Ⅲ.船舶からの海洋汚染等防止対策の推進 - 国土交通省

Ⅲ.船舶からの海洋汚染等防止対策の推進
◇ 国の動き
地球表面積の約7割を占める海洋は、地球環境の変化と大きく関わるため、海洋汚染を防止し、
海洋環境への負荷を低減させることが一層重要となっている。このため、我が国は、船舶による汚
染の防止のための国際条約(※ MARPOL条約)の締約国として、海洋生態系に深刻な影響を与
える油や有害物質の流出防止に加え、船舶に起因する大気汚染の防止対策、また、衝突や船舶火災
等の海難事故発生時等における対応措置等の取組を関係機関と連携しながら着実に進めている。
近年の大規模油汚染の背景には、海上安全・海洋環境保全に関する条約等の基準を満たさない船
舶(サブスタンダード船)の存在が大きな要因の一つであり、これを排除していくために、日本に
寄港する外国船舶に対して、確実にポートステートコントロール(PSC)を実施する。PSCで
は、国内の港に入港する外国船舶に対し立入検査を実施し、船舶の構造設備等の整備状況や、乗組
員へのインタビューを通じて乗組員が必要なオペレーションに精通していること等、国際条約に基
づく基準適合性を確認し、重大な欠陥が発見された場合には出航前の是正を命令するなどして、海
洋汚染の未然防止に努める。
船舶の座礁事故等による油濁損害賠償や船体撤去等は、船舶所有者等の責任において対応するの
が原則であるが、賠償資力を欠く船舶の座礁等により、被害者への損害賠償や船舶の撤去等が適切
に行われていない事態が発生したことから、国土交通省では、放置座礁船問題等に対応するため、
平成17年3月1日からタンカー以外の外航船舶(国際総トン数100トン以上)に対しても、船
主責任保険(P&I保険)の加入を義務付けている。また、船主責任保険の加入を強制することが
困難な無害通航船(領海内を通航する船舶)等、無保険船舶からの流失油の防除作業等をやむを得
ず実施した地方自治体に対する支援措置を平成16年度から講じている。
さらに、平成20年9月17日には、海洋環境保護の観点から、AFS条約(船底塗料に有機
スズ化合物を含む防汚塗料の使用を規制するための国際条約)が発効しており、本条約への基準
適合性を確保するため、日本船に対する定期的検査時の確認に加え、外国船に対するPSC等、
必要な措置を講じている。
※
MARPOL条約:船舶による汚染の防止のための国際条約で、汚染物質毎に以下の規則が
附属書として規定されている。
附属書Ⅰ油、附属書Ⅱばら積み有害物質、附属書Ⅲ容器収納有害物質、附属書Ⅳ船内発生汚
水(ふん尿等)、附属書Ⅴ船内発生廃棄物、附属書Ⅵ船舶からの大気汚染
【ポートステートコントロール(PSC)の様子】
【油水分離器】
【油水分離器の作動テスト】
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◆ 中部運輸局の動き
1.船舶からの海洋汚染防止対策
① 海洋汚染防止設備の整備点検
《施策概要》
(担当部課:海上安全環境部 船舶検査官、外国船舶監督官)
船舶からの海洋汚染の防止を図るため、海洋汚染防止設備について適切な監督指導を実施する。
《平成23年度の施策・目標》
平成22年度に引き続き、油及び有害液体物質に係る海洋汚染防止設備について、事故等に
より海洋環境に重大な影響を及ぼす油タンカーや危険物運搬船等に重点的に立入検査・監督を
行い、旅客船にあっては年末・年始及び夏季の総点検の機会に、また、その他の一般貨物船等
にあっては、年間を通じて立入検査・監督を実施し、当該設備の保守・管理の強化に努める。
また、船舶からのふん尿・汚水及び生活ゴミ等の廃棄物についても、適宜、立入検査を実施
して、適正な排出及び処理の監督指導に努めるとともに、海洋環境に有害な有機スズ系塗料の
使用を規制する海洋汚染対策に取り組む。
(危険物運搬船目標隻数 26隻)
(夏季及び年末年始総点検目標事業者数 56事業者)
(ポートステートコントロール目標隻数 509隻)
2.放置座礁船の未然防止・船舶油濁損害事故の防止対策
① 船主責任保険未加入船舶の排除等
《施策概要》
(担当部課:海上安全環境部 海事保安・事故対策調整官、外国船舶監督官、船舶安全環境課)
放置座礁船を未然に防止し、船舶油濁賠償保障制度で被害者の保護を図るため、管内各港に入
港する外航船舶の船主責任保険の加入状況等を確認し、適切な監督指導を実施する。
《平成23年度の施策・目標》
船主責任保険未加入船舶の管内各港への入港を排除し、船舶に積載されていた油による海洋汚
染を防止するため、引き続き船舶油濁損害賠償保障法に基づく保障契約通報による確認業務の確
実な遂行、船舶への立入検査による保険加入の有無、保障契約証明書等の船内備置を確認する。
是正が必要な船舶には、保障契約証明書等の船内備置命令や保障契約締結命令等の行政処分を行
い、是正を指導する。
(保障契約証書確認等 国際航海船舶 500隻)
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3.船舶からの大気汚染防止対策
① 船舶に対するオゾン層破壊物質の規制
《施策概要》
(担当部課:海上安全環境部 船舶検査官、船舶安全環境課)
船舶に対するオゾン層破壊物質の規制により大気汚染の防止を図る。
《平成23年度の施策・目標》
フロン、ハロン等の物質を船舶の設備等において新たに使用することを禁止するとともに、オ
ゾン層を破壊しない物質を使った設備等が普及することを目的として、船舶に対し定期的検査に
併せて立入検査を実施する。
(船舶立入検査目標数 154隻)
② 船舶からの排出ガス対策
《施策概要》
(担当部課:海上安全環境部 船舶検査官、船舶安全環境課)
船舶からの排出ガスに対する規制により大気汚染の防止を図る。
《平成23年度の施策・目標》
船舶について海洋汚染防止条約及び海洋汚染等防止法に基づく、窒素酸化物(NOx)、硫
黄酸化物(SOx)及び揮発性物質等の大気汚染物質に関する規制並びに船舶発生油焼却等に
よる大気汚染防止のための設備に関する適正な検査・監督に取り組む。
特に、海洋汚染防止条約附属書Ⅵの改正(平成23年1月1日発効)に伴い、船舶からの窒
素酸化物(NOx)の放出について規制が強化されており、本件に該当する検査・監督の強化
に努め、船舶からの排出ガスによる大気汚染の低減を図る。
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