三宅島のラセイタソウの変異 ~新種ホソバラセイタソウの可能性 中山厚志 小諸東小学校 384-0055 長野県小諸市柏木526 はじめに 長野県の理科教師の観察の旅(三宅島自然観察の旅)が 2009 年から実施され、私は植物班と して3年間参加させていただいた。そして、そこに自生する植物、特に 2000 年の噴火で一度失 われた植物がどのように回復していくか、と言う課題にはとても興味深い。火山植生のパイオニ アであるハチジョウイタドリ(タデ科)ハチジョウススキ(イネ科)木本ではオオバヤシャブシ (ハンノキ科)シダ植物ではユノミネシダ(科)に注目して分布を見て回った。 その中でラセイタソウのホソバ個体を見つけたので報告する。 調査地と調査方法 調査地は三宅島の人が立ち入れる全域。レンタカーを手配し、できる限りまわる。 調査日は 2009 年8月2日~6日 2010 年8月2日~6日 2011 年8月2日~6日 記録できた植物は写真で残す。 結果 【写真1】ラセイタソウの葉 【写真2】ホソバラセイイタソウ(仮)の葉 ラセイタソウ(イラクサ科)は海岸植生で特に海辺の岸壁に張り付くように生育しており、岸 壁の浸食を押さえる役割をしていると思われる。独特の非常に肉厚の葉を持っている。私はこの ラセイタソウの明らかにホソバ個体を見つけた。ここでは、仮にホソバラセイタソウと名付ける。 場所は椎取神社と坪田林道沿いである。2010 年に 1 個体を見つけ、2011 年も気をつけてみてみ ると新たに発見することができ、私の知る限り3カ所に数株ずつ生育している。見つければ相応 の数が見つかると思われる。その場所は海岸沿いではなくある程度海から離れた山中である。ラ イセイタソウは山中の岸壁にも時折見られるが、その中に混じってみられた。 考察 ラセイタソウと同じイラクサ科にはイラクサとホソバイラクサという種が見られる。もし、こ のホソバラセイタソウが実在する「新種」であるなら同じような変異ではないかと思われる。 また、このホソバラセイタソウと言う種は実在するのかどうか、インターネットで調べてみた。 (2011 年末)その結果、一カ所だけ横浜植物会のホームページで 2005 年に御蔵島での調査結果 に「ホソバラセイタソウ」という種が存在した。(私の指摘でおそらく消されている)この横浜 植物会を主催する神奈川県立生命の星地球博物館の田中徳久先生は私の問いに対して「ホソバラ セイタソウという種はない。おそらくその場で説明者が読んだ物をそのまま記録として残したの では」と言う見解だった。私もおそらくそうではないかと思ったのであるが、確認できてよかっ た。ラセイタソウのホソバ個体らしい、と言う見解はこだわってその地を見ていないと分からな い。このことから分かることはおそらくホソバラセイタソウと読んだ方も私と同じようにラセイ タソウのホソバ個体を確かに見た、と思われる。なので距離的にも近い三宅島、御蔵島に「ホソ バラセイタソウ」は確かに存在するのではないか。 謝辞 3年間同行していただいた信州理科教育研究会、三宅島自然観察の旅観察隊の皆さん、横浜植 物会を主催する神奈川県立生命の星地球博物館の田中徳久先生に謝辞を申し上げる。 参考文献 佐竹義輔・原寛・垣理俊次・冨成忠夫 日本の野生植物~草本 平凡社 真田稔・川本秀雄・二宮靖男・菅野雄義 平成 19 年 御蔵島の植物・動物 ぎょうせい 江崎逸郞・篠木秀紀・穴原美奈・藤原希 20010 三宅島の生物季節-2009 年4月~2010 年3月 MIYAKENSIS vol.13,PP57-64 【写真3】ホソバラセイタソウ(仮・坪田林道) 【写真4】ラセイタソウ(阿古小学校)
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