大容量で高速な無線通信を実現する セミブラインド干渉アラインメント伝送に関する研究 On Semi-Blind Interefenece Alignment for Large-Capacity and High Data Rate Transmissions ◦高井真人 (Manato Takai)† 石橋功至 (Koji Ishibashi)‡ ウォンヨンシン (Won-Yong Shin)∗ ヒョソクイ (Hyo Seok Yi)§ 和田忠浩 (Tadahiro Wada)¶ †¶ 静岡大学大学院 工学研究科 浜松市中区城北 3-5-1 432-8561 Grad. School of Eng. Shizuoka Univ., 3-5-1 Johoku, Naka-ku, Hamamatsu, Shizuoka, Japan, [email protected] ‡ 電気通信大学 先端ワイヤレスコミュニケーション研究センター Advanced Wireless Communications Research Center, The Univ. of Electro-Communications ∗ 壇国大学 国際学部 College of International Studies, Dankook Univ. § ハーバード大学 工学応用科学研究科 Shool of Engineering and Applied Science, Harvard Univ. 1 あらまし 無線通信技術の急速な発展と普及により周波 数帯域の逼迫が問題となっている一方で,あらゆ る機器を無線通信によってネットワーク接続す る Machine-to-Machine(M2M) 通信や高度道路交 通システム (ITS: Intelligent Transportation System) といった高速 · 大容量通信を必要とする技術 の実用化が活発に検討されている.これらのアプ リケーションでは多数の端末が相互に通信を行う ため,端末間での干渉が頻繁に発生し,通信性能を 著しく低下させてしまうと考えられる.このよう な問題を回避する方法として近年,干渉アラインメ ント (IA: Interference Alignment) が提案され,活 発に研究されている.IA は信号空間上で干渉信号 をある部分空間に揃えることで所望信号の空間を増 大させ,伝送レートを大幅に増加させる手法である が,各送信端末は全ての通信路応答を知る必要があ り,送信端末間の正確な時間同期が必要であった. そこで我々は文献 [1, 2] において,従来の IA が抱 える問題を解決するセミブラインド干渉アラインメ ント (S-BIA:Semi-Blind Interference Alignment) を提案した.同文献において,S-BIA は各送信端 末が知るべき通信路応答情報量を減らし,受信端末 における干渉除去の演算量を削減しつつ,従来の IA 方式と同等の自由度利得を得られることを明ら かにした.本稿ではこれらの成果について概説し, S-BIA の有効性について述べる. (k) h11 Tx1 (a1 , a2 ) (k) h21 Rx1 (a1 , b1 ) (k) h12 Tx2 (b1 , b2 ) Rx2 (k) h22 (a2 , b2 ) 図 1 2×2 X 通信路のシステムモデル 2 システムモデル 図 1 に示すような 2×2 X 通信路を想定する.本 モデルでは 2 つの送信端末と 2 つの受信端末がそ れぞれ 1 本のアンテナをもち,送信端末がそれぞ れ全ての受信端末に独立した情報を送信する.送 信端末 Tx1 は情報系列 (a1 , a2 ) を送信し,送信端 末 Tx2 は情報系列 (b1 , b2 ) を送信する.また,受信 端末 Rx1 は (a1 , b1 ) を,受信端末 Rx2 は (a2 , b2 ) をそれぞれ受信したいものと仮定する.つまり,受 信端末 Rx1 にとって (a1 , b1 ) が所望信号であり, (a2 , b2 ) が干渉信号である.各送信端末は受信側で これらが互いに干渉しないように送信信号を形成 する必要がある. i 番目の送信端末と j 番目の受信端末間で形成さ れる周波数スロット k における通信路応答成分を (k) hij で表す. 3 セミブラインド干渉アラインメント S-BIA において,送信端末 Tx1 は次のような 3 つの信号を送信する. ] ] [ [ (1) x1 0 α (2) x = 1 a1 + 1 a2 1 0 β (3) x1 (1) 同様に,送信端末 Tx2 は次の 3 つの信号を送信 する. [ ] [ ] (1) x2 0 γ (2) x = 1 b1 + 1 b2 2 0 δ (3) x2 (2) (2) α= (1) h12 (2) , β= h11 (3) (2) , γ= h11 h22 (1) 信号を除去する. [ (2) , δ= h22 従来の IA,S-BIA,FDMA 方式のシステ ム全体の伝送レート ここで,α, β, γ, δ はアラインメント係数と呼ばれ, 次式のように与えられる. h12 図2 h21 (3) . h21 (1) y1 (2) (3) y1 − y1 ] [ = (1) h11 α (2) h11 (3) + 1 章で説明したように,IA では各送信端末が全 ての送受信端末間の通信路応答値を知る必要があっ た.しかしながら,S-BIA では上式より,各アライ ンメント係数を計算するためには送信端末自身に 関する通信路応答だけが既知であればよいことが 分かる.また,IA 方式における送信端末間の正確 な時間同期の要求を緩和するため,本研究では直交 周波数分割多重 (OFDM: Orthogonal Frequency Division Multiplexing) 方式を利用して信号を送信 する.マルチパス環境下において,OFDM の各サ ブキャリアにおける通信路応答値は変動する.互 いに独立な通信路応答値を持つサブキャリアを用 いて信号を送信する.OFDM による独立した通信 路の形成に関しては,文献 [1] を参照されたい. 各送信信号は X 通信路を介して受信され,受信 端末 Rx1 における各受信信号は次式で与えられる. (1) (1) (1) y1 h11 α h12 γ y (2) = (2) (2) h11 h12 1 (3) 0 0 y1 0 0 (2) (2) h12 h11 + (3) (3) h11 β h12 δ [ [ a1 b1 a2 b2 ] ] (1) n1 + n(2) 1 (3) n1 (4) 受信側ではこれらの受信信号を用いることによっ て各受信端末における所望信号を取り出す.受信 (2) (3) 端末 Rx1 では y1 から y1 を減算することで干渉 4 (1) h21 γ (2) h21 [ ][ (1) a1 b1 n1 (2) (3) n1 − n1 ] ] (5) 伝送レートの比較 従来の干渉アラインメント方式 [3] および SBIA[2] のシステム全体の伝送レートを図 2 に示す. 参考として,周波数分割多元接続 (FDMA: Frequency Division MUltiple Access) の伝送レート も示す.同図より,従来の IA と S-BIA は FDMA に比べ,伝送レートが著しく増大していることが 分かる.また,S-BIA は信号対雑音電力比 (SNR: Signal-to-Noise Ratio) に対して従来の IA と同じ 傾きで伝送レートが増大しており,従来の IA と同 等の自由度利得を達成できていることが分かる. 参考文献 [1] 高井 真人, 石橋 功至, ウォンヨン シン, 横山 明久, and 和田 忠浩, “通信路の周波数選択性を用いたセミ ブラインド干渉アラインメントに関する一検討”, 信 学技報, vol. 112, no. 147, pp. 73–78, Jul. 2012. [2] M. Takai, K. Ishibashi, W.-Y. Shin, H.S. Yi, and T. Wada, “Semi-Blind interference alignment based on OFDM over frequency selective x channels”, in IEEE ICC 2013, Budapest, Hungary, June 2013. [3] T. Gou, C. Wang, and S.A. Jafar, “Aiming Perfectly in the Dark-Blind Interference Alignment Through Staggered Antenna Switching”, Signal Proc., IEEE Trans. on, vol. 59, no. 6, pp. 2734 –2744, june. 2011.
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