県北地区特別支援学校新築及び大規模改修工事基本・実施 - 茨城県

(仮称)県北地区特別支援学校新築及び大規模改修工事基本・実施設計委託に係る
公募型プロポーザル審査報告書
1
審査結果
最優秀案の提案者(設計候補者):三上建築事務所・眞建築設計室建築関連業務共同企業体
優
2
秀
案
の
提
案
者 :桂・団建築関連業務共同企業体
審査経緯
(仮称)県北地区特別支援学校新築及び大規模改修工事基本・実施設計委託に係る公募型
プロポーザルは,茨城県建設コンサルタント業務等入札参加資格者名簿に登録された,県内
外の一級建築士事務所と県内の一級建築士事務所2者による建築関連業務共同企業体(以下
「JV」という。)を対象とし,代表構成員について,同種又は類似の設計業務(※)の実績を
有すること等を参加資格要件として公募したところ,7JVから参加表明があった。7JV
とも参加資格要件を満たすことが確認できたことから,技術提案書の提出を要請し,全JV
から技術提案書の提出があった。
審査は,第一次審査,第二次審査(ヒアリング)の計二度,実施した。第一次審査におい
ては,全ての技術提案書について審査を行い,ヒアリング対象者を選定した。第二次審査に
おいては,ヒアリングを含めた審査を行い,最優秀案及び優秀案を選定した。
※ 同種業務:RC造で延べ面積2,000㎡以上の特別支援学校の教室棟の設計業務
類似業務:RC造で3階以上かつ延べ面積2,000㎡以上の小学校又は中学校の教室棟の設計業務
(1) 特別審査委員会(第一次審査)を,次のとおり開催した。
日
時:
平成25年7月18日(木) 午前10時30分~午後2時30分
場
所:
つくばサイエンス・インフォメーションセンター
出席委員数:
大会議室
5名(全員)
(2) 特別審査委員会(第二次審査/ヒアリング)を,次のとおり開催した。
日
時:
平成25年7月29日(月) 午前9時30分~午後2時30分
場
所:
茨城県市町村会館 203会議室
出席委員数:
5名(全員)
(3) 最優秀案選定までの経緯
審査の公正を期すため,提案者の名を伏せて無作為にAからGを表示した7JVの技術提
案書(様式6)を,各審査委員に事前に配付し,あらかじめ検討をした上で,特別審査委員
会に臨み,審査を行った。
なお,技術提案書の提案者は以下の7JVであった。(五十音順)
RIA・つくば建築設計事務所建築関連業務共同企業体
梓・横須賀満夫建築関連業務共同企業体
桂・団建築関連業務共同企業体
現代計画・日木産業建築関連業務共同企業体
根本・天建築関連業務共同企業体
日立建設設計・柴建築関連業務共同企業体
三上建築事務所・眞建築設計室建築関連業務共同企業体
第一次審査では,7提案について,「
(仮称)県北地区特別支援学校新築及び大規模改修工
事基本・実施設計プロポーザル方式の説明書」に示した3つの課題に対する提案内容を確認し
つつ,討議を行った。
3つの課題とは以下の①~③である。
【課題①】配置・平面計画について
・児童・生徒の心身特性を踏まえ,安全で使いやすい施設計画とすること。
【課題②】意匠・景観計画について
・地域の象徴(財産)にもなっている校庭の桜木「瑞桜」(樹齢 80 年)を生
かした配置・景観計画とすること。
【課題③】コスト縮減について
・ライフサイクルコストの低減とともに,容易なメンテナンスを可能にする
施設計画とすること。
上記課題を踏まえ,特別審査委員会として,以下の項目を主要な観点として審査すること
とした。
■
多目的室及び教室について,特別支援学校の弾力的な学習活動にも対応出来るような提
案がされているか。
■
バス・車のアクセスについて,無理なく安全に利用できる提案がされているか。
■
知的障害のある児童生徒の心身特性を理解し,精神的に落ち着ける空間の提案がされて
いるか。
■
肢体不自由を重複する児童生徒に対し,バリアフリーにも配慮された提案となっている
か。
■
新築棟と既存棟及び桜木との関係性に対して,どのように提案されているか。
■
教室を教育の場及び生活の場として,今後長く機能する提案がされているか。
■
コスト縮減や環境への配慮に対して,独自のアイデア・工夫が提案されているか。
特別審査委員会では,まず各委員が全提案について前述の課題及び主要な観点を踏まえた
点数評価を行い,予め評価していた技術者資格及び設計実績等の客観点を加えた総合評価を
行った。その後,総合評価の低い提案から順に各委員が所見を述べ合い,ヒアリング対象者
とするかの判断を行った。その結果,A,C,E,F及びGの5案の提案者をヒアリング対
象者として選定した。
第二次審査のヒアリングにおいては,1JVあたり10分間のプレゼンテーション,30
分間の質疑応答を行い,課題に対する提案及び設計チームとしての取組体制を比較しながら,
討議を行った。
その結果,A案を推す意見が多数であったため,A案を最優秀案(設計候補者)に選定し
た。さらに,C,E,F及びG案から,G案を優秀案に選定した。
3
審査講評
今回の(仮称)県北地区特別支援学校におけるプロポーザルは,コスト縮減等の一般的な
課題に加え,独自課題として,①児童・生徒の心身特性を踏まえた安全で使いやすい施設計
画,②校庭の桜木「瑞桜」を生かした配置・景観計画を求めた。
【課題①】については,児童・生徒の心身特性を踏まえ,精神的な配慮がされているか,
弾力的な学習活動に対応する配慮がされているかについて重点的に検討した。
【課題②】については,校庭の桜木「瑞桜」との関係への配慮,景観への配慮について重
点的に検討した。
【課題③】については,具体的かつ実現性のある提案に着目して検討した。
また,設計を委託した際に,設計チームとして担当部局及び学校と連携して,業務に取り
組む体制がとれるかについても審査を行った。
これらの課題に対する提案及び設計チームの体制を比較検討しながら審査を進め,基本設
計時における提案内容の変更の可能性も考慮し,最優秀案(設計候補者)を選定した。
なお,各提案に対する講評は以下のとおりである。
最優秀案
A案(三上建築事務所・眞建築設計室建築関連業務共同企業体)
平面計画においては,多目的教室を中心とした普通教室群で構成するユニットを配置する
ことにより,数人から学年規模で実施される多様な学習活動への対応を可能としている。加
えて,児童生徒が心の落ち着きを取り戻すための小さな空間が適宜配置されており,知的障
害の児童の学習アクティビティに十分対応した内容となっている。
意匠・景観計画においては,瑞桜の南西側を開放し,桜木と校舎,その背後の山並との調
和を図るため,新校舎を切妻の大屋根とした意欲的な提案であり,評価できる。
さらに,勾配屋根の採用,外断熱化による建物の長寿命化や,教室の光・熱環境の検討な
ど,コスト縮減に具体的かつ実現性のある提案を行っている。
以上から,最優秀案の提案者は,特別支援学校建築に対する深い理解のもと独自の提案が
されていると認められる。担当部局及び学校との十分な協議を経ながら,設計業務を遂行す
る能力が高いと判断したため,特別審査委員会として設計候補者に選定したものである。
なお,基本設計にあたっては,児童生徒の心身特性について,特に学校との十分な意見交
換を行い,ディテールに細心の注意を払い設計する必要がある。
優秀案
G案(桂・団建築関連業務共同企業体)
教室の配置をクラスター型とし,3教室を1ユニットとする明快なプランニングである。
また,瑞桜を望む位置に交流ラウンジを設け,桜木を生かしつつ,知的障害の学習活動のひ
とつである地域の方々との交流の場を設けていることは評価できる。
しかし,平面計画が各学年の人数変動が起きた場合の柔軟性に欠けていること,また,構
造計画や管理の面で課題が残るなどの点で最優秀には及ばないと判断された。
C案
将来増築スペースを確保するために敷地の利用範囲を限定していることで,送迎車のアプ
ローチ,さらに配置計画の閉塞感や圧迫感について課題が残る提案である。
特別支援学校の児童生徒数の増加への対応に積極的に取り組む姿勢が伺え,また,普通教
室の全室を南面させた学習・生活環境への配慮は一定程度評価された。
E案
多目的室の具体的な提案が弱く,さらにピロティや複雑な平面形状における構造計画につ
いても課題が残る提案である。
教室内に可動間仕切りやサポートコーナー,教師コーナーを設け,自由度の高い学習・生
活空間を創出しようとする提案は一定程度評価された。
F案
弾力的な学習活動に対応するための平面計画への提案,及び,コネクトコートの具体的な
提案に乏しく,さらに構造計画についても課題が残る提案である。
しかし,手すりに県産材を使用して,既存棟と新築棟で意匠的に統一感を持たせようとす
る提案は一定程度評価された。
なお,最優秀案及び優秀案以外のヒアリング対象者は,以下の3JVであった。
(五十音順)
梓・横須賀満夫建築関連業務共同企業体
根本・天建築関連業務共同企業体
日立建設設計・柴建築関連業務共同企業体
4
おわりに
今回のプロポーザルの審査にあたり,審査委員は提案者とともに,茨城県における特別支援
学校のモデルとなり得る学校施設をつくるとの思いで検討を行った。
最優秀案の提案者である設計者には,提案されたコンセプトを生かしながら,担当部局と学
校との十二分な協議を重ねることにより,特別支援教育の一層の充実を図り,安全で使いやす
い施設を実現されることを期待したい。
最後に,本プロポーザルに参加された7JVの方々に対し,プロポーザル提案書の作成等に
時間と労力を割いていただいたこと,そして非常に厳しいスケジュールのもと意欲的な提案が
なされたことに対し,審査委員一同,深甚なる敬意を表するとともに感謝いたします。
平成25年7月29日
(仮称)県北地区特別支援学校新築及び大規模改修工事基本・実施設計委託
平成25年度土木部プロポーザル特別審査委員会
委員長
上野
淳
委
員
藤本
効
委
員
貝島
桃代
委
員
大貫
広司
委
員
山田
茂