1) 湿潤単位体積重量γt=1.56tf/m3 で含水比 w=20%の状態の土取り場から 10000m3 の土を採取する。 その場合の土の総乾燥重量はいくらか求めなさい。ここで、γw=1.0tf/m3 とする。 (解答) γt=γd×(1+w)であるので,γd =γt/(1+w)=1.56/(1+0.20)=1.30tf/m3。よって,土の総乾燥重量は,1.3tf/m3 ×10,000 m3=13000tf 【誘導 2 点+答え 3 点=5 点】 (2) 上記の採取した土を全て用いて締め固めをした土構造物を建設する。最適含水比 wopt=40%の 状態にするにはどれだけの水を加減すればよいか答えなさい。 最適含水比 wopt=40%にするにはあと 20%の水を加えればよいので,13000tf×(0.40-0.20)=2600tf の水を加えればよい。 【誘導 2 点+答え 3 点=5 点】 (3) 一つの土について w を変えて締固め試験を行い、得られた乾燥単位体積重量γd との関係を示 す締固め曲線(γd ~ w)は、砂と粘土ではどのような違いがあるのか図を用いて示しなさい。 (解答) 乾燥単位体積重量, γd 最大乾燥重量, γdmax 砂 粘土 最大乾燥重量, γdmax o 最適含水比,wopt 含水比,w 最適含水比,wopt 締固め曲線 図に示すように,一般に,砂の方が最適含水比 wopt は低くて乾燥密度は高く,かつ締固め曲線は 尖った形状を示す。一方,粘土は wopt は高く乾燥密度は低い。また,平滑な締固め曲線となる。 【図示 2 点+特徴記述 3 点=5 点】 (4) 締固めにより全ての空気が追い出され Sr =100%となった極限的締固め状態での乾燥単位体積 重量γdsat を Gs、w、γw を用いて表しなさい。また、一つの土について、締固めエネルギーがこ となる場合、締固め曲線はどのように変化するか、図を用いて示しなさい。図中にはゼロ空 隙曲線も示すこと。 (解答) 乾燥単位体積重量, γd エネルギー 大 ゼロ空隙曲線 γdmax エネルギー 小 o wopt 含水比,w 締固め曲線 全ての空気が追い出され Sr =100%となった極限的締固め状態での乾燥単位体積重量γdsat は, γd =γt/(1+w)=(Gs+eSr)/(1+e)/ (1+w) → (wGs= eSr)を用い,Sr =1 を代入すると → γdsat=1/( 1/Gs + w )×γw となるので,γdsat と w との関係は図のようになる。いずれの締固め曲線もこ の曲線の上方に位置することはない。 【誘導 2 点+答 3 点=5 点】 また,図に示すように,締固めエネルギーが大きくなると最大乾燥密度は低く,その際の含水比 は低くなる。 【図示 3 点+特徴記述 2 点=5 点】 2. 右の図1のような透水係数が異なる 2 つの層からなる土 の 1 次元の flow がある(A は断面積、k は透水係数)。この 16cm 透水に関する以下の問いに答えよ。なお、A=16cm2、Soil1 の透水係数 k1=1×10-4cm/sec、Soil2 の透水係数 k2=4× 8cm 10-4cm/sec とする。(25 点満点) (i) 流量 Q および流速の分布を求めよ。 12 点 (ii) 位置(縦軸)~位置 head、圧力 head、全 head(横軸)関係 のグラフを書け。 8cm Soil1 16cm Soil2 9点 (iii) Soil1 の飽和単位体積重量がγsat1=1.6gf/cm3 、Soil2 の 飽和単位体積重量がγsat2=1.8gf/cm3 である場合、この土 はパイピングするかしないか答えよ。する場合はどこで パイピングが起こるのか説明せよ。 4点 図1 (i) Soil1 と Soil2を流れる水の流量は等しい。 Q = Q1 = Q2 k1i1 A = k2 i2 A ⇒ 1*10−4 × i1 × 16 = 4 *10−4 × i2 × 16 ⇒ i1 = 4i2 また、全 head の損失は Soil1,Soil2 での損失の和で表される Δh1 + Δh2 = Δh ⇒ i1l1 + i2 l2 = 16 ⇒ 8i1 + 16i2 = 16 ⇒ 32i2 + 16i2 = 16 ⇒ i2 = 1/ 3 Therefore, i2 = 4 / 3, 流量 Q = k1i1 A = 1*10 i2 = 1/ 3 −4 4 × × 16 = 2.133*10−3 cm3 / sec 3 4 = 1.33*10−4 cm / sec 3 流速 v1 = k1i1 = 1*10−4 × 流速 v2 = k2 i2 = 4 *10−4 × 1 = 1.33*10−4 cm / sec 3 (ii) Soil1 の損失 Δh1 = i1l1 = Soil2 の損失 Δh2 = i2 l2 = 4 × 8 = 10.67m 3 1 × 16 = 5.33m 3 24 Height 16 ht hp he 8 0 0 4 8 12 16 20 24 28 32 36 40 44 48 ht, hp, he, (iii) 24 20 Height 16 12 σ u σ' 8 4 0 -4 0 4 8 12 16 20 24 28 32 36 40 44 48 σ, u, σ' Soil2 から有効応力が不になるからパイピングを起こる。 3.図2のように飽和地盤の掘削を行った。12m の掘削によって、生じる透水に関して以下の問い に答えよ。(25 点満点) (i) この地盤のフローネットを描き、1 時間あたりの透水量 Q を求めよ。ただし、地盤の透水係数 k は 1.5×10-1m/day とする。 14 点 (ii) 図中の(A)地表面で矢板のすぐ左の点、(B)矢板の下で地表面から 20m の点、(C)矢板の先端 の右の点、 (D)地表面で矢板のすぐ右の点、の 4 つの点での全水頭、圧力水頭、位置水頭を答え なさい。なお、基準線は地表面とする。 8 点 (iii) 地盤の飽和単位体積重量 γsat=1.6tf/m3 であるとき、この掘削でパイピングが起こるかどうか 3点 答えよ。 (i) 流管の本数 Nf=8 等ポテンシャル線 Nd=12 1 時間あたりの透水量は Q = k ⋅ Δh ⋅ Nf Nd −1 1.5 *10 8 × 12 × 24 12 3 = 0.050m / hour = (ii) 全水頭 ht 位置水頭 he ht ( A) = 12m 圧力水頭 hp=ht-he he ( A) = 0m hp ( A) = 12m ht ( B ) = (12 − 6 × 12 ) = 6m 12 he ( B ) = −20m hp ( B ) = 26m ht (C ) = (12 − 7 × 12 ) = 5m 12 he (C ) = −6m hp (C ) = 11m he ( D ) = 0m hp ( D ) = 0m ht ( D ) = (12 − 12 × 12 ) = 0m 12 (iii) 矢板底部右側 C 点にかかる水圧 C 点にかかる全応力 σ = γ sat × z = 1.6 × 6 = 9.6tf / m 2 C 点にかかる有効応力 As, u = hp (C ) × γ w = 11tf / m 2 σ ' = σ − u = 9.6 − 11 = −1.4tf / m 2 σ ' < 0 パイピングを起こす。 4. 図3のような地盤がある。この地盤に井戸を 掘り下部の砂層から水をくみ上げた結果、下部砂 層の水位が 10 m 低下した。粘土層の圧密につい て以下の問いに答えよ。なお、粘土層は過圧密で、 Gs = 2.60、e = 1.0、Cc = 0.8、Cs = 0.1、pc = 10 tf/m2、 Cv = 4.0 m2 / year とし、砂層は Gs = 2.65、e = 0.65 とする。また、砂層の沈下は無視できるほど小さ い。水の単位体積重量はγw = 1.0 tf/m3 である。 図3 (25 点満点) (i) 水をくみ上げる前(初期)の全応力、有効応力、水圧分布を示せ。(5 点) 砂層:γsat = (Gs + e) / (1 + e) = 2.0 tf/m3 粘土層:γsat = (Gs + e) / (1 + e) = 1.8 tf/m3 0 5 Pressure [tf / m2] 10 13 15 18 20 飽和単位体積重量の計算(1 点) 28 38 Total stress Pore water pressure u Effective stress ’ 全応力(2 点) 水圧(1 点) Depth [m] 5 有効応力=全応力–水圧 を満足(1 点) 15 20 水をくみ上げる前(初期)の全応力、有効応力、水圧分布 (ii) 水をくみ上げた直後の全応力、有効応力、水圧分布を示せ。また、水位が下がったまま長期 間維持された場合の最終的な全応力、有効応力、水圧分布を図示せよ。(8 点) ※ 地表面、砂層と粘土層の境界、下部砂層の底面ではそれぞれの値も記入せよ。 0 28 Total stress Pore water pressure u Effective stress ’ Depth [m] 5 5 Pressure [tf / m2] 10 13 15 23 38 全応力(1 点) 水圧(2 点) 有効応力=全応力–水圧 を満足(1 点) 15 20 水をくみ上げた直後の全応力、有効応力、水圧分布 0 1.67 5 10 Pressure [tf / m2] 23 38 Depth [m] 5 28 Total stress Pore water pressure u Effective stress ’ 全応力(1 点) 水圧(2 点) 有効応力=全応力–水圧 を満足(1 点) 15 20 水位が下がったまま長期間維持された場合の最終的な全応力、有効応力、水圧分布 (iii) この粘土層の最終沈下量 Sf を計算せよ。また、95 %圧密(時間係数 Tv95 = 1.129)にいたるまでに 要する時間 t95 を計算せよ。(8 点) ※ 必要ならば log 2 = 0.30、log 3 = 0.48、log 7 = 0.85、log 11 = 1.04、log 13 = 1.11 を用いよ。 Sf = H Cs p Cc σ′ 0. 1 10 0.8 14 = 10 log c + H log log + 10 log pc σ 0′ 1 + e0 1 + e0 2 9 2 10 1 (1 − 2 log 3 + 8 log 2 + 8 log 7 − 8) = 1.24 2 2 = 0.64... = 0.64 m = t = H ′2 沈下量の計算式(2 点) 過圧密を考慮した Sf 算出(2 点) Tv 1.129 = 52 = 7.05625 Cv 4. 0 圧密時間係数の関係式(2 点) 95%圧密時間の算出(2 点) = 7.06 year (iv) 井戸水のくみ上げをやめることによって水位が回復し、長時間経過した。このとき粘土層は どのように変位するか示せ。(4 点) Sf = H Cs 9 σ′ 0.1 log log 0 = 10 14 σ′ 2 1 + e0 1 = (2 log 3 − log 2 − log 7 ) 2 0.19 =− 2 = −0.095 m 有効応力の減少に伴い地表は隆起すること を明言(2 点) 除荷過程を考慮して Cs を用いた隆起量の計 算(2 点) 0.095 m 隆起する 問 4 の採点方針 ※ 有効桁数は異なっていてもよい ※ 常用対数の計算に関数電卓を用いており,設問で与えられた値と異なる値を算出し ていても,正しい解が導かれていれば問題はない ※ それ以前の設問で誤った解答をしていても,当該設問で正しい解答を示していれば 正解とする
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