結婚して道徳と出会う み よ私こがモラロジーに縁を得たのは、妻・美 代子との結婚がきっかけです。私は、男三 兄弟の二男として生まれました。中学生の ころ、国鉄 (現在のJR)が東海道新幹線を 昭和三十九年から運行することを知りまし た。新幹線の運転士になりたくて国鉄に就 職しようと、工業高校の電気科に進学しま した。ところが、望みどおりの採用がなく、 高校卒業 後は東京の電機メー カーに就職。 全国を渡り歩く日々を過ごしました。 昭和四十四年二月に、父から「そろそろ 結婚するように」とお見合いを勧められま した。私もその気がありましたので、見合 まさる い写真に手を伸ばしたところ「お前は、こ の山から選べ」とのこと。見れば写真の山 が 三 つ あ り ま す。 左 端 は 長 男 の 跡 取 り 用、 右端は弟の新屋(分家)用で、真ん中が私の 大森 勝 おおもり 養子用でした。 父いわく「三人も嫁をもらっては世間に 申し訳ないので、養子に行ってもらいたい」 。 それに対して私も素直に納得して、今の妻 とお見合いをしました。お見合いの後、二 人で商店街を歩いていたとき、妻が「ここ ますので、聴かれませんか」と言われ、後 ろの席で聴講しました。 「品性の良い人は人 相が良く、人から好かれて幸せになれます」 というお話で、これが彼女が学んでいる道 徳かと納得しました。今振り返ると、この 時すでにモラロジーに感化されていたよう に思います。 呼び戻された岡山での生活 その後、妻と結婚しました。大森の両親 からは「若い時分は、今の会社に勤めなさ い。岡山にはしばらく帰ってこなくてもい いから」と言われていたので、当分東京で 生 活 を す る つ も り で い ま し た。 と こ ろ が、 三か月ほどしたある日、実家の父より「養 子なのだから、岡山の大森家へ帰るように」 と、県庁の採用試験の日程まで調べられて、 受験するように言われました。 私は当時の仕事が楽しくやりがいも感じ ており、収入もよかったので不満に思った のですが、ちょうど その時、妻の言葉が その1 昭和19年(1944年)現在の岡山市北区生まれ。 高校卒業後、東京の企業に入社。44年に美代子 さんと結婚し、大森家に入る。45年から平成14 年まで岡山県庁に勤める。現在は飲食店を経営。 モラロジー研究所社会教育講師 は道徳の先生のお店よ」と紹介します。私 にはなんのことだか分かりませんでした。そ の夜、父が「どうだった」と聞くので「『道 徳の先生』のことが気になる」と話をした ところ、さっそく仲人さんに聞き合せてく れて「宗教ではなく、大森家の近所では皆 」とのこ が勉強している (家庭座談会のこと) とで私も納得しました。 すると、父はすぐに「お前の都合はいつ がいいか」と聞いてきます。 「なんのことか」 と言うと「結婚式の日取りを決める」と言 われ、ビックリしましたが、了解しました。 その後、私は出張の連続で忙しく、なかな か妻と会うこともできませんでした。そん な中、妻が「道徳の女性講座」を受講して ると聞き、彼女に会うため道徳科学研究所 (現モラロジー研究所)を訪問しました。 あい さつ 守衛さんに女性講座の会場を尋ねて、案 内どおり歩いていると、すれ違う人たちが み ん な「 こ ん に ち は 」 と 挨 拶 し て き ま す。 普段、知らない人から挨拶されることなど ありませんでしたので、「道徳を教えている 所だけあって、すごい」と感激しました。 会場へ着くと寮長さんから「講座中です。 こ やままさ お ちょうど、小山政男先生の特別講義があり 婚したのは、両親が喜んでくれると思った からよ」 。その言葉を聞いたときには、とて も驚きましたが、そんな考え方もあるのか と頭の片隅に残っていたのでしょう。私自 身も「親が喜ぶことをしたほうがいい」と 思い、岡山に帰る決意をしました。 岡山に帰ってみると収入は半減し、長女 も生まれたころでしたので、生活は大変で した。大森の両親は、私に道徳を勉強して ほしそうでしたが、私は「自分は世間から 見て悪いことはしていないし、養子として よくやっている。今さら道徳の勉強なんて」 と、 本気になれませんでした。両親から「講 習会があるから」と誘われたときにも、無 理やり残業をつくって「忙しいから」と受 講しないほどでした。 そんな私がモラロジー活動に目覚めた転 機は、昭和四十五年十二月半ばのこと。妻 の青年研究会仲間が「クリスマス会」の誘 いに来たのです。「大森さんは電気のことに 詳しいので、照明や音響の手伝いをしてほ しい。終わったら打ち上げで一杯飲みまし ょう」と上手に誘われました。これが縁と 〈次号につづく〉 なり、青年部活動に参加することとなった のです。 42 れいろう. 平成26年7月 43 頭によみがえりまし た。 「私が勝さんと結 大森家の両親に 導かれて
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