ジャスフォワーディングジャパン プロジェクト輸送など 新分野へも積極展開 JAS Forwarding Worldwide の日本法人ジャスフォワー として、 日本と深く関わることになったわけである。 ディングジャパンはことし 1 月、Stephane Marot 新社長 が就任して、新たなマネージメント体制がスタートした。 てきています。ただ(前任地の)マレーシアとは、随分ち 日本進出から 35 年、中堅フォワーダーとして特色ある がうことも多い。もちろん、言葉やコミュニケーション サービスを提供してきた JAS グループは、物流企業とし の取り方も違う」というのだが、実は筆者がとても驚か て次なる成長のステージを目指している。 されたのは、マロ社長が初歩的な日本語なら、聞き取っ 新社長のマロ氏が1月に着任 て話すことができることだった。 まずは、ことし 1 月 1 日付けで社長に就任したジャス しました。会話のほか、ひらがなとカタカナも学びまし フォワーディングジャパンのステファン・マロ代表取締 た」と言う。その驚異的な習得を助けたのは、日本での 役社長のプロフィールを紹介しておこう。 ビジネスに対する熱意にほかならないだろう。 同氏はフランス出身、1995 年に JAS に入社、フランス や米国での勤務後、JAS 香港のセールスマネジャーを経 て、2005 年から昨年末まで 8 年間、JAS マレーシアの代表 「日本での生活にもステップ・バイ・ステップで慣れ 「日本に着任する前に 3 ヵ月間、日本語を集中的に学習 アジア市場にも力を入れて 取締役社長を務めていた。香港、マレーシア、そして日 JAS グループは 1978 年、イタリアのミラノに JAS Jet Air Service として誕生した。当初、イタリアのアパレル 本とアジアでのビジネス・キャリアは長い。 製品を日本へ航空輸送することを主要業務とするフォ 「アイ・ラブ・アジア」 と微笑む。 そのため、 マロ社長は ワーダーとしてスタートした。 「日本に来たのは今回が 2 度目。最初は旅行者として そのため、設立当初の 78 年から東京と大阪に連絡事務 妻とふたりで東京、 大阪、 京都と観光してまわりました」 所を開設し、3 年後の 81 年には日本法人のジャスジャパ そして今度は、ジャスフォワーディングジャパン社長 ン株式会社を設立している。ちなみにジャスフォワー JAS Worldwide の米国アトランタ本社 ディングジャパン株式会社と いう現社名は翌 82 年からだ。 そ れ ほど、JAS グ ル ープに とって日本は創業時からの特 別な国 (市場) なのである。 「現在のジャス F. ジャパン の地域別の売上げ割合は、欧 州 60 %、米 国 25 %、ア ジ ア 15% となっています」 日本側からみて、現在でも 14 July 2013 SPACE ステファン・マロ社長:JAS グループでの 社歴は 19 年。夫人と 5 歳になるひとり娘 との 3 人家族。日本での社長業はハード というより興味深い、というのがこの半 年での感想だという。休日にはテニスを したり、 公園を散策してすごす。39 歳。 日欧間が特別なトレードであることにかわりはない。そ クス 5% の割合。最近は荷主のコストダウン志向で、海 れはビジネスの確固たる地盤をもつ強みといえるが、 一方 上輸送への貨物シフトが顕著になっている」 で特定地域に偏ることのリスクもあるはず。 「一方、ロジスティクスは当社にとって新しい分野な これを 10 %くらいに ので、 まだ 5% のシェアしかないが、 にタイ/インドネシア/マレーシア/シンガポールな したいことろ。また、プロジェクトは 10 %だが、とくに ど東南アジアや、韓国/台湾など東アジアもターゲット 力を入れているため、25 %くらいに成長させたい」と抱 です」 とマロ社長はアジア市場に目を向ける。 負を語る。 ているアジアの物流需要は誰しも取り込みたいところ。 JAS グループは一般貨物主体にフォワーディング事業 を展開してきたが、事業拡大を図って 2011 年にプロジェ クト輸送に新規参入した。JAS にとって最も新しく、か マロ社長が、 香港、 マレーシアと続いたアジアでのビジネ つ力を入れている事業分野といえよう。 拠点とする欧州が金融不安を払拭できずに低成長に 苦しんでいるのと対照的に、世界の成長エンジンとなっ ス経験を、今度は日本でジャス F. ジャパン社長として生 かせる点は多いに違いない。 ところで、JAS グループはイタリアで誕生したフォ ワーダーだと紹介したが、実は 2005 年に米国アトランタ そのプロジェクト部門はグループの中で、独立性が強 い組織になっている。本部は独ブレーメンに置き、ジャ ス F. ジャパンでも東京オフィスの 30 名のスタッフとは 別に、 プロジェクト部として専任の10名が担当している。 に JAS Worldwide を設立して、グループ本部を移転して いる。ミラノは依然として重要な機能を有しているが、 欧州拠点のフォワーダーの殻を破り、グローバル・フォ ワーダーに成長することを目的にアトランタを新たな 世界拠点とすることを選択したわけである。 それに先駆けて、JAS グループでは 1990 年頃から、ブ ラジル/アルゼンチン/ペルーをはじめ、中南米諸国に も現地法人を設立して、ワールドワイドにネットワーク の充実を図っている。現在では世界 80 ヵ国/ 240 ヵ所 に拠点を拡大しているほどだ。 グロー ジャス F. ジャパンも JAS グループの一員として、 バルな事業展開を目指していることは言うまでもない。 次に、ジャスジャパンの事業の構成比がどのように なっているか、 マロ社長に聞いてみた。 「航空 60%、海上 25%、プロジェクト 10%、ロジスティ SPACE July 2013 15 Forwarder Now● ジャスフォワーディングジャパン 「現在はアジア地域にも力を入れている。中国を筆頭 2011 年 7 月には福島第一原子力発電所向けに、イタリ アから汚染水処理装置を輸送した実績もある。装置は 総重量 54 トン/容積 260 ㎥で、ミラノから東へ約 80km のコンテナ内は 1 つの温度帯という常識にとらわれてい ては、 出てこないアイデアである。 「小ロットの食品を定温輸送する混載では、同じ温度 Forwarder Now● ジャスフォワーディングジャパン のブレシア空港から、 成田空港まで空輸したという。 帯で積み合わせできる貨物がまとまらなければ、混載コ 2温度帯が併存する定温コンテナ運用 ンテナを仕立てられないのが難しいところ。でも、2 つ の異なる温度帯の貨物を積み合わせることが可能なら も各産業の製品事情に精通した専門性の高いサービス フォワーダーが小ロットの定温貨物に対応しやすく そうした新事業分野への進出と並行して、既存分野で により、 差別化を図っている。 ば、 まとめて 1 本分に仕立てることが容易になります」 なれば、荷主にも輸送頻度の向上やコスト削減といった 「日本でも航空機やヘリコプターの部品を、輸送・通関 メリットが生まれるはず。この特殊な定温コンテナを して顧客にデリバリーするサービスを提供しています。 活用してイタリアから香港、ドバイ、上海向けをレギュ また、ファッション・衣料関連の輸送は創業時からの主 ラールートとして輸送しており、イタリア→日本サービ 要ビジネスであり得意分野です」 と強みを指摘する。 スの開設も計画されているという。 ジャス F. ジャパンでは早くから自社通関体制を整える など、顧客企業が店頭で衣料品の販売機会を逃さないた めの迅速サービスを構築している。例えば東扇島 (川崎) と若洲(東京)の物流センターでのアパレル製品の仕分 カイゼンで“おもてなし”サービスを 「ジャス F. ジャパンは東京本社のほか、成田空港営業 所、大阪支店、関西空港営業所、名古屋営業所の拠点があ け、梱包などの流通加工から、在庫管理・配送までの一貫 るが、今後、福岡、広島、新潟などにも拠点を構えること したサービスは、 荷主の好評を博している。 を検討しており、そうしたネットワーク拡大や取り扱い そこには、JAS グループが 35 年前、イタリアから日本 へのアパレル輸送からスタートして以来の衣料品輸送 分野の拡大などで、5 年計画で売上げ/利益の倍増を目 指しています」 とマロ社長は中期目標を掲げる。 の知識と技術に裏打ちされた強みがある。海外では、ハ 「マレーシアでも日本の“カイゼン(改善) ”を学んでい ンガーに掛けて輸送する衣料製品専用の物流センター ましたが、本家の日本にはもともとカイゼンの概念が根 を運営しているほどだ。 付いているわけで、業務やサービスのスピーディーかつ こうした品目ごとに特色ある輸送サービスを提供す ることは JAS のポリシーといえる。アパレル以外にもワ インをはじめ食品輸送に力を入れており、温度管理輸送 の差別化に知恵を絞る。 その端的な例が、2 つの異なる温度帯を設定できる海 上コンテナの開発・運用だ。特殊なベンチレーション技 継続的なカイゼンで顧客に“おもてなし”のサービスを 提供したい」 と目指すところを語る。 カイゼンという手法を駆使して、顧客に“おもてなし” を提供することが、顧客とジャス F. ジャパンにウインウ インな関係をもたらすと確信しているという。 「顧客に満足してもらうのはもちろん、さらに“幸福” 術により、4 ℃と 15 ℃という 2 つの異なる温度エリアを、 を感じてもらえるサービスを提供する会社にしたいで 1 つのコンテナの中に併存させることに成功した。1 本 すね」 とマロ社長は究極の目標を語ってくれた。 16 9 July 2013 SPACE
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