4.1.2 柱の剛性計算

4.1 剛性計算
4.1.2 柱の剛性計算
4.1.2 柱の剛性計算
INDEX: 共通事項・RC・SRC柱・S・CFT柱・ベースプレート・
(1)共通事項
各構造種別共通の断面性能の計算方法を以下に示す。
① 要素の剛性は、
「基準剛性×剛性増大率」の形式で算定する。基準剛性とは、柱のみの剛性である。
② 軸断面積、要素 z,y 方向せん断断面積、要素 z,y 軸回り断面 2 次モーメントの剛性増大率(α、γz、
γy、φz、φy)を直接入力することが可能である。計算書の準備計算のφz、φy、γz、γy、αの
値は、基準剛性に対する内部計算値または直接入力値を表示している。
③
柱の剛性には指定により剛域・せん断変形を考慮することができる。
④
鉛直モデルの軸変形を無視と指定された場合は、鉛直モデルの軸断面積を 100 倍する。
⑤
RCおよびSRC柱の曲げ割線剛性低下率αy’は弾性水平荷重用の断面 2 次モーメントに乗じる。こ
の時入力したαy’が、計算されるαy(7.2.2 RC造部材の耐力式(3)復元力特性 参照)よりも小
さい場合、適用範囲外メッセージ(N)が出力される。計算値のαyは、始終端の平均値を用いる。
B-4.1.2-1
4.1 剛性計算
4.1.2 柱の剛性計算
(2)RC、SRC 柱
RC、SRC 造柱の剛性は、袖壁を含むコンクリート断面と鉄骨断面(SRC 造のみ)について計算する。
さらに指定により、主筋を考慮することができる。デフォルトは主筋を考慮しない。
袖壁の有効長さは「4.1.8 一般壁の扱い」による。一般壁の応力解析条件で、柱の剛性への考慮が「無
視」と指定された場合は、柱の曲げ剛性・せん断剛性に袖壁を考慮しない(デフォルトは「考慮」
)
。
1) 基準剛性
①断面2次モーメント
主筋および鉄骨の断面2次モーメントは、コンクリートを含めた全体の重心位置を考慮せず、単純加
算する。
RC 造: rc I o  c I o  bar I nr  1 
SRC 造: src I o  rc I o  s I e nr  1 
ここで、
cIo
:コンクリート部分の柱のみの断面 2 次モーメント
sIe
:鉄骨部分の柱頭・柱脚の断面 2 次モーメントの加重平均
s Ie
 xs Iu  (1  x )s Id
sIu,sId :鉄骨部分の柱頭、柱脚の断面 2 次モーメント
x
:鉄骨継手位置より上の部分の長さの部材長さに対する比率
barI
:主筋剛性を考慮した場合の、主筋部分の断面 2 次モーメント。考慮しない場合(デ
フォルト)
、または、丸柱の場合、barI=0
barI=(barI 柱頭+barI 柱脚)/2
nr
:コンクリートに対する鋼材の実ヤング係数比。ただし、鉄骨のみヤング係数のユー
ザー指定が可能で、鉄骨のヤング係数を変更した場合は、実ヤング係数比は鉄筋とは
異なる値になる。
Iu
xL
L
Id
図-4.1.2.1 鉄骨部分の加重平均
B-4.1.2-2
4.1 剛性計算
4.1.2 柱の剛性計算
②せん断断面積
せん断断面積には、主筋は常に考慮しない。
RC 造: rc As o  c A o / 
SRC 造: src As o   c A o  s As e nr  1  / 
ここで、
cAo
sAse
:コンクリート部分の柱のみの断面積
:鉄骨部分の柱頭・柱脚のせん断断面積の加重平均
s
As e  xs Asu  (1  x )s Asd
sAsu,sAsd:鉄骨部分の柱頭、柱脚のせん断断面積
κ
:柱のせん断形状係数
なお、剛性計算法タイプ 1・2 では、せん断変形を無視するため、基準剛性自体を 100 倍する。(基準
剛性自体を割り増しするため、内部計算ではγ=1.0 となる。)
③軸断面積
RC 造: rc A o  c A o  bar A nr  1 
SRC 造: src A o  rc A o  s A e nr  1 
ここで、
sAe
:鉄骨部分の柱頭・柱脚の軸断面積の加重平均
s
A e  xs Au  (1  x )s Ad
sAu,sAd:鉄骨部分の柱頭、柱脚の軸断面積
barA
:主筋剛性を考慮した場合の主筋および軸鉄筋の断面積。柱頭と柱脚の平均断面積。
考慮しない場合(デフォルト)
、または、丸柱の場合、barA=0
barA=(barA 柱頭+barA 柱脚)/2
鉛直モデルの軸変形を無視と指定された場合は、鉛直モデルの基準軸断面積を 100 倍する。
B-4.1.2-3
4.1 剛性計算
4.1.2 柱の剛性計算
2) 曲げ剛性
RC 造柱の断面 2 次モーメント rcI および断面増大率 rcφは、当該方向の袖壁を考慮して計算する。直
交方向の袖壁は無視する。主筋を考慮する場合、コンクリート部分に鉄筋の剛性をヤング係数比倍して
加算する。
SRC 柱の断面 2 次モーメント srcI および断面増大率 srcφは、RC 部分に鉄骨部分の剛性をヤング係数
比倍して加算する。
鉄筋および鉄骨の剛性は柱の中央からの断面 2 次モーメントとし、重心位置の差は考慮しない。
RC 造: rc I  c I  bar I nr  1 
rc  
SRC 造: src I  rc I  s I e ( nr  1 )
src  
rc I
rc I o
src I
src I o
ここで、
cI
:コンクリート部分の断面 2 次モーメント
コンクリート部分の断面 2 次モーメント cIは以下の手順で計算する。
・
柱両端の危険断面位置間を 2 等分した 3 ポイントにおける値を求める。
・
各算定ポイント i(i=1~3)を単純平均して柱の値とする。
B-4.1.2-4
4.1 剛性計算
4.1.2 柱の剛性計算
①各算定ポイントでの計算法(剛性計算法タイプ)
剛性計算法タイプによる各算定ポイント(i=1~5)
i
での断面 2 次モーメントの計算方法を以下に示す。
a)剛性計算法タイプ 1
断面 2 次モーメント cIi は袖壁を無視した柱のみで計算する。cIi=cIo とする。
b)剛性計算法タイプ 2
断面 2 次モーメント cIi は柱のみの断面 2 次モーメントに袖壁による剛性増大率(φw1i×φw2i)を乗じ
る。ここで、φw1i はそで壁の断面積比による増大率、φw2i はそで壁による剛域・せん断剛性を略算
的に考慮した増大率とする。
ただし剛性に有効な袖壁が取り付かない場合は φw1i=φw2i=1.0 とする。
c Ii  c i c I o
 ( w 1 i  w 2 i)
c I o
w 1 i 
A   ( Awi  y ' )
A
w 2 i 
Lc
L  Dwci
ただし、φw 2 i≧1.0 とする
ここで、
φw 1 i
:断面積比による増大率(z,y方向・算定ポイントごと)
φw 2 i
:剛域・せん断剛性を略算的に考慮した増大率(z,y方向・算定ポイントごと)
A、Awi :柱(部材に 1 つ)
、袖壁(z,y 方向・算定ポイントごと)の断面積
βy’
:袖壁の割線剛性低下率(z,y 方向ごと)
Dwci
:袖壁を考慮した柱成(z,y 方向・算定ポイントごと)
L、Lc
:柱の危険断面位置間長さ、部材長さ(z,y 方向ごと)
c)剛性計算法タイプ 3(デフォルト)
断面 2 次モーメント cIi は柱と袖壁を考慮した「全断面」の断面 2 次モーメントとする。袖壁部分に
は一般壁の割線剛性低下率βy’を考慮し、壁厚にβy’を乗じる。
c Ii  c I o  c A o
 twi  w 3

2
i
 y 0 i 2   y i ' 
 w i  tw i  yw i 2 


12
i 1


y0
tw 1
c i c Ii / c I o
ここで、
tw 2
lw 1
yoi:図心から柱心までの距離
lw 2
yw 1
lwi:袖壁の有効長さ
twi:袖壁の厚さ
yw 2
図-4.1.2.2 袖壁を考慮した剛性計算
ywi:図心から一般壁心までの距離
B-4.1.2-5
4.1 剛性計算
4.1.2 柱の剛性計算
②平均断面 2 次モーメント
コンクリートの断面 2 次モーメント cIは、3 ポイントの剛性増大率を平均して部材としての平均断面
性能を求める。
c
1
 ( c 1  c  2  c  3 )
3
c I  c  c I 0
3
2
1
図-4.1.2.3 柱の断面2次モーメントの計算
B-4.1.2-6
4.1 剛性計算
4.1.2 柱の剛性計算
3) せん断剛性
剛性計算法タイプによるせん断断面積 As および剛性増大率γの計算方法を以下に示す。
①
剛性計算法タイプ 1 およびタイプ 2
基準剛性自体を 100 倍し、せん断変形無視とする。基準剛性自体を割り増しするため、内部計算で
は rcγ=srcγ=1.0 となる。
RC 造: rc As  rc As o 
c
Ao
 10 2

SRC 造: src As  src As o 
②
c
A o  s As e nr  1 
 10 2

剛性計算法タイプ 3(デフォルト)
せん断断面積に考慮する壁の範囲は、計算方向の評価範囲に存在する全ての袖壁を考慮する。
RC 造:
rc
As 
c
Ao
 Aw 


rc   rc As / c
c
A o /  
A o 1 3 2  y j  Aw ij 
 

3 i 1 j1 w j 
c
(壁部分は 3 ポイント・左右の相加平均)
A o    Aw
c Ao
SRC 造:
src As
  c A o  s As e nr  1  /   Aw

src   src As / c
A o  s As e nr  1  /   
c
A o  s As e nr  1     Aw
c A o  s As e nr  1 
ここで、
κ
:柱のせん断形状係数
Aw ij
:左右の袖壁の算定ポイントにおける断面積
κw j
:左右の袖壁のせん断形状係数
βy’ j
:左右の袖壁の割線剛性低下率
4) 軸剛性およびねじれ剛性
軸断面積は基準剛性と同じ。
ねじり剛性は無視するが解析上の安定性を考慮し、J= max(Iz, Iy)/10000 とする。
B-4.1.2-7
4.1 剛性計算
4.1.2 柱の剛性計算
(3)S・CFT 柱
1) 基準剛性
S 造柱の剛性は、鉄骨断面で計算し、袖壁は考慮しない。
CFT 造柱の剛性は鉄骨部分の剛性に充填コンクリート部分の剛性を実ヤング係数比で除して加算する。
①断面2次モーメント
S 造: s I o  s I e
CFT 造: cft I o  s I e  c I e / nr
ここで、
sIe
:鉄骨部分の柱頭・柱脚平均( 2)参照)の断面 2 次モーメント
cIe
:コンクリート部分の柱頭・柱脚平均( 2)参照)の断面 2 次モーメント
nr
:実ヤング係数比
②せん断断面積
S 造: s As o  s As e / 
CFT 造: cft As o   s As e  c A e / nr  / 
ここで、
cAe
:コンクリート部分の柱頭・柱脚平均( 2)参照)の断面積
sAse
:鉄骨部分の柱頭・柱脚平均( 2)参照)のせん断断面積
κ
:柱のせん断形状係数
ただし、S造・CFT造柱はデフォルトでせん断変形を無視するため、せん断断面積を 105倍する(基準
剛性自体を割り増しするため、内部計算ではγ=1.0 となる)。せん断断面積を実断面で評価したい場合
は、建物共通応力解析条件で剛性計算法をタイプ 3 とし、「TYPE3 の時、鉄骨部材にも剛域・せん断変
形を考慮する」の指定をする必要がある。
③軸断面積
S 造: s A o  s A e
CFT 造: cft A o  s A e  c A e / nr
ここで、
sAe
:鉄骨部分の柱頭・柱脚平均( 3)参照)の軸断面積
鉛直モデルの軸変形を無視と指定された場合は、鉛直モデルの基準軸断面積を 100 倍する。
B-4.1.2-8
4.1 剛性計算
4.1.2 柱の剛性計算
2) 曲げ剛性およびせん断剛性
鉄骨、充填コンクリートの断面 2 次モーメントおよびせん断断面積については、柱を鉄骨継手位置で
柱頭、柱脚に分割し、それぞれの値を鉄骨継手位置までの長さの比により加重平均した値とする。
断面増大率は、壁による剛性増大率を無視するため、内部計算では 1.0 である。Φ、γ、αを直接入
力する場合、基準剛性に乗じる。
①断面 2 次モーメント
( s,c ) I o
 x ( s,c ) Iu  ( 1  x )( s,c ) Id
ここで、
(s,c)Iu、(s,c)Id:
(鉄骨部分,コンクリート部分の)柱頭、柱脚の断面 2 次モーメント
x
:鉄骨継手位置より上の部分の長さの部材長さに対する比率
S 造テーパー柱の場合は x=0.5 とする。
②せん断断面積
( s , c ) As o
 x ( s ,c ) Asu  ( 1  x )( s ,c ) Asd
ここで、
(s,c)Asu、(s,c)Asd:
(鉄骨部分,コンクリート部分の)せん断断面積
なお、剛性計算法タイプ1およびタイプ 2 の場合、基準剛性自体を 100 倍し、せん断変形無視とする(基
準剛性自体を割り増しするため、内部計算ではγ=1.0 となる)
。
3) 軸剛性およびねじれ剛性
①
鉄骨、充填コンクリートの軸断面積は下式による。
( s,c ) A o
 x( s ,c ) Au  (1  x )( s,c ) Ad
ここで、
(鉄骨部分,コンクリート部分の)軸断面積
(s,c)Au、(s,c)Ad:
②
ねじり剛性は無視するが解析上の安定性を考慮し、J= max(Iz, Iy)/10000 とする。
B-4.1.2-9
4.1 剛性計算
4.1.2 柱の剛性計算
(4)ベースプレート
S 造・CFT 造柱の柱脚にベースプレートを設定した場合の柱脚回転ばねの剛性は下記による。
ベースプレートを指定した柱の端部条件で柱脚に「ばね」を指定した場合、ベースプレートの回転剛
性を直接入力することができる。
1) 回転剛性
①在来工法・D スルー工法
ベースプレートは回転剛性を持つ。D スルー工法・在来工法の場合は下式による。
E  nt  Abdt  dc 2
2 le
K
ここで、
E
:アンカーボルトのヤング係数(205,000N/mm2)
nt
:引張側アンカーボルト本数
Ab
:アンカーボルトの軸断面積
dt
:柱心から引張側アンカーボルト群までの距離
dc
:柱心から圧縮側柱外縁までの距離(柱成の 1/2)
le
:アンカーボルトの有効長さ
②既製品
メーカー仕様の回転剛性を用いる。
2) 等価曲げ剛性
ベースプレートは解析上、柱脚に 10cm の線要素としてモデル化する。可撓部分の応力分布を等曲げと
見なせば、可撓部分両端での相対回転角は下式である。

M

EI
ここで、
M

EI
:ベースプレートに作用するモーメント
:可撓部分の長さでここでは 10cm
:可撓部分の曲げ剛性。ヤング係数はベースプレート要素が取りつく S 柱鋼材のヤン
グ係数とする。
上式より、ベースプレート要素の等価曲げ剛性 EI は、回転剛性 K を用いて下式で計算する。
EI  K  
∵K 
M EI



B-4.1.2-10