エーテル系溶媒の熱安定性評価 横浜国立大学大学院環境情報研究院 ○三宅 淳巳,小川 輝繁 横浜国立大学大学院工学府 長澤 敬太 1.はじめに エーテル系溶媒は化学品合成等に用いられる有用な物質であるが,自動酸化反応により過酸化物を生成し, 反応系の安定性を阻害する因子となる可能性を有している[1]。本研究ではテトラヒドロフラン(THF),およ び THF/ジメチルスルホキシド(DMSO)混合溶媒系の熱特性評価,反応生成物解析を行うことを目的とし,酸 化を促進するための加速試験を行った。 2.試料 2W/g 10 貯蔵0day Heat Flow[W/g] 8 本研究では試料として THF(単体)および THF/DMSO 混合溶 媒(混合比 3:7,5:5,7:3)を用いた。THF は酸化防止剤抜きの ものを使用した。 6 貯蔵6day 4 貯蔵12day 貯蔵8day 2 3.実験 試料 4mL をステンレス製球形耐圧容器(容積 8mL)に入れ, 0 50 100 150 200 250 300 Temperature[℃] 1MPa の酸素加圧下において 70℃で等温貯蔵した。48 時間毎 図1.THF(単体)のDSC昇温測定結果 にサンプリングし,DSC を用いて熱測定を行い,また FT-IR を用いて反応生成物の解析を行った。容器内の酸素の欠乏を 防ぐため,サンプリングする毎に酸素過圧を行ない,1MPa あるため,窒素雰囲気下においても等温貯蔵を行い,DMSO による THF の酸化が起こるかどうかの検討を行った。 貯蔵0day 2 Absorbance を保持した。また,DMSO は酸化剤として使用されることが カルボン酸 アルキル 過酸化物 1182 ラクトン 1720 1765 1250 貯蔵14day 1400 4.結果・考察 THF 単体は,貯蔵開始 48 時間後から THF 過酸化物の分 0 2000 1500 1000 Wavenumber[cm-1] 解による 80℃付近から小さな発熱,110℃付近から大きな発 図2.THF(単体)のIR測定結果 貯蔵開始 288 時間(12 日)後に発熱量が最大となった。なお, 過酸化物の生成,カルボン酸,ラクトンの生成が確認された。 THF/DMSO 混合溶媒系においては,いずれの組成において も DMSO の熱分解温度の低下が見られ,これより混合系とす ることで熱安定性の低下が起こることが確認された(図3) 。 12 貯蔵0day 10 Heat Flow[W/g] 貯蔵 336 時間(14 日)後の THF 単体の IR 測定(図 2)より, 2W/g 熱が確認され(図1),過酸化物の生成が示唆された。その後, 貯蔵6day 8 貯蔵12day 6 貯蔵8day 一方,窒素雰囲気下での貯蔵試験では過酸化物の生成は見ら れず,混合溶媒系において DMSO による THF の酸化は起こら ないことがわかった。 参考文献 4 50 100 150 200 250 Temperature[℃] 図3.THF/DMSO混合溶媒(混合比3:7) のDSC昇温測定結果 [1]L.Bretherick 著(田村監訳):ブレスリック危険物ハンドブック(第 5 版),丸善(1998) 300
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