SS発表要旨

SS
自律型航空ロボットの研究
茗溪学園高校
内村公紀
1.
2.
3.
2年
研究の背景
した。3.1 の製
2011 年に福島第一原子力発電所で発生
作、実験の際に
した水素爆発事故の際人間は放射線によ
発生した問題
り立ち入ることはできず情報を全く得る
をもとに 2 号
ことができず食い止められなかったこと
に組み込むこ
が多くあった。また、マルチコプターを偶
とでマルチコ
然テレビで目にし、興味を持ち将来レスキ
プター2 号(ラジコン型)を 3 号へ改
ューロボットとして活躍するのではない
良していく。問題と解決策は以下のよ
かと考え研究を始めた。
うになった。3.1 ではジャイロセンサー
研究の目的
(1)自律型マルチコプターの製作をする
(2)製作したロボットが自律的に動ける
ようにプログラムを組み込む
と地磁気センサーのみなので 3.2 で使
<写真②>
用した加速センサーも搭載した9
Degrees Of Freedom SEN をセンサー
(3)カメラを搭載したりしレスキューロ
として使用した。本体基板も 3.1 で使
ボットへと改良していく
用したものではなく 3.2 で使用した
研究の方法
ArduinoUNO を使用した。骨組みとプ
ロペラ、モーターはマルチコプター2
3.1 マルチコプター1 号の製作と実験
号と同じものを使用し、電源も 11.1V
過去に扱った
ことのある部品
の 3 セルのリポバッテリーを使用した。
を使用して 1 号
プログラムでは 3.1 の時とは異なりラ
を製作した。本
ジコンアンプを噛ませて交流モーター
体基板とセンサ
を動かしているのでモーターの動作を
ーはダイセン電
調整した。
<写真①>
子工業のものを使用し、写真①のよう
4.
目的とした自律型のマルチコプターの
に製作した。プログラムも自ら組んだ。
製作はすることは出来たが完全に自型さ
3.2 マルチコプター2 号の製作と実験
せて飛行させることはできませんでした。
キットのラジコン型マルチコプター
を製作する。そこに ArduinoUNO と9
研究の結果
5.
考察
Degrees Of Freedom SEN の回路を
最終的に目標としていたレスキューロ
製作し搭載した。そして、ラジコンで
ボットへ改良することはできなかった。基
飛行させその際のジャイロ・地磁気・
本となるホバリングをさせることが難し
加速度センサーのデータをとる。
く当初の予定よりも研究を進めていくこ
3.3 マルチコプター3 号の製作と実験
とができなかった。今後 3.3 のマルチコプ
マルチコプター2 号をベースに写真
②のようなマルチコプター3 号を製作
ター3 号の自律プログラミングを組み発
展させていきたい。
SS ポスター発表 1
変形菌~自然とのかかわり~
茗渓学園中学校
1年
福田夏音
研究の背景
モジホコリはよく森の中の木の幹や枯葉上にいるが、緑の葉の上でみかけることはなかった。
緑の葉の上では生きていけないのだろうか。それとも、きらいな何かがあるのだろうかと思
い調べてみようと思った。
目的
緑の葉にはモジホコリの苦手な物質があるのかどうかを調べる。
研究方法
実験① 赤塚公園から緑の葉を取ってきて、寒天の上に置き、寒天にモジホコリを置いて緑の
葉に近づくかどうかを調べた。 葉の種類:カキ、ツバキ
実験② 赤塚公園から緑の葉を 4 種類取ってきて、それぞれの葉をミキサーで細かくした。
細かくしたものを溶けた寒天に混ぜ、葉の寒天を作った。
何も混ぜていない普通の寒天培地上の半分にその葉の寒天を乗せて、普通寒天培地
の上にモジホコリを置いて、葉の寒天に近づくかどうかを調べた。
葉の種類:ドクダミ、スギ、マツ
実験③ 実験②で葉をミキサーで細かくしたものに、ろ紙を 2 枚ずつ入れて浸した。
普通寒天培地の上に葉をミキサーで細かくしたものに浸したろ紙とモジホコリを置
いてろ紙に近づくかどうかを調べた。
葉の種類:ドクダミ、スギ、マツ
実験④ ミキサーで細かくした葉のジュースを、モジホコリが広がっているところに垂らした。
コントロールとして、水をモジホコリが広がっているところに垂らした。
葉の種類:ニラ、ミツバ、ミズナ、ナンテン
結果
実験① 実験を開始して3日間は近づかなかったけれど、葉が腐っていくにつれてモジホコ
リは葉に乗っていった。
実験② 葉の寒天の上にモジホコリは乗っていった。
実験③ 葉のろ紙の上にモジホコリは乗っていった。
実験④ コントロールである水には乗っていった。ニラ、ミツバでは避けて動いたように見
えた。しかし、阻止円を作ったかははっきりとわからなかったので再度実験を行う。
考察
モジホコリは実験①~③で使用した緑の葉のことをあまりいやがっていないようだった。
し
かし、実験④は嫌がっている様子も見られた。また、実験②の結果からは、熱に弱い葉の成
分とは関係ないことが分かった。今後は、なるべくたくさんの種類の葉を使って調べてみて、
モジホコリが苦手な葉の候補が見つかったとき、その葉に注目してジュースの濃さを変えて
実験を行う。また、葉からモジホコリが苦手な成分を取り出すことをやってみたい。
SS ポスター発表 2
水溶液中の溶質と氷の融解の関係性について
The relationship of the dissolution of ice and solute in the aqueous solution
清真学園高等学校 1 年
1
中薗 翔
研究動機
私は中学 3 年生の頃から,「水に溶けた物質が,氷の性質にどのような影響を与えるか?」とい
う点に興味を持ち研究を行ってきた。いろいろなミネラルウォーターを用いて氷を作り,溶け
るのにかかった時間を計測する実験をした。するとミネラルウォーターに含まれている様々な
物質の中でも K の濃度に関係がある可能性が示唆された。そこで,今回は水に溶けている物質
の種類や溶液の濃度を変えて氷を作り,その溶ける時間に関係性があるかどうかを調べること
にした。
2
実験方法
実験 1:溶質の種類と氷が溶ける時間の関係性
NaCl,MgCl2,KCl,CaCl2を溶かした水溶液 5%と純水を用いて氷を作り,2 つの条件下で溶けるの
にかかった時間を計測した。
実験 2:溶質の濃度と氷が溶ける時間の関係性
KCl 水溶液(0.2mol/L,0.4mol/L,0.6mol/L,0.8mol/L)と純水を使って氷を作り,常温で放置して溶か
して溶けるのにかかった時間を計測した。
3
結果と考察
・実験 1
・実験 2
溶質の種類と氷が溶ける時間の関係
実験 1 (s)
常温で放置
水に浸す
NaCl
4244.8
2295.9
MgCl2
5071.4
2772.0
KCl
5440.6
2820.6
CaCl2
4935.4
2448.7
純水
7603.8
3009.8
実験 1 では他の水溶液よりも純水で作った氷のほうが溶けにくく,実験 2 では濃度が薄いほうが
溶けにくかった。これは凝固点降下によって水溶液の凝固点が下がるためである。凝固点降下
度は溶液の質量モル濃度が濃くなると高くなり,短い時間で溶けるため実験 2 のような結果に
なったと思われる。
一方,
凝固点降下は溶質の種類に問わず質量モル濃度に比例するので,実験 1 では理論上は CaCl
2
水溶液が最も溶けにくくなると予測される。しかし KCl 水溶液の氷が溶けにくいことから,
やはり K は氷の融解を妨げる何か特別な性質を持っていると見られる。
4
参考文献
Encyclopedia[塩百科]
32 塩が多方面で利用される原理の説明
SS ポスター発表 3
橋本壽夫著
ノコギリクワガタとコクワガタのすみわけ
茨城町立石崎小学校
飯田 実優 (5年)
1.
背景
私の家の林に父が作ったイタヤカエデからつりさげたブランコがある。このブランコに乗ると
木がゆれて枝にいたクワガタが落ちてきた。イタヤカエデにクワガタがいるのはめずらしいと聞
いたので,クワガタはどんな木に多くいるかを調べようと考えてこの研究を始めた。
2.
目的
ノコギリクワガタとコクワガタは同じ林にすんでいるが、利用する木の種類に違いがあるのか
を調べる。さらに、カブトムシと同じ木を利用できるのかについても調べる。
3.
方法
いろいろな種類の木をハンマーでたたいてゆらし,木についているクワガタとカブトムシを地
面に落とし,木の種類やクワガタの種類、性別、体長を記録した。調査は1週間ごとに朝9時に
行い、そのときの天気と気温も記録した。さらに、6月に1回、7月に1回、8月に2回、9月
に4回は、夜20時にも調査を行い、朝の結果と比較した。
4.
結果
(1) ノコギリクワガタ、コクワガタとカブトムシが見つかった木の種類との関係
ノコギリクワガタはイタヤカエデで多く見つかった。ただし、10月中旬にはミズナラだけで
見つかった。コクワガタはミズナラで多く見つかったが、9月にクヌギで、9月下旬になるとイ
タヤカエデでも採取できた。カブトムシはクヌギとミズナラで多く採取できた。
(2) ノコギリクワガタとコクワガタ、カブトムシの朝と夜の採集数の違い
ノコギリクワガタは朝に、コクワガタは夜に多く採取できた。カブトムシは、朝と夜で採集数
にあまり違いがなかった。
(3) ノコギリクワガタとコクワガタの体長と見つかった木の種類との関係
クワガタの大きさと見つかった木の種類とは関係がなかった。
5.考察
ノコギリクワガタとコクワガタは同じ林にすみ、えさも同じ樹液を食べているが、今回の調査
では同じ木にはあまり見られなかった。ノコギリクワガタはイタヤカエデに多く、コクワガタは
ミズナラに多くいたので、木によるすみわけの可能性がある。さらに、コクワガタはカブトムシ
と同じ樹液を利用できるようだ。朝と夜の採集数の違いをみると、朝にノコギリクワガタが、夜
にコクワガタが多く採取できた。これは、ノコギリクワガタが朝に、コクワガタが夜に多く活動
するためと考えられる。
SS ポスター発表 4
セイタカアワダチソウを利用した生物農薬の研究
~根から放出される物質による生育抑制の発現~
茨城県立並木中等教育学校
軽部亮佑(中学3年)
■研究の背景
セイタカアワダチソウは耕作放棄地や住宅の空き地などで見られる繁殖力の強い植物だが,その
有効活用は行われていない。自身が生合成する化学物質(アレロケミカル:cis-DME)を根から分
泌して,他の植物の生育を阻害する作用(アレロパシー)を持つことを知り,興味を持った。そこで,
この作用を利用した生物農薬の開発を目的とした研究を行うことにした。
■目的
実験1 セイタカアワダチソウに含まれているアレロケミカル cis-DME(cis-dehydromatricaria
ester)は炭化水素基を含み,さらにエステル結合を持っているため疎水性である。しかし「自然界
において他の植物へ影響を与えるならば,影響を与える量のアレロケミカルは水に溶けるだろう」
と考え今回は水耕栽培という栽培方法でアレロケミカルの検出を行った。
実験2 アレロケミカルは疎水性であるため,すべて水で抽出できないのではないかと考えエタノ
ールを使って抽出した。
■研究方法
【実験1】 セイタカアワダチソウの群落が見られる花室川河川敷から根から掘り起こすことで採
集し,水耕栽培キットで栽培した。水耕栽培キットには,(A・B):イオン交換水,
(C・D)
:イオン
交換水+ハイポネックス(液体肥料)を使用し,これらに根を浸して栽培した。また比較のためセイ
タカアワダチソウを入れない(E)
:イオン交換水,
(F)
:イオン交換水+ハイポネックスも用意した。
水耕栽培で使われた液体を採集し,シャーレ(それぞれ2つ)に敷いたろ紙上に添加した。そして,
カイワレダイコン(シャーレ当たり 5 個体)を育て5日間毎日,全体の長さを測定した。
【実験2】 実験1と同様にセイタカアワダチソウの周りの土を採集した。そしてそれを 20g ずつと
り,水(100mL)とエタノール(水:エタノール=1:4 100mL)の二つの溶媒に浸して一晩おいた。
その二つとエタノールのみ,水のみの 4 種類を用意した。そして,シャーレ(それぞれ 2 つ)に敷い
たろ紙にそれぞれ液体をかけ,乾かしてからカイワレダイコン(シャーレ当たり 5 個体)と水をま
き 5 日間毎日,全体の長さを測定した。
■研究結果
実験1 1 週目に採集した液で育てたカイワレダイコンの生育に特に差は見られなかった。しか
し,2 週目に採集した液の場合,A,B と C,D は同じ条件であったが A と D の液体をかけたカイワレダ
イコンの長さが B と C よりも短くなった。
実験2 エタノール,水どちらで抽出したものでも影響はなかった。
■考察
実験1に関しては2週目で採取した液からのデータで違いが見られた。後日,水耕栽培キットの様
子を見てみると,A と D からはセイタカアワダチソウの新芽が生えていた。セイタカアワダチソウの
花期は秋で,秋に繁殖する。先行研究において春~秋の間,秋に生えているものが最も多くアレロケ
ミカルを有するということが分かっている。つまり,セイタカアワダチソウは新しい個体を作る時
期に多くアレロケミカルを作り,放出すると考えられる。これ以降は,花粉や新芽の発生時期との関
連性に関してもっと詳しく実験を行っていきたい。実験2から,2 つの仮説が考えられた。
仮説① アレロケミカルが土の中に残っていない。毎年の秋に多くのアレロケミカルが放出される
で,昨年のものが全て他の植物に吸収された,または,土の中で分解された可能性がある。
仮説② 水で抽出できなかったアレロケミカルはエタノールでも抽出できなかった。カイワレダイ
コンの成育抑制に働くアレロケミカルは水にもエタノールにも溶けにくい可能性がある。
SS ポスター発表 5
ネジバナの花序のねじれは右巻きか左巻きか!
茨城県立竹園高等学校
秋田
悠河 (1 年)
【研究の背景】
ある日、
『ネジバナのねじれは右巻きか左巻きか』という家族の会話が耳に入った。最近は
あまり見られなくなったという話からそういう会話になったらしい。そこで身近な場所である
つくばみらい市において、ネジバナのねじれは右巻きか左巻きかを調査し確認する事にした。
【目的】
つくばみらい市内のネジバナの生息状況を把握すると共に、ネジバナの花序のねじれは右巻
きか左巻きかを調査し、その割合を確認する。
【方法】
① ネジバナの生息場所を、心当たりや情報をもとに探し、左右の個体数を数える。
② 調査をもとに集計し、ねじれの巻き方の割合を確認する。
③ その他、形状や色等気になる事があれば、写真を撮ったり、記録しておく。
【結果】
A) つくばみらい市内で、1,194 本のネジバナのねじれ調
査を行なった結果、右巻き・左巻きのねじれの数は、
右のグラフに示す通りになった。従って、左右の割合
は、約 1 対 1 と言える。また、予想以上にネジバナの
生息場所が少なかったので、後日、つくば市・土浦市
等の広域調査も行ない、つくばみらい市と同様に、左
右の割合が約 1 対 1 という結果が得られた。
B) 直列(花序の部分が巻いていない)は、右巻き・左巻きに比べて圧倒的に少ない。直列があ
るかどうかはわからなかったが、今回の調査で発見する事ができた。
C) 花の色は、基本的にピンク色で、淡い色から濃い色まで幅がある。まれに白色を発見できる。
ねじれの調査後、ネジバナの様子に変化はないか追跡調査を行なった時、つくばみらい市 1
ヶ所で白ネジバナを 2 本発見する事ができた。昨シーズンに、私が同市内で目にした花は 2
万本にのぼるだろう。そこから推測するに、白は万に一つの頻度であり、とても希少である。
また白は、ピンクネジバナが開花し満開を迎えるまで咲いていなかった。満開を過ぎた頃の
発見だった為、遅咲きと考えられる。
【考察】
ねじれの必要性について、左右のねじれが 1 対 1 という結果をもとに考える。ねじれが同一
方向や直列でも良いと思うが、必要があるから左右にねじれると考えた方が自然と考えられる。
そこで、種の存続の為、左右にねじれる事により良い環境を整えているのではないかという仮
説を立ててみた。全体的に 1 対 1 というだけでなく、調査場所毎にも、ほとんど左右のねじれ
が 1 対 1 という結果からも裏付けできると思う。
SS ポスター発表 6
石ころのひみつ6
~高温石英を含む岩石からわかること~
日立市立大久保中学校
菊池有羽(1年)
私は、4年生の時に自由研究で見つけた「高温石英」について調べた。高温石英は、577℃~870℃
の高温状態のときにできる、六角錐状の石英である。低温石英はよく見かけるが、高温石英を含
む地層はめずらしく、その地層のできた環境について調べてみたいと思った。
研究目的
高温石英が出来た環境を知る。
研究方法
1.
茨 城 県日 立 市会 瀬町 初 崎海 岸で 、 高温 石英 を 含む 岩 石 を
採取し、岩石 50g につき、何グラムの高温石英が含まれ
ているかを調べる。
2.
同じ岩石に含まれる、他の鉱物や岩石の種類を調べる。
3.
別の場所の高温石英を採掘しに行き、初崎海岸で採取し
初崎海岸で採取した
た高温石英との違いを比べる。
高温石英を含む岩石
研究結果
1.
初崎海岸で採取した岩石には試料 50gあたり、7.5g(15%)
の高温石英(長径約 1mm~2mm)が含まれていた。
2.
高温石英を含む岩石には、砂、れき、貝化石、黒雲母が含まれてい
た。
3.
千葉県銚子市の高温石英(長径約 1mm 以下)は、岩石ではなく柔ら
かく黒い土に含まれていた。量もとても少なく、また完全な六角錐
状の物はほとんどなく、砕けたように小さく形も様々だった。表面
は、つるつるしている。初崎海岸の高温石英に比べ、透明度が高い。
銚子海岸の高温石英を含む地層
初崎海岸で採取した高温石英
銚子海岸で採取した高温石英
考察
初崎海岸で採取できる高温石英を含む岩石は、どれも荒い砂や貝の
化石を含む岩石である。これらの岩石を見ると、高温石英が含まれ
た岩石(地層)が造られた時の環境は海底で、近くで高温石英を含
む高温の火山噴出物の堆積(火山噴火)があったことが考えられる。
初崎海岸の高温石英がきれいな形で残されているのに対し銚子市
の高温石英が砕けていたり、角が丸くなっていたのは、この高温石
英が堆積した時や堆積後に石英の粒と粒が海水の流れによって衝
突したなど、高温石英の保存状況を悪くする何かがあったため、高 初崎海岸で採取した高温石英を
顕微鏡で観察
温石英を守ることが難しかったのだと考えられる。
感想
高温石英の含まれる地層のできる環境はどこも同じだと思っていたので驚いた。顕微鏡で調
べた際、どちらの高温石英にも石英が出来たときの周囲のマグマが取り込まれて固まったもの
(メルト包有物)が含まれていたので今後それについて調べてみたい。また、高温石英は、宮城
県仙台六郷、愛知県南設楽群鴬来町、愛媛県土浮穴群千本峠などでも採掘出来るので範囲を広げ
て調べてみたい。
SS ポスター発表 7
セミの発生数と様々な気象条件との関係について
茨城県立並木中等教育学校
湯本景将 (5 年)
1.研究の背景
僕は, 2004 年からセミについて研究を続けている。2007 年からの 7 年間の抜け殻調査で,抜
け殻が多く見つかる日や少ししか見つからない日があることに気がつき,セミの発生数に影響
を与えている要因は何なのかと疑問を持った。本研究では,セミの発生数に影響を与えている
要因を何らかの気象条件と仮定して研究を行った。
2.目的
どのような気象条件のときに,抜け殻の発生数が多くなるのかを明らかにする。
3.研究方法
2007 年から 2013 年の 7 月 1 日から 8 月 10 日までの 41 日間,毎朝 4 時 30 分に松見公
園に行き,アブラゼミ,ミンミンゼミ,ニイニイゼミの抜け殻の採集を行い,データを集めた。
集めたデータを y= 「(当日の抜け殻数―前日の抜け殻数) /抜け殻の総数」 で表し,個体ご
とのばらつきを排除するために,複数種で同じ傾向を示すかどうかを調べた。複数種で同じ傾
向を示した日について,気象庁茨城県つくば市館野の気温 (日最高気温,日平均気温,日最低
気温),日降水量合計,日照時間,平均湿度の気象データと比較し,各気象条件との関係を探し
た。
4.研究結果
(1) 複数種で同じ傾向を示すかどうか
アブラゼミとミンミンゼミは,
同じ傾向が見られ,
ニイニイゼミは日和見的に変化していた。
のべ調査日数 287 日で,抜け殻が見つかった日数 184 日中 16 回,複数種の同調的大発生
が見られ,3 種類のセミに共通し,1 回大発生すると,その後数日,減少と増加を繰り返す
傾向があったので,気象条件との関係の探索は初回の大発生 (11 回) のみを対象とした。
(2) 各気象条件との比較
日降水量合計,日照時間,平均湿度との関係はなく,気温との関係が大きいことが分かった。
アブラゼミ,ミンミンゼミは,最高気温が 28℃以上で,前々日か前日との気温差が平均値
4.4℃,
中央値 4.3℃,
最大差 8.9℃,最小差 1.7℃のときに発生数が多くなる傾向にあった。
同様の条件の日は 21 日あり,このうち,同調的な大発生が見られた日は 5 日 (23%),変
動は小さいが同調的な増加が見られた日が 6 日 (28%) あり,2 種で異なる傾向を示した
日は 7 日 (33%), 2 種とも減少した日は 2 日 (9%) あった。
5.考察
複数種で共通した点について注目したことで,どの気象条件と深い関係を持っているのかとい
うことがはっきりした。研究結果より,アブラゼミとミンミンゼミは,同じ要因の影響を受け
ていると考えられ,それは,気温である可能性が高いと考えられる。他の要因の影響について
も今後検討していきたい。また,ニイニイゼミは,他の 2 種類とは異なった要因の影響を受け
ていると考えられるが,今回の気象データは,日ごとの変化のみなので,時間ごとの変化なら,
どの時間帯に何が起こったかがはっきりするので,関係が見られるかもしれない。
SS ポスター発表 8
動け!ぼくの作ったロボット ~かんきょう適応を目指して~
茨城県鹿嶋市立鹿島小学校
鮎田和磨(5年)
■研究の背景
レゴ『マインドストームNXT』を使って、つかむ動きやライントレースの研究をしてきた。
今回は、つかむ動きの改良や、周囲の状況の変化に対応できるロボットを作りたい。
■目的
下記コース1,コース2で課題をクリアできる、車体とプログラムの完成を目指す。
課題:スタートゴールエリアを出発→ボールをつかむ→元の場所へ戻る
ボール→
ボール→
ボール→
きょり3
C
25cm
障害物1→
牛乳パック
65cm
障害物1→
牛乳パック 65cm
障
害
物
2
カ
ベ
障害物1→
牛乳パック
き
ょ
り
65cm 4
D きょり2 B
障
害
物
2
カ
ベ
きょり1
スタート
ゴール
エリア
コース1 障害物1個、位置固定
スタート
ゴール
エリア
コース2 障害物2個、位置移動
スタート
ゴール
エリア
A
ルート図
■研究方法
課題をクリアするために、次の4つの実験を行った。
(1)ボールをつかむためのツメの開閉動作について、車体とプログラムを検討。
(2)元の場所へ戻るための後退(バック)動作について、車体を検討。
(3)走行ルートを決めるため、次のルート1とルート2を比較検討。
ルート1:上記ルート図でスタート→A→B→C→ボールをつかむ→C→B→A→ゴール
ルート2:上記ルート図でスタート→D→B→C→ボールをつかむ→C→B→A→ゴール
(4)障害物を移動させてもボールを持ち帰れるようにするため、センサーを活用したプログラムを検討。
■研究結果
コース1,コース2ともに課題をクリアできた。
(1)歯車からノブホイールへ変更し、ツメの開閉動作を実現した。
(2)車体をキャスタータイプから4輪タイプへ変更すると、コースから外れることなくバックできた。
(3)ルート1の場合10回中4回成功。最初はほんの少しの角度のずれでも、65cmという長いきょりを
進んでいくと、だんだんコースからのずれが大きくなってしまい、成功率が低かった。ルート2の場合
10回中7回成功。超音波センサーを使って、確実にボールに近づくことで、コースからのずれを最小
限にできた。ボールをつかんで持ち帰る確率の高いルート2の方が良い。
(4) モーター軸についている回転センサーからの値で車輪の回転数を求め、車輪の直径を使ってきょり1
(スタートからD)ときょり2(DからB)をコンピュータで計算し、きょり3(きょり2-10cm※前タ
イヤの中心からツメの中央までが10cm)ときょり4(65cm-きょり1)を計算させることで、ボー
ルをつかんで持ち帰るプログラムを作成。障害物を移動させても、超音波センサーや回転センサーの利
用で、そのかんきょうの変化に対応して、ボールを持ち帰ることができた。
■考察
・車体の改良では、物をつかむツメは歯車よりもノブホイールで組み立てた方が機構がシンプルで良
い。また、バックさせるには、キャスターよりも4輪タイプの方が動作が安定した。
・プログラムの改良では、物をつかむためのモーターの動きは角度ではなく時間でコントロールした。
また、モーターの回転とタイヤの回転の関係や、ギア比の考慮が必要だった。回転センサーの値を
読み取れば、自分の位置を認識でき、コンピュータの計算により、かんきょうの変化に適応させる
ことができる。
SS ポスター発表 9
エチレンがカイワレダイコンの葉の形に与える影響
茨城県立並木中等教育学校 久保裕亮 4年(高校1年)
【研究の背景】
以前の研究において,カイワレダイコンを芽生えさせる際に密閉容器で育てると,葉が下向きに巻
くように曲がるカーリングという現象が見られた。この現象は密閉することによって起きたので,常
温で気体の植物ホルモンであるエチレンが関係していると考えた。しかし,未だエチレンが葉の形態
形成に与える影響はほとんど明らかにされていない。そこで,本研究では外から与えたエチレンが葉
の形態形成に与える影響を明らかにすることを目的とした。
【目的】
エチレンが葉の形態形成に与える影響と,その形の変化をもたらす細
胞レベルでの原因を明らかにする。
【研究方法】
図 1 に示す実験装置を用いてカイワレダイコンを育て,20 ppm のエ
チレンで処理したものとしないもの(コントロール)をつくった。実験
図 1 実験方法概要
は5回行った。葉を 1 枚ずつ,曲がり具合で 3 段階(カーリング・中間・
まっすぐ)に分けてそれぞれの個数を記録した。曲がり具合は,真上か
ら見たときの葉の見える部分の割合によって判別した。図 2 に,カーリ
ングが認められた葉とまっすぐな葉の例を示す。また,葉の縦の長さ,
横の長さを測定した。さらに,葉の切片を観察して,最外層の葉肉細胞
の数・長さを測定した。
図 2 (左)カーリングが認められた葉
(右)正常な葉
【研究結果・考察】
図 3 に示すように,エチレン処理の有無と葉のカーリングに有意な相関があることが分かった。こ
のことから,エチレンはカイワレダイコンの葉のカーリングを発現させる効果があることが明らかに
なった。また,葉の縦と横の長さの測定結果から,葉のカーリングの発現は葉の大きさと相関がない
ことが分かった。また,葉の切片における,葉の表面・裏面の葉肉細胞の長さと細胞数の測定から,
葉肉細胞の横幅について,カーリングが見られた葉はまっすぐな葉に比べて,裏面の細胞の長さに対
する表面の細胞の長さの割合が大きいことが分かった(図 4, 図 5)。これが原因で葉のカーリングが
発現したと考えられる。一方,葉肉細胞の縦幅は,表裏共に成長が促進されており,特に裏に比べて
表の方が大きくなることが分かった(図 5)。また,細胞数に有意差は見られなかったことから,エチレ
ンの生理作用は,細胞分裂の促進ではなく,表面の葉肉細胞の成長の促進である考えられる。今後は,
エチレンの生成を阻害する等の方法で,葉のカーリングに対する内生のエチレンの働きを調べたい。
実験1~5の合計
100%
80%
中間
365
60%
40%
20%
0%
中間
302
カーリング
158
Control
カーリング
293
C2H4
図 3 エチレンが葉の形に
与える影響
葉の表裏における葉肉細胞
(最外層)の横幅の比較
1
長さの比(表/裏)
まっすぐ
182
まっすぐ
346
0
Control
C2H4
図 4 葉の表裏における葉肉細胞
(最外層)の横幅の比較
図 5(左)カーリングが認められた葉の細胞
(右) 正常な葉の細
胞
SS ポスター発表 10
液状化現象での珪砂の強度について
茨城県坂東市立東中学校
横川龍生(2 年)
■研究の背景
2011年に起きた東日本大震災以降、耳にする機会が増えた”液状化現象”。 免震・制震・耐
震構造など、建築での地震対策が進んでいる中、地盤では震災以前からの対策が主流である。
昨年までの研究で、液状化の原理がわかり、強い地盤として有効と判断した珪砂について、継
続研究を行う。
■目的
液状化しやすい地盤、しにくい地盤について考察し、液状化に強い地盤を作る。
■研究方法
砂と珪砂をそれぞれ双眼顕微鏡で観察、粒度試験を行い、粒子形状と粒度分布を調べる。水槽
に同じ条件で地盤を作製し、振動を加えることで液状化実験を行う。その結果から液状化につ
いて密度による影響および発生までの時間を比較する。また、それぞれの粒子について含水比、
透水時間も調べる。
■研究結果
◇粒度分布と密度について
粒度試験により珪砂に比べ砂の方が粒径の分布する範囲が広いことが分かった。また、砂の密
度を見ると、ゆるい地盤では実験回数であまり差はないが中ゆる地盤では大きい差が出てしま
った。これについて中ゆる地盤では作製時に水槽側面を 5 回叩くことによって実験回数で詰ま
り方に差が出たことが考えられる。
◇液状化について
密度の大きい地盤の方が、液状化しにくい(時間が長い)と予想していたが、密度の大きかっ
た珪砂の方が、砂よりも短い時間で液状化した。また、実験後に砂を処分する際、砂の表面よ
りも珪砂の表面の方が固く感じた。粒径の分布する範囲が狭い方が表面から間隙水が出やすい
からと考える。
◇含水比・透水時間について
ろ過の要領で、砂・珪砂にそれぞれ水を加え排水するまでの時間をみると、含水比は 47%と同
じ結果に対し、透水時間は珪砂のほうが約 1 分も早く排水が止まった。これも、粒径の分布す
る範囲が狭い珪砂の方が透水しやすいからと考える。
■考察
予想していた通り、同じ粒子に関しては密度の大きい方が液状化しにくいという結果となった
が、異なる粒子に関しては砂に比べ密度の大きい珪砂の方が液状化しやすいといった結果とな
り、昨年の珪砂が液状化現象に強いという研究結論が覆ってしまった。これについて、地盤作
製時の水を加える手順の違いによるものと考えられる。また、粒子が異なると粒度分布や粒子
形状の違いがあるため、
密度だけでは液状化のしやすさは判断できないということが分かった。
今後は液状化のしやすさを判断するために間隙比などの値を考慮する必要があると考える。
SS ポスター発表 11
SS
ダビドサナエのヤゴの研究
長野県青木小学校
坂井美藍(6年)
1.研究の背景
阿鳥川(長野県青木村)でダビドサナエのヤゴ(幼虫)を採集する中で、ヤゴの大きさに随
分差があることに気づいた。ヤゴを採集し後肢跗節長と個体数の関係をグラフにしたところ、
複数のピークが見られた。なぜ大きさに複数のピークがあるのか知りたくなった。
2.目
的
異なる季節で多くのダビドサナエのヤゴを採集し採集個体の大きさや特徴を比較することに
より、ヤゴの大きさに幾つかのピークが現れる理由を考察し、明らかにすること。
3.方
法
3 月(トンボが出現する前)
、7 月(羽化しなかったヤゴと新たに孵化したヤゴが成長する時
期)
、10 月(ヤゴの成長が止まる冬期直前)の 3 回、ヤゴを採集し、アルコール標本にする。
標本ごと、測りやすく変化しにくい部位として後肢跗節を選び、その長さを計測した。また、
若齢幼虫を数個体採集、飼育し、脱皮前後での後肢跗節長の成長比を計算した。
4.結
果
2013 年 3 月(20 日)
、同年 7 月(20 日)、同年 10 月(13 日と 19 日)に採集を行った。採
集個体数はそれぞれ、42、69、170 である。全個体の後肢跗節長を計測した。グラフ1に 10
月のデータを示す。ピークは
5 つ程見られそうだ。また、2013 年
11 月に採集したヤゴの飼育観察では、
脱皮前後の成長比(長さ)は 1.07~
1.28 であった。
5.考
察
計測値から求めたピーク間の平均比率は 1.31 である。また、飼育観察の成長比は 1.07~1.28
である。これらの値は、コーベット「トンボの博物学」(海遊舎、2007)のトンボの一種で計
測した 1.2~1.3 の値によく一致しているので、ピークは齡の違いを示していると考えてよいで
あろう。石田昇三「原色日本昆虫生態図鑑Ⅱ
トンボ編」(保育社、1969)ではダビドサナエ
の幼虫期は 2~3 年程度、普通トンボは 9~14 齡を経るとある。飼育観察からの各齢の平均成
長比 1.18 を基に脱皮回数を推定すると、体長 1 ㎜(ホームページ「近畿地方のトンボ雑記 卵
のページ」より算出)の 1 齡幼虫が 20 ㎜の終齢成虫になるには約 20 回の脱皮が必要になる。
これが 2~3 年で成虫になるとすると 1 年に 7~10 回脱皮することになる。これは今回、幼虫
の大きさに 5 つ程のピークを見出し、齡の違いとした判断を裏付けるものかもしれない。さら
に確証を得るために、自然条件にできるだけ近づけた環境でヤゴを飼育し、脱皮回数、齡間の
日数および成長比を調べていきたい。
SS 口頭発表 1
変形菌の研究
変形体の「自分と他人」の境い目
杉並区立松庵小学校
増井真那(6 学年)
出川洋介先生
ぼくは野外で採集した変形菌の変形体 7 種を中心に 8 種を長期飼育し、6 年間、動きと考えの
関係について研究を続けています。変形体の種ごとの動き方の違いは、体の特徴と関係があるこ
とがわかった(2009~2010 年・実験 3~7)ことをきっかけに、変形体の動きと考えの関係が知
りたくなり、変形体どうしが出合うと何が起きるのかについて研究をしています。出合う相手に
よって行動が違うと仮説を立て、5 つの場合に分けて、変形体どうしを寒天培地の上で出合わせて
観察する実験を、4 年間でのべ 280 シャーレ行いました(2010~2013 年・実験 8~16)
。
1)別種どうしは常に避け合いました(3 種、実験 8・9)
。2)同種だけど産地が違う変形体どう
しは、ほとんど触れずに住み分ける例(1 種 4 産地、実験 10)と、くっつく例(3 種各 3 産地、
実験 16)が見られました。3)1 つの個体から分かれた個体どうしは、分けてから 1 日後から約半
年後でも相手とくっつくことができ(2 種、実験 12)
、4)菌核にしてから戻した変形体も、元の
変形体とくっつきました(2 種、実験 13)
。5)世代違い(親とその子孫)は、どの組み合わせで
もくっつきました(シロジクキモジホコリ 2 世代間・チョウチンホコリ 5 世代間、実験 14・15)。
4 年間この実験を続けてきて、変形体は相手が「自分」になれる(くっつける)かどうかを判別
して行動を決めることができるとわかり、どの関係までが「自分」になれるのか、どこからが「他
人」なのか、どのようにして相手を判別しているのかが知りたくなりました。
ここまで観察を続けてきて、単純に「別種はくっつかないが、同種はくっつく」というだけで
はないと思えました。
「他人」のはずの世代違いはよくくっつくのに、(遠く離れた世代違いと考
えられる)産地違いはくっつきにくく、0.1mm 以下の距離で長時間止まるなど、他の組み合わせ
とは違うと感じられました。そこで、この疑問をはっきりさせるために、ここまでの実験結果を
全てまとめ、相手を避けた率と、止まってから行動を決めた率を比較してみました(図 1)
。
その結果、A)
「別種」は、すぐに避け合う「わかりやすい他人」の関係、B)
「1 つの個体」
、
「菌
核」
、
「世代違い」は、ほとんどの場合くっつき、あまり止まらない「わかりやすい自分」の関係、
そして C)
「産地違い」は、くっつく場合もあるが判断
に時間がかかることが多い「わかりにくい自分」の関
係であることが見えてきました。変形体の個体間の関
係は、
「くっつく/くっつかない」の 2 つに分かれるの
ではなく、相手によって、関係の近さ/遠さがあるの
ではないかと考えられます。
この仮説を確かめるために、変形体が関係の違う複
数の個体のどれを選んで行動するかを調べる実験をテ
ストしています。変形体はどこまでが「自分」なのか、
相手を判別するカギは何かについて見極めて、変形体
の「自分と他人」と行動の関係について深く知りたい
と考えています。
SS 口頭発表 2
千葉県市宿層から産出したマイルカ科化石について
国立東京学芸大学附属世田谷中学校(3年)
岡村
◇研究の目的
太路
[2]貝類による環境復元
私は 2011 年 6 月に千葉県君津市の上総層群
同様に、イルカ化石産出地点付近で採集した
市宿層で化石片を見つけ、下図のように接合で
貝化石の分類学的同定を行った。そこで、その
きた。この市宿層では、すでに多種多様の化石
現生種が生息する水深を調べ、その化石生物が
が見つかっていて、火山灰や上下層の関係によ
生息した水深を推定した。
り約 70 万年前の新生代第四紀更新世に堆積し
◇研究の結果
たと推測されている。そして、群馬県立自然史
摘出した有孔虫化石で同定できたものは、底
博物館の木村敏之先生によって、ハクジラ目マ
生有孔虫化石が 11 科 1184 個体、浮遊性有孔虫
イルカ科の頭蓋骨(後頭骨の一部)化石である
化石が2科 545 個体であった。この中には、比
と同定された。
較的浅い地域に生息する底生有孔虫
Elphidium sp.などが多く、市宿層の当時の
環境は 10~200m ほどの浅い海であったことが
推定できる。さらに、沖合(外洋)に生息す
る浮遊性有孔虫である Globigerina sp.を多く
摘出した。市宿層堆積当時、日本海流の一部
が市宿付近に流れていたことが貝化石の研究
によりわかっている。内陸部の浅海であった
市宿に外洋の有孔虫化石が見つかっているこ
図
市宿層で産出したマイルカ科化石
この市宿層は、先行研究により浅い海であっ
たことがわかっている。現生のマイルカ科の多
くの種は、外洋で生息しているが、はたしてこ
れはどのように説明できるのか疑問に思った。
そこで、示相化石である有孔虫や貝類により、
このマイルカ科の生物が堆積した環境のより
詳細な復元を試みた。
また、採集できた貝類化石であるタマガイ、
トウイトガイ、イタヤガイなどの共通する生息
深度は、低潮線から 20~30m ほどの浅い海であ
る。このことから、市宿層の当時の環境は、20
~30m ほどの浅い海であったことが推定でき
る。これは、底生有孔虫による推定とも一致す
る。
◇考
◇研究の方法
察
これらの研究により、市宿は沖合いからの海
[1]有孔虫による環境復元
イルカ化石産出地点付近から採取した砂の
中から、実体顕微鏡を使用して有孔虫化石を摘
出し、その形状から分類学的同定を行った。そ
れらを生息分布と比較して、市宿層の堆積環境
の復元をおこなった。
とは、この説を裏付けるものである。
流が流れ込む20~30mの浅い海であったこと
が推定できた。マイルカ科生物は、日本海流(黒
潮)に乗って市宿にやってきたのではないか。
現生のマイルカ科が日本列島近海を回遊する
習性からみると、 約70万年前からマイルカ科
生物はすでに日本列島近海を回遊していたこ
とが考えられる。
SS 口頭発表 3
セミの抜け殻はなぜ集まる? 羽化時の終齢幼虫の習性
茨城県 小美玉市立 小川南中学校
2年
内山 龍人
■研究の背景・目的
小学校入学以来、セミ研究を行ってきた。昨年からは、それまでの観察・調査の中で思いついた
仮説のひとつ『フェロモン追跡説』の検証をテーマにしている。
(対象は主にアブラゼミ)
セミの抜け殻は、なぜか数匹集中し塊になって付いている様子がよく見られる。この現象から、
羽化に向かうセミ終齢幼虫には、フェロモン等をたどる習性があるのではないか― と考えた。
この仮説を立証し、フェロモンの存在とその作用を明らかにすることを目的として研究している。
昨年の研究結果から得られた以下のような結論を基に、本年も引き続きこのテーマを追求した。
・抜け殻の集中は、やはり、目視や爪痕追跡ではなくフェロモンが要因である可能性が高い。
・フェロモンの作用としては、カメムシのような集合警戒フェロモンである可能性が高い。
■研究の方法・結果
1.屋外羽化観察とシカケ調査
自然下で羽化行動
観察すると共に、セミ穴再利用の有無を見た。
→ 抜け殻の集合現象など、昨年同様に認められた。
2.室内カーテン羽化観察実験
地上の幼虫を捕獲、
自宅カーテンで羽化させ、足取り・動きを見た。
→ ルート一致や混乱など、昨年同様に認められた。
3.Y字実験
Y字状の枝を用い、各誘引候補を両
枝先に付けて羽化実験、場所選択要因を探った。
→ 表の通り、途中までは必ずしも予想の誘引物側
へ行くとは限らなかったが、走光性を考慮工夫
後は 100% 新しい抜け殻(フェロモン)の方へ
進んでいき羽化した。
(=走光性の存在も確認)
■考察・結論
・昨年と全く同じ検証方法で行った実験ではすべて
同様の結果が得られ、再現性が認められたため、
やはり集合警戒フェロモン(同じ成分が、強いと
警戒・弱いと集合に作用)の存在が考えられる。
・光の影響をなるべく排除して行うと、フェロモン
行動実験が完璧に成功したことから、走光性の存在も確かめられたと考えることができる。
以上の2点から、羽化に向かう幼虫の行動は、以下のように説明できると考える。
① 走光性により、飛び立つための高さや羽を伸ばせる空間がある、羽化に適した場所に向かう。
② 途中、少し前に無事羽化できた先輩の弱まったフェロモンを感じると、誘われて寄っていく。
③ そして、羽化する仲間の新鮮で強いフェロモンを感じると、そこから少し離れて羽化する。
これらの習性によって、それぞれの幼虫が、より安全に羽化しようとしている と考えられる。
SS 口頭発表 4
Arduino を用いた幼児や障害児の数の概念認知支援
サレジオ小学校(6 年)
石山翔雲
【研究の背景・目的】
【結果】
就学前の弟や、数を理解することが難しい
人が僕の身近にいる。この人達の理解の助けに
なる方法を考えたいと思った。
「数」をテーマにし、数の考え方・数の文字(数
字)
・数の読みを理解し使えるようにする事を
目的とした。
【アプローチ】
ブロック・数字表示・数唱の 3 つを結びつける
実際に、就学前の弟や、数の理解が難しい人
にこのブロックを使用してもらったところ、マ
ンションなどのエレベーターで、行きたい階の
数字ボタンを自分で選択して押せるようにな
った。そして、徐々に、生活の中に、数字や数
が入ってくるようになった。
【考察】
数の理解は、
事によって、数の概念の認知をサポートする。
【方法】
本研究では、ブロック・数字表示・数唱の3つ
のステップをそれぞれ、ブロック部、標示部、
発声部が担当している。
認知心理学で
は「数概念の認
知」という。図
1 の構造のよう
(1)ブロック部
センサー部の電圧を変化させる機能を持つ。
(2)標示部
7 セグ LED を利用してブロックの個数を表示さ
せる。
(3)発声部
に、数対象、数
詞、数字のそれ
ぞれが結びつ
けられる事が
「数概念の認
知」となる。
(藤
原鴻一郎監修
(1995),「段階
ブロックの個数を人工音声で発声させる。
(4)センサー部
2 本の金属線によりコンピュータ部にブロッ
クの個数の変化を伝える。
式 発達に遅れ
がある子どもの
算数・数学1数
と計算編」,学習
(5)コンピュータ部
Arduino を利用。センサーからの電圧変化を処
理・数唱の人工音声を生成・数字表示の LED
制御を行う。
研究社,p.13)
【図3】 関係的操作を本研究に
本研究では、数
当てはめた場合
対象=ブロック
部、数字=表示部、数詞=発声部となる。①、
➂、⑥のステップを繰り返すことにより、数量
と数詞、数字の一致の効果が得られる。数の概
念は、通常 3 歳~5 歳半で生活の中で、玩具等
の個数を数えたりする事から得られる。しかし、
自閉症や発達障害などの人の場合、数唱するこ
とは出来ても、数量のイメージを掴みづらく、
概念理解が出来ない場合が多い。数の概念形成
の過程において、本研究は、幼児だけでなく、
発達障害や自閉症などの障害を持つ人にも有
効と考えられる。
①ブロック部をレール
に置く
③コンピュータ部が数
唱と数字表示を制御す
る
②センサー部がコンピ
ュータ部にブロック数
の変化を伝える
④発声部がブロック数
を数唱する
⑤標示部がブロック数
を標示する
SS 口頭発表 5
ブロック
①
発声部
部
③
⑥
標示部
餌とカイコガ受精卵の休眠との関係―カイコガの研究
6年目―
茨城県つくば市立豊里中学校
市川
和人(2年)
1 研究動機
平成 23・24 年の研究で、カイコガの受精卵
は桑で育てると休眠卵に、人工飼料で育てると
非休眠卵になりやすい結果になった。また、人
工飼料で飼育したカイコガは季節が変わって
も 非 休 眠卵 と なり 孵 化し 続 けた ( H24.5 ~
H25.3)
。
この結果から私は、人工飼料には休眠を抑制
する成分があるか、あるいは桑の中にある休眠
を促進する成分があるのではないかと考えた。
2 研究目的
餌の条件と受精卵の休眠との関係を探る。具
体的には、桑の中に休眠を促進する成分がある
のか、与える餌が休眠に影響するのはいつかを
調査する。
また、追加研究として、非休眠卵は気温に影
響されるかどうか探る。
3 研究方法
(1)餌の条件と受精卵の休眠との関係
①人工飼料で飼育した後、人工飼料と人工
飼料+桑エキスで飼育したカイコガの産む
卵の休眠の有無を調べた。これにより、桑
の中に休眠を促進する成分があるのか、そ
れは水溶性かどうか探った。
変更前 変更後
②グループごと休眠
ア
桑(変更なし)
の有無に関係を調べ、イ 桑 人工飼料:桑=1:1
人工飼料
休眠に影響してくる ウ
エ
人工飼料(変更なし)
時期を探った。
オ 人工飼料 人工飼料:桑=1:1
桑
(2)非休眠卵と気温との カ
関係
①孵化しそうな非休眠卵を常温のままの場
合と冷蔵した場合の孵化の有無を調べた。
②非休眠卵を常温、冷蔵、冷蔵し5日後に
常温に戻す3つに
分け、孵化の有無
を調べた。
4 研究結果
(1)①人工飼料+桑エキスは休眠卵を多く採れ
た。また、桑エキスの2代目は、非休眠卵
が多くなった。
②与えた桑の量が増加するに伴い、休眠卵
の割合も増加した。また、前回の実験のエ~
カ(終齢幼虫に餌の変更)と比較すると、
前回と比べて今回(3 齢幼虫に餌の変更)
の方が休眠卵の割合に変化が見られた。
(2)①常温に置いた受精卵は、2日後に孵化し
た。一方、冷蔵した受精卵は越年し、翌年
5 月に常温に戻すと孵化した。
②常温に置いた受精卵は孵化し、冷蔵した
受精卵と冷蔵してから5日後常温に戻した
受精卵は、孵化しなかった。
5 考察
(1)①休眠卵になる成分は桑の中にあり、その
成分は水溶性であると推測できる。しかし
ながら、桑エキスの 2 代目より、桑エキス
の作製法についてより詳しく検証する必要
がある。
②餌が休眠に影響される時期は、3齢幼虫
がキーポイントとなりうるのではないかと
推測する。個体数が少ないため、更なる検
証が必要である。
(2)①受精卵は、非休眠卵であっても低温にな
ると孵化が止まり休眠卵となり越年できる。
②非休眠卵は、気温によって孵化を調節し、
休眠卵とすることができる。
SS 口頭発表 6