超音波診断で黒毛和種肥育牛の僧帽筋のシコリがわかる[PDF] - 佐賀県

佐賀県研究成果情報
新技術・情報名
(作成
平成 20 年 3 月)
超音波診断で黒毛和種肥育牛の僧帽筋のシコリがわかる
[要約] 肥育牛の生体での超音波画像を解析することにより、僧帽筋に発生したシコリを
発見することができる。超音波診断画像におけるシコリの特徴は、僧帽筋の白い点が少な
く単調な黒色に映り、背半棘筋および菱形筋の白い点が強く輝いて映る。
畜産試験場・大家畜部・肉用牛研究担当
部会名
畜産
専
門
連絡先
飼育管理
0954 - 45- 2030
対
象
肉用牛
[背景・ねらい]
枝肉に瑕疵が発生すると商品価値が低下し、肥育経営の大きな経済的損失となるばかりで
はなく、消費者に不信感を与えてしますので、その対策の原因究明が急がれる。
瑕疵の一つであるシコリの発生は、ビタミンA欠乏が原因と考えられているが、生体時で
発見する方法がないため、発生時期が明確になっていない。
そこで、肥育牛を生体時に超音波診断し、発生したシコリの超音波画像の特徴を解析する
ことによりシコリの非破壊的な診断方法を検討する。
[成果の内容・特徴]
1.僧帽筋にシコリが発生した肥育牛の超音波画像の特徴は、僧帽筋にシコリが発生しなか
った牛の画像に比べると僧帽筋の白い点が少なく、単調な黒色に映り、背半棘筋および菱
形筋の白い点が白く輝いて映る(図1)。
2.また、超音波画像の僧帽筋が、白い点の少ない単調な黒色に映らなくても、背半棘筋お
よび菱形筋の白い点が強く輝いて映れば、僧帽筋にシコリが発生していると診断できる(図
2)。
3.肥育牛に発生するシコリは、生体時で超音波診断することにより高い精度で発見で
きる(表 1)。
4.肥育牛を経時的に超音波診断することにより肥育の早期(肥育後9ヶ月)にシコリの発生
を診断することが可能である(図2)。
5.シコリが発生した牛の僧帽筋は、発生する前(3ヶ月前)に比べて1cm以上厚くなり、腫
脹する(図3)。
[成果の活用面・留意点]
僧帽筋以外や筋肉の一部に発生するシコリは、超音波診断では確認することができない。
[具体的データ]
(a)僧帽筋にシコリが
発生した牛の枝肉断面
図1
(b)シコリ発生牛
(c)シコリが発生
(a)の生体時の超
しなかった牛の超
音波画像
音波画像
僧帽筋にシコリが発生した牛の超音波画像と発生しなかった
牛の超音波画像の比較
表1 シコリの超音波診断精度 (単位:頭)
超音波診断画像の特徴
僧帽筋の白い点が少
なく、単調な黒色に
映り、背半棘筋およ
び菱形筋の白い点が
白く輝いて映る
区分
背半棘筋および菱形
筋の白い点が強く輝
いて映る
超音波診断でシコ
リと診断した牛
7
3
枝肉格付でシコリ
と評価された牛
7
2
5
シコリ発生牛
僧帽筋厚(cm)
305
3
287
2
291
297
1
303
0
0
3
6
9
12 15 18 21
肥育月齢
図3
(b)
(c)
(d)
281
295
4
(a)
シコリ発生牛の僧帽筋厚の変化
[その他]
研究課題名:黒毛和種における一貫生産技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2002 ∼ 2008 年度
研究担当者:宮島恒晴、陣内孝臣
図2
肥育後9ヶ月で僧帽筋に
シコリが発生した超音波画像
注)(a)は僧帽筋、(b)は菱
形筋、(c)は背半棘筋、(d)
はロース芯を示す。