重度重複障害教育 呉特別支援学校 校長 水田弘見 特別支援教育施策 昭和22年(1947) 学校教育法 昭和23年(1947) 盲学校聾学校義務制 昭和31年(1956) 公立養護学校整備特別措置法 昭和54年(1979) 養護学校義務制実施 平成12年(2000) 高等部訪問教育完全実施 平成16年(2004) 医療的ケア(文科省,厚労省) 平成19年(2007) 特別支援教育制度 知的障害者や重度・重複障害者が対象となる 障害者施策 戦争被害者対策 戦災孤児 授産・更生 昭和23年(1948) 児童福祉法 昭和25年(1950) 身体障害者福祉法 昭和35年(1960) 精神薄弱(知的障害)者福祉法 平成12年(2000) 介護保険制度 現状に応じた改正 医療の発達,社会の変化 平成15年(2003) 支援費制度 平成18年(2006) 障害者自立支援法 平成25年(2013) 障害者総合支援法 パラリンピックの始まり • Paraplegic Olympic(対麻痺者のオリンピック) paraplegia(両下肢の障害,脊椎損傷・脳障害, 外傷等) • 第一次世界大戦後,負傷者のリハビリとして の取組 • ローマオリンピック(1960)の後に第1回開催 傷痍軍人のリハビリ → 障害者スポーツ 脳性まひの変化 新生児核黄疸 低酸素脳症 アテトーゼ 痙性まひ 脳室周囲白質軟化症(PVL) 低体重出生児 胎生30週未満 医療と障害の関係 産科医療 生殖医療 高久史麿 「医の現在」岩波新書 1999 三か月以上の長期入院患者のうち,半数は 吸引や注入等の措置だけであり,在宅医療 が可能 (日本看護協会) 所謂 医療的ケアの取組は,こうした大人の入 院患者への対応をベースにすすめられてきた 社会の変化 医療の発達 福祉の充実 教育の変容 労働の拡充 相互に関連 そうした中で ここで取り扱う重複障害は ○ 知的障害と運動障害(脳性まひ) この他に 知的障害 & 内部障害 神経難病等 従前,盲・聾・知・肢・病の5障害種別 知的障害があると全ての障害が対象 運動障害の状態の変化 • 脳性まひ児の数的変化は少ないが その状態の違いは幅広い (少子化,救急救命医療) ※ 運動障害への対応を切り離した教育と 運動障害への対応を重視した教育 重度障害者(重症心身障害児)病棟に勤務す る医療者の苦悩 教育の対象とされてこなかった子どもたちの 教育に携わる意味 エピソード 1 訓練は差別だ 動きを促す授業づくり • 動けないことによる問題 健康の保持 バイタルサイン (意識・呼吸・体温・脈拍・血圧) 覚醒と運動 呼吸と循環 脈拍120の子ども 低体温の子ども 鼻翼呼吸のこども 病院か自宅か通学か ○咳反射と痰を吐きだす力,飲み込む力 • 咳反射の状態 気管切開 • 吐き出す力 換気量 • 飲み込む力 嚥下反射 • 要治療・レスピレーター管理 閉唇 入院 エピソード 2 寝ると眠る? バイタルと学習姿勢 • 身体を横にすると覚醒が下がります • 身体を起こすと覚醒が上がります • 血液を下から上まで循環させる • 筋緊張をあげる • 酸素供給を増やす 児童生徒の状態と学習姿勢 • 仰臥位(仰向け姿勢)の学習姿勢 ベット上,リクライニング 後傾姿勢 • 伏臥位(うつ伏せ姿勢)の学習姿勢 前傾姿勢 うつ伏せ,パピィポジション,作業姿勢 ※ 垂直より 前傾か後傾かで大きく異なる 運動機能 つまり • 未定頸の児童生徒の指導内容は,前傾姿勢 あるいは後傾姿勢のどちらに重点を置くかで 大きく変わる ※ これは,定頸の児童生徒の場合も基本的 に同じ 代償動作との関係から支持面が多いことが 望ましい 姿勢と運動以外では ○ コミュニケーション 話す,書く,操作する • 実は,話す,書く,操作するといったことも姿 勢と運動が深く関わっている • その他に,どのような内容があるでしょうか 自立活動の内容 「健康の保持」 ・生活リズムの形成 活動と休息のバランス 「心理的な安定」 ・情緒の安定 生活リズムの安定,感覚の活用等 「環境の把握」 ・保有する感覚の活用 触覚,固有覚,前庭覚等の活用 「身体の動き」 ・姿勢と運動・動作の基本 技能 触覚過敏等の解消,関節活動域 の確保 「コミュニケーション」 ・コミュニケーションの 基礎的能力 快,不快の表出 要するに • 坐骨や脊柱等の体幹部の感覚が体重をしっかり と受止められるようになる • 掌や顔等の抹消部が情報(刺激)を受入れやすく なることで,情報を出しやすくなる • こうした感覚と運動の学習が,全身の活動性を 高めることで,覚醒と睡眠のリズムが整いやすく なる • 諸感覚が使いやすくなり,生活リズムが整うこと で情緒安定が図られ,学習への意欲につながる 未定頸の児童生徒の悩み • 極めて運動不足のため,身体の各部位で体 重を受止めることが難しい • それが,手足や顔等を過敏(または鈍感)な状 態にするため,手足や顔(特に口腔周辺)を動 かしにくくする • したがって,仰臥位,後傾位姿勢が多くなり, ますます,抹消部の感覚が使いにくくなる • このことに対する指導方法が分からないため, 指導が聴覚や視覚に係るものに偏る ただし • 未定頸の状態では,眼球のコントロールが難 しく,また眼球上転等の緊張があるため,注 視や追視は困難である • 音楽は快情報であるが,動いたり,触ったり, 見たりする経験が少ないため,ことばと対象 物とのマッチングは難しい こうした点をよく把握することが必要 具体的には • 触覚刺激を受け入れやすい状態にする ※ 児童生徒の身体がしっかりと触れる,動かせるようになること がスタートライン • 筋の緊張と弛緩がスムーズになるよう練習しながら姿 勢バランス(姿勢緊張・等尺運動)の学習をする ※ 身体に無理がないような身体のラインを見極める力をつける • 頸部を安定させて,注視しやすい姿勢をとり,見たり 触ったりする(目と手の協応動作) ※ 見て,聞いて,動かしてのフィードバックサイクルを確立する このパターンでいろいろな教材に臨む 結果的に • 体幹を高く保持する(きれいに座る)ことで,横 隔膜が下制し,上肢肩甲帯がリラックスする ので,呼吸が深くなるとともに,手が使いやす くなる • 体幹保持のためには,下肢の支持性を高め ることが必要であり,脊柱の伸展(負荷)も必 要である • これらは循環を良好にするとともに免疫機能 を高めることにもつながる まとめ • 重複障害児童生徒も単一障害児童生徒も姿 勢を整えること(適切な姿勢)が大切 • それ自体が学習であるとともに,いろいろな 学習の準備体勢づくりになる • これは,学習によって医療的ケアを必要とす る状況をと遠ざけることでもあり,医療的ケア の頻度を少なくする意味も持つ 業務独占と名称独占 • 重複障害教育では医療的な知識や技能に係る 理解が必要となる • そこで,医療と教育の境界線を知ることが必要 • 業務独占 → 医業は医師でなければならない (医師法) 保助看法も同様 • 名称独占 → 理学療法士等の資格のない者は 治療できない • しかし,教育や身体介護として,その内容を取入 れることができる 御清聴ありがとうございました
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