湘南鎌倉総合病院 心臓血管外科 田中 正史 全手術件数と開心術症例数の年次推移 ※2005 年は 4 月から 12 月までの 9 ヶ月間 2009 年の手術実績 総手術件数:254 件 開心術(心臓・胸部大血管手術)件数:159 件(うち緊急手術 45 件、28%) A. 虚血性心疾患手術:41 例 1. 単独冠動脈バイパス術 33 例 心停止下冠動脈バイパス術 6 例(18%) 人工心肺下心拍動下冠動脈バイパス術 2 例(6%) 心拍動下冠動脈バイパス術(人工心肺非使用) 25 例(76%) 平均バイパス枝数 3.8 枝 2. 虚血性僧帽弁閉鎖不全症手術 両側内胸動脈使用率 4例 冠動脈バイパス術(2∼4 枝)+僧帽弁輪形成術 3例 55% 冠動脈バイパス術+僧帽弁輪形成術+乳頭筋近接、吊り上げ術+左室形成術 1例 3. その他 4例 左室瘤に対する左室形成術 1例 心室中隔穿孔に対する infarction exclusion 法 2例 再胸骨正中切開冠動脈バイパス術 1例 B. 弁膜症手術:57 例 1. 僧帽弁手術 21 例 非虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁形成術 僧帽弁形成術のみ 10 例 僧帽弁形成術+メイズ手術 4例 僧帽弁形成術+大動脈弁置換術 2例 18 例 僧帽弁形成術+大動脈弁置換術+上行大動脈人工血管置換術 1例 僧帽弁形成術+大動脈弁置換術+上行大動脈人工血管置換術+冠動脈バイパス術 1例 僧帽弁置換術 1例 僧帽弁置換術+メイズ手術 2例 2. 大動脈弁手術 30 例 (生体弁 15 例、機械弁 15 例) 大動脈弁置換術のみ 16 例 大動脈弁置換術+左室流出路心筋切除術 1例 大動脈弁置換術+左室流出路心筋切除術+メイズ手術 1例 大動脈弁置換術+弁輪部膿瘍に対する弁輪形成 1例 大動脈弁置換術+冠動脈バイパス術(1∼3 枝) 5例 大動脈弁置換術+上行大動脈人工血管置換術 4例 再大動脈弁置換術 1例 Apico-Aortic bypass 1例 3. 連合弁膜症手術 6例 僧帽弁置換術+大動脈弁置換術 3例 僧帽弁置換術+大動脈弁置換術+メイズ手術 3例 C. 胸部大動脈手術 57 例 1. 胸部大動脈瘤(真性瘤および慢性大動脈解離) 28 例 大動脈基部置換術(ベンタール変法) 1例 弓部大動脈人工血管置換術 7例 弓部大動脈人工血管置換術+冠動脈バイパス術 2例 下行大動脈人工血管置換術 13 例 下行大動脈人工血管置換術+冠動脈バイパス術 1例 上行−弓部−下行大動脈人工血管置換術 1例 胸腹部大動脈人工血管置換術 3例 2. 破裂性胸部大動脈瘤 4例 弓部大動脈人工血管置換術 2例 下行大動脈人工血管置換術 1例 下行大動脈人工血管置換術+冠動脈バイパス術 1例 3. 急性大動脈解離 25 例 上行大動脈人工血管置換術 12 例 部分弓部大動脈人工血管置換術 1例 弓部大動脈人工血管置換術+エレファントトランク挿入術 12 例 D. 先天性心疾患手術 3例 心房中隔欠損症閉鎖術 2例 冠動脈−肺動脈瘻閉鎖術 1例 E. その他の開心術 1例 ペースメーカー+ICD リード感染に対するリード抜去+上大静脈形成術 F. 末梢血管手術 45 例 腹部大動脈瘤人工血管置換術 12 例 破裂性腹部大動脈瘤人工血管置換術 1例 急性大動脈解離に対する大動脈開窓術 1例 閉塞性動脈硬化症に対するバイパス手術 13 例 透析用内シャント造設術 18 例 1例 G. ステントグラフト内挿術 5例 胸部大動脈 1例 腹部大動脈 4例 H. その他 45 例 左開胸心膜開窓術 4例 再開胸止血術 3例 心嚢ドレナージ手術 10 例 胸骨再固定術 2例 大網充填術 1例 その他(気管切開、創洗浄など)25 例 総括 2009 年は昨年と比較し開心術数は横ばいであったが、疾患別では胸部大動脈瘤が去年の 31 例から 57 例と増加し、自治医大さいたま医療センターのチームが赴任してきて以来最も多 く、最多症例数のカテゴリーとなった。今年は下行、胸腹部大動脈瘤などの重症例にも積 極的に対応したが、左開胸手術特有の呼吸不全から長期人工呼吸器管理、肺炎となった症 例もあり、平均在院日数の延長という問題が起きたが、無事転院、退院となった症例がほ とんどであった。弁膜症では僧帽弁閉鎖不全症の 92%に僧帽弁形成術を施行し、全例良好 な結果を得た。虚血性心疾患では冠動脈バイパス術で積極的に心拍動下手術(人工心肺非 使用)を行うことにより、術後早期離床、早期改善につながる症例が多くなった。手術成 績では弁膜症手術で慢性腎不全合併症例 2 例に在院死亡を認め、慢性腎不全、透析症例の 周術期管理の問題点が明らかになった。また、急性大動脈解離で術前臓器(冠動脈、脳動 脈、腹部内臓)還流障害を合併した症例が多く、緊急手術を施行したが改善することなく 失った症例があり、今後の課題と考えられた。 2010 年 9 月には新病院に移転し、衛生面、設備ともに充実した環境でより多くの症例に対 応し、地域医療にさらに貢献できるようにチーム一丸となって努力していきたい。
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