集中治療における 急性血液浄化の進歩 集中治療における - 鳥居薬品

第37回日本集中治療医学会学術集会
教育セミナー 7
Educational Seminar
The 37th Annual Meeting of Japan Society of Intensive Care Medicine
HIROSHIMA
日時:2010年 3 月 4 日(木) 12:20∼13:20
会場:リーガロイヤルホテル広島 3F 第7会場
広島市中区基町6-78 Tel.082-502-1121(代)
集中治療における
急性血液浄化の進歩
劇症肝不全・敗血症性
多臓器不全における
Plasma Dia-filtrationの
臨床評価
座長
有村 敏明 先生
鹿児島市医師会病院 副院長
演者
江口 豊 先生
滋賀医科大学医学部 救急集中治療医学講座 教授
なお、昼食をご用意させて頂いておりますが、
先着順とさせて頂きますのでご了承下さい。
共催:第37回日本集中治療医学会学術集会
会長 多田 恵一(広島市民病院 麻酔集中治療科・救命救急センター長)
鳥居薬品株式会社
集中治療における急性血液浄化の進歩
−劇症肝不全・敗血症性多臓器不全における
Plasma Dia-filtrationの臨床評価−
滋賀医科大学医学部 救急集中治療医学講座 教授
江口 豊
先生
集中治療を施行しても予後の悪い疾患に重症敗血症による多臓器不全(MOF)と劇症肝不全が上げら
れる。敗血症の予後は急性期の循環不全とそれに引き続いて発症するMOFに規定されている。救命のた
めに、前者に対し6時間以内に循環を安定化させるEarly goal directed therapyが推奨されており、後者
のMOFに対しては臓器補助の観点からのみならずMOF進展の液性因子であるサイトカインを含む
humoral mediatorの制御が必要と考えられる。一方、劇症肝不全は集中治療を要する急性の肝機能不全
と定義され、急性肝不全、劇症肝炎、術後肝不全および術後以外で術後肝不全に準ずる敗血症性肝不全な
どが含まれる。上記の両疾患の病態の進展に小分子量域の水性毒性物質とアルブミンに結合しているビリ
ルビンなどのalbumin-bound toxins(ABT)やサイトカインなどの中分子量域物質が関与していること
から、近年、両者を制御できる急性血液浄化が積極的に行われている。
持続的血液ろ過透析(CHDF)の唯一のRCTであるいわゆるLancet studyでは高流量群(45ml/kg/h)
が低流量群(25ml/kg/h)に比して有意に予後が良好であった。このことから、本邦で保険診療上使用でき
る置換液24L/日では効果がないものと考えられるが臨床では著効する症例をしばしば経験する。この機序
として欧米では使用されていないナファモスタットメシル酸塩(FUT)の全身への影響が推定できる。我々
は敗血症のCHDF施行症例でACT140-160秒に調整したFUT投与量(15-35mg/h)で中心静脈血中の
FUT濃度がDIC投与時(0.06-0.20mg/kg/h)の濃度とほぼ同等であることを見出した。このことから、血
小板低下などの出血傾向があればFUTを使用すべきと考えている。
Humoral mediatorを制御する急性血液浄化として、
吸着(PMX-DHP、CTR001、
およびMARSやPrometheus
などのアルブミン透析の発展型)、血漿交換、CHDFの発展型(high flow volume CHDF、PMMA adsorption
CHDF)及び我々が開発したPlasma Dia-filtration(PDF)を含むSelective plasma filtrationなどが挙
げられる。PDFは膜型血漿分離器エバキュアーEC-2Aを用いて水性毒性物質とABTやサイトカインなど
の中分子量域物質の両者を除去でき、さらに生体にとり有用なHepatocyte growth factorやIgGなどの
大分子量域物質は保持できる。多施設での成績を報告する。症例は2005年8月から2009年3月までの
33例(M/F : 24/9、平均年齢61.5±18.5歳)で、不全臓器数は平均3.7±1.0で、28日後の予測死亡率は
68.0±17.7%であった。実際の死亡率は36.4%で不全臓器別では2,3,4及び5臓器不全で各々0%,
12.5%,46.2%,71.4%であった。生存群は死亡群に比し予測死亡率は低く各々60.5±18.1%と
81.0±4.8%であった。以上よりPDFは有効な治療法に成り得るものと考えられるが、さらなる救命のため
にはより早期からの導入が必要である。