第2章 春日市の概況と特性

第2章
1
春日市の概況と特性
市の概要
(1)市の地勢
本市は、福岡都市圏の中央部に位置し、福岡市の南東に隣接しています。福岡市の中
心市街地までは 10km 程度の距離であり、福岡都市部への至近な立地条件、良好な生活環
境等により、都市部在勤の勤労者の住宅都市となっています。
本市の形状は、東西4km、南北 5.3km、面積は 14.15 ㎢でまとまった形をしており、
人口密度は福岡県で最も高く、いわゆる都市圏、近畿圏の都市を除けば那覇市についで、
第2位となっています。
(2)沿革
弥生時代中期には奴国の中心部が春日市内にあったといわれ、市北部の須玖地区では
奴国にまつわるとされる遺跡が数多く発見されています。また市西部では古墳時代の遺
跡も発掘されています。
1889(明治 22)年4月1日「市町村制」が施行され、本市の前身である春日村は、春
日、上白水、下白水、小倉、須玖の5つの村が合併して那珂郡春日村としてスタートし
ました。
1953(昭和 28)年の町制施行で春日村から町になって以来、市街地の整備や好立地が
手伝って急激に人口が増加しました。
1972(昭和 47)年の4月1日、3万人市制特例法により市になりました。
1996(平成8)年には人口が 10 万人を超え、ますます発展しています。
2
健康に関する概況
(1)市の健康に関する概況(表1)
市の健康に関する概況を国、県と本市との比較により、顕著に良い結果の項目、顕著
に悪い結果の項目を明らかにしました。
4
表1 市の健康に関する概況
国・県と比較し、顕著に良いもの
国・県と比較し、顕著に悪いもの
全国
福岡県(60市町村)
春日市
総人口(H23)
126,659,683人
5,049,457人
109,768人
65歳以上人口(H23)
29,674,852人
1,137,057人
18,279人
22.5 %
16.7 %
23.4 %
高齢化率(H23)
男性
78.8歳
78.4歳 (全国31位)
79.7歳 (県内1位)
女性
85.8歳
85.9歳 (全国23位)
86.3歳 (県内17位)
平均寿命(H17)
合計
1,197,012人
死因別死亡数
(H21)
国保の状況
(H21)
24,231
合計
2,318
男性(人) 女性(人)
327
660人
合計
男性(人) 女性(人)
男性(人) 女性(人)
56,584
7,073人
4,755
2,318
131人
82
49
14.7%
18.9%
10.0%
15.1%
19.6%
10.2%
19.8%
25.1%
14.7%
10万対
65歳未満
原因
第1位
344,105人
第2位
心疾患
第3位
第4位
実人数
原因
実人数
129.4
悪性
39.1%
新生物
14,312人
180,745人
54.4
11.5% 心疾患
脳血管
疾患
122,350人
37.2
7.8%
肺炎
112,004人
28.0
2.1%
老衰
7.2
38,670人
10万対 65歳未満
原因
実人数
10万対 65歳未満
138.7
悪性新
19.8%
生物
217人
134.5
26.3%
5,584人
41.1
9.0% 心疾患
60人
31.3
10.0%
肺炎
4,656人
29.6
3.3%
肺炎
54人
25.5
3.7%
脳血管
疾患
4,404人
34.2
11.5%
脳血管
疾患
48人
25.5
16.7%
不慮の
0%
事故
1,636人
18.2
28.5% 腎不全
21人
10.2
0%
生活保護率
1.52 %
2.46 %(全国1位)
医療扶助率
79.59 %
85.36 %(全国4位)
1.13 %(県内44位)
81.56 %
被保険者総数
36,058,660 人
1,338,187 人
26,393 人
一般
34,183,408 人
1,271,871 人
24,847 人
退職
1,875,252 人
66,316 人
1,546 人
35.0 %
32.9 %
38.1 %
加入率
88.01
収納率
89.93 %
%
87.03 %
一人あたり医療費
289,885 円
324,430円
全国14位
一般
285,399 円
319,565円
退職
371,663 円
417,737円
904,795 円
1,146,623円
286,074円
県内59位
全国14位
276,267円
県内59位
全国3位
443,690円
県内12位
全国1位
1,137,231円
県内19位
1号被保険者
29,098,466 人
1,111,761 人
17,642 人
1号認定者
4,907,439 人
205,522 人
2,550 人
1号認定者/1号被保険者
16.9%
18.5%
14.5%
―
―
―
2号認定者
154,795 人
2号認定者/2号被保険者
要介護認定者
要支援1・2
介護度別
内訳
333
119,965
2号被保険者
6,033 人
117 人
―
―
―
211,555 人
5,062,234 人
2,667 人
1,331,523 人
26.3%
62,648 人
29.6%
647 人
24.3%
要介護1
906,953 人
17.9%
42,605 人
20.1%
417 人
15.6%
要介護2
896,617 人
17.7%
34,544 人
16.3%
509 人
19.1%
要介護3
697,891 人
13.8%
26,723 人
12.6%
390 人
14.6%
要介護4
637,766 人
12.6%
24,697 人
11.7%
379 人
14.2%
要介護5
591,484 人
11.7%
20,338 人
9.6%
325 人
12.2%
特定健康診査
(H22)
受診者/対象者
7,169,761/22,419,244
受診率
32.0%
特定保健指導
(H22)
実施者/対象者
242,911/953,535
実施率
25.5%
人工透析
透析患者状況
(H22)
合計
男性(人) 女性(人)
46,996人
176,549人
悪性
新生物
一人あたりの後期高齢者医療費
(H22)
介護保険の状況
(H22)
563,312
男性(人) 女性(人)
順位
第5位
生活保護
(H22)
633,700
合計
早世予防からみた死亡
(0~64歳)
(H22)
合計
男性(人) 女性(人)
死亡統計(H22)
2,732/15,172
213,854/807,101
18.0% (県内59位)
26.5% (全国39位)
10,853/29,581
111/423
36.7% (全国4位)
26.2% (県内46位)
糖尿病性腎症
糖尿病性腎症
糖尿病性腎症
人数
割合
人数
割合
人数
割合
患者総数
297,126
102,788
34.6
13,438
―
―
219
93
42.5
新規導入
37,532
16,271
43.4
―
―
―
23
10
43.5
5
①
人口構成
本市の人口は、平成 14 年には 106,897 人であったのが、平成 19 年には 109,333 人と
なり、増加傾向にありましたが、それ以降は微減、微増を繰り返しながら推移していま
す。
人口構成は、15 歳未満の年少人口が減少しているのに対して、65 歳以上人口は増加し
ています。高齢化率は、平成 24 年には 16.6%となり、全国や県と比較して低い値です
が、本市の高齢化率及び老年人口ともに増加傾向にあり、今後、少子高齢化が進んでい
くと予測されます。(図1)
図1
人口の推移
(人)
18.0%
150,000
高齢化率
16.6%
120,000
109,333
106,897
100,429
12,082
9,146
15,323
11.3%
14.0%
15.0%
総人口
110,283
65歳以上
18,317
12.0%
90,000
9.1%
60,000
71,658
9.0%
75,706
75,354
15~64歳
73,946
6.0%
30,000
3.0%
19,625
19,109
18,656
15歳未満
18,020
平成9年
平成14年
平成19年
平成24年
0
0.0%
(春日市住民基本台帳)
6
②
出生
本市の出生率は県とほぼ同じです。
近年の研究によると、出生時の体重が 2,500g未満の低出生体重児については、神経
学的・身体的合併症の他、成人後に糖尿病や高血圧などの生活習慣病を発症しやすいこ
とが分かってきました。
本市の低出生体重児の出生率は、県と比較してほぼ同じですが、毎年9~10%の児が
低体重の状態で出生していることから、妊娠前・妊娠期の心身の健康づくりを行う必要
があります。(表1)
表1
出生数及び出生時の体重が 2,500g未満の出生割合の年次推移(%)
市の出生率
県の出生率
市の低出生体重児割合
県の低出生体重児割合
平成 19 年
10.1
9.2
10.3
10.4
平成 20 年
10.2
9.3
9.6
10.2
平成 21 年
9.2
9.2
9.8
10.0
(福岡県人口動態統計)
③
死亡
平成 21 年度の本市における死因別死亡順位は、第1位が悪性新生物(がん)、第2位
が心疾患、第3位が肺炎、第4位が脳血管疾患、第5位が腎不全となっており、生活習
慣と深く関係のある疾病が上位を占めていることから、今後の生活習慣病予防等の健康
づくりの推進が望まれます。
主要死因の変化を平成 18 年と比較すると、腎不全が第 7 位(13 人、10 万対 12.1)か
ら第 5 位(21 人、10 万対 19.5)に増加しています。また、自殺が第 5 位(26 人、10 万
対 24.2)から第 8 位(14 人、10 万対 13.0)に減少しています。(表2)
表2
春日市の主要死因の変化
平成 18 年
平成 21 年
順位
原因
死亡数
10 万対
原因
死亡数
10 万対
第1位
悪性新生物
199 人
185.0
悪性新生物
217 人
201.4
第2位
心疾患
61 人
56.7
心疾患
60 人
55.7
第3位
脳血管疾患
53 人
49.3
肺炎
54 人
50.1
第4位
肺炎
41 人
38.1
脳血管疾患
48 人
44.5
第5位
自殺
26 人
24.2
腎不全
21 人
19.5
(筑紫保健福祉環境事務所業務年報)
7
④
国民健康保険
本市の国民健康保険加入率は、全国や県と比較して低くなっています。
国民健康保険は構造的に高齢者の加入率が高く、一般的に高齢者になるほど、受療率
は高くなり、医療費も増大するため、予防可能な生活習慣病の発症予防と重症化予防に
努める必要があります。
本市の国民健康保険被保険者の一人あたりの医療費を全国や県と比較すると、一般被
保険者は全国や県より低く、県下 60 市町村中 59 位となっています。一方、退職被保険
者は全国や県より高くなっています。一般被保険者と比較して退職被保険者の状況が悪
いため、国民健康保険加入前の他の医療保険者による健康診査及び保健指導のあり方に
ついて、状況を把握していく必要があります。
⑤
後期高齢者医療
本市の後期高齢者の一人あたりの医療費は 1,137,231 円となっており、
全国の 904,795
円よりは高く、県の 1,146,623 円よりは低い費用になっています。
⑥
介護保険
本市の要介護認定者数は、緩やかに増加傾向にあります。
また、介護保険の第 1 号被保険者における要介護認定率は、全国や県より低くなって
いますが、平成 20 年度以降は増加傾向にあり、平成 23 年9月末現在では 15%となって
います。(図2)
図2
第1号保険者の要介護認定者数及び要介護認定率の推移
(人)
(%)
3,500
14.5
14.1
13.6
13.8
14.4
15.0
16.0
3,000
2,386
2,500
2,167
2,212
2,504
2,637
12.0
2,225
2,000
8.0
1,500
1,000
4.0
500
0
0.0
平成18年平成19年平成20年平成21年平成22年平成23年
要介護認定者数(第1号)
要介護認定率
(介護保険事業状況報告)
8
要介護度別認定者数の推移では、平成 22 年度から「要介護度2」の割合が最も高くな
り、平成 23 年度は全体の 19.2%となっています。また、
「要介護度3」から「要介護度
5」までの重度者の占める割合は、平成 18 年度以降全体の約4割に上がっており、平成
23 年度で 40.5%となっています。(図 3)
図3
要介護度別認定者数の推移
(人)
3000
2,759
2,605
2,484
2500
2270
246
2318
2325
243
243
313
270
415
362
2000
327
355
349
366
351
312
400
370
408
372
386
365
1500
318
399
438
531
389
1000
441
477
427
414
537
437
320
381
285
353
380
188
290
224
232
257
275
315
500
要介護度
要介護5
要介護4
要介護3
要介護2
要介護1
要支援2
要支援1
0
平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年
(介護保険事業状況報告)
⑦
健康診査・保健指導
生活習慣病の発症予防、重症化予防の最も重要な取組である、医療保険者による特定
健康診査・特定保健指導は、平成 22 年度の法定報告で、受診率 18.0%、保健指導実施
率は 26.2%で県の受診率 26.5%、保健指導率 36.7%より低くなっています。
本市では、高齢者の医療の確保に関する法律の中では努力義務となっている、20 歳か
ら 39 歳までの市民への健康診査を、希望者全員に実施しています。
健康診査の受診率や、保健指導率を向上させ、生活習慣病の発症予防、重症化予防に
繋げることが、今後も重要だと考えます。
9
3
財政状況に占める社会保障費
社会保障費は、年々増え続けています。
今後さらに高齢化が進展する中で、いかに社会保障費の伸びを縮小するかが、大きな課
題となってきます。
第1章でも触れたように、疾病による負担が極めて大きな社会の中で、市民一人ひとり
の健康増進への意識と行動変容への取組が支援できる、質の高い保健指導が求められてき
ます。
10