補聴器に関する認識 - 愛知学院大学学術紀要データベース

愛 知 学 院 大 学 心 身 科 学 部 紀 要 第 4号 (
4
9
5
4
)(
2
0
0
8
)
補聴器に関する認識
一一言語聴覚科学コースに在 籍する学生アンケート (
1
)より一一
北
村
洋
子*
わが国は,平均寿命の伸長と少 子化によって,高齢化率がいま や世界第 l位 の 国 と な っ た そ の 結
果,加齢に伴う難聴である老人性 難聴の患者はますます増加するも のと予測される.老人性難聴によ
る聴力低下は,補聴器を装用することで補うことが可能である. しかしながら,わが国の補聴器の年
間販売台数は欧米と比較して低 く,また補聴器に関する社会全 体の認識も大変低いのが実情で ある
本研究は,心身科学部言語聴覚 コースに在籍する学生における 補聴器に関する認識について検 討を行
ったその結果,補聴器を装用し ている人が身近にいない学生が 多く,また
補聴器は安価で比較的
耐久性にもすぐれていると認識している学生が多かった. しかし,実際には補聴器は高価であり,ま
た,永続的に使用できるもので もない.補聴器に関する正しい 認識が広く社会全体に普及する ことが
急務であると考える
キーワード:h
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1. 目 的
I
I
.方法
わが国は,平均寿命の伸長と少 子化によって,高齢
化率世界第 l位の国となった
対象は,心身科学部言語聴覚科学コースに在籍する
2007年のわが国の総
3年次大学生 29人(男性 6人,女性 23人)とし,補
人口に占める 65歳以上の高齢者人口は,過去最 高の
聴器についての認識に関する調 査を行った.言語聴覚
2,
667万人となり,その割合は総人口 の 21
.5%,つま
科学コースでは必修科目として 「補聴器」の講義が開
り 5人に 1人が高齢者ということになる.高 齢者人口
講されている.アンケート調査 は
は今後もさらに増加し続け
受講する前に実施した
2050年には高齢化率 3
5
.
7
%,つまり 3人に 1人が高齢者という超高齢社会の 到
i
補聴器」講義を
まず,「身近に補聴器を装用し ている人がいます
来が予測されている 1-2) このような高齢化社会にお
か ?J という設問で,「はい,いいえ」で回答を求めた.
いては,加齢に伴う難聴である老人性難聴の患者数も
次に,「補聴器を購入したい場合
まずどこへいきま
今後ますます増加するものと予測される .それに伴っ
す か ?J i補聴器の耐周年数はどれぐらい と思います
て,聴力低下を補うための補聴器 の需要も今後一層伸
か ?J i補聴器 1台あたりの価格はいくらぐらい と思
びるものと考えられる. しかし
いますか
わが国における補聴
?Jという各設問に対しては,「自由記入 J,
i
複
器の年間販売台数は欧米と比較 して低く,社会全体の
数回答可」とし,回答を求めた .補聴器の価格に関す
補聴器に関する認識も低いとさ れる.本研究は,心身
る設問で,金額に幅がある回答の場合は,便宜上,分
科学部言語聴覚コースに在籍す る学生の補聴器に関す
類した価格項目に該当していれば ,各項目に l人を計
る認識について,検討を行った.
上して集計を行った.
*愛知学院大学心身科学部健康科学科
(連絡先)干 4
7
0
0
1
9
5 愛知県日進市岩崎町阿良池 1
2 E
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j
p
-49-
村
子
北
洋
果
皿.結
(
人)
25
身近に補聴器を装用している人の有無については,
20
補聴器を装用する者が身近にいない学生が 8割を超え
た(図 1)
.
1
5
1
0
お万円以上
初万円以上
お万 円未満
日万円以上
初万円未満
回万 円未満
ω万円以上
5万円以上
ω万円未満
図 1 身近に補聴器を装用している人がいますか?
5万円未満
。
図 3 補聴器の価格(自由記入)
補聴器を購入する際の行き先を問う設問では,耳鼻
科や病院と回答した学生が最も多かった一方で,約
補聴器の耐用年数についての設問では
半数に近い 1
2人 の 学 生 が 眼 鏡 屈 と 回 答 し た そ の う
るいは
ち 5人は,眼鏡庖以外にも,耳鼻科,病院,補聴器専
められた
門屈を併せて回答していたが,残りの 7人は眼鏡庖単
1
0年以上と回答した(図 4).
独の回答であった補聴器専門庖・補聴器センターな
i5年 J,あ
i6年以上」と回答した学生が 1
9人と
i6年以上」と回答した学生うち,
多 く認
6人は
(人)
どを回答した学生も 7人あった.このうち 1人以外は,
1
2
補聴器装用者が身近にいない学生であった(図 2).
1
0
(人)
1
6
1
4
1
2
1
0
2
1人であった
4
年
6年以 上
-年 未 満
福祉 センター
市役所
電気底
補 聴 器専 門 庖
補聴器セ ンター
眼鏡庖
耳 鼻 咽喉 科
病院
多 くの学生にとって
補聴器は身近な医療機器では
ない.また,補聴器は安くて長持ちである,
補聴器 1台あたりの価格を問う設問に対しては,
以上 1
0万円未満は
3
年
図 4 補聴器の耐周年数(自由記入)
と誤って
理解している学生が多いようであった.アンケート 実
図 2 補聴器を購入する際の行き先(
複数回答可)
万円未満と回答した学生は
2
年
年
施後の「補聴器」の講義において
5
今回の結果やわが
国の補聴器事情について詳細な解説を行った.
5万円
4名全員が 5万円との回答であ
I
V
.考
察
った.また, 1
0万円以上 1
5万円未満は 3人であったが,
そのうち 2人は 1
0万円との回答であった
1
0万円以
加齢に伴う生理的な難聴を老人性難聴という.本来,
内で補聴器が購入できると回答した 学生は,延べ人数
ヒトの聞こえの能力は 20歳ごろをピークに,その後
にして 27人であった(図 3)
.
は加齢とともに,
しだいに低下する.老人性難聴は,
はじめは高音域から障害され,
- 50-
しだいに中音域,低音
補聴器に関する認識
域にもおよび,両側性,左右対称性にゆっくりと進行
万台ほどと推定されている 13,
1
6
) 通信販売による補聴
する 3) 難聴を自覚する年齢には個人差があるが, 50
歳台あたりから高い音 が聞こえにくくなる 3-4) 近年
器販売台数の増加の原因には,通信販売の補聴器が大
では,社会環境や生活環境の急速な変化によって,す
べての年代において聴力低下が指摘されているの.ま
られるだろう. しかし,聴力評価も調整もない通信販
売による補聴器を購入し装用したとしても,十分な効
た,生活習慣病である糖尿病や高脂血症,虚血性心疾
患や腎臓病などと老人性難聴との関連も報告されてい
果が得られるはずがない.その結果,「よく聞こえない」
「耳に入れる前から雑音がひどくて, とても使えない」
る6
) ことに糖尿病に関して は
栄養調査報告によれば
「使いこなせない J i大変革且悪品である」などの多くの
苦情が寄せられ,さらには「補聴器は使っても役に立
らなる増加が予測されている 7) 加速する社会の高齢
たない」などの補聴器に対する不信感さえ聞かれる事
態となっている 15-16)
化,社会・生活環境の急速な変化,生活習慣病患者の
わが国で補聴器を扱う販売屈の数は大変多く,実に
平成 1
8年国民健康・
成人の糖尿病患者と予備軍の
総数は 1
,
8
70万人と近年増加し続け ており,今後もさ
変安価であることが
もっとも大きな要因として挙げ
増加によって,老人性難聴はますます増加するものと
6,
000庖から 1
0,
000屈とも推定されている 13)
予測されるのである.
聴器販売居協会は
老人性難聴で聞きとりが悪くなると,話の内容を聞
き間違えたり,会話が理解できないなど,日常生活に
日本補
補聴器技能者の育成や販売庄の技
術向上,補聴器の適正供給と社会普及に取り組む団体
こえにくさは,精神的健康にも負の影響を与えること
であるが,日本補聴器販売庖協会に加盟する庖舗数は
現在のところ 971J
吉舗と (
2
0
0
8年 4月 20日時点),補
聴器販売庖総数のわず か 6分の l以下にすぎない 13)
がすでに報告されており
社会全体で老人性難聴に
補聴器の販売においては,「認定補聴器専門店 J, i認
適切に対応していくことが必要
定補聴器技能者」の 2種類の資格制度があるが,法律
も支障をきたすこととなる 8-9) 老人性難聴による聞
ついて正しく理解し
1
0
)
であろう.難聴が進行した場合は
個人の聴力の程度
的な規制ではないた め,現状では無資格 者であって
に合わせた適切な補 聴器を装用すること が必要であ
も補聴器の販売や調整 などの業務を行うこと ができ
る. しかし,補聴器を装用すれば何でもよく聞こえる
る17-18) このような状況のなか
ようになるわけではない.周囲の人は,補聴器を装用
聴器技能者」の認定制度が,そして, 1
9
9
5年より「認
定補聴器専門庖」の認定制度が始まった i認定補聴器
している人に対して,適切な配慮が必要である.時に,
補聴器のそばで大きな声で話しかける人があるが,そ
の必要はない .できるだけ静かな場所で,正面から普
通の声の大きさで
ゆっくり,はっきり話すことが必
要である 11) また
口形をはっきりと表現したり,身
振りや手振りを加えるなどの視覚的情報も会話を理解
するうえでの一助とな るので上手に活用する とよい.
1
9
9
3年より「認定補
専門庖」とは,財団法人テクノエイド協会によって認
定された庖舗で,要約すると以下のような認定基準を
満たす底舗である.①補聴器適合のための必要な設備
や環境が完備されている.②認定補聴器技能者が常時
従事している.③適正な補聴器販売業務が行われてお
また,会話をすすめる際には,一方的に話をすすめる
り,補聴器の調整記録の保存や管理が整備され,また
医療機関との連携も確保されている 13,
17-20) (
2
0
0
7年
のではなく,内容を理解できたかどうかを確認しなが
3月 3
1日までは全国補聴器専 門庖認定協会が認定業
らすすめると,よりよい 11) 加齢によって,言葉や 会
話,文章を理解すること自体にも時間を要するように
務を実施.) 2008年 3月 3
1日時点、では 506庖舗が認定
補聴器専門庖として認定を受けているが 18),補聴器を
なるため,会話の際には音の大きさだけでなく,話す
扱う販売屈の総数と比べれば
速さや話し方についても十分留意し,また視覚的情報
い.なお
も有効に活用することが大切である.
の場合,庖内に認定証書や認定プレート,ステッカー
などが掲示されているため,容易に確認することが可
圏内の補聴器製造業者や輸入販売業者が加盟する日
本補聴器工業会によ れば補聴器の年間国 内出荷台数
は45万台ほどである .補聴器販売台数の 多くは高齢
その数ははるかに少な
i認定補聴器専門庖」の 資格を有する庖舗
能である
i認定補聴器技能者」は ,少なくとも 5年
の販売実務経験,および,指定講習会の修得を経て,
者の購入によるもので,公的給付制度による購入は,
わずかに約 1割程度にすぎないのが 実態である 12-15)
験に合格した補聴器販売従事者に与えられる資格
この 45万台とは別に
で 17),近年では年平均 1
0
0人ほどが合格しており,現
財団法人テクノエイド協会が行う認定補聴器技能者試
近年では通信販売など による
補聴器販売が増加し ており,その数は 1
0万台から 1
5
在累計で 1
,
5
6
3人 が 認 定 を 受 け て い る (
2
0
0
8年 度 時
-51-
北村洋子
点)13,
1
8
). このような適正な補聴器販売・ 供給システ
ムの構築を目指す自主的な取り組みが着実にすすめら
る補聴器の主流は 小型のデジタル補聴器で、ある . し
かし,多様なオプション機能を搭載した小型のデジ、
タ
れているにもかかわらず,現状では,補聴器に関する
ル補聴器は,高額なものになると 1台 30万円以上にも
知識が不十分な従業員でも補聴器販売業務に従事して
なる .耳内に収まり外から見えにくい,あるいは,ほと
いる庖舗や,補聴器は特定管理医療機器であるにもか
んど見えないような小型の耳あな形補聴器は大変人気
かわらず,医療機関との連携が 全くない販売屈があ
が高く,園内では補聴器販売台数全体の半数以上を占
る16)
めている 12)
し か し 平 成 17年 4月の薬事法の改正により,
補聴器販売を行う営業所に対し
補聴器販売に関する
しかし小型の補聴器の場合,音の増幅に
限界があり,高度な難聴に対しては十分な補聴が得ら
安全管理者の設置が義務付けられた 15) 今後も法令を
れないという欠点も生じる .一方
もって,適正な補聴器の販売・供給システムが着実に
体をかけて装用するタイプの耳かけ形補聴器は,耳あ
確立されていくことが期待される.今回の結果では,
な形補聴器と比較して本体のサイズが大きく外観は目
補聴器を購入する際の行き先として眼鏡庖という回答
立つが,高出力も可能で,高度な難聴の方にも適応で
も多くみられた勿論
眼鏡屈のなかにも補聴器の適
きる.また,購入価格も比較的おさえられ,国内販売台
正な販売を行う庖舗もあるが, そうではない庖舗も少
数全体の 3分の l程度を占めている .補聴器を選択す
なからずあるということが大変懸念される . また,補
る際には, ことに外観が重視されがちであるが,個人
聴器センターや補聴器専門屈などの認定補聴器専門屈
の聴力の程度に合わせて選択することが何よりも優先
を意識した回答もあったが,現状ではその数が大変少
されなければならない.言葉の聞き取りやすさと快適
ないことが最大の問題といえよう .補聴器について相
な装用感を目指した多様なデジタル処理の開発によっ
談・購入する場合は
専門的な知識や技能を有する販
て,デジタル補聴器は飛躍的にその販売台数を伸ばし,
売員や有資格者が在籍し,補聴器適合のための必要な
いまや国内におけるデジタル補 聴器出荷台数は実に
設備が完備され,補聴器の機種選択,調整,装用効果
75.6%(
2
0
0
6年時点)までに上昇した 13-14) しかし,デ
の判定,評価が適切に行われる補聴器販売庖を選ぶこ
耳介に補聴器の本
とが重要である .相談先に迷う場合は,近隣の耳鼻咽
ジタル技術開発には多大な費用がかかるため,デジタ
ル補聴器は必然的に高価なものとなっている 13 14) デ
喉科を受診しでもよい.耳疾患の有無や現状の聴力に
ジタル補聴器はアナログ補聴器に比較して,言葉の聞
ついて正しい評価・診断をうけることは,補聴器を装
き取りにおいてより細やかな調整が可能となり,多様
ー
用するにあたり何よりも重要である.耳鼻咽喉科で補
なオプション機能を搭載することも可能になった.そ
聴器が必要であると診断された場合,次の 2つの方法
によって,適切な補聴器の購入にいたることが可能で
の代表的な機能のひとつとして 騒音抑制処理がある
言葉の聞き取りを阻害するような環境騒音,たとえば,
ある.①認定補聴器専門庖,あるいは適正な補聴器販
乗り物内の走行音や
売を行う補聴器販売庖協会加盟屈に紹介状を記載し,
補聴器の機種選択や調整を依頼する.②耳鼻咽喉科に
などを低減させる機能で,言葉の聞き取りやすさの改
善に大変有効であるとされている 13-14) そのほかにも
補聴器外来がある場合は,認定補聴器専門庖,あるい
様々なオプション機能があり
人が多い広い空間での雑踏騒音
多くの機能が付加され
は適正な補聴器販売を行う補聴器販売底協会加盟庄の
た補聴器であるほど高額になる.しかし,高機能で高価
販売員が補聴器外来に出向し
医師と協力して補聴器
なものほどよい補聴器というわけではない.個人の聴
の機種選択や調整・相談を行う.補聴器は個人の難聴
力や生活環境,必要性に応じた補聴効果が得られるこ
の程度に合わせた補聴器を適切に調整して,はじめて
とが何よりももっとも重要であり,効果が得られるの
十分な補聴効果を発揮することができる.耳鼻咽喉科
であれば,決して高額な補聴器を選択する必要はない.
医師や認定補聴器技能者
認定補聴器専門庖などが関
補聴器は耐久性にもすぐれ長期間使用できる,
と理
わる適正な補聴器の販売供給システムが,早期に広く
解する学生が多かった補聴器の 耐周年数は,公的交
社会全体に認識されることが必要である .
付制度における補聴器の再交付期間を参考にして,お
補聴器の価格は,機種(外観),信号処理方法(デジ
およそ 5年ぐらいとされている.ただし,使用状況に
タル,アナログ),多様なオプション機能によって,大
よっては,数年で故障してしまうこともあれば,逆に
変様々である.今回の結果では
1
0年以上にわたって使用できることもある. しかし,
5万円未満と回答し
た学生が延べ人数で 2
1人 と 大 変 多 か っ た し か し ,
近年の補聴器製造における技術 開発は大変めざまし
実際には補聴器は大変高価である.現在販売されてい
,
く
-52-
5年先には,より一層言葉が聞き取りやすく,装
補聴器に関する認識
用感にもすぐれた高機能な補聴器が現在より安く購入
できることだろう. しかし
社会白書
2)共生社会政策統括官 国立社会保障・人口問題研究所
日本の将来推計人口(平成 1
8年 1
2月推計)•
3)伊藤蕎ー,中川隆之 (
2
0
0
8
) 発達期から老年まで 600
万人が悩む一難聴 Q&A ミネルヴァ書房.
4) UchidaY,
NomuraH,I
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ohA,NakashimaT,
AndoF,
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5)下方浩史 (
2
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8
) 高齢者の聴力に個人差が大きいのは
何故か 一全身 の老化との関係において - A
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6) UchidaY,NakashimaT,N
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oN,AndoF
,ShimokataH
.
補聴器の需給が現状と変
わらなければ,補聴器の価格はまだまだ高価なもので
あるのかもしれない.補聴器は決して一生ものではな
いので,必要性に応じた補聴効果 が得られる補聴器を,
適正な販売ルートで購入し正しく使用すると同時に
定期的な聴力検査によって聴力の変動の有無を確認し
ていくことも非常に重要である .
今回の補聴器に関する認識調査は,言語聴覚士をめ
ざ す 言 語 聴 覚 科 学 コー ス に 在 籍 す る 学 生 に お い て 実 施
された
しかし , 言 語 聴 覚 士 は 補 聴 器 の 販 売 や 調 整 が
(
2
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4(
5
),
7
0
8
1
3
.
7)厚生労働省健康局総務課生活習 慣病対策室 平成 1
8
年国民健康・栄養調査結果の概要.
8)小寺一興 (
2
0
0
6
) 補聴器フィッティングの考え方 改
認められた職種であり,学生の中には,すでに補聴器
について興味をもって意識的に自学自習している学生
も含まれているものと思われる. したがって,追加調
査として,言語聴覚コース以外の大学生においても,
訂第 2版 診 断 と 治 療 社 .
9)山田弘幸,佐場野優一 (
2
0
0
7
) 聴覚障害 I 基礎編
補聴器に関しての認識調査を行い,その結果について
比較検討する必要があろう.
建吊社.
わが国の高齢化率はいまや世界第一位となり,老人
1
0
) 矢嶋裕樹,間三千夫,中嶋和夫,他 (
2
0
0
4
) 難聴高齢
者の聴力低下が精神的健康に及ぼ す影響 A
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J
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4
9
1
5
6
.
1
1
) 神埼仁,安野友博,古賀次郎 (
2
0
0
1)補聴器 Q&A一よ
り良いフィッティングのために 金原出版.
1
2
) 有限責任 中間法人日本補聴器工業会 ホームページ.
1
3
) I補聴器供給システムの在り方に関 する研究 I
I
J 報告
書 「補聴器供給における QOL向上策に関する提言 に
性難聴の増加,補聴器の需要の増加は,もはや避けが
たい状況である.しかし
社会全体に広く早急に正し
い補聴器に関する認識が普及されることが望まれる状
況でありながら,老人性難聴や補 聴器というテーマは,
生活習慣病である糖尿病や高血圧,高脂血症などと比
較すれば,マス・メディア等で取り上げられることが
はるかに少ないのが現状である.だが,必要性が生じ
向けて J (
2
0
0
7
) 補聴器供給システム在り方研究会.
1
4
) 河村ちひろ,河野康徳 (
2
0
0
7
) 福祉用具の供給システ
ムに関する研究 一 補聴器供給における QOL向上策
を中心として
新潟青陵大学紀要第 7号
, 8
7
9
9
.
1
5
) 小寺一興 (
2
0
0
6
) 補聴の進歩と社会的応用 診断と治
て初めて補聴器について学び理解するのではなく,高
齢者を支える家族や周囲の人,また,地域全体,社会
全体が,必要な知識として正しく補聴器について理解
しておくことが大切である.より多くの人が補聴器や
療社.
1
6
) 国民生活センター (
2
0
0
7
) 通信販売の補聴器等の安全
性や補聴効果-販売サービスに関 する調査も含めて
その販売供給システムについて正しい認識を持つこと
によって,適正な補聴器販売や供 給体制が確立され,
また,補聴器への信頼回復にもつ ながるものと考える.
1
7
) 田内光 (
2
0
0
3
) 補聴器の供給体制 -補聴器に関する
資格や法律にはどのようなものが あるか- ENTONI
No.30,すぐに役立つ補聴器装用の実際, 6
5
7
0
.
個人の生活環境や必要性に応じて適切に補聴器を装用
することは,身体的,精神的 q
u
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l
i
t
yの改善のみならず,
社 会 経 済 的 発 展 に も つ な が る と 報 告 さ れ て い る 13 14)
ー
1
8
) 財団法人テクノエイド協会平成 1
9年度事業報告書.
適正な補聴器販売供給システムの確立,そして,補聴
1
9
) 有限責任中間法人日本補聴器販売庖協会
器に関する正しい認識の普及が,早急に望まれる
2
0
) 小寺一興編
の選択と評価
引用文献
1)共生社会政策統括官高齢社会対 策
ホームペー
ン
平成 20年版高齢
- 5
3-
図説耳鼻咽喉科 Newapproach1 補聴器
M
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lview社.
最終版平成 20年 9月 30日受理
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2
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