第10節 難波宮跡発掘調査 (NW12- 4 ) に伴う自然科学分析 本報告は、難波宮跡 ( NW12- 4 ) 周辺での古植生・堆積環境等の古環境推定を行う目的で、実施し た自然科学分析の報告書の概報である。難波宮跡 (NW12- 4 )は大阪市中央区法円坂 2 丁目地内に位 置する遺跡である。本節では、当大阪市博物館協会が2012年度独立行政法人学術振興会科学研究費補 助金基盤研究 (A) 「大阪上町台地の総合研究-東アジア史における都市の誕生・成長・再生の一類型-」 (研究代表者 脇田修、課題番号:21242031) の補助金を用いて実施した自然科学分析 (註 1 ) の中から、 本調査地に係わる部分を簡略して引用する。 1) 試料の分析 ⅰ) 分析試料について 花粉分析、植物珪酸体分析試料の採取層隼は、図93~99中の模式柱状図に示してある。年代測定試 料の採取層隼には、矢印とともに測定年代が示してある。 ⅱ) 分析方法 本報告では、AMS年代測定、花粉分析、植物珪酸体分析、樹種同定、種実同定を実施した。花粉分 析処理は [渡辺正巳2010b] 、植物珪酸体分析は [藤原宏志1976] に準じた。そのほかの処理方法、検鏡 方法、データ処理などの詳細は [渡辺2010c、2012] と本章第 4 節に準じている。 ⅲ) 分析結果 各種結果を表26~28、図93~99に示す。 2) 局地花粉帯の設定 C区、E区において局地花粉帯を設定した。以下では、花粉帯の変遷が明確になるように、下位から 上位に向かって記載する。 ⅰ) E区 表2 6 AMS年代測定結果 試 料 試料№ 種別 E ⑤Lw 炭化物 木材 木材 E ⑩Lw 測定年代*1 (yrBP±1σ) 出土地点ほか 重量 (g) δ13C (‰) 暦年較正用年 補正年代*2 代 (yrBP±1σ) (yrBP±1σ) 暦年較正年代 1σ暦年代範囲 2σ暦年代範囲 0.2 1604±22 -26.07±0.36 1586±22 1585±20 AD429-443 (11.9%) AD451-462 ( 8.6%) AD422-538 (95.4%) AD483-533 (47.7%) 木材 Eトレンチ 木材 10lw 土壌 (腐植質粘土) 2.0 1956±22 -26.14±0.23 1937±22 1935±20 AD27-42 (15.0%) AD48-85 (53.2%) Eトレンチ 11lw 3.0 2498±23 -28.71±0.26 2436±23 2435±25 BC749-687 (20.5%) BC716-695 ( 9.8%) BC666-644 ( 5.4%) BC539-481 (30.7%) BC591-578 ( 1.4%) BC469-415 (27.7%) BC565-407 (68.1%) Eトレンチ5lw AD19-126 (95.4%) E ⑪Lw 木材 C ③Up 木材 Cトレンチ3up 6.5 1542±22 -29.48±0.20 1467±22 1465±20 AD572-622 (68.2%) AD558-642 (95.4%) C ⑫L 木材 Cトレンチ12L 1.0 1551±21 -29.04±0.21 1484±21 1485±20 AD561-605 (68.2%) AD544-631 (95.4%) 40.2 2192±20 -27.50±0.25 2150±20 2150±20 BC352-298 (28.3%) BC346-321 (19.7%) BC229-221 ( 1.2%) BC206-167 (48.5%) BC211-111 (65.8%) C⑱ 土壌 (腐植質粘土) Cトレンチ18 *1δ13C補正無年代 *2δ13C補正年代 − 147 − − 148 − 13 14 15 16 T.P.m 17 更新世 ? ? 6世紀 前 期 難波宮 中 世 E11 E10 E6 E7 E8 E9 E5 E4 E3 E2 E1 Clay Silt 11Lw 11up Sand 5up 10upmst 10up 10md 10lw 5up 5Lw 4up 4md + 4up 4md Gravel 2435±25 11up + +: < 1% 木本(針葉樹) + 10% 10upmst + 10up 10md 10lw + 1585±20 1935±20 第11-2層 第10層 第8b層 (第8a層) 第7-2c層 第7-2b層 第7-2a層 第5層 第4層 3.マキ属 5.モミ属 10.ツガ属 21.マツ属(複維管束亜属) 20% 木本(広葉樹) 40% + 30.コウヤマキ属 32.スギ属 + SK424 + + + + 草本・藤本 + + + + + + + + + + + 20% 20% + + 木本(針葉樹) *1 *1 20% 10% 41.ヒノキ科型 52.ヤマモモ属 62.サワグルミ属-クルミ属 71.クマシデ属-アサダ属 73.ハシバミ属 74.カバノキ属 75.ハンノキ属 81.ブナ型 83.コナラ亜属 84.アカガシ亜属 + + + 50% 20% 50% + + + + 草本・藤本 + + + + + *1 + + + + + *1 + + + + + + + + 木本(広葉樹) *1: 基数が200粒未満のタクサ. + 胞子 32.スギ属 71.クマシデ属-アサダ属 83.コナラ亜属 84.アカガシ亜属 301.ガマ属 88.シイノキ属-マテバシイ属 92.ニレ属-ケヤキ属 94.エノキ属-ムクノキ属 97.クワ科-イラクサ科 101.ヤドリギ科 132.サンショウ属 141.アカメガシワ属 160.モチノキ属 195.グミ属 220.ツツジ科 241.イボタノキ属型 20% *1 + + + 胞子 284.スイカズラ属 301.ガマ属 305.サジオモダカ属 306.オモダカ属 311.イネ科(40ミクロン未満) + 311.イネ科(40ミクロン未満) 312.イネ科(40ミクロン以上) 20% 320.カヤツリグサ科 + + 50% + 633%*1 + + + + + 335.ツユクサ属 345.ユリ科 352.ユリ属 361.アヤメ属 411.ギシギシ属 416.ウナギツカミ節-サナエタデ節 417.イタドリ節 422.アカザ科-ヒユ科 20% *1 20% + 20% + + + *1 + + + + + + + + + + + 40% *1 + + 図9 4 NW 1 2- 4 F区花粉ダイアグラム 50% 917%*1 *1 + + + + + + + 20% 図9 3 NW 1 2- 4 E区花粉ダイアグラム 30% 312.イネ科(40ミクロン以上) 422.アカザ科-ヒユ科 430.ナデシコ科 461.アブラナ科 712.ヨモギ属 875.シノブ属 *1 + + + + 20% 0 + + 430.ナデシコ科 450.キンポウゲ科 461.アブラナ科 501.マメ科 530.ブドウ科 571.アリノトウグサ科 580.セリ科 616.ナス科 636.オオバコ属 710.キク亜科 711.ブタグサ属-オナモミ属 712.ヨモギ属 713.ベニバナ属型 720.タンポポ亜科 863.ヤマドリゼンマイ型 875.シノブ属 886.オシダ科-チャセンシダ科 891.ウラボシ科 0 木本(針葉樹) 木本(広葉樹) 草本・藤本 胞子 (粒数/g) Ⅱ Ⅲ 局地花粉帯(E-) Ⅰ 100% 101 102 103 104 105 106 含有量 (粒数/g) 木本 草本・藤本 胞子 花粉・胞子 含有量 100% 101 102 103 104 105 106 木本(針葉樹) 木本(広葉樹) 草本・藤本 胞子 木本 草本・藤本 胞子 花粉・胞子 − 149 − 15 16 17 T.P.m 18 カガシ亜属、 マツ属 (複維 ? C19 C18 C17 C16 C15 C14 C12 5世紀 C13 後半 C11 6世紀 前 期 難波宮 マキ属が高率を示し、 ア Clay に多くはないが、 コウヤ Silt 19up 18 17 16 15 12L 13 11 合は低い。 木本花粉は特 Sand 高く、草本・藤本花粉の割 Gravel 1485±20 2150±20 第11-1層 第10層 第9層 第8b層 第7-1d層 第7-1a~c層 山の再堆積 胞子の割合が 料№19up) :時期未詳:地 18 + 19up 17 + 16 + 15 13 + 12l 11 + ① C-Ⅵ帯 (C区西: 試 +: < 1% 木本(針葉樹) 10% 3.マキ属 5.モミ属 10.ツガ属 ⅱ)C区 21.マツ属(複維管束亜属) 木本(広葉樹) 40% 出される。 30.コウヤマキ属 ボタノキ属型が特徴的に検 草本・藤本 50% 54% 上位の 4 md、 4 upではイ 32.スギ属 20% 胞子 + + + + 亜属がこれらに次ぐ。また、 + + + + + + 図9 5 NW 1 2- 4 C区西花粉ダイアグラム + + + + + + + + + + + + + 41.ヒノキ科型 52.ヤマモモ属 62.サワグルミ属-クルミ属 71.クマシデ属-アサダ属 73.ハシバミ属 74.カバノキ属 75.ハンノキ属 81.ブナ型 83.コナラ亜属 で、コナラ亜属、アカガシ 亜属) 、 スギ属がやや高率 20% 花粉ではマツ属 (複維管束 84.アカガシ亜属 20% + + + + + + + + + + + 85.クリ属 88.シイノキ属-マテバシイ属 92.ニレ属-ケヤキ属 97.クワ科-イラクサ科 101.ヤドリギ科 112.シキミ属 141.アカメガシワ属 160.モチノキ属 195.グミ属 220.ツツジ科 301.ガマ属 311.イネ科(40ミクロン未満) 本花粉の割合が高い。木本 ~ 4 up) : 6 世紀 草本・藤 + + + + + E-Ⅰ帯 (E区:試料№ 5 up + 312.イネ科(40ミクロン以上) 20% シ亜属、スギ属を伴う。③ + + 320.カヤツリグサ科 + ほか、コナラ亜属、アカガ + + + + + + + + + 335.ツユクサ属 352.ユリ属 411.ギシギシ属 416.ウナギツカミ節-サナエタデ節 422.アカザ科-ヒユ科 維管束亜属)が高率を示す の割合が高い。 マツ属 (複 50% 430.ナデシコ科 450.キンポウゲ科 461.アブラナ科 + + + + + AD19-AD126)木本花粉 501.マメ科 571.アリノトウグサ科 580.セリ科 601.テイカカズラ属 616.ナス科 651.オミナエシ属 710.キク亜科 711.ブタグサ属-オナモミ属 + + + + 未詳 (1935±20yrBP:cal. + + + + + 10lw ~10upmost) : 時期 ② E-Ⅱ帯 (E区: 試料№ 712.ヨモギ属 20% + + + + + 720.タンポポ亜科 802.ヒモラン型 803.トウゲシバ型 850.ハナヤスリ属 863.ヤマドリゼンマイ型 875.シノブ属 + + + + + ガシ亜属、 スギ属を伴う。 + 881.イノモトソウ科 886.オシダ科-チャセンシダ科 + + 20% 示し、 コナラ亜属、 アカ -マテバシイ属が高率を 30% 891.ウラボシ科 + + 極めて高い。 シイノキ属 0 (粒数/g) 含有量 100% 101 102 103 104 105 106 木本(針葉樹) 木本(広葉樹) 草本・藤本 胞子 木本 草本・藤本 胞子 花粉・胞子 BC407)木本花粉の割合が ± 2 5 yrBP:cal. BC 7 4 9 - 11up) : 時期未詳 (2435 ① E-Ⅲ帯 (E区 :試料№ Ⅴ Ⅵ Ⅳ Ⅲ 局地花粉帯(C-) (粒数/g) Ⅲ 100% 101 102 103 104 105 106 Ⅱ Ⅰ 局地花粉帯(C-) 木本 草本・藤本 胞子 花粉・胞子 含有量 管束亜属)を伴う。 ② C-Ⅴ帯 (C区西: 試料№18) : 時期未詳 (2150±20yrBP:cal. BC352- BC111) :地山の再堆積 木本花 木本(針葉樹) 木本(広葉樹) 草本・藤本 胞子 + + + + + + + + + + + カガシ亜属、マツ属 (複維管束亜 属) を伴う。③ C-Ⅳ帯 (C区西: + + + + + + + + + 試料№17~15) : 5 世紀後半 下 図9 6 NW 1 2- 4 C区東花粉ダイアグラム + + + + 416.ウナギツカミ節-サナエタデ節 417.イタドリ節 422.アカザ科-ヒユ科 + + + 58% 50% + + + 50% 75% 52% 91% 320.カヤツリグサ科 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + 30% 312.イネ科(40ミクロン以上) 胞子 + + + 属が高率を示す。④ C-Ⅲ帯 (C 区東: 試料№ 5 lw、C区西: 試 料№13~11) : 5 世紀後半~ 6 世紀 木本花粉の割合はやや低 く、草本・藤本花粉も同程度に 草本・藤本 +: < 1% 30% 30.コウヤマキ属 32.スギ属 料№ 4 lw) : 6 世紀 草本・藤本 花粉の割合が高い。 木本花粉の 内訳は両地点ともにマツ属 (複維 5lw + + 4lw + 3lw + 3md 3up を示す。⑤ C-Ⅱ帯 (C区東:試 管束亜属) 、スギ属が高率で、コ 3.マキ属 5.モミ属 10.ツガ属 Silt ? 15 5世紀 後半 C5 16 6世紀 C4 C3 C2 前 期 難波宮 C1 Clay 5lw 4lw 3md 3lw 3up 2lw 2up 1lw 1up Sand Gravel 第10層 第9層 第8b層 第8a層 1465±20 2lw 2up + 1lw + 10% 21.マツ属(複維管束亜属) 1up スギ属が他の分類群に比べ高率 木本(広葉樹) 30% 41.ヒノキ科型 第7-1d層 属、アカガシ亜属のほか、スギ + + + + 51.ヤナギ属 62.サワグルミ属-クルミ属 71.クマシデ属-アサダ属 73.ハシバミ属 74.カバノキ属 75.ハンノキ属 82.イヌブナ型 83.コナラ亜属 84.アカガシ亜属 17 ツ属 (複維管束亜属) 、 コナラ亜 が高率で増加傾向を示すほか、 + + + + + + + + + + + + 85.クリ属 88.シイノキ属-マテバシイ属 92.ニレ属-ケヤキ属 94.エノキ属-ムクノキ属 97.クワ科-イラクサ科 132.サンショウ属 141.アカメガシワ属 172.トチノキ属 301.ガマ属 305.サジオモダカ属 306.オモダカ属 311.イネ科(40ミクロン未満) 第7-1a~c層 いが、16、15では高くない。マ 合を示す。 マツ属 (複維管束亜属) 木本(針葉樹) 345.ユリ科 411.ギシギシ属 T.P.m 18 位の17では木本花粉の割合が高 止まる。 一方胞子がやや高い割 20% 430.ナデシコ科 450.キンポウゲ科 461.アブラナ科 501.マメ科 542.ワタ属 571.アリノトウグサ科 580.セリ科 636.オオバコ属 710.キク亜科 711.ブタグサ属-オナモミ属 712.ヨモギ属 59% + + + + + + + + + + + + + + + + 713.ベニバナ属型 720.タンポポ亜科 802.ヒモラン型 875.シノブ属 881.イノモトソウ科 886.オシダ科-チャセンシダ科 + + + キ属が高率を示し、ツガ属、ア + 891.ウラボシ科 + + 0 粉の割合がやや高い。 コウヤマ ナラ亜属、 アカガシ亜属がこれ らに次ぐ。 また、C区西では草 本花粉のアカザ科-ヒユ科が高 率を示す。⑥ C-Ⅰ帯 (C区東: 試料№ 3 lw ~ 1 up) : 7 世紀中 頃 (前期難波宮期)木本花粉の割 合はやや低く、草本・藤本花粉 の割合が高い。マツ属 (複維管束 − 150 − 亜属) 、スギ属が高率を示すほか、 T.P.m 17 アカガシ亜属が他の分類群に比べ やや高率を示す。草本・藤本花粉 ではアカザ科−ヒユ科が高率を示 16 前 期 難波宮 高率を示す。 第7-2c層 E1 15 E2 (第8a層) E3 6世紀 第8b層 E4 E5 4up 454 5up 5up 262 第10層 5Lw E6 E7 E8 E9 ? 14 4up 4md 1585±20 10upmst 10up 10md 10lw E10 510.クスノキ科 570.マツ科型 第7-2b層 ミクロン未満) が、その他の種類に比べ 501.ブナ科(シイ属) 第7-2a層 203.ネザサ節型 加傾向を示す。このほかイネ科 (40 205.チマキザサ節型 207.ミヤコザサ節型 第5層 中 世 1.イネ 31.ヨシ属 61.キビ族型(アワ・キビ・ヒエを含む) 83.ウシクサ族A 93.ジュズダマ属型(ハトムギを含む) 201.メダケ節型 10upmst 300 10lw 154 1935±20 第11-2層 11up 326 11up E11 ? 11Lw 10000粒/g 2435±25 イネ科(機動細胞) 数字は1/100したもの 樹木起源 更新世 13 Clay Silt Sand Gravel 図9 7 NW 1 2−4E区植物珪酸体ダイアグラム T.P.m 18 第7-1a~c層 17 11 C11 C12 C14 15 559 13 510 15 614 17 599 19up 652 第10層 C15 15 C16 16 C17 ? 11 1485±20 12L 13 5世紀 C13 後半 17 2150±20 18 C18 19up C19 第11-1層 10000粒/g Clay Silt Sand Gravel イネ科(機動細胞) 数字は1/100したもの 樹木起源 図9 8 NW 1 2− 4 C区西植物珪酸体ダイアグラム − 151 − 501.ブナ科(シイ属) 510.クスノキ科 205.チマキザサ節型 第9層 207.ミヤコザサ節型 6世紀 1.イネ 16 203.ネザサ節型 第8b層 201.メダケ節型 第7-1d層 前 期 難波宮 31.ヨシ属 61.キビ族型(アワ・キビ・ヒエを含む) 83.ウシクサ族A すほか、イネ科 (40ミクロン以上)が増 第4層 第8a層 1up 501.ブナ科(シイ属) 205.チマキザサ節型 207.ミヤコザサ節型 第7-1d層 前 期 難波宮 C1 203.ネザサ節型 17 1.イネ 第7-1a~c層 3.イネ籾殻(穎の表皮細胞) 31.ヨシ属 61.キビ族型(アワ・キビ・ヒエを含む) 83.ウシクサ族A 201.メダケ節型 T.P.m 18 1up 305 2up 552 3md 363 4lw 529 5lw 241 1lw 2up C2 第8b層 2lw 3up 1465±20 C3 3md 3lw 16 C4 4lw 6世紀 第9層 C5 5lw 10000粒/g 5世紀 後半 15 第10層 イネ科(機動細胞) 数字は1/100したもの 樹木起源 ? Clay Silt Sand Gravel 図99 NW12− 4 C区東植物珪酸体ダイアグラム OS09−1 OS92−74 NW97−3 NW10−4 MR94−8 NW08−3 NW12−4 OS11−5・6 NW04−1 NW10−1 OS10−13 UH11−8・9 OS10−9 SS95−2 1 km 図100 NW12− 4 近辺での主な花粉分析地点 OS92−74・MR 9 4− 8 :[川崎地質1 9 9 6] 、NW 97− 3 :[古代の森研究舎20 0 0]、NW0 4− 1 :[パリノ・サーヴェイ 2005]、NW 0 8− 3 : [パリノ・サーヴェイ2 01 0]、NW 1 0− 4 : [渡辺2 0 1 2]その他は、大阪市博物館協会内部資料、 国土地理院1 / 5万地形図 「大阪東北部」・「大阪東南部」を拡大して使用 − 152 − 第1 0節 難波宮跡発掘調査(NW 1 2− 4 )に伴う自然科学分析 表2 7 樹種同定結果 トレンチ 1 2 N12−4E 3 層準 現場層序 試料番号 R463 E 5U 第8b層 E 10Lw 第10層 C 1Up 第8b層 樹種 R309① 時期 コウヤマキ 古墳: 6 世紀 マツ属 (複維管束亜属) 古墳: 6 世紀? サカキ 飛鳥:前期難波宮期 4 C 1Up 第8b層 R309② サカキ 飛鳥:前期難波宮期 5 C 1Up 第8b層 R293① バクチノキ類似 飛鳥:前期難波宮期 6 C 1Up 第8b層 R293② コウヤマキ 飛鳥:前期難波宮期 C 1Up 第8b層 R310① ヒノキ属 飛鳥:前期難波宮期 8 C 1Up 第8b層 R310② ヒノキ属 飛鳥:前期難波宮期 7 N12−4C 9 C 1Up 第8b層 R312① トチノキ 飛鳥:前期難波宮期 10 C 1Up 第8b層 R312② トチノキ 飛鳥:前期難波宮期 11 C 3Up 第8b層 R452 トチノキ 飛鳥:前期難波宮期 − 153 − 表2 8 種実同定結果 科名 属名 種名 部位 オモダカ科 イネ属 イネ 遺跡名 難波宮跡 調査次数 NW12-4 試料採取地 Eトレンチ Fトレンチ Cトレンチ東 Cトレンチ西 特 層序 第10層 第8b層 第10層 記 事 対応花粉帯 NW12-4-Ⅲ NW12-4-Ⅲ NW12-4-Ⅰ NW12-4-Ⅰ NW12-4-Ⅳ NW12-4-Ⅴ 項 試料名 ⑩Upmst ~Up ⑩Md ~Lw TYSK ①U R328 ③Lw ⑬ ⑰ 検出数合計 153 218 111 145 100 処理重量(g) 236.055 244.579 163 369.683 441.08 種子 1 穎 1 穎破片 2 炭化胚乳 イネ科 オオムギ属 オオムギ 炭化種子 オヒシバ属 オヒシバ 種子 穎 2 イネ科A 穎果 44 イネ科B 穎果 14 イネ科C 種子 12 イネ科D 種子 1 ヒメガヤツリ近似種 果実 9 カヤツリグサ属A 果実 カヤツリグサ属B 果実 1 果実 1 1 スゲ属A 果実 3 3 1 果実 34 29 果皮破片 9 14 果実 13 10 果皮破片 7 8 果実 5 1 種子 1 種子 27 ミズアオイ属 イグサ科 イグサ属 クワ科 カラハナソウ属 イラクサ科 サンショウソウ属 種子 ギシギシ属 果実 コナギ カナムグラ ヤナギタデ アカザ属 スベリヒユ属 スベリヒユ 種子 カバノキ科 アサダ属 アサダ 果実 ツルナ科 ザクロソウ属 ザクロソウ 4 ミミナグサ属 9 ハコベ属 サナエタデ節-ウナギツカミ節 29 20 1 クマシデ属-アサダ属 4 3 2 種子 1 6 ザクロソウ属 ナデシコ科 種子 2 ノミノフスマ近似種 種子 22 種子 2 1 種子破片 アカザ科-ヒユ科 スベリヒユ科 1 種子 キケマン属 4 5 ミドリハコベ近似種 アブラナ科類似 ギシギシ属 1 種子 イグサ科 クワ科-イラクサ科 48 1 風化種子 ミミナグサ近似種 9 1 種子 ナデシコ科 3 ミズアオイ科 146 果実 アカザ科 カヤツリグサ科 4 へそ スベリヒユ科 ケシ科 3 果実 ミズアオイ科 タデ属 23 ウキヤガラ カヤツリグサ科A イネ科 2 果実 スゲ属C タデ科 1 コゴメガヤツリ近似種 スゲ属B スゲ属 イネ科 (40ミクロン以上) 1 風化穎 ホタルイ属 オモダカ属/サジオモダカ属 1 1 ヒエ属 カヤツリグサ科 15 672.92(全量) 531.708(全量) 1 エノコログサ属 カヤツリグサ属 75 対応する花粉化石 キケマン属 1 アブラナ科 バラ科 ヘビイチゴ属 核 カタバミ科 カタバミ属 種子 ミカン科 サンショウ属 サンショウ 内果皮破片 3 サンショウ属 トウダイグサ科 エノキグサ属 エノキグサ 種子 7 トウダイグサ科 ミズオトギリ属 ミズオトギリ 種子 1 種子 1 オトギリソウ科 オトギリソウ属 ウコギ科 タラノキ属 タラノキ セリ科 チドメグサ属 キク科 4 1 果実 3 6 果実 6 シソ近似種 果実 40 ナス属 種子 43 キク科A 果実 1 キク科B 果皮破片 果実 バラ科 カタバミ科 ウコギ科 セリ科 レモンエゴマ近似種 不明A 2 1 果皮破片 芽 13 オトギリソウ科 2 風化果実 木本 4 1 果実 シロネ属 ナス科 1 内果皮 シソ科 シソ属 2 2 シソ科 19 ナス科 キク亜科 2 33 1 ストレブト植物門:車軸藻網 シャジクモ科 フラスコモ属 卵胞子 1 単条溝胞子 昆虫? 不明B さなぎ片/卵殻片 109 湿性植物 食用植物 (栽培の可能性あり) − 154 − 報 告 書 抄 録 ふ り が な なにわきゅうしのけんきゅう だい19 書 難波宮址の研究 第十九 名 編 著 者 名 谷﨑仁美 京嶋 覚 小田木富慈美 白石 純 渡辺正巳 丸山真史 赤田昌倫 池田 研 田村朋美 小倉徹也 編 集 機 関 公益財団法人 大阪市博物館協会 大阪文化財研究所 所 〒540−0006 大阪市中央区法円坂 1 − 1 −35 TEL.06−6943−6833 在 地 発 行 年 月 日 ふ り が な 所収遺跡名 なにわのみやあと 難波宮跡 おおさかじょうあと 大 坂城 跡 所収遺跡名 西暦 2013年10月31日 コード ふりがな 所在地 市町村 お お さ か し ちゅうおうくほうえんざか 大阪市中央区法円坂 27128 2 丁目 1 - 1 4 種別 都城跡 − 主な時代 古墳時代以前 難波宮跡 遺跡番号 飛鳥時代 北緯 東経 34 ° 40 ′ 44 ″ 135 ° 20120817 31 ′ 〜 07 ″ 20130130 主な遺構 調査面積 調査原因 宿舎および 1,889 ㎡ 商業施設建 設工事 主な遺物 弥生土器・ 土師器・ 須恵器・ 土錘・ 鉄刀茎・動物遺体(ウシ・ウマ) 土師器・須恵器・土錘・瓦・木製品(人 形・斎串・横櫛・釘形・鏃形・琴柱・ 掘立柱建物・ 塀・ 溝・ アカ取・ 鋤柄)・ ガラス玉鋳型・ ガ 土壙・谷 ラス玉・滑石製臼玉・鹿角製品・動 物遺体(ウシ・ウマ) 谷 奈良時代 大坂城跡 調査期間 土師器・瓦・U字形鋤先 豊臣期 土師器・瓦質土器・国産陶器・中国 礎石建物・ 溝・ 井戸・ 産磁器・朝鮮半島産磁器・漆椀・下駄・ 土壙 櫂・曲物・横櫛・墨書板材・動物遺 体 徳川期 石列・井戸・土壙・土 土師器・国産陶磁器・瓦・坩堝・動 採り遺構 物遺体 城館跡 調査地は古代難波宮の中心から西方4 0 0mに位置し、近世の大坂城では豊臣氏大坂城三ノ丸の 南西部、徳川氏大坂城外濠から南西5 0 0mに位置する。 調査では、西部で前期難波宮期の官衙と推定される掘立柱建物 5 棟、塀 2 列を検出し、その東 側では谷を検出した。谷からは古墳時代から飛鳥時代の土器・木製品等の大量の遺物が出土し、 要 約 7 世紀中葉の厚い整地層が確認された。これらは 7 世紀中葉の難波宮内に配置された官衙とその 建設に伴う整地工事の痕跡と推定され、難波宮西方官衙がここまで及んでいたことを示す。 谷内の上層では豊臣前期の礎石建物や井戸・側面を板と杭で土留めした溝などが検出され、土器・ 陶磁器・木製品などが多数出土した。1 7世紀に下る資料が少なく、三ノ丸建設に際して屋敷地が 廃された可能性がある。徳川期には全域で主に1 8世紀以降の井戸・土壙・土採り遺構などが検出 された。絵図によれば当地には各種奉行屋敷や代官所などが存在しており、それらと関連する資 料といえる。
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