業 績 - JAみなみ信州

業
績
1.事業全般の経過と成果
平成 20 年度のJAの事業を取り巻く環境は、石油価格の高騰や生活物資の価格上昇、さらには米国サブプラ
イムローン問題に端を発した百年に一度といわれる国際的な金融危機を背景に、一般消費者には景気の回復を
実感できる段階には至っていない状況の下、組合員の生活だけでなく農業にも大きな影響を及ぼしています。
さらに、農業従事者の高齢化、遊休荒廃地の増加、農業後継者不足、農産物消費の低迷や農産物価格の低迷な
ど、依然として農業関係の構造的な低迷も続いており、大変厳しい状況にあります。
JAの経営環境につきましても、長期金利の上昇や不良債権処理に伴う費用の増加など厳しさを増しており
ます。また、ペイオフ解禁後金融再編がすすむ中で、昨年度から新しい自己資本比率規制(新BIS規制)が
適用されたことから、自己資本の増強による体力強化と事業の効率化につとめているところであります。
当JAにおきましては、平成 19 年 5 月の通常総代会において「中期計画(平成 19 年∼21 年)
」を策定し、
その 2 年目として実践につとめてまいりました。
このような状況下ではありましたが、JAの経営面では不良債権の処分と引当金の確保、遊休不稼動資産の
処分、事業管理費の圧縮等につとめ、4 億 8,040 万円の当期剰余金を確保することができました。販売関係に
つきましては、農産物価格の低迷、生産基盤の減少がつづいており、農業振興の強化をはかってまいりました
が、取扱高は 171 億 1,427 万円となり、前年取扱高・計画額を 5%ほど下回る結果となりました。
事業の取扱量は依然として減少しており、事業環境悪化の中で費用の削減等経営の合理化をすすめた結果、
当期の剰余金確保となりました。
生産販売事業
本年は局地的な雹害による甚大な被害による減収と、全国的な豊作基調の中危機的な経済不況の煽りを
まともに受け農産物価格が低迷しました。
果実は春先から順調に推移し高品質な果実が生産できましたが、8 月の 2 回にわたる降雹被害により大
きく減収となりました。盆を境に梨・りんごは経済不況とともに全国的な豊作と競合が激しく、販売価格
が低迷しました。北部は 3 選果場へ品目を集中、南部は新たな光センサーを導入し統合をはかりました。
本年度、新たに柿課を新設し柿皮剥き支援策の決定など勢力的に取り組み、販売は経済不況の中前年並み
の取り扱いができ、市田柿ブランドの強さを再確認しました。
野菜は天候の影響により産地リレーがうまく行かず、
当地の出荷最盛期に出荷集中となり厳しい販売状
況でしたが、集荷センターを 2 箇所に集約し、販売力向上に取り組みました。
花卉は出荷箱数は伸びましたが、嗜好的な性格から景気後退にともない販売価格が低下しました。生産
の増加しているダリア(品種 黒蝶)が「フラワー・オブ・ザ・イヤー」の年間グランプリを受賞し、産
地と品質が大きく評価されました。
きのこはえのきの種菌劣化と思われる収量低下が一部見受けられました。しめじは、NN 菌の品種特性
を生かした栽培に取り組み、成果を上げることができました。中国からの輸入が止まり、しめじは昨年を
大幅に上回る販売単価を得ることができました。えのきは、昨年並みの販売単価を確保することができま
した。
畜産は酪農では 3 円の乳価値上がりはありましたが、飼料価格の高騰(配合飼料最高 25,000 円値上り
/t)及び景気後退による消費減少等が響き、肉牛・素牛・養豚関係を中心に価格低迷が続き、かつてな
い厳しい1年となりました。
JA直売所「りんごの里」
「およりてふぁーむ」の販売実績は 8 億 7,778 万円と国産農産物に追い風が
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あり前年比 110%と伸びました。
10 月に名古屋覚王山に南信州農産物のマーケティングと情報発信基地と
して行政と連携し「南信州ファームプロダクツマーケット」を開設し、インターネット楽天市場に「およ
りてふぁーむ」を開設しました。
担い手対策として新規就農者支援(新規 5 名、Uターン 22 名、Iターン 3 名)として 719 万の支援金、
技術指導、経営指導などをおこないました。また、
「帰農塾」を開講し 48 名のが年間講習を受けました。
11 支所生産課を充実し、生産部・営農センターとの連携と産地再生プログラムに基づいた販売事業拡
大に取り組みました。
雹害対策支援、飼料高騰対策支援、素蓄導入緊急支援、柿皮剥き機導入支援、農産物販売価格低迷支
援をおこない、組合員のみなさまの農業経営を支えました。
生産購買事業
生産資材は店舗の収支均衡を目標とし、共通管理費配賦前の黒字化に向けて事業改革を実施しました。
また、施設については 23 年度以降の統廃合実施を見据え、収支内容の改善に取り組みました。
物流センターでは、集中仕入れと転送による効率的な配送を店舗と連携をとりながら実施し、一方、広
報誌等では物流センター・受注センターの認知度を上げるための宣伝をおこないました。
価格面では昨年に続き肥料・農薬で地域一番商品を設定するとともに、価格検討委員会を立ち上げ、予約
注文品を中心に適正価格の設定をおこないました。
農機具事業では事業改革を検討し 21 年 9 月より(株)オートパルいいだに事業移管する計画です。統
一・いいだ地区・北部地区展示会を含め数多くの農機具展示会を開催し、多くの方々にご利用をいただき
ました。
加工・利用事業
果実選果場の集約と北部干柿の受入統一を実施しました。野菜センターを 2 ケ所に集約し、コスト低減
につとめました。
北部果実選果場、野菜集荷センターの利用料を統一しました。
生活購買事業
委託店舗は取扱品目の安心・安全に注意し、国内産中心の展開に取り組みました。
南信州レジ袋削減協議会に全店舗が加盟し、レジ袋削減運動を展開しました。
組織購買事業では、宅配新規会員の獲得に向け PR・推進等をおこないました。
燃料事業は原油価格の大幅な変動の中、価格政策に苦慮しましたが、安全安定供給につとめました。
ガス事業は、ガス保安機関認定更新を取得し、自主保安体制を確立、安全で安定的な供給につとめまし
た。
金融事業
組合員・地域社会へ向けて、JA バンクの信頼性と機能の強化および顧客基盤の拡大と収益力の強化に
つとめてまいりました。
貯金では、組合員ニーズに応える各種金融サービスの提供により、個人貯金の安定確保がはかられ、前
年を上回る実績を挙げることができました。
貸出金では、
「信頼と顧客満足度向上」に向けた「ローンセンター」
、
「休日ローン相談会」の開催によ
り個人向け融資の伸長ができました。
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経営基盤確立に向け、拠点支所を軸として出向く体制の基礎をつくりました。
厳格な自己査定を実施し、財務の健全化をすすめました。
共済事業
3 月に「フレッシュスタート 2008」運動を実施しました。
支所 9 課体制にて恒常推進体制を強化し、利用者のニーズに見合った医療共済系の生存保障(入院・
手術)分野の普及活動に力を入れた提案活動と契約者フォローに取り組みました。また、資金形成ニー
ズの魅力ある貯蓄系の普及活動にも力を入れた提案活動をすすめた結果、計画を上回る長期満期新契約
を確保することができました。
保有契約高については、前年を下回りました。
医療事業
訪問歯科診療、外来歯科診療、口腔ケアを実施しました。
デイサービス利用者や施設入所者の歯科検診をおこないました。
宅地等供給事業
組合員の資産運用・管理に関する相談対応や、土地建物の売買・賃貸の仲介業務、組合員所有のアパ
ート等の仲介業務や管理業務、住宅施設等の設計管理業務をおこないました。また、遊休農地有効利用
対策の一環として、生産部・行政と協力して新規農業就労者の受け皿(土地・建物)提供に取り組みま
した。
棚卸土地の売買や仲介手数料の収益アップをはかる中で、事業管理費の圧縮、通年休日営業やインタ
ーネットを使った物件の紹介等によるサービス向上をはかりました。
広報事業
世相を反映して食料・農村への関心が高まる中で広報事業の重要性を認識し、広報誌・ホームページ・
報道機関等を活用して、
「組合員と消費者等、対象を明確にしたJAのブランド化」をテーマに取り組み
ました。
広域JAにおける組合員との貴重な接点として、組合員向け広報誌「しあわせ」では組合員モニター
の意見を反映し、シリーズ特集「地域農業のビジョンをつくろう」を連載しました。
ホームページブログによる迅速かつ正確な情報発信をすすめました。
地域内外のテレビ・新聞紙・ラジオ・情報誌等のメディアに対して、農業・農畜産物の話題や、JA
みなみ信州の名称と事業活動が広く周知され理解されるようにつとめました。
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2.組合が対処すべき重要な課題
1.
組織・財務基盤の強化の課題
組織の基盤である組合員の状況は、全国的な傾向の通り高齢化に伴う正組合員の減少が、私共の組合にとっ
ても大きな課題となっております。合併時点では 2 万 1 千人おりました正組合員は 2 万人を割る状況であり、
逆に准組合員は増加傾向にあります
協同組合を健全に発展させ次世代へ引き継ぐためにも、健全経営の確保とともに、担い手の確保対策は重要
と考えております。食育等の活動を通して消費者や子供たちへの食・農業の理解を深めてもらう活動にも牽引
役として女性が大きな役割を果してきており、現在担い手の中心となりつつある女性の正組合員化を拡大すべ
く運動を展開中です。
また、担い手の確保対策として平成 18 年度に生産部に担い手対策室を設置し、定年帰農者など新規就農者の
支援、行政と連携した帰農塾の開設をしております。
経営基盤は、合併当初 130 億弱であった自己資本は 150 億円を超えるまでになり、自己資本比率、自己資本
充足率ともに拡大してきました。
生産施設を中心に固定資産はまだ多く、自己資本ではまだまかないきれない状況であります。今後は受益者
による増資等を検討するとともに、固定資産の削減、外部出資の見直し等をはかっていきたいと考えます。
2.
農業生産の確保の課題
農業協同組合の基本であります農業生産の落ち込みは大変厳しい状況であります。
生産販売高は平成 11 年度の 240 億円をピークに、20 年度末には 180 億円を切る状況まで落ち込み、大変憂
慮しております。
生産者の高齢化による農業後継者不足、農畜産物の輸入拡大による販売価格低迷、生産資材等の高騰による
農業所得の減少など複合的な要因がありますが、とりわけこのところの異常気象に起因する自然災害や鳥獣に
よる被害も甚大であり、再生産意欲を削ぐ結果となりはしないかと懸念しております。昨年発生した雹による
被害は、管内の農業地帯である豊丘村を中心に収穫間近の梨の豊水を始め、りんご、当地域特産であります市
田柿にいたるまで果樹全般にわたり場所によっては壊滅状態の大きな被害となりました。
職員の人的支援も実施し、経済支援対策を行政・連合会の応援をいただき実施しました。
また、農業生産価格低迷に伴う特別支援を実施しました。
中期計画では生産販売高を 10 年前の 200 億円の大台に戻そうと、
産地再生プログラムの取り組みや地域ブラ
ンド品として確立している市田柿の生産拡大のための生産法人をこの 21 年度より立ち上げるべく準備をすす
めております。
組合員により近いところでの営農指導を強化する目的で、11 支所に生産課を設置し出向く指導を心掛けてい
るところですが、本年度より生産資材部門を経済部より生産部へ移管し営農部門と一体となった事業展開をお
こないます。
また、
販売部門は本所生産部と連携を取りながら、
管内を 2 営農センターに集約をする体制としております。
合併効果を生み出すためにも、この飯田・下伊那を一体とした「みなみ信州地域ブランド品」をより多く創
出したいと考えております。
3.
経済事業改革を含めた支所施設等の再編の課題
事業基盤である支所・施設等は、組合員の理解を得ながら機能の再編・施設の統廃合等を実施してきてはお
りますが、まだ充分ではありません。合併前の遊休施設等は可能な限り処分をしてきておりますが、地域によ
ってはJAの施設が無くなることで地域の拠り所が無くなる、地域そのものが崩壊しかねないという地区があ
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るのも現実であります。管内には高齢化率 40%以上を超えている村も数村もある中、地域における農業協同組
合の役割と行政との連携といった課題も多くあります。
支所機能の再編につきましては、21 年度より総合機能支所、専門機能支所、事業所、支店と機能別に再配置
することとしました。金融存置基準に満たない支所は窓口業務を廃止し、総合的な渉外体制で組合員の要望に
応える計画であります。
経済事業改革は、生活店舗の委託化・ガソリンスタンドの廃止等をすすめております。特にガソリンスタン
ドは、施設の老朽化による燃料漏洩のリスクを回避する為と、利用者の大幅な減少の著しい施設は平成 22 年度
を目途に順次廃止する計画であります。
また、農業機械は平成 21 年 9 月より子会社である株式会社オートパルいいだに事業移管し、サービスの充実
につとめます。
4.
コンプライアンス体制を含めた内部統制の強化の課題
残念なことに過去に不祥事が発生し、現在要改善JAの指定を受けております。このことは役職員全体で真
摯に受け止めており、内部統制確立プログラムをもとに事務処理の見直し等自主チェックを実施し、職場離脱
制度の範囲を広げるなど、指定が早期に解除されるべく努力しておるところであります。
地域の金融機関としての重要な社会的責任、公共的使命を基礎とした企業倫理の構築が最重要課題として認
識しております。
出向者も含めて 1,000 人余の職員に隅々までこの重要性の認識を如何に持たせるかがポイントであり、コン
プライアンス研修会等研修会の全員参加のチェックや、感想文の全員記入等対策を講じております。また、役
員が朝会等を通じて重要事項についてコメントをしております。コンプライアンス、利用者保護、リスク管理
を重要課題として位置づけ職員全員が二度と不祥事を起こさないという気概を持ち続ける職場風土を築きたい
と考えております。
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