毎月レポート ビジネスの情報 (2012年12月号) ビジネスの情報 2012年12月号 ■巨大な市場が眠っています。まだまだ普及するはず、「デジタル補聴器」。 聴力の低下は思いのほか早く訪れ、20代より徐々に始まると言われています。また近年は、 携帯型音楽プレーヤーの長時間・大音量による“イヤホン難聴”(正式には「伝音性難聴」)も増 えています。 しかしなんといっても、難聴の最大の要因は、加齢です。ところが、アメリカ、ドイツ、イギリス、 フランスなどと比較して最も高齢化が進んでいるはずの日本が、「補聴器」の普及率が最下位と いうのが実情です。 2011年度の「補聴器」の出荷台数は、約48万9,000台と過去最高の実績を打ち立てました(「日 本補聴器工業会」調べ)。それでも例えば、ドイツの世界NO.1補聴器メーカー[シーメンス・ヒヤ リング・インスツルメンツ]の日本市場の分析によると、難聴など、聴力に不自由を感じている人 が1,900万人で、そのうち「補聴器」を使用しているのは470万人。たった1/4程度に過ぎないとい う推計をはじき出しています。つまり、“補聴器予備軍”ともいうべき難聴者の掘り起こしがまだ まだ甘く、巨大なマーケットが眠ったままの状態であることを示しています。 ではなぜ、「補聴器」の普及率がなかなか上向きにならず、売上げも横バイ状態が続くのでしょ う。 第一の要因は、「補聴器」へのイメージ。できるだけ目立たず、装着していることが知られたく ないというネガティブイメージが根強いこと。 二つ目は、価格。簡易なもので数万円、高性能なものでは10万円以上~40万円(片耳)と高額 です。 三つ目は、購入時に行われる“フィッティング”の面倒さでしょうか。使用者の聴力特性に合わ せてチューニングする作業を行って、はじめて“使える補聴器”となります。しかも、購入後1ヵ月 ぐらいは、週に1回、店に出向いて調節を行わなくてはなりません。 現在の主流は「デジタル補聴器」で、すべて耳穴の中に入る“耳穴型”、本体が耳の後ろ側に 収まる“耳かけ型”、本体をポケットに入れる“ポケット型”に大別されます。 [シーメンス]の「エクセル」シリーズは、会話と周囲の生活音との聞き分けを実現した製品です 。従来のものは、人の声を大きくすると周囲の音も一緒に大きくなっていたのを、聞き取りやすさ を調整するコンプレッサーの性能を上げ、より自然に近い聞き心地が得られるよう工夫されてい ます。 国産補聴器メーカーの[リオン]からは、「リオネットマジェス」シリーズが今年6月に発売。“お まかせスピーチ”機能が、360度の範囲で音声を検出し、どの方向からの音声も聞き取りやすい のが特徴です。また、電話の受話器を近づけると通話に適した音質に切り替わるなど、使用者 の使い勝手を考えた工夫が盛り込まれています。 日本のレベルも上がっているとはいえ、「補聴器」の分野では歴史的に見ても欧州勢が先進 国。しかしその分、日本のメーカーには、技術的にも市場的にも“伸びしろ”があるといえます。 ※参考: シーメンス・ヒヤリング・インスツルメンツ http://www.siemens.co.jp/ リオン http://www.rionet.jp/ 日本補聴器工業会 http://www.hochouki.com/ 日経産業新聞(2012年9月14日付) ビジネスの情報 2012年12月号 ■順調に育ってます。企業運営型の「貸し農園ビジネス」。 農業を生業としない都市部に住む人たちが、レクリエーションとして自家用野菜や花の栽培、 高齢者の生きがいづくり、子供の体験学習など、多様な目的で、小面積の農地を利用した貸し 農園のことを、「市民農園」または「レジャー農園」と呼ばれています。 形態としては、“日帰り型”“滞在型”の他に、近年は農作業の教育的かつ医療上の効果が認め られ、学校法人や福祉法人などが農業体験や園芸療法を目的とした“学童農園・福祉農園”と いう形も見られるようになりました。 運営母体は、自治体や農家の他に、最近増えているのが民間の企業。消費者の食に対する安 全志向と不況による節約志向を追い風に、「貸し農園」をビジネスとして運営管理する企業の参 入が注目されています。全国で約3,800ヵ所の「市民農園」のうち、企業が運営するのは280余り (2011年「農林水産省」調べ)。まだまだ数は少ないものの、企業運営型市民農園の開設数は年 々増加しています。 自分で作って、自分で食べる“自産自消”を掲げた指導・管理サポート付き「貸し農園」を展開 するのは、農業ベンチャーの[マイファーム](京都市)。現在、首都圏と近畿圏を中心に全国70 ヵ所の農園で、約2,000人以上の利用者が畑を耕しています。1区画のレンタル料は、15㎡で月 額3,000~7,000円(1年契約)。農機具や肥料などの貸し出しは無料。指導員が常駐して利用者 の農作業をサポートしてくれます。 “ガーデンファーム”というコンセプトの会員制体験型リゾート農園を展開するのは[アグリライ フ倶楽部](千葉県)。野菜作りのプロ(ファームインストラクター)が耕作指導と栽培サポートを 行ってくれるので、まったくの初心者でも種まき、苗植え、収穫までを体験できるシステムです。1 区画、16.5㎡で6,300円/月、33㎡で12,600円/月、49.5㎡で16,800円/月の3タイプで、入会金は無 料。シャワールームやキッチン、バーベキューなどの設備がそろったオシャレなクラブハウスを 備えていることも特徴です。 2012年4月に“ファームセラピー事業”として市民農園を開設したのは、[ジャスナ](大阪市)。 JR大阪駅から車で10分ほどの本社ビルの屋上には、土耕式の都市型屋上農園を開設。1区画 約3㎡で10,290円/月。さらに屋内にも、水耕栽培棚を用いた農園を整備。1区画120㎝×70㎝で 6,300円/月。ともに農具などが揃っているので、平日の仕事帰りに手ぶらで農業が楽しめます。 いずれも専門スタッフが常駐するフルサポート体制です。 農業人口の減少に伴う耕作放棄地の増加が、「市民農園」の用地確保を後押し、ますます企 業の参入に拍車がかかります。 ※参考: マイファーム http://myfarm.co.jp/ アグリライフ倶楽部 http://www.agrilife.co.jp/ ジャスナ http://justnow.jp/ 農林水産省 http://www.maff.go.jp/ 日経産業新聞(2012年9月11日付) ビジネスの情報 2012年12月号 ■市場に“喝”を入れたのは韓流でした。「飲むお酢」、復調の兆し。 いわゆる“飲むお酢”、「ビネガードリンク」(飲用酢)市場は、2005年~06年にかけての黒酢ブ ームが去った後は、右肩下がりで縮小が続いていました。多くのテレビや雑誌などで「飲用酢」 の健康効果が紹介され認知度も高まってきたにも拘わらず、“飲みにくい”“まずい”といったイメ ージは根強く、“酢を飲む”ことに抵抗感を抱く消費者が少なくなかったようです。 しかし、ここにきて需要が上向きになり、市場全体も復調気配を見せています。2011年の販売実 績が久々に2ケタの伸びを示したのです。その原動力となったのが韓国勢の参入でした。 2010年4月、韓国[大象(デサン)]の飲用酢、「紅酢(ホンチョ)」が日本に上陸して大ブレーク。 ざくろ、ブルーベリー、野いちご、梅、チェリーと5種類の希釈タイプの果実酢で、本国では2005 年に発売以来、常に売上げNO.1を続けている人気ブランドです。 しかし、日本でのデビューから1年近くは苦戦が強いられました。いくら韓国で国民的飲用酢でも 、日本では無名。しかし、特徴である“飲みやすさ”と“美容効果”を知ってもらうための試飲イベ ントやサンプリングなどを精力的に繰り返すうちに、徐々に認知度もアップ。 さらに、2011年9月から日本限定のCMキャラクターとして起用した“KARA”効果もあって、いま や国内飲用酢市場の横綱、[ミツカン]をも脅かすほどの勢いです。他に韓国系では、[CJジャ パン]が「ざくろ酢ミチョ(美酢)」と「ミチョコラーゲン」で参入しています。 迎え撃つ形となった国内勢は、黒酢ブームの時のような“健康”をメインとした訴求から、“美容 ・ダイエット”食品としてのサプリメント効果を前面に出してアピール。50代以上の年代から、若い 女性へとターゲットをシフトして攻勢をかけます。 [メロディアン]は、リンゴ果汁30%入りの「SUPER黒酢で元気」と、ざくろ酢に大豆イソフラボンを 加えた「BEAUTYざくろのお酢」を発売。 [ミツカン]は、「はちみつリンゴ酢ダイエット」「ブルーベリー黒酢ダイエットストレート」など豊富な 品揃えで、国内市場40%強のトップシェアを誇示します。 「飲用酢」ブームの草分け的製品と言われる「はちみつ黒酢ダイエット」(1990年発売)の[タマノ イ酢]は、今秋、「はちみつ黒酢ブルーベリーダイエット」「すっきりウコン+黒酢」「はちみつ黒酢 ダイエットレモン水」を相次いで発売しました。 10年ほど前、ある雑誌の「まずいものランキング」で、「飲用酢」が2回続けて1位になったとい います。飲みやすく、美味しくなった近頃の「飲用酢」に、乾杯! ※参考: 大象ジャパン http://www.daesang.co.jp/ CJジャパン http://www.cjjapan.net/ メロディアン http://www.melodianhf.com/ ミツカン http://www3.mizkan.co.jp/ タマノイ酢 http://www.tamanoi.co.jp/ 日経MJ(2012年9月17日付)
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