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第 2 回 FD レポート
平成 23 年 2 月 9 日(水)10:00~12:30
新潟大学五十嵐キャンパス・
総合教育研究棟 D 棟 1 階大会議室
2011 年 2 月 9 日、初修外国語企画部主催の第 2 回 FD「初修外国語教育のオリエンテー
ション」が開催された。年度末の多忙をきわめる時期であり、やや異例の午前中の開催で
あったが、本学の外国語教育に関わる常勤・非常勤講師を中心に 30 名ほどが参加し、活発
な議論がおこなわれた。
第1部「主専攻プログラムのなかでの初修外国語教育の位置づけ」では、冒頭、企画担
当の番場から、本 FD の狙いの説明と問題提起があった。「初修外国語のオリエンテーショ
ン」という言葉から連想されるのは、通常、大学で学ぶ新入生対象の「指導」だが、今回
の FD ではむしろ、
「学士課程教育の全体のなかで初修外国語の意義をどのように位置づけ、
どのような姿勢で教育にあたるか」を考える教員の「定位」が念頭におかれている。全学
的に主専攻プログラムの整備が進むなか、短絡的に、狭義の専門知識や専門技能に関する
議論に終始する傾向が見られるが、新潟大学が一貫した学士課程教育をプログラム化して
おこなうためには、いわゆる「教養教育」の確固たる位置づけが欠かせない。今回、初修
外国語担当ではない先生も含め、種々の学部・主専攻の教員にスピーカーを依頼したのは、
各学部・主専攻プログラムにおける初修外国語教育の位置づけについて話していただくこ
とで、外国語教育のメニューを提供する初修外国語担当教員が、今後目指すべき方向を考
えるためである。
つづいて、経済学部・経済学主専攻プログラムに所属し、初修外国語(スペイン語)も
担当されている佐野誠先生からご報告があった。まず、専門科目の担当者として赴任され
た佐野先生が初修外国語を担当するようになった経緯の紹介のあと、経済学主専攻プログ
ラムと初修外国語の関係の現状と展望について、いくつかの問題提起がなされた。経済学
部は初修外国語の卒業要件として 6 単位を設定しており、新潟大学のなかでも比較的初修
外国語を重視する立場にあるが、
「学生の自主性を重んじるべき」という学部の伝統もあり、
2 年次以降の学生が積極的に外国語学習を継続する状態には至っていない。以前はドイツ語、
フランス語、スペイン語なども開講されていた「異文化論」
「外書講読」の授業も、現在で
はほぼ中国語一つになってしまっているし、学部間協定を数多く結んで学生の海外留学を
積極的にうながす態勢にもなっていない。しかし、学生に諸外国に対する関心がないわけ
ではない。今後はむしろ、カリキュラムの手直しなども含めて、外国語に対する学生の需
要を積極的に創り出し、専門教育と外国語教育の結びつきを強めていくための計画を戦略
的に考えていくべきであろう。
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次に、教育学部・初等教育および中等教育主専攻プログラムに所属し、初修外国語(中
国語)も担当されている角谷聰先生からご報告があった。冒頭、ご自身の担当されている
中国語スタンダードクラスの履修状況やアンケートの紹介があり、1 年生がおおむね、打算
的ではない、純粋な外国語学修意欲をもっていること、しかしながら、複数の教員免許を
とることが普通となっている現在の教育学部において、学生は多くの専門科目を履修しな
ければならず、CAP 制の縛りもあって、なかなか継続的な初修外国語履修に進めていない、
といった現状が報告された。つづいて、そうした学生たちを外国語の学びに動機づけてい
くための授業の工夫が紹介されたが、具体的な授業プリントや視聴覚教材の活用などは、
外国語の担当教員にとって大きな参考になるものであった。
最後に、法学部・法学主専攻プログラムに所属するとともに、国際センターの副センタ
ー長であり、長年、清華大学での学生のサマーセミナーを担当してこられた真水康樹先生
からご報告があった。まずは法学部主専攻における 3 つのコア・カリキュラム(企業法務、
行政法務、国際法政)の紹介があり、そのうち国際行政コア・カリキュラムが、2003 年に
改組された従来の国際コミュニケーション学科を引きつぐものとして、学生の積極的な外
国語学修を奨励していることが報告された。その後、自らの学生時代をふりかえると、現
代社会を理解するためのツールとして選んだ中国語であったのに、受けた授業は文法と古
典テクストの訳読が主体で、需要と供給のミスマッチがあった。今日の大学では、単なる
語学学習を超えた異文化理解、地域研究へと学生を導いていかなければならない。昨年の
尖閣問題に際して高まった日本の反中感情の原因の一端も、家族との結びつきを最重要視
する中国の伝統文化に対するわれわれの無理解にある。清華大学において長年開催してき
たサマーセミナーの目的もそこにあり、われわれは、異文化に対する学生の関心をいっそ
う煽るような教育をおこなっていかなければならない。
三人の先生方の報告のあと、短い時間ではあったがディスカッションがおこなわれた。
議論の中心になったのは、ガイダンスや各種の授業――外国語の授業であれ、外国語を使
わない授業であれ――を通じて、異文化理解の重要性を啓蒙し、外国語学習に対するニー
ズ(とりわけ 2 年次以降の)を創出していくのが、いかに重要か、ということであった。
現状に対する反省にとどまらず、これからの外国語教育の可能性を語る会になった。
(第1部報告 番場俊/人文社会・教育科学系)
第2部では「初修外国語チューター制度」がテーマとして取り上げられた。
はじめに、第2部の司会担当である干野より、本制度の沿革と今学期における活用状況
が報告された。本制度は今学期、独仏中朝の4外国語合計23クラスにおいて活用され実
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施規模が過去最大となり、初修外国語履修者のうち30%強もの学生が本制度の恩恵を受
けた点が強調された。
続いて、2名の初修担当教員より事例報告があった。まず、中国語担当の土屋太祐先生
(人文社会・教育科学系/経済学部)から、今学期初めてチューターを活用した中で生じ
た問題について報告がなされた。限られた時間内でチューターとの会話機会をクラス全員
にどのように確保するか、また、待機中の学生をどう指導するか等が課題とのことである。
1、2回のチューター活用での語学力向上は難しいものの、自分の発音が通じないことを
認識して、発音に対する意識の向上が見られたという。初級段階においては、会話の練習
というよりも、学ぶ上でのモチベーションを高めることが最大の目的となる点が指摘され
た。
2人目はドイツ語担当のアンニャ・ホップ先生(教育・学生支援機構)から活用状況が
紹介された。過去3学期間、活用してこられた経験を踏まえて具体的に報告され、他の教
員にとって大いに参考になるものであった。チューター活用した効果として、外国語学習
における「リアル感」が増し、意思疎通が成功することでモチベーションが向上したとい
う。また授業運営面では、チューターには発音指導のみならず口頭試験における学生との
対話の相手役も担当させたことにより、教員が評価に専念できるなどの利点が報告された。
(参考:アンニャ・ホップ先生当日配付資料)
その後、フロアを交えたディスカッションが行われ、予定の時間を延長して活発な意見
交換がなされた。チューターを活用した他の教員からは、異文化を紹介する時間を設けた
事例の紹介や、初修外国語チューターとの交流会などに関する情報掲示板の設置の提案な
どがあった。一方で、これから活用を考えている教員からは、これまでのノウハウを知り
たい、勉強会を開催して欲しいといった要望が出された。
今回のFDを通じて、初修外国語チューターの有効性については、もはや共通認識とし
て断言できる段階にあると言える。今後は、失敗例も含めた活用事例や、授業運営におけ
る具体的な留意点など、これまで蓄積されてきた情報・経験を取りまとめて、教員間で共
有を図ることが期待される。
FDの閉会にあたり、佐藤孝先生(自然科学系/工学部)より、初修外国語チューター
制度が留学生にとって日本人学生と交流できる機会となっている点の指摘があり、今後も
初修外国語教育と協力して留学生の受け入れや送り出し数の増加につなげていきたいとの
コメントがあった。
(第2部報告 干野真一/教育・学生支援機構)
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