助成金を活かした経営戦略

助成金を活かした経営戦略
2015年2月17日
久保経営労務管理事務所
所長 久保 裕滋
(サブ:久保 博紀)
講師紹介

久保 裕滋
奈良県生まれ。慶応義塾大学大学院経営管理研
究科卒、㈱日本エル・シー・エー(東証2部)代表取
締役社長を歴任して、現在独立して、KMコンサル
ティング㈱の代表取締役として活動中。
奈良県社会保険労務士協会理事でもあり、奈良県病院協会
の専属医療経営アドバイザーの職責にあり、現在病院、介護
施設の人事労務面から経営管理に亘る広い領域でコンサル
ティングを実施。これまで、医療・介護施設の相談顧問相談数
は全国で300件に達する。
介護保険は施設系から在宅へ
●経度者の介護保険はずし
要支援1、2介護保険からの切り離し、
地域支援事業に(市町村独自の報酬)
●予防給付の訪問介護と通所介護サービス
●軽度者のチェックリスト方式化
医師の診断書不要でサービス利用可能へ
介護保険を使わせない工夫
●特養は要介護3以上に限定
総量規制と利用抑制へ
●定員18名以下の通所介護は地域密着型へ
①市町村に住所がなくては、サービス利用不可
②サービスの総量は市町村が決定(公募へ)
③市町村が利用料設定へ
●一定所得利用者には自己負担2割へ
介護ビジネス差別化の時代
○介護報酬改訂全体で2.27%マイナスへ
○小規模デイサービスの経営はさらに厳しく
○デイサービスの生き残り差別化戦略
★予防機能に特化 ●ラスベガスデイサービスの事例
新型介護職員処遇改善加算
新型加算制度( 更なる上乗せ評価型)
キャリアパス
定量要件
新加算
○
○
区分
加算①
加算②
加算③
キャリアパス要件 定量的要件
○
○
×
×
○
×
○
×
12000円
100%
支給割合 15000円
100%
90%
80%
キャリアパス要件
①介護職員の能力、資格、経験などに応じた処遇を行うことを定めること
かつ
(評価制度導入の文書化、制度設計)
②資質向上のための具体的な取り組みを行うこと。
(教育研修などの実施)
介護サービスの質の向上こそ
★質の良いスタッフの採用と教育で定着率をアップ
○採用コストも馬鹿にならない。
○すぐにスタッフが入れ替わり、利用者から不評
○場合によって、スタッフの異動で利用者も他施
設に移動されることも
○介護スタッフを教育する人材がいない
○介護スタッフの教育方法が現場任せ、人任せ
○常に採用を考えないといけない精神的負担
介護事業者の活用できる補助金
①中小企業労働環境向上助成金活用
○雇用管理制度助成・・・制度導入で30万
○介護福祉機器等助成・・・最大上限300万
②キャリアアップ助成金活用
○非正規スタッフ向け研修 20H以上1人10万
③キャリア形成促進助成金活用
○正規社員向け研修
活用できる助成金
対象者が…
受給できる助成金
正社員
⇒
①中小企業労働環境向上助成金
②キャリア形成促進助成金
パートさん
⇒
③キャリアアップ助成金
※雇用保険被保険者を会社都合で退職させている場合は、対象外になる場合があります。
助成金の概要
①中小企業労働環境向上助成金(雇用管理制度)
⇒就業規則へ研修制度導入で30万円
※1コース10時間以上の研修を1人以上実施する実績が必要になります。
⇒評価・処遇制度導入で40万円
②キャリア形成促進助成金
⇒研修中の経費は2分の1、賃金は1時間800円の助成
※1コース20時間以上の研修になります。
※賃金助成は所定労働時間内に限定しています。
③キャリアアップ助成金
⇒研修中の経費は全額、賃金は1時間800円の助成
※1コース20時間以上の研修になります。
※賃金助成は所定労働時間外でも可能です。
⇒パートさんが正社員になれば、1人当たり50万円
助成金とキャリアパス導入事例
(株式会社ロマン倶楽部様のケース)
導入事例~楽ちんキャリアアップ~
(L株式会社:通所介護3か所・訪問介護運営)
~導入経緯~
これまでに、やらないといけないと思っていたが一番背を向けてきた事が人事評価制度の整備であり
ました。稼働率向上の目的ばかりに目を向けて手につかないままでありました。一度整備に取り組んだ
ものの、うまく機能しませんでした。
しかし、近年における介護職員の定着率の低さ・離職率の高さが法人において最大の課題点となっ
てきました。3年に一回の介護保険制度の改正によって介護報酬の引き上げを期待し、賃金を上げて
の定着率向上は期待出来ないのが現状であります。
ここでキャリア段位制度と言った介護福祉士等の資格ではなく、現場スキルにおける資格制度を国が
新たに整備を行うという方針から、国の方針に準拠させ独自で人事考課等の整備を行い人材確保・定
着率を維持していく事と同時に、経営面からいえば人件費比率の改革を踏まえ導入する事に決めまし
た。
評価する内容(目標)が事前に示されていて、達成した人は公平に「認められ」、報酬という形で会社
から「ご褒美」を受ける。その仕組みが職場できちんと機能すれば、従業員のヤル気に「必ず」繋がって
いくものと考えました。たたでさえ忙しいリーダー職の方々に、評価することの「負担感」だけが残ってし
まわないように合理的に行えれる事を優先として考えました。
これまでの自動的に年々積み上がっていく給与体系のままでは、将来の職員の雇用すら立ち行かな
くなるとの危機意識があり、人事考課と仕事給を導入し、仕事の実績を重視した透明性と納得性のある
給与制度(仕事等級制度)へ転換させるのが今回の狙いでありました。
導入事例~楽ちんキャリアアップ~
(L株式会社:通所介護3か所・訪問介護運営)
~感想~
〈現場で評価している方〉 ・ 具体的な行動評価になっているので、人事評価しやすくなった。
・ 評価内容が事業所ごとに項目を追加可能であり、自ずと考課にも力が入る。
・ 職員への説明がしやすくなった。
・ 評価にかかる時間は、PCにて右クリックのみで可能なので、時間は思ったよりはかからなかった。
〈経営者から〉
・ 施設の意思が、評価内容及び配点基準に入っているので効果的.
・ 今までの評価ではマイナス評価が出ず「横一線」から抜け出せなかったが、毎回の評価で
「上げる職員」、「下げる職員」が発生するようになり、結果として管理者の評価能力の育成
にも繋がった。
・ 問題職員には、「次の評価で◯◯がこのままだったら、次回はマイナス考課で減給する」
旨を伝えるようになり、部下の発奮材料になっていった。
・ 職員のモチベーション向上に繋がり、プロ意識を持つ等の仕事へ姿勢の変化があった。
・ 職能別のスキル評価が可能で、項目数も豊富(980項目)かつ評価内容が具体的で 、
介護職員が専門職としての自覚を持てるようになった。
導入事例~楽ちんレベルアップ教室~
(L株式会社:通所介護3か所・訪問介護運営)
~導入経緯~
現在、研修等は管理職には受けて欲しいという内容があれば研修参加の指示を出し、
また自発的に受けたいという職員に対しては研修の受講は促してきました。
しかし、研修参加後の意見として「私達にはレベルが高かった(低かった)」という声を良く聞き、
外部研修の費用も法人が支払い、 本当に実のある研修になっているのかと疑問に思う事が
多々あります。
今回は楽ちんキャリアアップと連動し、評価結果に基づき職員一人一人に合った
研修が受けれるという事が当社と合うと感じ、研修を導入致しました。
~感想~
研修に参加して、「自分のレベルには丁度良かった。」「この研修をクリアすれば次のレベルに
ステップアップが出来る。」といった向上心を持って研修に臨む職員が増えてきました。
また研修の中には、介護技術の内容だけではなく、コミュニケーション・接遇等の社会性を養う研修、
司法書士によるリスクマネジメント研修、臨床心理士によるメンタルヘルス研修等も
取り入れており、介護職員としての研修は勿論、社会・外の風を新たに吹き入れる様な
研修もあり、職員の意識改革には非常に効果的でありました。
当社は、年間計画のスケジューリングの依頼を行い、毎月3時間程度の研修を行っています。
次年度以降も継続して研修を導入し、職場環境及び業務効率の改善に繋げていきたいです。
助成金の支給スケジュール
①計画案の提出
②計画案の認定
事
業
主
③計画の実施
④計画実施報告と助成金申請
労
働
局
⑤助成金支給
※①計画案の提出は、③計画の実施の1か月以上前になります。
※⑤助成金支給は、④助成金申請時から約3か月程度要します。
その他助成金活用(健康面)

正社員に対するメンタルヘルス相
談窓口の設置等の健康づくり制度
導入⇒30万円
※対象は、腰痛健康診断、メンタルヘルス相談、生活習慣病予防検診、人間ドック

パートさんに対する健康診断制度
導入⇒40万円
助成金の注意事項(主な不該当条件)
①不正受給をしていないこと
②労働保険料を滞納していないこと
③労働関係法令に違反していないこと
④暴力団とかかわりがないこと
⑤最近6カ月で退職勧奨や解雇などをしてい
ないこと
など
参考資料
(平成27年4月1日からの中小企業労働環境向上助成金の改正案)
(厚生労働省HP:http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000056282.html)
参考資料
(平成27年12月1日~ストレスチェックの義務化)
厚生労働省HPより
ご静聴ありがとうございました。
助成金内容などのご質問がございましたら、
この後の「個別相談コーナー」で承ります。
久保経営労務管理事務所
TEL:0745-53-8553
HP:http://sr-kubo.com/