真空管アンプドライブのビンテージスピーカーによるスーパーステレオ(4

オーディオ論壇収載
真空管アンプドライブのビンテージスピーカーによるスーパーステレオ(4)
スーパーステレオへのオートグラフミニの導入
昨年 10 月のインターナショナルオーディショウでタンノイの新製品オートグラフミニ
を聴き、その足でダイナミックオーディオに行って発注したのですが、入荷が遅れてな
かなか入手できず、やっと年始に入手いたしました。
このオートグラフミニを Telefunken の L61 と繋ぎ替えたところ、来ていくらも経って
いないのに、まるで、ずっと前から居たような存在感を示して鳴っています。
まず、音の佇まいですが、「鳴りっぷりがいい」の一言につきるようです。パワーをぶ
ち込んでいっても、小型の割には音が崩れません。それから点音源の良さでしょうか、
関西オーディオ界にその名を知られた合唱指導者の故井伊先生のロジャースの BBC 小
型モニターの井伊サウンドと同様、音場が部屋全体に広がります。
音質ですが、
当初は中高域の硬質なピーキーな響きとわずかな中低域の箱鳴りが気にな
りましたが、エージングが進み、また、インフラノイズのマグナライザーを3点支持で
かませたことによりほぼ解消しました。高域は 54kHz までの再生が可能なドーム型チ
タニウムダイアフラム/ネオジウムマグネットのツイーターにより、かなりディテール
を良く描き出してくれます。また、低域は、サイズからして望むべくもありませんが、
スーパーステレオのおかげで、Telefunken の L61 と比較して遜色はありません。中低
域は箱の材料がバーチのせいか、よく響きわたります。全体としてタンノイとしてはニ
ュートラルな音ですが、敢えて言えば、タンノイ一族ではレッド一家に近い質感があり
ます。
ソースとの相性ですが、インターナショナルオーディショウのデモと同様、結構 Jazz
系にフィットします。ソニーロリンズや MJQ がそれらしく鳴ってくれます。シンバル
に力があり、スーパーステレオのおかげでベースが弾むのがご愛嬌です。
クラシックでは、意外にも室内楽よりもオーケストラに威力を発揮します。音量をあげ
ても音が崩れないこととディテールを描き出すこと、金管がばんばん鳴ることが取り柄
です。アルプス交響曲やサンサーンスのオルガンが聴けるミニスピーカーと言えます。
一方、弦楽合奏や木管などでは Telefunken の L61 のソノリティの良さにかないません。
また、ピアノでもわずかなキャンつきがあり、Telefunken の L61 の方が全音域のバラ
ンスが良いようです。新潟のビンテージショップ「しなの音蔵」で最初に Telefunken
の L61 を購入したのがピアノの先生で、オールペーパーコーンでありながらピアノが
良く鳴るスピーカーということで、オートグラフミニの弱点というよりか、Telefunken
の異能ぶりといった方が良いでしょう。
ボーカルも硬質になるのではないかという危惧もありましたが、Telefunken の L61 と
いい勝負をします。声の張りでオートグラフミニ、声の質感で Telefunken でしょう。
アンプとの相性では、現在のアンプが Langivin の 6V6pp ですので、タンノイはやは
り直熱 3 極管シングルが合うかもしれません。また、現在使用しているバードランド
の DAC がマランツの SA-11S1 の DAC と比べてドライな感じがしますので、マランツ
のプレーヤーSA11-S1の質感をグレードアップできる DAC の導入が気になりだしま
した。
なお、オートグラフミニの導入に先立ち、リアの EMI のモニターとパラに繋いでいた
BAT1 をフロントの LINN とパラに繋ぎました。添付の写真では、Telefunken の L61
の上にあるムラタの ES103A が実際にはメインのオートグラフミニとパラに繋ってお
り、オートグラフミニの上にある BAT1 は、壁掛けのフロントスピーカーの LIN とパ
ラに繋いであります。BAT1 をフロントの LINN とパラに繋いだことにより、ステー
ジの前方向からの反射音をシミュレートできるせいか、一段と奥行き感が出てきました。
アナログでは、foQ のスタビライザーを購入しましたので、一段と SPU の艶が向上し
ました。つまり、foQ のターンテーブルシートとスタビライザーで LP をサンドイッチ
にしています。
以上、スーパーステレオとの相性では、オートグラフミニの点音源の良さとスーパース
テレオの臨場感増強作用が好結果をもたらしていると言えます。今後の課題としては、
好みの問題かもしれませんが、若干残っている硬質感を取るために、3極管アンプにす
るか、DAC を替えるかということでしょう。
結論としては、オートグラフのイメージが先行すると失望すると思いますが、小型スピ
ーカーの概念を変えるまったく新しい小型スピーカーであり、オートグラフミニは「小
さな巨人」と言えるでしょう。
以上