各生産工程の在庫を的確に管理し 小ロットや仕様変更などに - 大塚商会

Case Study
【導入事例】582
近畿工業株式会社
【 導入事例 】
582 ● 近畿工業株式会社
Vol.124
各生産工程の在庫を的確に管理し
小ロッ
トや仕様変更などに対応
納期達成率やCSの大幅向上を成し遂げる
導入の狙い
PCベースの生産管理システムへ
の移行
導入システム
生産管理システム
『遉
(さすが)』
文書管理システム
『Visual Finder』
導入効果
各工程の在庫をリアルタイムに管理
小ロット・短納期・仕様変更に
柔軟に対応
経常利益・納期達成率・CSなどを
大幅に向上
加工プロセスの大半を自社内でカバーし、より顧客ニーズに合った製品を提案している
近畿工業株式会社は油圧シリンダーの部品製造を中心に、金属・非金属部品の加工
を通して多様化する市場のニーズに応え、多くの企業から信頼を勝ち得ている。同
社では長年利用していたオフコンベースの生産管理システムをパソコンベースへ
移行するにあたり、大塚商会が提案した『遉(さすが)』
を選定。これにより各生産工
USER PROFILE
近畿工業株式会社
●業種:金属加工業
程の在庫数をリアルタイムに管理できる体制を整え、小ロット・短納期・仕様変更な
どに柔軟に対応するとともに、経常利益・納期達成率・顧客満足度・マシンの稼働率
を大幅に向上することに成功している。
●事業内容:油圧シリンダー部品製造
●従業員数:12名
(2009年6月現在)
柔軟な生産管理システムへの入れ替えで多くの効
果を得た近畿工業株式会社
2009年6月取材
引先を拡大。1社集中型から多業種の
バランスのいい堅実経営で
取引先が口コミで徐々に拡大
ジネス体制へシフトした。品質・技術・ス
近畿工業株式会社は「ものづくり」
ピード・コストなど全体的にバランス良
が盛んな東大阪市に本社工場を構え、
く対応できるのが同社の強みである。
産業用機械などに幅広く使われている
その実直さが評判を呼び、取引先はす
油圧シリンダーの部品製造を行ってい
べて口コミで広がったという。現在取
る。以前は特定の取引先の売上が約
引先は40社ほどあり、不況にも大きな
85%を占めていたが、将来を見据え
影響を受けず安定した経営基盤を堅持
た経営判断により、約15年かけて取
している。
取引先ニーズに柔軟に対応可能なビ
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Case Study 【導入事例】582
「当社はまんべんなく平均点を上回っ
ていた。こうして今回、改めてパソコン
ているのが、ひとつの特長といえます。
ベースのシステムへの本格的な移行
逆に飛び抜けた個性がないからこそ、
を試みることになったのだ。
外部とのネットワークや社内のコミュニ
ケーションを大事にして堅実なビジネス
に安心感を与えているのだと思います」
運用しながら機能アップできる
在庫管理ベースの
『遉』
を選定
と代表取締役の田中 聡一氏は語る。
同社と大塚商会とはコピー・F A X
さらに取引先拡大路線を進めていく
の導入で30年以上の取引があった
際に、これからのものづくりは小ロット
が、大塚商会がシステム販売を行っ
に柔軟に対応できなければならないと
ていることを知らなかったという。今
判断し、得意先から単品や特注品の受
回の生産管理システムを選定する際
注を進めた。将来的には多品種への対
にも、田中氏自らがインターネットで
応を予定していたが、
まずは少品種小ロ
情報収集し、ある製品の導入を決め
ット生産から取り組みをスタートし、製
ていた。そしてベンダー3社に見積を
展開を心掛けています。それがお客様
代表取締役
田中 聡一氏
「 当 社では『 遉(さすが )』や『 V i s u a l
Finder』以外にも、複合機や電話機、通
信回線などを利用しています。大塚商会さ
んからは、それらが全体最適化されているか
どうかをITのプロの立場から分析・判断し、
全体のパフォーマンスがアップするような提
案を期待しています」
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造ラインのセット替えの効率化などを図
依頼して詳しい説明を聞いている矢
りながら次第に個別仕様の製品を短納
先に、大塚商会の担当営業から生産
期で供給する体制を整えていった。
管理システム『遉(さすが)』の提案を
同社は約20年前にオフコンベース
受けた。そこで急きょ、大塚商会の展
の生産管理システムを導入し、4〜5年
示会に足を運び、デモを体験。最終的
ごとにハードウェアやシステムをバージ
に自社に最も適しているシステムとし
ョンアップしながら運用していた。しか
て『遉(さすが)』を採用する決断を下
し帳票を新たにひとつ追加するだけで
したのである。
も開発費用と時間がかかり、小回りが
「実際に運用しながら随時機能アッ
利かないという課題があった。4年ほ
プしていけることが、新システム選定
ど前にパソコンベースのシステムへの
の絶対条件でした。というのも、当社
移行を検討したのだが、当時あったパ
は少人数なので専属のシステム管理
ッケージシステムは桁数や項目名など
者がおりません。導入時に特別なマ
制約条件がきつく、それに自社の業務
ンパワーが必要になるものは極力避
を合わせることに非常に抵抗があった
けたかったのです。その点『 遉(さす
という。
が)』は当 社 の 条 件を満たしており、
そこで同社では、まずはリース期間
使い勝手もよさそうでした。また、大
を延長して従来のオフコンシステムを
塚商会さんとは複合機などで長年お
継続運用しつつ、必要なデータをCSV
付き合いさせていただいた実績があ
形式で取り出して別途Excelで帳票に
り、その迅速なサポート力を評価して
加工することにしたのだ。その結果、オ
いたので、安心してシステムを任せら
フコンシステムが受注や伝票作成など
れると思ったのです」と田中氏は選定
の限られた業務をこなすだけの単機能
の理由を語る。
マシンになり、運用コストと加工手間を
同社は、2007年3月上旬からリ
考えると費用対効果のバランスを欠い
モート指導を受けながら、まずマスタ
の登録作業に着手した。ところが、
『遉
番号を検索すれば、工程や在庫が把握
(さすが)』の 設 計 思 想やコンセプト
できる仕組みになっている。しかし運用
を十分理解していなかったため、マス
上の問題もあった。例えば取引先から
タ登録作業がなかなか進まなかった
製品仕様変更に伴う発注内容の変更が
という。
あった場合、まず製造指示書を再発行
「当初はもともとの基本概念が理
しなければ次の工程に進めず、大幅な
解できていなかったので、なぜこのよ
タイムロスが生じていた。さらに再発
うな操作手順を踏まなければならな
行された製造指示書には新たな製番が
いのかがわからず、多くの疑問を感じ
振られるため、仕掛品や在庫などの実
ていたのです。しかし『 遉(さすが)』
態とデータに不整合が発生してしまい
は在庫管理ベースのシステムだと知
管理上、支障を来していたのだった。
り、ようやくすべての疑問が解けまし
一方、
『 遉(さすが)』は在庫管理ベ
た。つまり、在庫がどんな状態でどこ
ースのシステムなので、工程の途中で
にあるのかがリアルタイムに把握で
作業を中断しても、その段階での在
きる設計思想なのです。そのことが
庫数を管理できる。そのため、次のオ
理解できてからは、操作手順などの
ーダーが入ったときに、その在庫を使
説明もスムーズに頭に入ってくるよう
って作業を迅速に再開することができ
になりました」と田中氏は導入準備の
る。これにより、必要なときに必要な数
苦労を語る。
だけ製品をつくるための管理が楽にな
また、製品ごとの工程手順を登録
り、小ロットや短納期、仕様変更などに
する工順マスタが約4,800件にも上
柔軟に対応できるようになったのだ。
り、その編集作業にもかなり時間を
「例えば、熱処理の後に研磨の工程
要した。
『 遉(さすが)』では工程の追
がある製品でも納期に余裕があるもの
加・変更にも柔軟に対応するため、オ
は、いったん熱処理までの製造指示を
フコンのマスタデータにはない項目
出しておき、その後、的確なタイミング
がいくつか用意されており、移行した
で研磨の指示を出せばいいわけです。
データの編集作業が必要だった。シ
そういう柔軟な指示と運用ができるよ
ステム切り替え時期を目前にオフコ
うになりました。さらに工程途中の在
ンのリース期間を1カ月間延長する
庫を有効活用できるので、以前のよう
ことでその状況を乗り切り、2007
に余分な材料を仕入れずに済むため、
年11月から新システムによる単独稼
売上が落ちても経常利益はアップする
働をスタートさせた。
という、うれしい効果も出ています」
と
【 導入事例 】
582 ● 近畿工業株式会社
Vol.124
1 9 9 9 年 には品 質マネジメントシステム規 格である
ISO9001の認証を取得。社員一人ひとりが強い使命感
をもって品質向上に挑戦している
田中氏は語る。
仕様変更などに柔軟に対応
納期達成率も90%を超える
同社では8年ほど前から、元三菱重
工業の社員が創設したポルフ開発研
究所の管理指標を用いて、社内の生産
従来のオフコンシステムでは、製品
改善活動に取り組んできた。今回の『遉
ごとにあらかじめ製造指示書を作成し、
(さすが)』の導入で、その成果が飛躍
そこに振られた製番をすべての製造工
的にアップし、生産性の向上や経営の
程で利用していた。その製造指示書の
効率化に大きく寄与している。
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Case Study 【導入事例】582
昨年5月に納期達成率を算出したと
など当社の営業担当が具体的に状況
ころ、同社と得意先の間でその数字が
を説明してくれるので非常に安心でき
大幅に食い違っていたという。原因を
るという、お褒めの言葉をいただきま
調べたところ、得意先の指標は契約ベ
した。
『遉(さすが)』を導入したことで
ースで納期達成率を算出していること
納期回答のレスポンスが改善され、営
がわかった。
業が自信をもって回答できる体制にな
「例えば、当社では100個の製品の
ったことは大きなメリットです」と田中
注文があった場合、先に80個を納品し
氏は語る。
ておいて、お客様がそれを使いきる前
さらに、
『遉(さすが)』によるきめ細
に残りの20個を納めることで、実質的
やかな工程管理の結果、各工程で使
に納期を間に合わせるケースがよくあ
用する機械の利用計画も立てやすくな
りました。ところが、契約ベースの指標
り、計画の達成度合いも従来は約60
では、100個のうち1個でも契約時に
%だったものが、現在は85%以上を
約束した納期に間に合わなければ納期
継続的にキープしており、マシンの稼
不履行になってしまうのです。さらに海
働率も大幅にアップしている。
外では契約ベースが主流なので、これ
また以前は、良品・保留品・不良品と
を機に今後の海外展開も視野に入れ
いう在庫の種別があいまいだったが、
て、同社も納期達成率の指標を契約ベ
『遉(さすが)』で在庫管理をシビアに
ースに切り替えたのです。幸い『遉(さ
行う意識が浸透したため、そうした問
すが)』は契約ベースに対応しており、
題も解消されたという。
リアルタイムにものの動きが見えるた
同社では、製造現場の問題点を社
め、2009年3月には90%を超える納
内で共有するために、Accessで開発
期達成率の実績を上げることができま
した独自のコミュニケーションツール
した。その結果、得意先の指標でもトッ
を活用している。管理者や現場担当
プ10に入ることができたのです」
と田
者が日々の活動で気づいたことを、品
中氏は笑顔を見せる。
質・技術・扱い・改善・その他の5項目に
代表取締役自らあらゆるパッケージシステムを調
査し、
『遉
(さすが)』
の導入を決めた
分類して報告する。それをデータベー
ス化して社員へ周知徹底を図り、さま
より具体的な納期回答で
顧客満足度を大幅にアップ
ざまな角度から分析することで具体的
新システムに入れ替えたことにより、
だ。さらに同社では、文書管理システム
顧客からの問い合わせにも、営業担当
『Visual Finder』
を導入しており、現
者が画面を見ながら納期予定や現在
状では製品図面の管理に使用してい
の状況をリアルタイムに回答できるよ
る。役職などに応じた細かなアクセス
うになり、顧客満足度の向上にも大き
権限を設定できるため、今後は品質管
く貢献している。
理に役立つ情報などを一元管理してい
「直接、顧客満足度のアンケート調
くことを検討している。
査を行ったところ、お客様が納期の問
こうした積極的なIT活用が、同社の
い合わせをした際に『あと何工程残っ
堅実な事業展開の土台となっていく
ているので、何日後には納品できます』
であろう。
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な改善活動につなげていくことが狙い
近畿工業株式会社のホームページ
http://www.kinki-ind.co.jp/