大成功の舞台裏 もう一つの感動 ドラマ - 中央大学

中大英語学会
45年ぶりの英語ドラマ劇公演
大成功の舞台裏
もう一つの感動ド
中央大学英語学会(ESS)はことし創立110年を迎えた。
ヒロインのブレンダは有名になるこ
記念の年に『NOBODY FAMOUS』
(有名な人は誰もいない)と題する
とを 夢 見る新 進 女 優 。親 友 の ヘ
英語ドラマ劇を5月12日に公演した。
ザーに連れられ、占い師の館にやっ
会場の中大多摩キャンパスCスクエア中ホールは
立見が出るほどの超満員、劇は成功を収めた。
ESSの英語ドラマ劇公演は1968年以来45年ぶり。当事者には初体験だ。
完成するまでには毎日色を変えていく人間ドラマがあった。
てきた。主のムーチは「そのうち有名
になる」と占い、宝くじの当選番号も
予 言した。銃を持ってムーチを探す
謎の男 。ブレンダをスカウトしに来た
映画監督メアリー。出演を巡って意
見 衝 突 するブレンダとメアリーの間
表紙の人
Chihiro
Nabeshima
を懸 命 に 取り持 つブレンダのマネ
ジャー、
ジーナ。
6人の登 場 人 物は役に成り切っ
ていきいきと演 技 、英 語のせりふを
滑らかに口にした。客 席 には 字 幕
スーパーが
映し 出さ
れる大 型
スクリーン
があった。
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グローバル人材育成
CASTING
HEATHER:BRENDAの親友
MOOCH:占い師
(関口耀子・3年)
(内野太陽・2年)
親友
ドラマ
疑い
?
ファン
BRENDA:売れない女優
JOE:MOOCHを探す男
(川口治佳・2年)
(加藤光太郎・2年)
マネジャーと
女優
契約
GINA:BRENDAのマネジャー
MARY:映画監督
(鍋島千尋・3年)
(伊坂理花・3年)
3 0 分 間の公 演中、観 客はじっと
劇はどう?」と話し、すぐに行 動を起
しさは存分に出していた。
見入り、
フィナーレでは大拍手。舞台
こした。
OB諸氏を訪ねては相談し、
私たちの代ならではの何かを出
と客席が一体となった。余韻が残る
英 語 劇で先 行する立 教 、早 稲 田な
す、見学して感動した英語劇、先輩
なか、
「 製 作 総 指 揮 」でジーナ役の
どの大会舞台を伊坂副会長が見学
から教えられた進 取の精 神 、
これら
鍋 島 千 尋ESS会 長( 法 学 部3年 )
した。
「 感 動した、私たちも負けてら
が一 つになったとき、
「 私たちで英
が金 髪に赤いふちの眼 鏡をかけた
れない」
語ドラマをやろう」との気 運が一 気
舞 台 衣 装のまま、
「 会 長あいさつ 」
副 会 長から報 告を受けた会 長が
に高まった。
に立った。居 並 ぶOBや 関 係 者 へ
奮い立った。
この目で見てやろう。東
何度も謝辞を述べたあと「 思いつき
大で『マクベス』
(シェークスピア)
を
で始めました」と意 外なことを打ち
上 演して い た 。
「 私も感 動しまし
明けた。
て」。動きは早い。
ESS仲間の東京
もう思い付きではなくなった。
1月
理科大、東京外語大などからはノウ
上 旬 、年 度 末 納 会 の 議 題 にかけ
ハウを学んだ。
た。
「新規事業として英語ドラマを演
折しも白門祭の参加形態に疑問
じます 」と鍋 島 会 長 。
しかし細目に
執 行 部 が 新しくなり3カ月ほど
を感じていた。
「たこ焼き売って、
ES
関する質問にたじろぎ準備不足とさ
たった昨 年 1 1月中旬 。鍋 島 会 長と
Sで∼す 」。
これでいいのだろうか。
れ 、承 認は見 送られた。
「 悲しかっ
伊坂理花副会長(法学部3年、
メア
もちろん 年 間 活 動 計 画 に 基 づき、
たけれども、部員みんなが真剣だか
リー役)が「私たちの代ならではの活
ディスカッション、
スピーチコンテスト、
らこそ、吟 味しなければいけません
動をしたいね」
「何ができる?」
「英語
留 学 生との交 流など伝 統のESSら
でした」
伝統の組織、進取の精神
ビジョンの確立
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中大英語学会
45年ぶりの英語ドラマ劇公演
大成功の舞台裏 もう一つの感動ドラマ
収 穫はドラマの終 章である。
種まきからつき合った者のみが
終 章の感動を味わうことができる (脚本家・倉本聰さんの言葉=読売新聞から)
やり直しである。再びOB諸 氏を
会 長 )。
「 若いOBの方々にはお仕
を休んで来てくれた人もいました」と
訪ね、
「ビジョンを明確にしよう」との
事が忙しいなか休日返 上で私たち
は監 督 の 鈴 木 恒 範さん( 法 学 部3
助 言を受けた。ESS総 勢 3 2 7 人を
を1日中ご指 導くださいました。OB
年 )。建 築 現 場なら鎚 音が鳴り止ま
率いて取り組む英語ドラマ劇は、歴
の 皆さまからは多 額 の 寄 付も頂 戴
ない慌ただしさだ。
史の扉を4 5 年 ぶりにこじ開ける壮
し、本 当に感 謝しています 」
(同会
「 せりふはキャストが自分で英 訳
大な事 業である。額に鉢 巻きをきり
長) します 」
(占い師 役の内 野 太 陽さん
りと締める心境になった。
承 認を得て、春 休みから本 格 化
=総合政策学部2年)。公演前日の
出 演 希 望 者のほかに広く人 材を
した舞 台けいこが4月に頓 挫 する。
リハーサルでは、
そこかしこが磨かれ
求めた。メールで呼びかけ、会って
新 入 生 歓 迎イベントが目白 押しで、
て8時間みっちりけいこ。無駄をそぎ
話をする、悩む背中を押す。活動休
部 全 体の言 動が“ 新 歓 ”へ 傾 斜し
落とし、輝きを増した舞 台は、キャス
止 状 態の部 員にはより多くの問い
ていた。
1カ月近くも、
しぼんだような
ト・スタッフ全員の鋭 敏な目そのもの
かけをした。
こうした中から出 演 者 、
状態にいた出演者らから「公演でき
だった。
運営スタッフが集まり出した。
るか不 安です 」との声があがった。
台本が本決まりとなって、配役が
公演は5月12日だ。プロでもけいこ、
決まり、スタッフの 役 割 分 担も決ま
けいこの連 続で初日を迎えるのに、
る。機関車の大きな車輪が動き出し
アマチュア集 団ならば 停 滞は絶 対
5月1 2日午 後3時 半 過ぎ 。中 央
ていく。
に許されない。
大 学 英 語 学 会 の 英 語ドラマ 劇
「めきめき上手になっていくキャス
再びやり直しである。
「製作総指
トがいる、
あの人あんなに大きな声を
揮 」のもと、けいこに励んだ。
「 全員
のなか幕を閉じた。
出せるんだ。スタッフは照 明 、音 響 、
がそろうのは週2回 。授 業 やゼミが
ジョー役の加藤光太郎さん(経済
舞 台セットなど個々人で工 夫をこら
終わる午 後6時ごろから始めて9時
学 部2年 )には 演 技 経 験がなかっ
している、私うれしくなって」
(鍋島
過ぎまでやっていました。アルバイト
た。銃を持って出てくるシーンでは、
自慢の涙
『 N O B O D Y F A M O U S 』は拍 手
けいこ量を伺わせる演 技で存 在 感
を示した。
「ドラマをやると聞いたと
き、
まさか自分が舞 台に上がるなん
て」と驚きながらも、
「 部屋で一人鏡
を見 て表 情をつくったこともありま
す 。達 成 感がすごくよかった。中学
時 代 、代 打でヒットを打って勝った
野球の試合を思い出しました」
懇親会では舞台裏を支えたスタッ
フが一人ひとり紹介された。みんなが
スポットライトを浴びた。鍋 島 会 長は
打ち上げなども終えた帰路、
「涙が止
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グローバル人材育成
まらなくなって。つらいこともあったけ
れど、舞 台をやり遂げた、
もっとやり
たいという気 持ちが重なったのだと
思 います 」と胸 の 内を 明 かした 。
ちょっぴり自慢したくなる涙である。
「思い付きで始めたことですが、私
「 会 長あいさつ」で言 葉にした思
たちは大きなものをつかみました。た
いはいっそう強くなっている。後 輩
くさんの仲間でドラマをつくりました。
へのメッセージも込めた。思い付きか
仲間に助けられました。
あなたも誰か
ら始まって、ついには歴 史を塗り替
の仲間になります、力になります。視
えた。まさしくアクション・スタート。演
野を自分で狭めることなく、視野は自
技 開 始を告 げるカチンコがいまも
分で広げていくものだと思います」
鳴っている。
OBの声
■メンバー紹介 大高巽会長
ブレンダ 川口 治佳(商2)
<キャスト>
(メリックス社長=1966年卒業)
ヘザー 関口 耀子(文3)
「私たちが中大に入学した1963年ごろもESSには
ムーチ 内野 太陽(総政2)
ジョー 加藤光太郎(経2)
300人ほどの部員がいました。東京五輪を翌年に控
メアリー 伊坂 理花(法3)
えて英語がますます必要とされた時代。いまの部も
ジーナ 鍋島 千尋(法3)
似たような雰囲気です。大学を挙げてグローバル人
<スタッフ>
材育成に取り組むなか、
ESSも力を発揮して英語
道具 大湖 光代(商2)
力を高めていきたいと思っています、支援は惜しみ
林 文佳(文2)
ません」
衣装 岡本 仁華(商2)
音響 古川 真衣(商2)
桑田泰久前会長
照明 木村 優希(商3)
(元日動火災保険=1958年卒業)
字幕 今水 悠貴(法2)
「ドラマを演じると聞いたとき本当かと思いましたが、
鈴木 恒範(法3)
関口 耀子
実際に見て、部全体で取り組んだことがよく分かり
広報 内野 太陽
ました。立派だった。短期間でよく頑張った。力が入
パンフレット 阿部 暢朗(法3)
り過ぎていたかな
(笑い)。私たちのころはドラマ全盛
監督 鈴木 恒範
時代、
よく復活してくれた。
ありがとう」
製作総指揮 鍋島 千尋
(写真提供=ESS)
■45年前の世相
1968年・昭和43年/札幌医科大の和田教授が日本初の心臓移植手術。川端康成氏がノーベル文学賞受賞。東京・府中で3億円強奪事
件発生。プロ野球では巨人の長嶋、王両選手が大活躍した。
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