優秀事例に贈られる「杉山友男賞」「大野耐一賞」に ダイハツ工業・ヤマハ

News Letter
2014 年 2 月 4 日
報道関係各位
一般社団法人日本能率協会
経営・人材センター
工場の現場改善・部下育成の事例発表大会「第 32 回第一線監督者の集い:名古屋」
優秀事例に贈られる「杉山友男賞」
「大野耐一賞」に
ダイハツ工業・ヤマハ発動機・ヤマハファインテックが決定
日本能率協会(JMA、会長:山口範雄)は、製造業のものづくり現場における管理・監督者が、工場の改善活動・
人材育成の取り組みなどを発表する「第 32 回 第一線監督者の集い:名古屋」を、2014 年 1 月 16 日(木)
・17 日(金)
の 2 日間、愛知県産業労働センター(名古屋市中村区)で開催しました。
各日 8 人が登壇し、聴講者による投票を行った結果、大会 1 日目の優秀事例に贈られる「杉山友男賞」にダイハツ
工業株式会社・ヤマハ発動機株式会社(得票同数により 2 社選出)
、大会 2 日目の優秀事例に贈られる「大野耐一賞」
にヤマハファインテック株式会社が決定しました。
杉山友男賞 (ヤマハ発動機などで改善方式を確立された杉山友男氏の名前を冠した賞です)
ダイハツ工業株式会社 本社(池田)京都工場 第 1 製造部(池田)組立課 主任 中山 浩 氏
ヤマハ発動機株式会社 浜松製造部 推進課 設備保全浜北係 工長 寺田 浩二 氏
大野耐一賞 (トヨタ自動車などで生産方式を確立された大野耐一氏の名前を冠した賞です)
ヤマハファインテック株式会社 カーパーツ事業部 生産部生産一課 職長 中村 貴則 氏
■「第一線監督者の集い」とは
日本能率協会では、製造業の現場において生産計画や品質の管理・監督、作業指導を行うリーダーを「第一線監督
者」と呼称しています。この「第一線監督者の集い」は、改善活動の内容・成果に加えてどのように職場をマネジメ
ントしたかを発表する催しです。企業や業界を超えた情報交流の場として 1982 年に名古屋で始まり、現在は名古屋
(1 月)
、福岡(2 月)の 2 地域で毎年行っています。
■優秀事例を決める聴講者投票について
本大会には、事例発表者と同じく生産現場で管理業務に就いている監督者らが聴講に訪れ、会場での投票により優
秀事例を選出します。今回は、大会 1 日目に 350 名、2 日目に 400 名ののべ 750 名が来場しました。
投票にあたっては「第一線監督者の活動・行動としてふさわしく、他の模範となると思われること」を評価の着眼
点とし、日々現場で働いている監督者が企業の枠を越えて互いを称え、賞を贈ります。投票は各日行い、最も多くの
票を得た方を優秀事例発表者として 1 日目は「杉山友男賞」
、2 日目は「大野耐一賞」を日本能率協会から授与します。
■今回の事例発表企業
今回の事例発表は各日 8 社、計 16 社が行いました(発表順に記載)
。
大会 1 日目:富士ゼロックスマニュファクチュアリング(株)
、アイシン精機(株)
、愛知製鋼(株)
、
ダイハツ工業(株)
、三菱電機(株)
、大同特殊鋼(株)
、
(株)豊田自動織機、ヤマハ発動機(株)
大会 2 日目:
(株)デンソー、日本ガイシ(株)
、ダイキン工業(株)
、トヨタ自動車(株)
、キャタピラージャパン(株)
、
オリンパスメディカルシステムズ(株)
、トヨタ紡織(株)
、ヤマハファインテック(株)
【本件に関するお問い合せ先】 一般社団法人日本能率協会 経営・人材センター(中部オフィス 担当:高士)
たかし
〒450-0002 名古屋市中村区名駅 4 丁目 26-25 メイフィス名駅ビル 6 階
TEL:052-581-3271
※取材のお問い合せは、東京オフィス 広報室(TEL:03-3434-8620、担当:亀山)へお願いいたします。
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<受賞事例紹介 1>
杉山友男賞
ダイハツ工業株式会社
本社(池田)京都工場 第 1 製造部(池田)組立課 主任
中山 浩 氏
「見えない異常との(闘い)奮闘記 ~『気付き』と『築く』~」
(大阪府池田市ダイハツ町 1 番 1 号)
会社方針により普通自動車の生産に特化することとなったダイハツ工
業本社(池田)京都工場は、車両生産量が落ち込み、従業員の 3 割が他
工場、協力会社へ応援に回るという沈滞ムードにあった。競合他社に勝
ち、販売台数・生産台数を伸ばすには品質の良い車をより安くつくらな
ければならないが、中山氏の所属する組立課では、ボディー内外装のキ
ズ・汚れがなかなか減らせない状況にあった。
そこで「品質でナンバーワンをとる」という目標を立て、取り組んだのが 2S(整理・整頓)である。
「今度使うかもしれないから捨てられない」
「モノをたくさん置けるように棚は大きな方が良い」など、はじめは消
極的でしぶしぶといった様子の組立課メンバーだったが、
「今、使っていなければ即処分」
「出来ないことを、出来る
ようにする」を徹底し、不要品の無い見晴らしの良い職場、使いやすい作業台、取り出しやすい部品棚という環境づ
くりを行った。すると、1961 年に稼働を開始した古い工場とは思えないほど現場がきれいになり、従業員の意識にも
変化があらわれてきた。
さらに、照明を変える、頭上の不要物を撤去するといった前向きな提案も出てきたが、これらの配線工事や高所作
業車を用いるには資格が必要。外注すると費用が掛かるが、
「自分たちで資格をとってやってみよう」という声が上が
り、4 名が資格を取得してくれた。こうして改善の幅がひろがり、劇的に改善スピードがアップした。
しかし、品質の状況は横ばい状態。
「工場がきれいになっただけでは……」という現場の不安も聞かれ始めたころ、
2S の成果が別の形であらわれはじめる。不要なモノがなくなり、職場がすっきりとしたことで、異常が目につきやす
くなったのだ。現場を見渡すと、作業者の動線や部品を取り出す動作一つひとつにも「なぜ?」と疑問(気付き)が
生まれてきた。又、ボルトの締め付け作業における何気ない動作でキズが生じていたことが分かるなど、原因が明ら
かになっていった。
それでもゼロにならない不良の発生に対して、
作業者から
「不良が出る真因をさぐるために、
自分たちの働きを VTR
で撮影してほしい」との意見が出てきた。
「作業者を監視するようなことはできない」と工場長に反対されたが、
「ど
うしてもキズの原因を見つけたい」という作業者全員の情熱によって説得し、自分たちで取り付けアングルを決める
ことを条件に、Web カメラ設置の許可が出た。
不良が生じた車両の生産工程をビデオ解析したところ、作業者が気付かないほどのわずかな工具袋の接触がキズの
原因であることが判明。2S 活動、工程の改善により今まで見えなかった異常(キズ・汚れの不良)が、見え出した。
<講評>株式会社 MIS アソシエイツ 代表 伊藤育徳氏(経営コンサルタント)
会社の経営方針に応じて工場の役割が変わっていく中で現場にどのような価値を見出すか、また、自分はどのような
職場をつくっていきたいのか、という目標設定が明確になされていた。
生産台数が低減するという難しい環境において現場改善の原点である 2S(整理・整頓)を徹底し、物理的な作業環
境の改善だけでなくチームワークの向上につなげた。活動を通して「現場力」
「人材育成力」
「結集力」という日本の
製造現場の強みが自然と醸成された事例である。
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<受賞事例紹介 2>
杉山友男賞
ヤマハ発動機株式会社
浜松製造部 推進課 設備保全浜北係 工長
寺田 浩二 氏
「自分達の仕事に誇りが持てる職場づくり
~困難な課題に挑戦し、最後までやり抜く人づくり~」
(静岡県浜松市浜北区中条 1280)
ヤマハ発動機 浜北工場では、モーターサイクル、マリンエンジンの
部品であるクランクシャフト、コンロッド、ミッションなどの加工組
み立てを行っている。
「卓越した技術と圧倒的に強い現場」という本社
生産本部の方針をうけ、浜北工場では「強い現場の構築」
「全数良品工
程づくり」
「理論値生産展開による生産性向上と粛々生産」を重点課題
としている。
設備保全を担当する寺田氏はこの課題に対して、
「壊れたら直す」という保全ではなく、世界に通用するプロの保全
集団になることを目標に掲げた。
だが、職場のメンバーは小集団活動に興味がなく、決めたルールも徹底されず、また、故障対応を最優先するとい
う大義名分のもとに改善活動がおろそかになっていた。保全マン同士も、ベテランから若手への技術の出し惜しみ、
人による教育のばらつき、面倒な仕事は若手に頼む、といった状況で信頼関係も希薄。生産現場に対しては「修理し
てやった」という意識をもっていた。さらに、昼間の計画保全を行う「計画グループ」と、夜間などの突発事故に対
応する「突発グループ」の間で壁があり、お互いの活動内容が情報共有されていなかった。
こうした状態を生んでいるのは「保全マンに必要な資質が不足しているからでは」と考えた寺田氏は、意識改革と
行動改革を行うことにした。まずはチームのベクトル合わせを第一段階と定め、上位目標をブレイクダウンしてグル
ープ員に理解させ、チームワークの意義をラグビーのポジションに例えて説いた。また、グループを製品ごとに再編
成し、それぞれが計画・突発両方の保全を担当し情報を共有できるようにした。
第二段階は個人の成長とし、新人や中堅など成長度合いに応じた教育、安全作業の運用ルールを作成した。保全作
業表、長時間報告書などで書く力を養い、原因追及や作業手順の振り返りなど、考える習慣を身につけさせた。
第三段階では、ヤマハブランド全体に貢献する品質に挑戦。突発事故対応や現状復帰を主とした従来の保全活動か
ら脱却し、品質保全にステップアップするため、リーダーを生産職場に張り付かせた。現物をみることで新たな知識・
技能習得への意欲が引き出され、設備メーカーからノウハウを学ぶようになった。観方を変えることでいくつもの改
善点が浮かび上がり、不具合の対策を重ねて品質問題が一つひとつ解決していくと、メンバーにも自信が生まれた。
さらに、定期保全だけでは防げない品質問題をクリアするために状態監視装置を標準装備。こうした取り組み奏功
し、ラインの性能稼働率が 45%から 92%に改善した。
保全マンとしての資質・知識・技能のバランスがとれた人材育成を行ったことで、難しい課題に挑戦する土壌が生
まれ、保全のプロが集まる職場へと生まれ変わった。
<講評>株式会社 MIS アソシエイツ 代表 伊藤育徳氏(経営コンサルタント)
「壊れたら修理する」だけの保全から、品質に貢献するという新しい職域を創造した事例。保全マンのありたい姿
を描き、それを達成するプロセスが優れている。第二段階で取り組んだ個人のスキルアップに関しても、様々なツー
ルを用い、工学的なノウハウも取り入れてうまくいった。
集団行動が苦手で、仕事もその場対応、若手とベテランの溝など、現実と理想の様々なギャップを打破していった
結果、成長した個人がチームワークを発揮し、
「やらされ感」のある職場から自ら考え動く職場に変わっている。
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<受賞事例紹介 3>
大野耐一賞
ヤマハファインテック株式会社
カーパーツ事業部 生産部生産一課 職長
中村 貴則 氏
「
『為せば成る』~信頼関係から高める現場力~」
(静岡県浜松市南区青屋町 283)
ヤマハファインテックには、自動車内装用ウッドパネルを手掛けるカ
ーパーツ事業と、産業用自動設備(FA)の設計・製作の 2 つの事業があ
り、中村氏はカーパーツ事業の木材塗装を担当。2012 年は新モデルの立
ち上げ期にあたり、立ち上げ工廃(廃却しなければならない不良品)率
2%以下、製造原価 3%削減、納期遅延ゼロというミッションがあった。
中村氏はこれを自分の職場にブレイクダウンし、改善項目の担当を決
め、一人ひとりの年間計画を作成したが、なかなか進まない。改善に対してメンバーと温度差があるのではと思い、
対話を通じてそれぞれの進捗を確認してみると、やる気はあるものの指示に具体性が欠けていたことが停滞の原因で
あると気付いた。
そこで、一人ひとりに中長期・日々の業務テーマを設定し、手書きの業務指示ボードを導入して PDCA(計画・実
行・評価・改善)サイクルを回し、タイムリーな改善を促した。これにより簡単な改善は進んだが、難しい改善は依
然として進まない。新モデルに採用されている部品が大型すぎて生産ライン上で塗装できないという課題に対応する
必要があったが、メンバーは何をすればいいのか分からず指示待ち状態、あきらめムードも漂っていた。
改善が進まないのはなぜか、指示したことしか行動しないのはなぜか、自ら考えて実行しないのはなぜか、そもそ
も考えさせるような指示を出していないのはなぜか、と問いを繰り返すと、自分がメンバーの能力を軽視してしまっ
ているのではとの考えに至った。
まずは価値観を共有すべく、新モデル立ち上げにかける自らの想い、なぜ改善しなければならないかという目的や
理由をわかりやすく伝え、質問に耳を傾け相手の考えを吸い上げていった。改善が進まないのはメンバーが悪いから
ではなく、自分がメンバーを信頼していないからだという気付きから、一歩引いて任せてみると、自然と改善提案が
上がってくるようになった。メンバー間で切磋琢磨する雰囲気も生まれ、モチベーションも向上してきた。
自分が考え指示するだけではなく、メンバーの心を察知してやる気を引き出すことが監督者の役割であると、自ら
の考え方も変化。結果がでなくても行動を褒めたり、アイデアを後押しするよう、意識的に声を掛け続けた。
いままでは集まって議論することもなかったメンバーが、治具やラインの搭載部品数、ロボット塗装の色むらなど
を自主的に話し合うようになった。それに応じて工程分析力や自己展開能力などスキルも上昇し、課題を一つ一つク
リアしていった。その結果、大型部品のインライン化も実現し、立ち上げ工廃率削減、製造原価削減、納期遅延ゼロ
というミッションすべてを達成することができた。
<講評>株式会社 MIS アソシエイツ 代表 伊藤育徳氏(経営コンサルタント)
製造現場の経営者として、メンバーの自発性、積極性を高めるために自分のマネジメントを見つめなおし、新たな
リーダーへ成長している。新モデルの立ち上げにあたって、生産ラインの初期流動円滑化をどう成し遂げるかという
改善内容に加え、自己のマネジメントスタイルを変革したプロセスでもある。
職場の全員が価値観を共有し、監督者はメンバーを信頼して任せる、励ましや結果をフィードバックしながら人材
を育てていくという、よい循環がうまれた事例である。
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