畜 産 試 験 場 「農業王国」「畜産王国」と呼ばれる北海道。 そんな北海道の中心にあるここ新得町には、畜 産試験場という施設があり、「畜産王国」 を様々 な分野から科学技術によって支えています。 非常に優れた研究機関であるにもかかわらず、 「試験場があるのは知っているけど、何をしている の?」「試験場の存在も知らない」 という人もいる かもしれません。 黒毛和牛や新得地鶏は浸透してきていますが、 畜産試験場がそれらの開発に関わっていることを 知っている人は多くないかもしれません。 ある時、「試験場がこんなにすばらしい施設だと は知らなかった!町民にぜひ伝えてほしい」 という 声がありました。 伝えます! 産者である道内の農家へもたらさ れますが、最終的にはそれを口に する我々消費者へと巡ってくるの です。 畜 産 試 験 場 は、 「北の大地」の 応援者なのです。 公開デーにお越しくださ い! 毎年8月の初めに、畜産試験場 では「公開デー」を実施し、町内 外の方に広く取り組みを知っても らう活動をしています。 この日は、羊やひよこと触れ合 えるコーナーをはじめ、研究室で は日々の研究について知ることも できます。 また、施設で生産するSPF豚 肉や牛肉の試食も大人気です。 今年の公開デーに足を運んでみ てはいかがでしょうか? 北海道立総合研究機構農業研究本部 畜産試験場 山本裕介 場長 ︵字新得西5線 番地1︶ 【主な研究内容】 ◇肉牛グループ 黒毛和種(和牛)について、大量のデータ 解析や遺伝子レベルの検査をして、遺伝的能 力の高い牛を探し出し、改良に役立てる取り 組みをしています。 また、肉の「おいしさ」 を探る研究もしています。 飼料については、特に牧草ととうもろこしの サイレージ(発酵させたもの)による黒毛和 種の育成や肥育技術の開発をしています。 ↑とうもろこしサ イレージで肥育し た黒毛和種の高品 質牛肉 ◇中小家畜グループ 豚・鶏に関する研究を行っています。 豚については、特定の病原菌を持たない(病 気にならない)健康でおいしい「道産SPF豚」 の母方の祖母「ハマナスW2」 を開発するな どしてきています。 また、町の特産として知られる「新得地鶏 (北海地鶏Ⅱ) 」 もここで開発され、その基と なる3品種(原種鶏)の維持と、生産者へ新 得地鶏の親鶏(種鶏)の供給を行っています。 について 今月号の特集では、畜産試験場について紹介し ます。 同施設では、 年ほど前に話題 になった「BSE(牛海綿状脳症) 」 に 関 す る 研 究 も 進 め て い ま す が、 国内で初めて人工的にその症状を 発生させることに成功し、精度の 高い臨床研究を行っています。 このほかにも、さまざまな感染 症について研究し、家畜や農場の 衛生管理法の開発に取り組んでい ます。 日本では現在、家畜飼料(エサ) の自給率が %と、そのほとんど を輸入に頼っています。そのため、 試験場では牧草やとうもろこしサ イレージによる黒毛和種の育成・ 肥育や、雑草が多い牧草地の改善 技 術 な ど に つ い て の 研 究 を 行 い、 自給率向上を目指しています。 ① 畜産試験場は、明治9年に札幌で発足後、昭和 22 年に新得に移転。 以来、長い歴史の中、この地で畜産に関する様々な研究を行ってきました。 畜産試験場 2 ◇家畜衛生グループ 畜産農場などでは、 飼養頭数の拡大が進み、 それに伴い感染症も増加しており、農場経営 に大きな被害をもたらしています。 そのため、牛や豚の感染症予防対策を進め ているほか、人・家畜に共通するOー やサル モネラなどの感染症対策も研究しています。 また、BSE発生以来、牛への給与が禁止 されている肉骨粉等が市販飼料の中に混入し ていないかどうかの確認検査も行っています。 3 Shintoku ② サルモネラ菌を検出するための 培地(培養環境)を作っている様子 特 集 14 試験場の研究は北海道の 「食」を支えています 10 39 ↑ハマナスW2 SPF豚は、十勝では2農場で生産。 エーコープしんとく店、いちまる清水店で 販売されています。 黄色の認証マークが目印です。 157 牛・豚・鶏といった家畜全般に ついて、安心・安全で肉質も良く、 さらには効率良く飼育できるよ う、日々研究を重ねています。 黒毛和種の育種改良 (遺伝的改良) の研究は、道内では畜産試験場の みが行っており、その研究成果や 技術は全道に提供されています。 また、今や新得の特産品として 定着している「新得地鶏(北海地 鶏Ⅱ) 」もここで開発されました が、着手から実に 年の期間がか かっています。初代である「北海 地 鶏 」 の 肉 質 を 変 え る こ と な く、 飼育期間を 日ほど早めることに 成功し、効率良く生産できるのが 現在の北海地鶏Ⅱの特徴です。 北海地鶏Ⅱ (左から雄と雌) 10 このように、試験場では家畜を 取り巻く全ての方面から研究に取 り組んでいます。 見える形では、成果の恩恵は生 ひよことの触れ合いコーナーにて 26 「北の大地」の応援者
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