2012年9月6日 世界初!2 種のポリ乳酸積層フィルムで従来の圧電効果を超越 新規透明圧電材料の開発について 関 西 大 学 帝 人 株 式 会 社 関西大学(本部:大阪府吹田市、学長:楠見 晴重)システム理工学部田實佳郎教授と、 帝人株式会社(本社:大阪市中央区、社長:大八木 成男)の新フィルム開発推進室は、世界で初めて ポリL乳酸(PLLA)とポリD乳酸(PDLA)の 2 種類のポリ乳酸フィルムを用いることで、 簡便な積層プロセスにより製造することができる、透明かつ柔軟性があり、従来にない高い 圧電効果(*)を有する材料(圧電材料)を開発しました。 (*)圧電効果:ある物質に圧力を加えた時、その圧力によって生じたひずみに比例して電力が発生する現象。この 作用を利用して、衝撃・振動センサーなどとして用いられる。逆に、電力を加えることでゆがみが 起こる現象を逆圧電効果といい、この作用を利用することにより、スピーカーや超音波振動子などの アクチュエータ(電気エネルギーを機械的運動に変換する装置の総称)として用いることができる。 1.背景 (1)従来、圧電材料としては無機系物質が多く使用されており、その中でも圧電効果の 高さから、一般的にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が用いられています。PZTは、 鉛を含有する特定有害物質ですが、他に代替可能な材料がないため、EUにおける 電子機器類への使用制限令の適用免除対象となっています。さらに、PZTはセラミックス であることから、柔軟性に乏しく、大型化や軽量化が難しい物質とされています。 (2)こうしたことから、PZTの代替となる高い圧電効果に加え、透明性や柔軟性があり、 大型化・軽量化が可能で、簡便な製造プロセスで生産することができる環境に配慮した 圧電材料の開発が望まれています。 (3)有機系の圧電材料としてはポリフッ化ビニリデン(PVDF)が知られていますが、 逆圧電効果による作用が弱く、さらに熱により電荷が生じるため、電気電子部材としての 使用が難しいことから、その用途はセンサーなどに限られています。加えて、PVDFや PZTは、圧電性能を発現させるために製造過程で直流高電界を与える必要があり、 エネルギー負荷の高い製造方法となっています。 (4)これに対し、ポリ乳酸は延伸することで配向され、特定方向に圧電効果が生じることが広く 知られていますが、その効果は低く、実用化に至っていません。また、圧電材料を積層 することで圧電効果が大きく なることも知られていますが、 ポリ乳酸は圧電効果により ひし形に変形(ずり変形)する ことから、効果が発生する方向 を揃えて積層することが難しい ため、連続生産や積層数の 調整が困難とされていました。 (図1) 2.新規圧電材料の概要 (1)このたび開発したポリ乳酸積層フィルムは、PLLAフィルムと、その光学異性体(キラル 高分子)であるPDLAフィルムを積層させたもので、PZTを凌駕する圧電効果を発揮 しつつ、従来以上に大型化・軽量化を実現可能な柔軟性を有する圧電材料です。また、 有機電極などを使用することにより、透明性のある圧電材料を製造することも可能です。 (2)PLLAフィルムとPDLAフィルムは、同一方向の電界において正反対の動きをする 物質です。この特性を利用することにより、双方のフィルムの間に正極と負極を交互に 挟み込むだけで、2 種類のフィルムの動きを同一方向に合わせることができ、より簡便かつ 実用的なプロセス(共押出法)で製造することが可能となります。さらに、この積層 フィルムは、積層数によりその圧電効果をコントロールできることから、顧客のニーズに 応じて圧電効果を自由に設定することが可能です。(図2) (3)また、関西大学田實教授の研究により、ポリ乳酸はある一定の純度を超えると圧電性が飛躍 的に向上することが解明されており、帝人の有するポリ乳酸精製技術から生まれた高純 度PLLA、およびPLDAを使用することで、より高い圧電効果を発揮すること ができます。 3.今後の展開 (1)このたび開発した圧電材料は、高い圧電性能に加えて、透明性や柔軟性を有し、大型化が 可能な環境配慮型の新規圧電材料として、従来のPZTでは対応が難しかった部位での、 圧力や振動、衝撃などを感知するセンサー用途や、超音波モーター、医療用超音波振動子、 スピーカーなどにおけるアクチュエータ 用途など、幅広い用途での実用化に向けた PZT 新開発の圧電材料 研究開発を進めていきます。 (2)帝人は、L乳酸とD乳酸によりステレオ コンプレックス構造を形成することで、 耐熱性を 210℃以上と飛躍的に高めた高耐熱性 バイオプラスチック「バイオフロント®」 を 2006 年より展開していますが、今後も ポリ乳酸の新たな可能性を追求し、付加価値 の高いポリ乳酸製品を開発・市場展開して いきます。 以 【当件に関するお問合せ先】 ・報道関係のお問合せ:帝人株式会社 広報室 [東京](03)3506-4055 [大阪](06)6268-2763 関西大学 広報室 (06)6368-0007 ・その他のお問合せ:帝人株式会社 新フィルム開発推進室 (0584)64-7120 上
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