コンクリート充 鋼管(CFT)造技術基準・同解説」 講習会の質問と回答

コンクリート充 鋼管(CFT)造技術基準・同解説」
講習会の質問と回答
財団法人
社団法人
日本建築センター
新都市ハウジング協会
平成12年6月1日施行の建築基準法令の改正に伴い、平成14年5月27日にコンクリート充
法(平成14年国土交通省告示第464号)及びコンクリート充
鋼管造の鋼管の内部に充
鋼管造の構造方
されたコンクリート等
の許容応力度及び材料強度{平成13年国土交通省告示第1024号(平成14年国土交通省告示第462号により改正)}
が制定及び改正されました。
新たな告示に基づく CFT 造建築物の設計及び確認申請に当たっては、構造設計実務者等から告示及びその運
用に関する解説書と実務における技術基準の適用方法に関する解説書が強く要望されていました。
そこで、これらの要望に応えるため、 コンクリート充
リート充
鋼管(CFT)造技術基準・同解説」及び「コンク
鋼管(CFT)造技術基準・同解説の運用及び計算例等」を編集し、その執筆者による詳細な解説を行
う講習会を平成14年10月、東京・大阪・名古屋・福岡の4会場で開催いたしました。
本講習会受講者の方々より寄せられました質問に対し、講師をしていただきました方々に回答をとりまとめて
いただきましたので、ここに掲載いたします。
質 問
回 答
Ⅰ. CFT 造関連告示・解説書とその運用について
1) CFT 造関連告示の解説書は、
「コンクリート充
(CFT)造技術基準・同解説」と「コンクリート充
鋼管 CFT 造関連告示解説書として、「コンクリート充
鋼管
鋼 (CFT)造技術基準・同解説」では、告示の位置づけ、解
管(CFT)造技術基準・同解説の運用及び計算例等」で 釈の方法について解説しています。
構成されていますが、なぜ2分冊で構成されているので この解説内容は、告示が改正されるか新たな告示が出ない
すか?
限り、変わらないと位置づけています。
一方で、
「コンクリート充
鋼管(CFT)造技術基準・同
解説の運用及び計算例等」で、解説されている内容は、判
断及び行政的運用の方法のうち告示が改正されるあるいは
新たな告示が出なくとも、技術の変革・社会の状況(技術
的背景)に応じて、変更しうるものと位置づけています。
従って、数年後には、見直される可能性を有する解説内容
となっています。
2) CFT 造関連告示には多くのただし書きがありますが、 CFT 造は、まだ新しい構造であり、技術的な検討によっ
その主旨及び判断の方法を教えてください。
てより合理的な構造方法とすることも
えられます。ま
た、施工に対する難易度は、他の構造に比較して高い位置
づけとなっています。特に鋼管の中に充 するコンクリー
トの品質確保に留意する必要があり、コンクリートの適切
な調合の選定方法、打設方法、打設開口廻りの構造詳細等
をどのようにするかが、重要な課題となります。
このため、告示では、まずは一般的で比較的問題となる可
能性の少ないと
― 35 ―
えられる仕様による CFT 造が原則とし
ビルデイングレター
て規定されています。
これに対して多くのただし書きが設けられており、構造方
法、施工の詳細について技術的な検討を行うことで、より
合理的な構造方法を採用できることとされています。
なお、ただし書きの具体的な運用については、建築主事又
は指定確認検査機関の判断によりますが、基本的な え方
などについては、
「コンクリート充
鋼管(CFT)造技術
基準・同解説の運用及び計算例等」第1章を参照願います。
3) 設計方法として、日本建築学会の SRC 規準、CFT 設計式の使い分け、ただし書きを適用する場合の運用の方
指針及び新都市ハウジング協会の CFT 指針があります 法について「コンクリート充 鋼管(CFT)造技術基準・
が、今回の告示及び解説書に対してどのような関わりに 同解説の運用及び計算例等」第1章で詳述していますので
なりますか?
参照願います。
ただし書きを適用しようとする場合、設計方法及び施工方
法は、実務的には、㈳日本建築学会の「鉄骨鉄筋コンク
リート構造計算規 準・同 解 説」(以 下「SRC 規 準」と い
う。)同「コンクリート充 鋼管構造設計施工指針」(以下
「学会 CFT 指針」という。)、あるいは㈳新都市ハウジン
グ協会「CFT 構造技術指針・同解説」(以下「新都市 CFT
指針」という。)を参 にできます。
このなかで、ただし書きを適用する場合に、項目に応じて
構造実験データあるいは施工実験データがあることが必要
となる場合がありますが、各規準、指針におけるこれらの
データの取扱いとして、概略すると以下のように解説され
ています。
日本建築学会の SRC 規準、学会 CFT 指針に基づいて設
計・施工をする場合」
・設計方法
設計式及び解説の中に構造実験データが含まれていると
判断して、ただし書きを適用する場合のデータとして基
準及び指針の内容を参照することができる。
・施工方法
この規準、指針は施工品質が確保されていることを前提
としているため、ただし書きを適用する場合には項目に
応じた施工実験データが必要となる。
(新都市ハウジン
グ協会の保有する施工実験データをこれに充てることも
できる。
)
「新都市 CFT 指針に基づいた設計・施工をする場合」
( 次項4)
」の回答を参照のこと)
・設計方法
構造実験データが必要となる。
(データは新都市ハウジ
ング協会が保有している。
)
・施工方法
施工実験データが必要となる。
(データは新都市ハウジ
ング協会が保有している。
)
4) 新都市ハウジング協会の CFT 指針に基づく場合、何 前項で説明したように、新都市の CFT 指針に基づく場合
か留意点はありますか?
ビルデイングレター
は、構造実験データ及び施工実験データが必要となりま
― 36 ―
す。
新都市ハウジング協会では、過去の研究よりこれらのデー
タの蓄積を有しております。これらの蓄積データを採用す
るには、施工計画から施工結果の確認までを適切に実施す
ることが前提となります。そこで、新都市ハウジング協会
では、これら協会で蓄積しているデータを使用する際に
は、以下に示す(建築基準法に基づくものでない自主的
な)審査及び報告を求めています。
①確認申請時の CFT 造適合審査
②充
コンクリート打設に先立つ、CFT 造施工計画書の
審査
③完了検査に先立つ、CFT 造施工結果報告書の確認
Ⅱ.「コンクリート充 鋼管(CFT)造技術基準・同解説の運用及び計算例等」
第2章
CFT 造技術指針・同解説」関連
1. 構造設計
1) γ が記号一覧にありませんが何を表していますか?
γ は日本建築学会の SRC 規準に規定する「鉄骨比に応
じて定まるコンクリートの Fc に対する低減係数」を表し
ます。
2) 鋼管とコンクリートの付着で応力が伝達できない場合 鋼管とコンクリートの付着で応力が伝達できない場合は機
のリブの設定方法について示して下さい。
械的なすべり止めを併用することとしています。機械的な
すべり止めとしては、支圧金物、スタッドボルト、鉄筋加
工品などを溶接で取り付ける等の例があり、日本建築学会
の SRC 規準に記載されています。なお、コンクリートと
ステンレス鋼管の内部との付着許容応力度及び付着強度
は、平成13年国土交通省告示第1024号に基づいて、実験等
によって確認する必要があります。
3) コンクリートの設計基準強度が90N/mm を超える場 日本建築学会の SRC 規準による、コンクリートの設計基
合は、強度試験、日本建築学会等の資料に基づけば、コ 準強度の上限は、60N/mm です。それぞれの規準、指針
ンファインド効果(相互拘束効果)は認められますか? ごとで適用範囲が異なることに留意願います。なお、
㈳新
都市ハウジング協会が相互拘束効果を確認した実験の範囲
が90N/mm までであるため、相互拘束効果を
慮できる
コンクリート強度の上限を90N/mm としています。従っ
て、上記の範囲を超える場合は、平成13年国土交通省告示
第1024号に基づいて、実況に応じた試験で確認することが
必要になります。
4) 中柱に分類される角形鋼管については、変形性能評価 中柱と分類される角形鋼管は、軸及び曲げ耐力に対して
時に相互拘束効果を 慮できますか?
は、相互拘束効果を 慮できません。
しかし、変形性能の評価に対しては、新都市 CFT 指針に
示す変形性能 (p.2-79、参 資料1) が確保できる場合は
慮できます。
5) 許容せん断力は2001年度版日本建築学会 SRC 規準に 日本建築学会の SRC 規準 (2001年版) に準拠し、短期荷
準拠し、以下による鉄骨部分の短期荷重時に対する検討 重時及び終局荷重時において検討を行うことになります。
のみでよいでしょうか?
≦
なお、せん断スパン比が1を超える柱については、検討を
省略できます。
― 37 ―
ビルデイングレター
許容せん断力
=
鉄骨部分の設計せん断力
2
=
6) 長柱の部材種別の判定方法が、p.2-79の参
資料1に 参 資料1に記載された判断基準で FA 部材とならない場
記載されていますが、FA 部材とならない場合は FD 部 合については、現段階で、定められていません(適用でき
材として扱っていいのでしょうか?又は、参 資料1に ない)
。また、長柱としての軸力比制限を満足する場合で
よる軸力比制限を満足していれば、短柱としての限界部 も、短柱を対象とした Ru による分類を適用できません。
材角 Ru により部材ランクを決定してもよいということ なお、ここでは、断面としての変形性能を確保する(主に
なのでしょうか?
材料強度に応じたコンクリート圧壊の防止、鋼管の局部座
屈の防止)目的で、短柱の評価式を併用しています。
7) ⅰ
長柱の限界変形角はどのように計算するのでしょ Ru の値が0.02以上となり、長柱としての軸力制限も満足
うか? p.2-79の参 資料1に記載してある短柱と して FA ランクとなる場合には、限界変形角として0.02相
しての Ru を採用してもよいのでしょうか?
当の値を採用することができますが、それ以外の場合には
単純に Ru を採用することはできません。
相互拘束効果を 慮しない場合の限界変形角の計 ご指摘の設定方法で、概ね評価できます。ここで、径厚比
ⅱ
算方法について、p.3-108付表1.2により部材ランク の上限値は日本建築学会の SRC 規準を参
にできます
を 求 め、FA で あ れ ば Ru=0.02、FB で あ れ ば が、現段階で、径厚比が大きい領域での限界変形角を確認
Ru=0.015、FCであればRu=0.01としてよいので
できていないため、設計に際しては、この点に留意して対
しょうか?
応願います。
また、FD となった場合は、部材の変
形角にかかわらず NG としてよいのでしょうか?
FD となる柱材については、その柱に脆性的破壊を生じて
もその柱が支えていた鉛直力を代わって支持できる部材が
周辺に存在し、建築物の部分的な崩壊が起こるおそれのな
い場合には、対象とする架構から取り除いたと仮定して評
価することが可能です。
8) 鋼管継手をボルトとすることも可能と思われるが、そ 鉄骨造と同様に CFT 造としての継手の要求性能を満たす
の場合の留意事項は?
必要があります。
2. 施工
1) 誘導管を省略する場合の目安を新都市ハウジング協会 誘導管を省略する目安は、現在のところ、協会でも技術
として出していただけないでしょうか?
2)
データを持っておりません。
のばらつきの中に温度補正を含めて構わない と 施工時の建物の荷重を鉄骨部分(鋼管)で支持できる場合
の解説がありましたが、具体的にはどういうことです は、鋼管柱に充 されるコンクリートは、ポテンシャル強
か?温度補正は必要ないということですか?
度で評価できるため、温度による強度補正は不要としてい
ます。
3) 外ダイアフラムタイプ・落し込み充
レータ使用) において柱1節ごとに充
方法 (バイブ 外ダイアフラムタイプに使用するコンクリートにおいて
する場合ダイア も、ブリーディングあるいは沈降により、柱1節の高さ方
フラムが柱内には無いため一般的な階高の場合、ブリー 向の上下において強度に著しい差が生じる可能性がありま
ディング量及び沈降量の制限は不要と
でしょうか。
えますがいかが す。従って、新都市 CFT 指針のブリーディング量、沈降
量の制限を遵守する必要はありませんが、柱上下方向での
強度差が生じない調合を選定する必要があります。
4) 技術ランク区分が SA ランクでも、90N/mm を超え 設計基準強度60N/mm を超えるコンクリートはかなり粘
る充
コンクリートの採用にあたっては、モデル施工試 性が高くなり施工性の確保が重要な課題となります。
験が必要ですか?
これらの点を 慮すると90N/mm でなく60N/mm を超え
る場合には、
「コンクリート充
ビルデイングレター
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鋼管(CFT)造技術基
準・同解説の運用及び計算例等」第1章 CFT 告示の運用
で解説する施工試験で品質を確認することが望ましいです。
5) 落し込み充 工法の場合の鋼管内部からのコンクリー スランプ仕様のコンクリートの場合、締固めは、密実性、
トの締め固めは施工実験資料等の確認とありますが、外 充
ダイアフラムタイプの場合も必要でしょうか
性を向上させるために必要です。
「コンクリート充
鋼管(CFT)造技術基準・同解説の運用及び計算例等」第
1章 CFT 告示の運用に従い締固めの無い場合の施工実験
資料等が得られているならば、その結果を参 にしてよい
と思います。
Ⅲ. その他
1.「コンクリート充
鋼管(CFT)造技術基準・同解説」
1)「コンクリート充
鋼管(CFT)造技術基準・同解説」 図2.2-1(左図)は充
コンクリートのみの M −N 相関
の p.1-8頁の図(インタラクションカーブ)で、左図 曲線を耐力比で示しており、図2.2-2(右図)は CFT、
コンクリートの M −N 曲線の軸力 N は0からである S、RC 造の柱の M −N 相関曲線を示してい ま す。従っ
が、右図のコンクリートは−N からスタートしている て、前者では引張力に相当する−N の部分は存在しませ
のは何故ですか?
ん。後者では鋼材が引張力を負担しますので、−N の部
分が存在します。
2) RC 造、S 造との比較で、施工の手間も含めた場合に 鋼管とコンクリートの性能を生かした設計(軸力制限の緩
もコストは低減されますか? また、施工にあたっては 和、鋼管幅厚比制限の緩和等)
、施工(短工期施工、揚重
熟練工が必要ですか?
機の軽減等)により、経済性に優れた建物とすることが可
CFT 造施工管理技術者の数は十分ですか?
能です。
ただし、鋼材やコンクリートの市場単価の動向及び建物の
規模によりコストは異なってきますので、対象物件ごとに
検討する必要があります。
新都市ハウジング協会では、CFT 造の普及と施工品質の
確保を目的として、施工実績に基づいた施工者の CFT 造
施工技術ランク区分の認定登録と CFT 造施工管理技術者
の試験・登録・育成を行っています。CFT 造施工管理技術
者は、現在約1,600名が登録されており、今後も増える見
込みです。
3) CFT 造施工管理技術者は必須となるのですか?
㈳新都市ハウジング協会が
CFT 造施工管理技術者 は、
CFT 造の健全な普及のために自主的に設けている民間の
制度です。㈳新都市ハウジング協会では、CFT 造施工管
理技術者が、施工計画書の作成及び品質管理等で、重要な
役割を担うことを期待しています。
2.「コンクリート充 鋼管(CFT)造技術基準・同解説の運用及び計算例等」
1) 荷重増分法では、接合部は
か?
慮する必要があります 低荷重時でパネルの降伏・破壊が予想される場合にはパネ
慮する場合、接合部の復元力の求め方は提案さ ルゾーンを 慮して解析する必要があります。なお、復元
れているのでしょうか?
力特性については、 学会 CFT 指針」で引用されている
各種研究論文及び「BRI Research Paper No.147: Summary of Research on Concrete-filled Structural Steel
Tube Column System carried out under the US-Japan
Cooperative Research Program on Composite and
Hybrid Structures, Isao Nishiyama, Shosuke M orino et
al., January 2002, pp.32-42.」等が参 になります。
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ビルデイングレター