ベリリウム銅を凌駕する高強度、 高導電性を有する新規銅合金の創製

ベリリウム銅を凌駕する高強度、
高導電性を有する新規銅合金の創製
大阪府立大学 工学研究科
助教 千星 聡
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研究概要
【新規の導電性銅合金を創りたい!】
… 本研究では、チタン銅(Cu-Ti)合金に、従来までの
熱処理プロセスと水素化プロセスを組み合せた「水素
雰囲気中での時効処理」(水素化プロセス)を採用する
ことによって、これまで実現できなかった組織制御を行
い、強度と導電性とを両立した新規の導電性銅合金を
実現します。
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研究背景 <導電性銅合金>
導電性銅合金
… 基板, リードフレーム材, コネクタ部材などに応用
導電性銅合金の要求特性
【導電性】, 【強度】, 【環境調和性】…
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研究背景 <ベリリウム銅合金①>
各種Cu合金の強度と導電性
1600
ベリリウム銅(Cu-Be)合金
引張強度 / MPa
1400
Cu-Be
Cu-Ti
1200
◎
◎ 高強度
高強度
1000
◎
◎ 高導電率
高導電率 ----- 25%IACS以上
25%IACS以上
Cu-Ni-Si
800
600
Cu-Sn
Cu-Zn
400
▲
▲ 環境性
環境性 ----- Be:人的に有害
Be:人的に有害
Cu-Cr
Cu-Zr
200
0
----- 時効析出強化型
時効析出強化型
0
20
40
60
80
▲
▲ コスト
コスト ----- Beが高価
Beが高価
Cu
100
Cu-Be合金に代替する
導電性材料の開発が必要!
導電率 / %IACS
* %IACS : 純銅の導電率を100%とした比率
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研究背景 <ベリリウム銅合金②>
○ ベリリウム銅(Cu-Be)合金は高強度-高導電
率のため、広く汎用されている。
● 一方で、
> Beに起因する毒性(アレルギー, 発癌性)
> Beが希少金属 等の問題がある。
代替材料の開発が必要不可欠
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研究背景 <チタン銅合金①>
新規導電性Cu材料の探索
各種Cu合金の強度と導電性
1600
チタン銅(Cu-Ti)合金
引張強度 / MPa
1400
Cu-Be
Cu-Ti
1200
◎
◎ 高強度
高強度
・引張強度:800-1150MPa
・引張強度:800-1150MPa
・バネ性,
・バネ性, 耐摩耗性
耐摩耗性 :: 良好
良好
1000
Cu-Ni-Si
800
600
Cu-Sn
Cu-Zn
400
Cu-Zr
200
0
Cu-Cr
0
20
40
60
80
Cu
▲
▲ 低導電率
低導電率
(Cu-Be合金の半分程度)
(Cu-Be合金の半分程度)
◎
◎ 環境性
環境性
○
○ コスト
コスト ---安価
---安価
100
導電率 / %IACS
* %IACS : 純銅の導電率を100%とした比率
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研究背景 <チタン銅合金②>
○ チタン銅(Cu-Ti)合金は高強度。
○ 生体・社会環境に負荷の少ない元素で構成。
● 導電率が低い ← 【問題点】
チタン銅合金の強度を維持しながら、
導電率を向上させる技術はあるのか?
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研究背景 <チタン銅合金③>
新規導電性Cu材料の探索
チタン銅合金の作製手順
900
溶体化処理
800
調質圧延
時効処理
時効処理
温度 / ℃
Cu-Ti 合金(Ti : 1-6 at.%)
700
600
Cu-Ti 合金の組織
500
母相 (Cu)
400
+ 析出物 (Cu4Ti)
固溶Ti量: ~1.0 %
Cu-Ti 状態図
300
75
導電率の低下
導電率の低下
高強度・高靱性
高強度・高靱性
80
85
90
95
100
Cu
Cu 含有量
含有量 // at.%
at.%
8
新技術の基となる指導原理
★ Cu-Ti合金を高性能化させるための指針
□ 強度:従来のまま微細析出物の形成
□ 導電性:母相Cu中のTi含有量を低減
時効処理
水素の利用
□
□ 真空
真空 or
or 不活性ガス雰囲気
不活性ガス雰囲気
×
□
□ 300-500℃での時効処理
300-500℃での時効処理
→
→ 微細析出→高強度化!
微細析出→高強度化!
□
□ 水素-Cu
水素-Cu :: 反応しない!
反応しない!
Cu本来の特性に影響しない
Cu本来の特性に影響しない
□
□ 水素-Ti
水素-Ti :: 親和性が高い!
親和性が高い!
反応してTiH
反応してTiH22を形成
を形成
水素中での時効処理
9
新技術の基となる研究成果①
50
Cu-3at.%Ti 合金
溶体化処理
導電率, σ / % IACS
硬さと導電率
H2, 450℃
H2, 500℃
30
←目標値
H2, 400℃
20
10
高強度・高導電率!
溶体化処理材
0
250
ビッカース硬さ, Hv /-
調質圧延
時効処理
時効処理
40
導電率
H2, 400℃
200
150
100
50
0
0.1
H2, 450℃
硬さ
硬
H2, 500℃
溶体化処理材
1
10
時効時間, t/ h
100
1000
10
新技術の基となる研究成果②
引張強度 / MPa
1600
1400
Cu-Be
1200 実用Cu-Ti
(競合材)
1000
800
Cu-3at.%Ti
600 (従来法)
400
(水素化プロセス)
「水素の利用」
200
0
Cu-3at.%Ti
0
20
40
60
80
100
導電率 / %IACS
11
新技術の基となる研究成果③
【水素雰囲気中で時効したチタン銅合金】
○ 従来のチタン銅合金の強度レベルを維持
○ 導電性 30%IACS以上 (飛躍的向上)
○ 環境性、元素戦略的に優位
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新技術の特徴・新規性
● 「水素」の利用
: Cu-Ti合金に水素を積極的に利用
● 反応性雰囲気中での時効プロセス
: 「時効析出」と「合金化(水素吸収)」とを同時進行
① 強度と導電性を同時に向上
: 本プロセス→「析出強化」+「固溶Ti量の低減」
② 広範囲な導電性制御
: 処理条件の選択により導電性を広範囲に変化
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新技術、従来技術、競合技術の比較
引張強度
導電性
環境性
Cu-Be合金
(競合材)
1000MPa
30~40%
IACS
×
Be: 有害
Cu-Ti合金
(従来材)
1000MPa
~18%
◎
1000MPa
30%IACS
以上
◎
Cu-Ti-H
合金
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新技術の進歩性
従来のチタン銅合金からの進歩
◆ 導電率の飛躍的向上 (最大:70% IACS)
◆ 強度と導電率のバランス (最高硬さで32% IASC)
◆ 同等の強度-導電性バランス
競合材(ベリリウム銅合金)からの進歩
◆ 安全性の向上
◆ 資源問題の解決
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新技術の優位性
① 従来材・競合材を凌駕する合金性能
… 導電性、強度、環境性の総合点で至高の材料。
② 強度-導電性バランスを設計・制御可能
… 制御パラメータの選択により、強度-導電性のバ
ランスを多様に制御可能。
③ 実用化への迅速な展開への可能性
… 現状製造ラインを改造するのみで製造可能。
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想定される用途・応用
電子部材/素子産業への応用
■ Cu-Be合金の代替
■ 電子部材の信頼・安定供給
■ 通電・接点用銅合金以外の用途へ展開
新領域へのインパクト
◇ Cu:殺菌性
◇ Ti, H:生体適合性
医療分野への進出
○ 他の時効析出合金
他の材料系へ応用
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実用化へ向けた課題
◆ 高性能化のための基本原理・技術を確立
① 初期合金組成、組織の影響
② 制御因子(温度、時間、水素圧)の影響
③ 水素化プロセスによる組織変化挙動
◆ 実践的特性の評価, 課題の解決
… プレス加工性、溶接性、耐熱性、
耐久性など実践的特性の評価
→ 企業との共同研究により解決
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本技術に関する知的財産権
発明の名称 :銅-チタン-水素合金
出願番号
:特願2007-100435
出願人
:大阪府立大学
発明者
:千星 聡
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お問合わせ先
大阪府立大学 工学研究科
コーディネーター: 阿 部 敏 郎
TEL
FAX
e-mail
072-254 - 9128
072-254 - 9874
abe@iao.osakafu-u.ac.jp
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