(№ 86) ポリエステル系 再生繊維(レーヨン)……セルロース(綿・パルプ)を化学的に溶解し、再び糸状のセルロース にしたもの ◆ポリエチレンテレフタラート テレフタル酸のカルボキシル基とエチレングリコール HO-CH2-CH2-OH のヒドロキシル基が連 続的にエステル結合することによって合成される。 溶解させる溶液によって、銅アンモニアレーヨン(キュプラ)とビスコースレーヨン(レー ヨン)に分かれる。 銅アンモニアレーヨン……[Cu(NH3)4]2+ テトラアンミン銅(Ⅱ)イオン溶液に溶解。 ビスコースレーヨン ……アルカリで処理、二硫化炭素(液体)と反応。原料はパルプ。 + n → n HOーCH2ーCH2ーOH + (2n-1)H2O セルロースを適当な溶媒に溶解した後、長繊維として再生したものを再生繊維またはレーヨン という。通常は水酸化ナトリウム溶液、次いで二硫化炭素と反応させて溶解した後(この溶液は 非常に粘性が高いので、ビスコースと呼ばれる)、凝固液(硫酸)中に押し出すことで繊維に再 生する。この方法により製造されるものはビスコースレーヨンと呼ばれる。なお、フィルム状に 再生したものがセロハンである。 viscose = viscous 粘着性のある/ねばねばする. 水酸化銅を濃アンモニア水に溶解した液(シュバイツアー試薬)に溶かしたセルロースを凝固 再生して製造した繊維は銅アンモニアレーヨンまたはキュプラと呼ばれ、しなやかなやわらかさ をもつ。 n mol のテレフタル酸と n mol のエチレングリコールが反応して、1 mol のポリエチレンテレフ タラートと(2n - 1)mol の水が生成する。 6,6-ナイロンがアミド結合による重合だったのに対し、ポリエチレンテレフタラートでは、 エステル結合による重合である。 ポリエチレンテレフタラートは繊維として利用されてきたが、最近は繊維状にせずにペットボ トル容器としても用いられている。(PET はポリエチレンテレフタラートの略) 合成繊維と合成樹脂の違いは別に材料によるものではなく加工の仕方の違いによる。 ポリエチレンテレフタラートは用途に応じて繊維にもプラスチックにもできる。 他の材料についても同じことが言える。 半合成繊維(アセテート) ……セルロースのヒドロキシル基を無水酢酸処理することにより、トリアセチルセルロ ース(セルローストリアセテート)とした後、その一部を加水分解しジアセチルセ ルロースとする。これをアセトンに溶解した後、細孔から空気中に噴出させ紡糸す る。これがアセテート(アセテート繊維)である。このように天然高分子の人工的 な誘導体からつくられる繊維を半合成繊維という。 トリアセチルセルロース[C6H7O2(OCOCH3)3]n は、酢酸エステルである。 (アセテートとは、酢酸エステルという意味。) トリアセチルセルロースは溶媒に溶けにくいが、これを一部加水分解してジアセチルセルロース [C6H7O2(OCOCH3)2]n にすると、アセトンに溶けるようになる。 アセテート繊維とは、絹に外観が似ており、衣料として利用されている。 再生繊維と半合成繊維 絹以外の天然繊維は短繊維であるため、そのままでは糸に紡ぐことができない。 そこで、化学的な処理を施すことにより長い繊維をつくり出す方法が開発されてきた。再生繊 維には、製造方法により、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨンがある。一方、半合成繊 維は、天然繊維そのままでなく、その誘導体からつくられる繊維である。 セルロース トリアセチルセルロース 【簡易実験】 濃硫酸を少量加えた無水酢酸中にろ紙をひたし、約 50 ℃で加熱し、ガラス板に流し固めると、 フィルム状のアセテートが得られる。アセテートは、不燃フィルムや録音用テープに使われている。 (№ 87) 天然ゴムと合成ゴム 合成ゴム 天然ゴム……イソプレンが付加重合してできたもの 合成ゴム……ブタジエン,クロロプレンが付加重合してできたもの 合成ゴムは、イソプレンに似た分子構造をもつ簡単な分子を付加重合や共重合させることにより 得られる。その性質は、油によって変化しないものや、耐摩耗性、耐久性、耐老化性、耐熱性に 優れたものが多い。 天然ゴムは、高温でやわらかく、低温で硬くなって使いにくいが、硫黄を加えて反応させると、 適当な硬さと弾力性をもつようになる。これを生ゴムの加硫という。 加硫によって生ゴムの性質が改善されるのは、ポリイソプレン分子中のところどころで硫黄原 子が炭素原子に結合し、硫黄がポリイソプレンの二重結合と反応し、網目構造をとるように架橋 ができるからである。この架橋構造によって、弾性が大きくなり、化学的にも機械的にも強度が 高まる。 硫黄原子の架橋 *1 フッ素ゴム・シリコンゴムは、二重結合をもたない。 付加重合でできる合成ゴム n 天然ゴムに対して加える硫黄の割合を変えると、適当な硬さをもつ弾性ゴムやエボナイトと呼ば れる硬い製品が得られる 生ゴムの成分はイソプレンが付加重合したポリイソプレンで、重合度は数百から数万である。 単量体 CH 2 =C-CH=CH | X 2 付加重合 → 重合体 -CH2-C=CH-CH2 - | X n X 単量体 合成ゴム 用途 H 1,3-ブタジエン ブタジエンゴム (ポリブタジエン) タイヤ イソプレン イソプレンゴム タイヤ CH Cl 3 クロロプレン クロロプレンゴム (ポリクロロプレン) コンベヤー用ベルト イソプレンゴムは、天然ゴムの合成品 (№ 88) 共重合でできる合成ゴム イオン交換樹脂 共重合による合成ゴム …………ベンゼン環に、スルホ基やヒドロキシル基をもった合成樹脂 単量体(1,3-ブタジエン) + 単量体(スチレンやアクリロニトリルなど) CH CH 2 =C-CH=CH | H CH2 CH 2 2 =CH | CN 陽イオン交換樹脂 陰イオン交換樹脂 R-SO3-H+ ) + R-N+(CH3)3OH- 共重合 X C 6 H CN 5 Na+ + + 合成ゴム 用途 1,3-ブタジエンとスチレン スチレンブタジエンゴム タイヤ,くつ底 アクリロニトリルブタジエンゴム ホース、パッキング ◆弾性ゴム……合成ゴムも、加硫によって弾性ゴムになる。 ゴムには大きく分けて弾性・加硫・多様性の3つの性質がある。ゴムほど大きな弾性を持つ物質 はないので、他の材料によってゴムを代替することはできない。また、加硫という化学反応を起 こす。このためゴムの加工も製品もプラスチックに比べ、非常に複雑である。 ゴムには生ゴム(原料ゴム)と弾性ゴム(加硫ゴム)の2通りの意味合いがある。普通私たちの 目にするゴムは、加硫したゴム製品で弾性ゴムのことである。弾性ゴムを引っ張って放すとすぐ 元の形に戻るが、この挙動を弾性変形という。生ゴム(未加硫ゴム・原料ゴム)は元の形に戻らず 引っ張った時の形のままである。生ゴムのこのような性質を可塑性がある、または塑性変形する と言う。生ゴムは塑性変形を利用して、金属と同じようにいろいろな形に成形することができる。 ゴム工業の最大の発明は加硫である。生ゴムにカーボン等の補強材を混合し更に少量の硫黄と 助剤を加えて成形した後、加熱により加硫してゴム製品ができる。加熱により、原料ゴムの分子 と硫黄分子が化学反応により結合して、強固なゴム製品になり生ゴムの何十倍、何百倍の強さに なる。ところで、金属やセラミックの強度は変わらない。また、ゴムに近いプラスチックでも原料 の形が変わるだけで、強度は変わらない。ゴムのように原料と製品の強度や性質が大幅に変わる ものはほとんどない。分子レベルで模式的に考えますと生ゴムを加硫することにより、隣同士や 近所同士のゴム分子が硫黄を間にして結合し、弾性ゴムとなる。この結合している部分を架橋点 という。良いゴム製品を作るには、均一な化学反応を行うことが大切で、大量の固体状の生ゴム に少量の硫黄等を分散させる困難性や、化学反応の複雑性など、極めて高度な技術が必要になる。 ゴム加工工業の規模が樹脂加工工業よりはるかに大きいのはこのためである。 R-SO3-N a + Cl- R -SO3H + R-N(CH3)3OH + NaCl 単量体 1,3-ブタジエンとアクリロニトリル R-SO3H+ は、陽イオンを交換する。 R-N+(CH3)3OH- は、陰イオンを交換する。 + R-N+(CH3)3Cl- + R -SO3Na R-N(CH3)3Cl + H2O イオン交換樹脂は、一般に、スチレンと少量の p-ジビニルベンゼンから共重合により合成される 3次元網目状構造を有する不溶性スチレン-ジビ ニルベンゼン樹脂を基材とし、種々の酸性または 塩基性官能基を導入することによりつくられる。 陽イオンを交換できる酸性の基をもつ合成樹脂を 陽イオン交換樹脂という。 スルホン酸基やカルボキシル基を導入すれば陽 イオン交換樹脂となり、溶液中の陽イオンを水素 イオンに交換する能力をもつ。 使用済の陽イオン交換樹脂に希塩酸や希硫酸など の強酸の水溶 液を通すと、樹脂の酸性基に結合して いた陽イオンが再び水素に置き換わり、再利用が可能 である。 陰イオンを交換できる塩基性の基をもつ交換樹脂 を陰イオン交換樹脂という。ヒドロキシルトリアル キルアンモニウム基を導入すれば、陰イオン交換樹 脂となり、溶液中の陰イオンを水酸イオンに交換す る能力をもつ。使用済の陰イオン交換樹脂に強アル カリ水溶液を通すと、再利用することができる。 H+ OH-
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