厳 冬 の 凍 み が 熟 成 さ せ る 奥 飛 騨 山 之 村 寒 干 し 大 根

4
2
平成
た く さんのカメラマンが 足 を 運ぶ。
会 員 数 は9人 と 小 規 模 だが、〝か
︵母︶たちで作るすずしろグループ。
その担い手は山之村の〝かかさ〟
す ず しろグループの清 水 利 子 さ
氷点下になると、いよいよ寒干しの
えたレシピ集も作り、試していただ
を行なっています。会員みんなで考
山 之 村では、古 くから冬の保 存
育て上げ、現在は年間生産量1㌧
﹁も と も とは 主 婦の冬 場の内 職
︵大根2万本︶を誇っている。
在 も その製 法 が 継 承 さ れている。
的な仕 事から始まり ましたが、グ
食として寒 干し大 根が作られ、現
年には特 産 化へ向 けた研 究
がスタートし、﹁奥飛騨山之村寒干
のような商品に至っています。現在
ループでいろいろ工夫 をして、今日
昭和
し大根﹂として商品化された。
知恵でもあります。
年度 本 場 の 本 物 認 定 品︵ Ⅰ 種 ︶
村の女性グループが手作りの伝統保存食を全国に発信
古 くは日本の近 代 化に貢 献した
神岡鉱山、現在はニュートリノ検出
装 置〝スーパーカミオカンデ〟の設
分ほ
置で 知 ら れる 岐 阜 県 飛 騨 市 神 岡
町。そこからさ らに、車で
む標高1000mの地に〝山之村〟
目 的 は日 本の原 風 景。カメラの先
か さ〟た ちの情 熱 とパワーで、山
ど 山 麓 を 上ると、北アルプスを 望
と呼ばれる周囲と隔絶された高原
す だれのよ うに並べられた 寒 干 し
に あ るのは、民 家の軒 先に 白い玉
種まきからスタートする。様々な研
んが、地 産の大 根にこだわる理 由
山 之 村では厳 冬 期に気 温がマイナ
作業開始だ。地中から掘り 出した
いています﹂
之 村の寒 干し大 根 を 人 気 商 品へと
が 広 がる。山 之 村は、ここに点 在
究の結 果、大 根の品 種 は﹁耐 病 総
ス ℃まで 下 が り、その凍 みで 大
大 根 を 丁 寧に水 洗いし、皮 を むい
大根の風景である。
する7つの集落の総称であるが、地
図には載っていない。正式な地名で
戸が住み、春 夏はほうれ
はないからだ。地図にないこの村に、
現 在は
ん草など良質な高原野菜を生産し
ている。
山 之 村で 生 ま れ 育った〝かか さ〟
。
を、こう説明してくれた。
食の提案にも取り組んでいる。
シピで、寒干し大根を使った新しい
根は凍っては溶 け を 繰 り 返 し、甘
た 後、厚 さ2 の輪 切 りにして
シピは﹁寒 干 し 大 根のグラタン﹂。
地の恵 を 受 け た〝本 場の本 物〟
大根の種まきは 8 月中旬頃。その後は防護
シートで覆い、鳥による食害を防ぐ。
山 之 村に冬が訪れ、2m もの積
雪に閉ざされる頃、プロアマ問わず、
﹁以 来、山 之 村で 取 れ た 大 根 だ
寒 干し大 根は子どもの頃から身 近
太り﹂を使用。安定した作付けが可
山 之 村の地 産の大 根にだけ、特
け を 使 うようみんなで確 認し、徹
な 存 在で、毎 年 冬になると母や祖
能で、鬆
︵ス︶
が 入 り に く く、寒 干
別 な 味わいを もたらす 奥 飛 騨の光
底しています﹂
母の作業を手伝っていたという。
し後の甘みが引き立ち、煮崩れしに
と風と凍み。まさに自然の摂理だ。
寒干し大根づくりは8月、大根の
地産の大根だけを使い
日間寒にさらす
名称の由来/奥飛騨山之村地区は標高約 1,000m
の高地に位置し、厳冬期にはマイナス 20℃になる豪
雪地帯。
この冬場の「凍み」
を活かし、寒の入り頃から
作られることから、名称を「奥飛騨山之村 寒干し大
根」
とした。
厳冬の 凍み が熟成させる
奥飛騨山之村 寒干し大根
は完 売が続いており、戸 惑いつつも
ね ぎほら
嬉しく思っています﹂
山 之 村で作 られる寒 干し大 根の
くい︱︱などの利点があるという。
すずしろグループでは独創的なレ
こう 語 る 祢 宜 洞 きぬ子 代 表 も、
大 き な 特 徴は、奥 飛 騨の厳 しい冬
月 にか
けて収穫し、
土の中に保存。その際、
﹁若い世代にも寒干し大根を食べ
月 から
点。祢宜洞代表も﹁光と風と凍み、
を焼き、燻すなどの処理を行なう。
ネズミな どの食 害 を 防 ぐ ため、藁
てほしいと、数 年 前 から 調 理 講 習
育った 大 根は
この3つがそろわないといい寒 干 し
月から1 月にかけて、気 温が
の自 然 条 件 を 巧みに活 用 している
大根はできません﹂と強調する。〝凍
みと滋 養 を 凝 縮 させていく。気 温
分ゆでる。このゆで上がった大根を
ま た、ヨーグルト な ど と 和 えて も
こう 語る、祢 宜 洞 代 表の得 意レ
が一番下がる寒の入りの頃に干し始
串に刺 し、建 物の軒 先 な どに並べ
み〟と は 凍 る よ う な 寒 さのこ と。
業界とりまとめ団体/すずしろグループ(岐阜県飛騨市
神岡町森茂 1405-1)
天然のフリーズドライであり、昔
美味しいとのこと。
だか らこそ、その味には 無 限の世
夜には凍り昼間には溶ける、約
て、約 日間寒にさらす。
自 然 条 件によって出 来 が 左 右 され
界が凝縮されているのだろう。
大根作り、寒干し作業、ともに
る。例 えば、寒 干 しの時 期に気 温
が高 く、雨が続いたり すると、大
根が腐って出荷できない。また、大
根 そのものが不 作だと、寒 干 し 大
根の生産量も落ちてしまう。
大 根 が 不 作で も、寒 干 しには、
山之村で穫れた大根しか使わない。
60
本場の本物 66
67 本場の本物
一度、不作の年に市中の大根を使い、
られ農家の干場に掲げられます。
関連団体
寒干し大根になります。これこそ
食と農研究所
代表
30 日間位繰り返すと甘い香りの
審査専門委員
からこの地方に伝わる食品保存の
ね ぎ ほ ら
岐阜県飛騨市神岡町山之村地区は、
北アルプスの麓、標高約 1,000m に
広がる“孤高”の地。春・夏期は高
原野菜を生産するが、厳冬期は氷点下
20℃、積 雪 2m の「凍 み」の 世 界。
この寒風と豊かな陽射しを活かし、古く
から寒干し大根が作られてきた。
品質と安全性/化学肥料を従来比 30%減量し、環境
負荷の低減を図る
「岐阜クリーン農業」基準を満たす耕
地整備を行う。寒干しの際には、一つひとつ大根の品
質をチェックし、またカビの発生を防ぐために藁を使わ
ず、串に刺す方法を採用している。
年を越して再び掘り出され、茹で
すずしろグループ 岐阜県飛騨市神岡町森茂 1405-1
☎0578-82-2538(JA ひだ)
加藤 寛昭 氏
奥飛騨山之村
寒干し大根
特徴
祢宜洞きぬ子 氏
30
寒干しに適した「凍み」の風土
移されて雪の下で眠らされます。
30
顧客が離れてしまった苦い経験があ
るからだ。
秋収穫された大根は、別の場所に
商品情報
11
原材料の特徴/山之村の気候・風土に適した様々な
大根の品種を研究。現在は、安定した作付けが可能
で、寒干しに適した甘みと食感の良さがある青首大根
の品種「耐病総太り」
を使用している。
内容量50g(一袋)。大根約1本分が一袋に入っている。
氷点下の寒風に鍛えられ、陽の光をあびて熟成された寒
干し大根は、独特の食感と甘みがある。煮込んでも煮崩
れしないのが利点。
すき焼きや煮物のほか、
その甘みを活
かし、
ヨーグルト和えやジャムなどスイーツへの応用も可
能。生のダイコンに比べ、
たんぱく質は7倍、糖質20倍、
カルシウムは13倍と栄養面でも優れた食品である。袋に
は会員の似顔絵とおすすめレシピのカードもついている。
10
cm
製法の特徴/この地で生産された青首大根のみを原材
料に使用。大根は収穫と同時に別の場所で土中に保
存。
1 月の寒の入りの頃、掘り出した大根をゆで、串に刺
して約1カ月、農家の軒下で寒にさらす。
昔ながらの手作
業を中心とした製法と農家の軒下を利用して寒干しする
ため、生産量は希少だが、播種から出荷まで一貫生産を
行うことで、製品のバラツキを改善し、地域特産品として
知名度を上げている。
凍みの世界がつくりだす
天然のフリーズドライ食品
30
が
ココ
すずしろグループ
代表
生産者のすずしろグループで作成した寒
干し大根のレシピ集。写真の「寒干し大
根の辛子マヨ和え」など簡単にできる楽
しい調理法が満載だ。
掘り出した大根は水洗して皮をむ
き、厚さ 2cm の輪切りにしてゆ
でる。ゆでた大根は串刺しに。以
前は藁を通していたが、カビが発
生しやすいため串に変えた。
串刺しした大根を軒先に干す。水分を吸って重く
なった大根を運ぶのは労力のいる大変な作業。30
日間寒風にさらし、寒干し大根が完成する。
12
物
の本
本場 認定
収穫は 10 月。採れた大根は横向きにして地中に
埋める。埋める前に藁を燻し、ネズミなどの食
害を防ぐ。写真は少量の場合に藁を帽子のよう
に被せる“だいこんつぶり”
。気温が氷点下にな
る 12 月頃に土中から大根を掘り出す。
70
30
岐 阜 県
めることから、
〝寒干し〟と名付け
られた。
標高 1,000mに広がる山之村。冬季は風雪に閉ざされる
が、
そんな自然条件を活かした先人の知恵が「寒干し大根」
だった。
20