地球惑星科学基礎V演習 3次元の空間群 第6回 瀬⼾雄介 http://pmsl.planet.sci.kobe-u.ac.jp/~seto 2次元空間群 3次元空間群 • 2次元空間群 – – – – 格⼦並進 (p, c) 回転 (1, 2, 3, 4, 6) 鏡映 (m) 映進 (g) • 3次元空間群 – – – – – 格⼦並進(P, I, F, A, B, C, R) 回転 (1, 2, 3, 4, 6) 回反* (-1 [= i], -2 [= m], -3 = [3・i], -4, -6 [= 3/m]) らせん操作* (21, 31, 32, 41, 42, 43, 61, 62, 63, 64, 65) 映進操作 (a, b, c, n, e, d) *は3次元でのみ現れるもの 62回らせん 41らせん 1周期 1/4 周期 N M 1周期 2/6 周期 らせん: 軸の周りに 360/N ° 回転したあと、軸⽅向にM/N周期だけ平⾏移動し て図形を不変に保つ操作 表記: 21, 31, 32, … らせん軸の例 41 61 64 並進を伴うもの 鏡映に引き続き、ある⽅向に1/n周期平⾏移動して図形を不変に保つ操作 1周期 1/2周期 ⾯の⽅向、平⾏移動の⽅向と距離によって、以下の6つに分類される 表記 ⾯の⽅向 ⽅向と距離 a a軸に平⾏ a軸の⽅向に1/2周期 b b軸に平⾏ b軸の⽅向に1/2周期 c c軸に平⾏ c軸の⽅向に1/2周期 n a,b,c軸などに垂直 ⾯の法線と直交する2本の軸(あるいは合成軸) の対⾓線⽅向に1/2周期 e a,b,c軸などに垂直 ⾯の法線と直交する2本の軸(あるいは合成軸) の⽅向にそれぞれ1/2周期 d a,b,c軸などに垂直 ⾯の法線と直交する2本の軸(あるいは合成軸) の対⾓線⽅向に1/4周期 映進⾯の例 a 映進⾯: b軸に垂直な鏡映の後、 a軸⽅向に1/2進む b軸に垂直な映進⾯の場合 c 映進⾯: b軸に垂直な鏡映の後、 c軸⽅向に1/2進む c a/2 c/2 a b n 映進⾯: b軸に垂直な鏡映の後、 a+cの合成ベクトルの ⽅向に1/2進む a/2 + c/2 映進⾯の例 b軸に垂直な映進⾯の場合 d 映進⾯: e 映進⾯: b軸に垂直な鏡映の後、a+c の合 成ベクトルの⽅向に1/4進む b軸に垂直な鏡映の後、a軸⽅向に1/2進む + b軸に垂直な鏡映の後、c軸⽅向に1/2進む (a+c)/4 a/2 c c/2 c/2 (a+c)/4 a/2 c (a+c)/4 a a b b 3次元の空間群の種類 並進を含む対称操作 平⾏移動操作 (格⼦並進 P, I, F, A, B, C, R) 回転操作 (2, 3, 4, 6) 回反操作 (-1 = i, -2 = m, -3, -4, -6 = 3/m) らせん操作 (21, 31, 32, 41, 42, 43, 61, 62, 63, 64, 65) 映進操作 (a, b, c, n, d) の集合 組み合わせによって230個に分類される P1 P21/m C222 Pmn21 Aea2 Pmma Pbca Immm P-4 P4122 P42cm P-42m I-42m P42/mmc I41/amd P3112 R3c P62 P6422 P6/mmm Pn-3 I432 Pm-3m P-1 C2/m F222 Pba2 Fmm2 Pnna Pnma Ibam I-4 P41212 P42nm P-42c I-42d P42/mcm I41/acd P3121 P-31m P64 P6322 P6/mcc Fm-3 P4332 Pn-3n P2 P2/c I222 Pna21 Fdd2 Pmna Cmcm Ibca P4/m P4222 P4cc P-421m P4/mmm P42/nbc P3 P3212 P-31c P63 P6mm P63/mcm Fd-3 P4132 Pm-3n P21 P21/c I212121 Pnn2 Imm2 Pcca Cmce Imma P42/m P42212 P4nc P-421c P4/mcc P42/nnm P31 P3221 P-3m1 P-6 P6cc P63/mmc Im-3 I4132 Pn-3m C2 C2/c Pmm2 Cmm2 Iba2 Pbam Cmmm P4 P4/n P4322 P42mc P-4m2 P4/nbm P42/mbc P32 R32 P-3c1 P6/m P63cm P23 Pa-3 P-43m Fm-3m Pm P222 Pmc21 Cmc21 Ima2 Pccn Cccm P41 P42/n P43212 P42bc P-4c2 P4/nnc P42/mnm R3 P3m1 R-3m P63/m P63mc F23 Ia-3 F-43m Fm-3c Pc P2221 Pcc2 Ccc2 Pmmm Pbcm Cmme P42 I4/m I422 I4mm P-4b2 P4/mbm P42/nmc P-3 P31m R-3c P622 P-6m2 I23 P432 I-43m Fd-3m Cm P21212 Pma2 Amm2 Pnnn Pnnm Ccce P43 I41/a I4122 I4cm P-4n2 P4/mnc P42/ncm R-3 P3c1 P6 P6122 P-6c2 P213 P4232 P-43n Fd-3c Cc P212121 Pca21 Aem2 Pccm Pmmn Fmmm I4 P422 P4mm I41md I-4m2 P4/nmm I4/mmm P312 P31c P61 P6522 P-62m I213 F432 F-43c Im-3m P2/m C2221 Pnc2 Ama2 Pban Pbcn Fddd I41 P4212 P4bm I41cd I-4c2 P4/ncc I4/mcm P321 R3m P65 P6222 P-62c Pm-3 F4132 I-43d Ia-3d すべての結晶は、230種類の空間群のどれかに所属している 3次元空間群の表記⽅法 • (最⼤)四つのパーツ W X Y Z で構成される – Wには格⼦並進要素を記⼊する (必須) – Xには、主軸に平⾏な回転・回反・らせん軸あるいは主 軸に垂直な鏡映・映進⾯を記⼊する (必須) – 主軸以外(副軸)に対称要素が存在する場合は、Y, Zに記 ⼊する – 軸に垂直な鏡映・映進⾯があるときは、軸の表記に続 けて/□と記す – 主軸、副軸のセッティング(順番)は結晶系に準拠する WXYZ 格⼦並進: P, I, F, A, B, C, R 回転操作 (2, 3, 4, 6) 回反操作 (-1 = i, -2 = m, -3, -4, -6 = 3/m) らせん操作 (21, 31, 32, 41, 42, 43, 61, 62, 63, 64, 65) 映進操作 (a, b, c, n, d) 空間群 ⇒ 点群 • 空間群が属している点群を知るためには – 格⼦並進成分を除去 (最初の⼀⽂字を消す) – らせん軸を同じ次数の回転軸に変換 (下付き数字を消す) – 映進⾯を鏡映⾯に変換 (すべての⼩⽂字アルファベットをmに変える) WXYZ 格⼦並進: 除去 らせん軸 ⇒ 回転軸 映進 ⇒ 鏡映 例: 空間群 C 2/c I 21 21 21 P 63/m c m I43d ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ 点群 2/m 222 6/m m m 43m ⽤語の整理 軸 • 「軸に垂直な(直交する)⾯」あるいは 「⾯に垂直な(直交する)軸」とは – 軸の⽅向と、⾯の法線が平⾏である – 「ある軸に対称⾯が存在する」といったと きは、軸に垂直な対称⾯を意味する ⾯ ⾯ 軸 • 「軸に平⾏な⾯」あるいは 「⾯に平⾏な軸」とは – 軸の⽅向と、⾯の法線が垂直である • 「⾯に平⾏な⾯」あるいは 「軸に平⾏な軸」とは – 法線の⽅向が⼀致する、あるいは軸の⽅向 が⼀致する 軸 ⾯ 空間群の例 その1 • P1 – 格⼦並進は P (単純格⼦) – 主軸には1回回転軸 (恒等変換) 平⾏移動のみが、この空間群 に所属する図形を不変に保つ 操作となる 空間群の例 その2 • Pm – 格⼦並進は P (単純格⼦) – 主軸に垂直な鏡映⾯ 鏡映⾯ 鏡映⾯ 鏡映⾯ 平⾏移動に加えて、主 軸に垂直な鏡映操作が 存在する 空間群の例 その3 • P 4/m – 格⼦並進は P (単純格⼦) – 主軸に4回回転軸と主軸に垂直な鏡映⾯ 鏡映⾯ 鏡映⾯ 鏡映⾯ 空間群の例 その4 • C2 – 格⼦並進は C (底⼼格⼦) – 主軸に2回回転軸 2回回転軸 b a c 底⼼格⼦ 3次元空間群の図⽰⽅法 c b 例: P 2 (単斜晶系) β 主軸であるb軸に2回回転軸が存在している a ⼀般位置 + + + 単位格⼦を表す 平⾏四辺形 + + 対称要素 + 紙⾯に垂直 な2回軸 その1 + + ・「+」はその⼀般点の⾼さ (紙⾯に垂直な⽅ 向)が「+z」であることを⽰す ・任意の相対的な⾼さと考える (0とか1/2のよ うに特殊ではない) 3次元空間群の図⽰⽅法 その2 c b 例: P m (単斜晶系) 主軸であるb軸に垂直な鏡映⾯が存在 a 対称要素 ⼀般位置 紙⾯に平⾏な鏡 映⾯ – – + + – – + + 「-」はその⼀般点の⾼さが「-z」であることを⽰す (zは任意) 右⼿ 左⼿ 鏡で映る関係 : 重なったとき 3次元空間群の図⽰⽅法 その2の2 例: P m (単斜晶系) 主軸であるb軸に垂直な鏡映⾯が存在 c b 1+ z = (+z) 紙⾯に平⾏な鏡映⾯ a – + – + b – + – 1–z (= -z) + +z c a –z 紙⾯(=鏡⾯) ⾼さ 0 3次元空間群の図⽰⽅法 その3 例: P 41 (正⽅晶系) 主軸であるc軸に41らせん軸が存在している ⼀般位置 対称要素 c a ½+ b ¼+ ½+ + ¾+ ½+ + ¾+ ¼+ ½+ + ¾+ ¼+ ¼+ + ¾+ n + ⇒その⼀般点の⾼さが「 n+ z 」であることをしめす (nは周期に対する割合を⽰す & zは任意) 3次元空間群の図⽰⽅法 その3の2 例: P 41 (正⽅晶系) 主軸であるc軸に41らせん軸が存在している ⼀般位置 ½+ ¼+ ½+ + ¾+ ¼+ 1+z + ¾+ ¾+z c ½+z ½+ ¼+ ½+ + ¾+ ¼+ ¼+z + ¾+ +z b a 3次元空間群の図⽰⽅法 その4 a b 例: C 2 (単斜晶系) 底⼼格⼦をもち、主軸であるb軸に2回軸が存在 c ½+ + ½+ + ½+ + + 単位格⼦を表す 平⾏四辺形 + 紙⾯に垂直 な2回軸 Cによって再⽣ ⼀般位置 + 対称要素 ½+ + + Cによって再⽣ 3次元空間群の図⽰⽅法 その5 例: P 2 2 2 (斜⽅晶系) a, b, c軸に2回回転軸を持つ a c b ⼀般位置 対称要素 + – + – 紙⾯に平⾏な 2回軸を表す – + – + + – – + – – + + 3次元空間群の図⽰⽅法 その6 例: P m c 21 (斜⽅晶系) a軸に垂直な鏡映⾯, b軸に垂直なc映進⾯, c軸に21らせん軸を持つ a c ⼀般位置 対称要素 紙⾯に平⾏な鏡映⾯ b + – + + – 紙⾯に平⾏な21 らせん軸を表す – + b軸に垂直な軸映進⾯があり、その並進 ⽅向が紙⾯に沿った⽅向(c軸の⽅向)に 1/2であることをしめす – + – + – 3次元空間群の図⽰⽅法 その6の 例: P m c 21 (斜⽅晶系) a軸に垂直な鏡映⾯, b軸に垂直なc映進⾯, c軸に21らせん軸を持つ a 対称要素 c a 紙⾯に平⾏な鏡映⾯ + b – + – + – + 紙⾯に平⾏な21らせん 映進⾯ c – + +z – – + b軸に垂直な軸映進⾯があ り、その並進⽅向が紙⾯に 沿った⽅向(c軸の⽅向)に 1/2であることをしめす m –z c 21 c c b +z m –z らせん 21 鏡映⾯ m 3次元空間群の図⽰⽅法 その7 例: P 42/n (正⽅晶系) c軸に垂直な42らせん軸とそれに垂直な n 映進⾯ c 対称要素 a b ¼ 紙⾯に平⾏で、⾼さが 1/4にあるn 映進⾯ ⼀般位置 + + + ¼ 42らせん ½+ ¼ ½½+ ¼ ¼ + + 4回回反 ⾼さが1/4に対称⼼ ½+ ½+ - + - + 3次元空間群の図⽰⽅法 その8 紙⾯に平⾏な対称⾯(鏡映or映進)あるいは対称軸(回転、回反、らせん) が存在する場合は、その対称操作の近くに⾼さを表す数字を書く。(何 もない場合は⾼さ0) 紙⾯に平⾏で、⾼さが 紙⾯に平⾏で、⾼さが 0の位置に鏡映⾯ 1/4の位置に鏡映⾯ ¼ 紙⾯ (⾼さ0) ¾ 紙⾯に平⾏で、⾼さが1/4の位置に21らせん軸 ¼ ¼ ¼ ¼ 鏡映⾯ or 映進⾯ +z ½- z ½ ¼ +z 空間群/点群/結晶系/ブラベー格⼦の関係 結晶系 格⼦の形状を保つよ うに、並進を伴わな い対称要素を付与 点群 並進成分を伴う 対称要素を付与 (並進を伴わない対 (単位格⼦の形 対称性を満たす格 称操作が作る群) 状の分類) ⼦の形状を抽出 単純格⼦(P) のみを残す 複合格⼦成分 を付与 並進成分 を除去 格⼦並進以 外の対称要 素を付与 空間群 (格⼦並進を含む対 称要素が作る群) 格⼦並進のみ を残す ブラベー格⼦ (複合格⼦並進を考慮した格⼦の分類) *複合格⼦: 底⼼(A,B,C), 体⼼(I), ⾯⼼(F), 菱⾯(R)
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