大阪市港区におけるモビリティ・マネジメント実施事例 ー平成20年度の取組

 大阪市港区におけるモビリティ・マネジメント実施事例
ー平成20年度の取組み報告ー
環境にやさしい交通をすすめる
プロジェクト検討会
1. プロジェクト実施の背景・目的等
■背景・目的
大阪市では、行政機関と(社)港産業会、大阪市環境経営推進協議会
港地域部会などで構成する「環境にやさしい交通をすすめるプロジェク
ト」検討会を組織し、大阪市港区で 環境にやさしい交通をすすめるプロ
ジェクト を推進。
国道43号交差点等の渋滞 緩和をはじめとして、沿道の環境改善、さ
らには地球環境問題への対応など、自動車交通をとりまく諸問題を改
善するためにモビリティ・マネジメントを実施。(図1)
■方向性
行政主体の取組ではなく、市民・事業者・行政機関と協働して、
地域の取り組みに向けた普及・啓発活動を推進していく。(図2)
港区
行政
港区
市民
MM推進
渋滞
市民
事業所
行政
事業所
図2 MM推進の方向性
図1 大阪市港区 位置図等
2. プロジェクトの内容
2−1.転入・転居者へのTFP
●これまで在住者や事業所従業員等を対象にTFPを行ってきたが、交通行動
が確定する前での公共交通情報の提供を目的として、転入・転居者にワンショッ
トTFPを実施した。
●転入者受付窓口で最近の3日間の目的別交通手段別外出回数、移動時間
について訊く調査票(図3)、環境への取り組みを啓発する小冊子(図4)及び公
共交通利用情報を提供する「電車・バスマップ みなと」(図5)、を配布した。
●時 期:8月26日∼12月30日(約4ヶ月) ●配布数:531世帯
●事後調査回収数:17世帯
■アンケート結果分析
交通手段別利用回数の変化
有効回答者数:15人
●交通手段別利用
回数を見ると、クル
マ以外の利用は事
前88.5%から事後
90.4%へ1.9ポイン
ト増加した。(図6)
0%
事前と比
較すると、
クルマ以
外の利用
率は1.9
ポイント
増加
10%
20%
クルマ
(同乗)
クルマ
(運転)
凡例
事前
30%
8.0%
バイク
27.0%
40%
50%
電車/
地下鉄
タクシー
4.5%
60%
70%
80%
バス
90%
自転車
19.0%
100%
徒歩
37.5%
3.5%
0.5%
事後
7.5%
22.2%
1.3%
20.1%
45.6%
2.1%
0.8% 0.4%
図6 交通手段別利用回数の変化
有効回答者数:15人
●交通手段別利用
時間を見ると、クル
マ以外の利用は事
前67.6%から事後
70.9%へ3.3ポイン
ト増加した。 (図7)
0%
事前と比
較すると、
クルマ以
外の利用
率は3.3
ポイント
増加
凡例
事前
交通手段別利用時間の変化
10%
20%
30%
クルマ
(同乗)
クルマ
(運転)
バイク
40%
タクシー
50%
60%
電車/
地下鉄
70%
バス
80%
90%
自転車
100%
徒歩
2.6%
29.8%
24.4%
6.7%
15.4%
20.9%
0.1%
事後
7.5%
21.6%
23.4%
0.8%
17.3%
28.7%
0.4%
0.2%
図3 調査票
図4 小冊子 図5 電車・バスマップ みなと
図7 交通手段別利用時間の変化
2−2.小学校での環境学習(フードマイレージ買い物学習)
●ねらい
・毎日の食事に関心を持ち、献立づくりや買い物に意欲的に取り組む。
・買い物で、近場の食材を選んだり交通手段を考えたりすることで環境負荷 が変わることに気づく。
・食材の産地や買い物の交通手段による環境への影響について考え、今後
の生活に生かしていく。
●港区池島小学校の6年生を対象にフードマイレージ買い物学習(図8)を実施
(図9)
「フードマイレージ」とは
●学習の流れ(全6時限: 11月26日∼1月16日)
食べ物の輸送によって発生する
1時限:フードマイレージとは何か
地球温暖化ガス(CO2)の排出量
のこと。
2時限:食事の献立を考えよう
「輸送距離×輸送手段×食べ物
3時限:食材を買いに行こう
の重さ」で算出します。
4時限:食事を作ろう
生産地と食卓の距離が遠くなる
ほど輸送時にCO2 や大気汚染物質
5時限:フードマイレージを計算しよう
がたくさん排出され、環境に悪影
6時限:気付いたこと、分かったことを話し合おう 響を及ぼすことになる。
食材カード(オモテ面)
食材カード(ウラ面)
②買物シート
クラス:
グループ:
なまえ:
こんだて:
食材
産地
ねだん
(円)
どこに食材を買いに行きましたか?
(お店の場所)
どうやってお店に行きましたか?
(交通手段)
フードマイレージ
(☆印の数)
ア.近くの商店街 ウ.デパート ア.徒歩・自転車 イ.電車
イ.ショッピングセンター
ウ.バス エ.クルマ
ア.近くの商店街 ウ.デパート ア.徒歩・自転車 イ.電車
イ.ショッピングセンター
ウ.バス エ.クルマ
ア.近くの商店街 ウ.デパート ア.徒歩・自転車 イ.電車
イ.ショッピングセンター
ウ.バス エ.クルマ
ア.近くの商店街 ウ.デパート ア.徒歩・自転車 イ.電車
イ.ショッピングセンター
ウ.バス エ.クルマ
ア.近くの商店街 ウ.デパート ア.徒歩・自転車 イ.電車
イ.ショッピングセンター
ウ.バス エ.クルマ
ア.近くの商店街 ウ.デパート ア.徒歩・自転車 イ.電車
イ.ショッピングセンター
ウ.バス エ.クルマ
ア.近くの商店街 ウ.デパート ア.徒歩・自転車 イ.電車
イ.ショッピングセンター
ウ.バス エ.クルマ
ア.近くの商店街 ウ.デパート ア.徒歩・自転車 イ.電車
イ.ショッピングセンター
ウ.バス エ.クルマ
ア.近くの商店街 ウ.デパート ア.徒歩・自転車 イ.電車
イ.ショッピングセンター
ウ.バス エ.クルマ
ア.近くの商店街 ウ.デパート ア.徒歩・自転車 イ.電車
イ.ショッピングセンター
ウ.バス エ.クルマ
合 計
※食材を買ったお店の場所に○をつけましょう。
※お店の場所までの移動した交通手段に○をつけましょう。
図9 フードマイレージ買い物学習の様子
■フードマイレージ買い物学習の結果
●アンケート調査結果(図10)
半数以上の子ども達が、 ・楽しく授業
・内容をよく理解。
・進んで学習に参加
・更なる学習意欲
・家族などに授業の内容を話
したい。
と環境学習の効果を伺えた。
授業は楽しかったですか?
内容はよく理解できましたか?
進んで学習に参加しましたか?
38%
40%
34%
21%
45%
53%
もっといろんなことを調べてみたくなりました 11%
36%
か?
ご家族などにこの授業の内容を話したくなり 9%
43%
ましたか?
0%
20%
40%
とてもそう思う
あまりそう思わない
まあそう思う
そう思わない
25%
23%
4%
15% 4%
2%
13% 6%
6%
19% 2%
15% 13%
11% 13%
60%
80%
100%
構成比 (n=53)
どちらともいえない
図10 子ども達のアンケート調査結果
●子ども達の感想
・勉強になったし、楽しかった。
・今回、フードマイレージをはじめて知った。
・食材を運搬する交通機関の違いでフードマイレージが変わることに驚いた。
・これからは産地も見て食材を選びたい。
図8 フードマイレージ買い物学習資料
2−3.エコドライブ普及啓発プログラム
●港区の事業者従業員(参加者12名)を対象に、JAFの協力の下に講習と実
車の試乗による体験型のエコドライブ普及啓発プログラムを実施(図11,12)
●車載器を自動車に取り付けて実際に走行し、燃料消費量を計測することで、
エコドライブの効果を実感し習慣化を期待する。
図11 講習会コース図
図12 エコドライブ講習会の様子
■エコドライブ普及啓発プログラムの結果
●エコドライブ啓発結果(図13)
・12名の受講者全員に燃費の改善。
・1∼2割以上の改善率を示し、最も良い受講者では3割以上も
燃費が向上
●受講者の感想
・発進してすぐにアクセルを吹かさなくても、コース全体を回る所
要時間に大きな差は無かった。これまでは無駄にアクセル、ブ
図13 レーキを踏みすぎていたようだ。
・予想以上の改善効果に驚いた。これからは出来る範囲でエコド エコドライブ
結果診断書
ライブを実践していきたい。
・燃費計でリアルタイムに変化する燃費を見て、必要ないアクセ
ルがいかに燃費に不利かよくわかった。
2−4.市民団体及び事業所との連携・協働
2−5.イベント等を通した普及啓発活動
■市民団体との連携
■みなと区民祭りにおける普及啓発
港区の地域振興会各連合会から推薦された区民を中心に構成された「港区
わがまちフォーラム」メンバーと、自転車のある快適な暮らしの実現をめざして
「ちゃ輪港マップ」 (図14)を連携して作成した。(図15)
平成20年8月2日に
港区八幡屋公園多目
的広場で開催された
「みなと区民祭り」にお
いて、検討会でブース
展示とMMツールの配
布(図17)を行った(図
18)。
図17 MMツール
図18 みなと区民祭り
の様子
■児童絵画コンクール表彰式での普及啓発
図15 わがまちフォーラム
との連携の様子
図14 ちゃ輪港マップ
■事業所との連携
平成21年2月3日に港区内事業所に対して、
MM活動内容の報告とエコ通勤などの行政支
援制度の紹介を行い、今後の活動に向けて意
見交換を開催(図16)
平成20年12月13日に大阪市立環境学習センター
「生き生き地球館」で表彰式とともに、「クルマと街の
よい関係をつくるには」と題した講演を行い、入賞し
た児童とその保護者、学校関係者を対象に普及啓
発を行った。(図19)。
図19 表彰式の様子
■平成20年度 取組み広報チラシの配布
図16 意見交換会の様子
検討会での取組み結果について、広報チラシを(図
20)を作成し、港区広報紙と併せて、平成21年3月
15日に約3万6千世帯に配布し啓発を行った。
図20広報チラシ
3.今後の取り組みに向けた課題及び方向性、平成21年度の取組み事例
■今後の取り組みに向けた課題および今後の方向性
①転入・転居者を対象としたTFPでは、一定の交通行動変容を導くことが できたが、参加率の向上が課題である。より多くの方に取り組みを拡大し
ていくためには、興味をひくようなMMツールの作成が重要と考えられる。
②MM施策は実際の担い手となる地域の人々の関心を広げていくことが 重要である。市民団体や事業所従業員のみならず女性団体に積極的に
働きかけ、地域住民が主体となった取り組みへの転換を図っていく。
<キーワード>
・取り組みの拡大
・地域に根ざした継続した取組み
■平成21年度の取組み事例(案)
<取り組みの拡大>
・事業者と連携した「電車・バスマップ みなと」の継続配布
・エコドライブ普及啓発の広報強化
<地域に根ざした継続した取組み> ・学校・女性団体と連携した環境学習の継続実施
≪環境にやさしい交通をすすめるプロジェクト H.P.≫
http://www.osakacity.or.jp/mm/index.html
環境にやさしい交通をすすめるプロジェクト検討会
国土交通省近畿運輸局交通環境部・近畿地方整備局大阪国道事務所、環境省近畿地方環境事務所
大阪府環境農林水産部環境管理室・地球温暖化防止活動推進センター、大阪市港区役所・環境局環境保全部・計画調整局計画部
社団法人港産業会、大阪市環境経営推進協議会港地域部会、財団法人大阪市都市工学情報センター、大阪大学大学院工学研究科