5.2.3 造粒乾燥 5.2.3.1 原理 造粒乾燥方式は、汚泥の粘着性を利用し、乾燥粒子(核粒子)に汚泥を薄膜状に塗布し、転動造流 した汚泥を熱風で乾燥させる方法である。 造粒乾燥汚泥の含水率は 6∼10%程度と低く、16MJ/kg 前後と石炭の約 2/3 の熱量を有している。 5.2.3.2 設備構成概要 造粒乾燥システムは、二軸ミキサーで脱水汚泥と循環乾燥汚泥を混合・混錬することで造粒する「造 粒プロセス」と、乾燥ドラム内で約 450℃の熱風により乾燥される「乾燥プロセス」で構成される。 造粒乾燥汚泥は、分級機により分級され、所定の粒径だけを製品ペレットとして排出し、その他の造 粒乾燥汚泥は循環乾燥汚泥として「造粒プロセス」に戻される。 また乾燥ガスは熱交換器で加熱されて循環するが、蒸発水分が一定に維持されるよう、常にガスの 一部がコンデンサに引き抜かれ、コンデンサで水分を凝縮した後、ガスは熱風発生炉に送られ燃焼脱 臭される。 図 5.2.3.1 造粒乾燥技術の設備概要フロー 5.2.3.3 一般的な特徴 ・外観は鼠色で、φ2∼5mm 程度の均一な粒状であり、ハンドリング性 に優れている。 ・含水率は 6∼10%程度と低いため臭気が少なく、長時間貯留しても変 質せず貯留性に優れている。 ・バイオソリッドに含まれる有機成分は造粒乾燥ペレット中に濃縮さ れるため、肥効成分が高く、低位発熱量が石炭の 2/3 程度有する。 - 142 - 5.2.3.4 事業事例 5.2.3.4.1 北九州市 都市名 利 用 技 術 < 状 況 > 特 徴 乾燥機(日明)、スーパーごみ あわせ産廃処理、 北九州市 発電(皇后崎) 場 内 場 外 ごみ蒸気利用 <実機稼動済み> 総エネルギー エネルギー当り 乾燥設備維持管理費 供用時期 事業費 又は施設規模 事業費 (H16,17,18)千円 乾燥施設 65t/日×2 基 H16: 173,000 皇后崎ごみ工場: H17: 169,000 H11 25.3 億円 蒸気タービン:28,300kW − H18: 172,000 ガスタービン: 8,000kW (乾燥施設) (乾燥施設) (内訳:人件費、補修費、ユーテ 日明ごみ工場: ィリティー費) 蒸気タービン:6,000kW 効 果 費用補助制度 電力、化石燃料使用費削減、温暖化ガス削減 乾燥施設:下水道国庫補助事業 乾燥汚泥+ごみ焼却混焼 福岡県北九州市建設局下水道河川部水環境課 (1)はじめに 北九州市においては、下水汚泥を海面埋立や海洋投棄処分からセメント化やごみとの混焼に切り 替える等、有効活用に向けた努力を行っているが、今後より一層の有効活用が求められている。本 稿では、乾燥汚泥処理に関する有効利用とごみ混焼について述べる。 本市のこれまでの汚泥処理方法と汚泥量の推移については図 5.2.3.2 の通りである。 t 陸 上 埋 立 海 面 埋 立 セ メ ン ト ご み 混 焼 100000 80000 200000 ㎥ 海 180000 洋 投 棄 160000 70000 140000 60000 120000 50000 100000 40000 80000 30000 60000 20000 40000 10000 20000 90000 0 0 52 53 54 55 56 57 58 陸上埋立 59 60 61 海面埋立 62 63 1 2 3 4 セメント 5 ごみ混焼 6 7 8 9 10 海洋投棄 図 5.2.3.2 下水汚泥量(年間)の推移 - 143 - 11 12 13 14 15 16 (2)北九州市の現在の汚泥処理 1)汚泥活用の概要 北九州市は、5 つの浄化センターから、約230(t/日)の下水汚泥が発生している。そのうち、 日明浄化センターから発生する約60(t/日)は消化汚泥であり、その他の約170(t/日)は生脱 水汚泥である。 発生した汚泥の約半分はセメント原料化され、残りの半分はごみ焼却工場にて一般ごみとの混 焼が行われている。セメント原料化にあたっては、三菱マテリアル(株)黒崎工場と苅田工場へ搬 送している。また、ごみとの混焼では、汚泥の乾燥後、ごみ焼却を行う日明工場、もしくは皇后 崎工場に持ち込み処理している。 セメント原料化は、北九州市と三菱マテリアル(株)との協力により開発した下水汚泥の有効活 用(資源化)方法であり、他都市においても行われている汚泥処理方法であるが、量において全 国でも最大級となっている。セメント原料の粘土代わりとなる下水汚泥は、専用のホッパーで受 け入れられた後、 石灰石等のセメント原料と共にロータリーキルンに投入され、 焼成が行われる。 その後、クリンカクーラで急冷されて粉末状のセメントとなる。 また、一般ごみとの混合焼却は、下水汚泥を日明浄化センター内にある汚泥乾燥機によって乾 燥し、ごみ焼却工場に搬送持ち込みし、一般ごみと混焼している。このごみ焼却によって発生す る熱を利用して発電を行い、電気を浄化センターに供給すると共に、余剰の蒸気を浄化センター で汚泥乾燥に利用する等、お互いの利便を供給しあっている。 2)乾燥汚泥 乾燥機は、図 5.2.3.3 に示すように受け入れホッパー、汚泥供給機、乾燥機本体、混合機、成 形機等からなっている。乾燥用蒸気は、隣接する日明ごみ工場で発生する余剰蒸気を毎時6トン 受けて、含水率80%汚泥を40%まで乾燥している。乾燥された成型品は、直径3cm×10 cmのペレット状であり、焼却工場で燃えやすく、ストーカから脱落しない大きさとしている。 この乾燥工程は、乾燥機で20%まで乾燥した汚泥を80%の原汚泥と混合して40%乾燥汚泥 を生成している。汚泥の乾燥工程では、強い臭気が発生することが度々問題となるが、本装置で は、3つの脱臭対策を行っている。乾燥機本体から発生する蒸気と臭気は、脱湿塔において、大 量の処理水で除湿し、除湿後の臭気は、直接燃焼脱臭炉で燃焼脱臭処理している。乾燥機以外の 処理過程で発生する臭気は、脱臭フィルターを通して蓄熱脱臭しており、汚泥投入、搬出ホッパ ー内空気は、活性炭処理している。 - 144 - 脱水汚泥 脱水汚泥 定量フィーダ (高水分用) 定量フィーダ (低水分用) 乾燥機供給ポンプ 混合ケーキ供給ポンプ P P P P 成形ケーキ ホッパ 混合ケーキ投入ポンプ P 定量 供給機 乾燥機 環境工場より 混合機 乾燥ケーキフィーダ 成形機 スチームヘッダ 煙 突 脱 湿 塔 直燃式脱臭炉 乾燥空気 余熱機 脱臭空気 余熱機 蓄熱式 脱臭炉 各機器より 汚泥 ガス 復水 タンク 蒸気 復水 環境工場へ 図 5.2.3.3 日明浄化センター汚泥乾燥設備フロー図(65t/日×2 基) 3)ごみ混焼と発電 ごみ混焼のフローを図 5.2.3.4 に示す。上述したように日明浄化センター内に設置している汚 泥乾燥機は、隣接する日明工場の蒸気を利用して、乾燥汚泥とし、日明工場と皇后崎工場で一般 ごみと併せて焼却している。ごみ工場では、発生した蒸気を利用して、蒸気タービンによる発電 を行い、その一部を浄化センターに電力供給している。こうすることでエネルギー循環を達成し ている。 汚泥処理施設 浄化センター 下水 汚泥 蒸気式乾燥機 電気 成形機 ホッパー 蒸気 乾燥汚泥 蒸気タービン発 電 蒸気ドラム 蒸気 ごみ焼却炉 都市ごみ ごみ焼却工場 図 5.2.3.4 ごみ混焼によるエネルギー循環 - 145 - ごみ混焼は、汚泥が単なる廃棄物であったものを発電資源としてとらえたところに意義がある。発 電効率は、火力発電所の40%に比較すれば、日明工場で10%、コンバインド発電の皇后崎工場で 26%と高くはないが、単独で発電装置を備える必要もなく、日々電力を生み出すことができる。 ごみ焼却とスーパーごみ発電装置 ごみと乾燥汚泥を燃料として発電しているごみ焼却工場のうち、蒸気タービンとガスタービンを 併用している皇后崎工場のスーパーごみ発電装置について述べる。図 5.2.3.5 に示すように、蒸気 タービンの前段に都市ガスを燃料とするガスタービンを配置して発電し、その際の高温排ガスを利 用してごみ焼却ボイラの蒸気を再加熱し、蒸気温度、380℃、蒸気圧力38気圧の高温高圧にな った蒸気をつくり、蒸気タービン発電によって、26%発電効率を達成している。乾燥汚泥をこの スーパーごみ発電装置の燃料とすることで、より多くの電気を得る事ができる。この北九州のスー パーごみ発電システムは、日本では最大規模のものである。 ごみ 乾燥汚泥 蒸 気 加 熱 器 ごみピット ボ イ ラ ホッパ 焼却炉 急 冷 反 応 塔 バグフィルター 煙 突 独 立 節 炭 器 温浴施設 都市ガス 発電機 独 立 加 熱 器 ガスタービン 蒸気タービン 発電機 主復水器 冷却塔 所内蒸気 蒸気 排ガス 復水 冷却水 焼却能力 発電能力 (蒸気タービン (ガスタービン 810 t/日 36,300KW 28,300KW) 8,000KW) 復 水 タ ン ク 都市ガス 図 5.2.3.5 皇后崎工場ごみ発電システムフロー図 (3)ごみ混焼の発電量と蒸気利用状況 1)日明ごみ焼却工場及び日明浄化センターの場合 日明浄化センターでは、乾燥汚泥を日明ごみ焼却工場に搬入し、ごみ焼却工場で発電した電気と 余剰蒸気(乾燥機の加温)を利用している。 - 146 - 表 5.2.3.1 ごみ混焼の発電量と蒸気利用状況(日明ごみ焼却工場及び日明浄化センタ) H16 H17 H18 H16 H17 H18 ゴミ焼却 場焼却量 (t/年) A 158,430 142,915 143,452 汚泥 下水汚泥 焼却量 (t/年) B 6,476 6,810 6,966 下水道施設電気利用量 (千 kWh) H 17,530 16,406 16,822 混焼率 (%) C=B/A 4.1 4.8 4.9 発電電力 ゴミ焼却場発 下水汚泥分発電 電力量 電電力量 (千 kWh) (千 kWh) E D 41,000 1,506 39,000 1,584 39,000 1,620 電気 下水道施設買電電気利用量 (千 kWh) I 2,634 4,460 5,251 ゴミ焼却場 発生蒸気量 (t/年) F 565,000 542,000 511,000 蒸気 下水道施設 蒸気利用量 (t/年) G 36,826 34,265 34,846 電力削減率 (%) J=H/(H+I) 87 79 76 2)皇后崎ごみ焼却工場及び皇后崎浄化センターの場合 皇后崎浄化センターでは、日明浄化センターで乾燥した汚泥を皇后崎ごみ焼却工場に搬入し、ごみ 焼却工場で発電した電気を利用している。 表 5.2.3.2 ごみ混焼の発電量と蒸気利用状況(皇后崎ごみ焼却工場及び皇后崎浄化センター) H16 H17 H18 ゴミ焼却場 焼却量 (t/年) A 225,430 199,347 184,643 汚泥 下水汚泥 焼却量 (t/年) B 6,099 5,193 4,882 混焼率 (%) C=B/A 2.7 2.6 2.6 ゴミ焼却場 発電電力量 (千 kWh) D 169,000 164,000 163,000 発電電力 下水汚泥分発電 電力量 (千 kWh) E 2,837 2,415 2,271 下水道施設 電気利用量 (千 kWh) H 12,296 12,003 11,354 電気 下水道施設買電 電気利用量 (千 kWh) I 181 186 202 電力削減率 (%) J=H/(H+I) 99 98 98 ごみ焼却混焼により、日明浄化センターで電力削減率が約 80%、皇后崎浄化センターで約 98%と 両浄化センターとも非常に高い削減率を達成している。 (4)今後の汚泥処理方法について 1)汚泥処理の課題 北九州市における汚泥処理の課題は以下のようなものである。 ・ 地球温暖化防止等社会情勢変化への対応 ・ 処理費用の削減 ・ セメント原料化協定契約期限(∼平成 21 年) ・ 汚泥乾燥機の標準耐用年数到来(平成 21 年) 2)下水汚泥処理アドバイザー委員会 上記の課題を踏まえ、世界の環境首都を目指している本市として、下水汚泥を貴重な資源とし てとらえ、都市の環境負荷を低減する観点などから、本市に相応しい処理方法を検討するため、 平成17年8月に、大学や国の研究所などに所属する専門家による「下水汚泥処理アドバイザー 委員会」を設置した。本年10月までに4回の委員会を開催し、燃料化や焼却、溶融など、将来 - 147 - 本市で実現可能な汚泥処理方式について、マテリアル面、コスト面、環境面、技術面の観点で評 価するとともに、コスト・温室効果ガス排出量の視点からケーススタディを実施した。その結果、 セメント原料化とほぼ同等の費用で地球温暖化対策にも寄与できる燃料化が、現状想定し得る汚 泥処理方式の中で有望である、との報告を受けたところである。 (5)おわりに 下水汚泥は、下水道が続く限り処理し続けなければならないものである。今後の処理方式選択に 当たっては、経済性、環境性、燃料化技術の開発動向等はもちろん、昨今の原油の高騰など社会情 勢の変化も視野に入れながら事業化を図っていかなければならない。北九州市は、世界の環境首都 を目指して 「真の豊かさ」にあふれるまちを創り、未来の世代に引き継ぐ を基本理念として、 その実現に向けて邁進しているところである。下水汚泥の更なる有効活用を図っていくことでその 一翼を担いたいと考えている。 5.2.3.4.2 宮城県 県名 利 用 下水汚泥 宮城県 場 内 場 外 供用時期 H21.4 (予定) 技 術 <状 況> 造粒乾燥炉 <設計中> 効 果 エネルギー 当り事業費 維持管理費 年間脱水ケーキ処理量 トン当たり 6,800 円 (当 初3年間の平均) 費用補助制度 下水道国庫補助事業 約 45 億円(20 年間) 脱 水 ケ ー キ 処 理 能 力 建設費約 13 億円 50t/日 温室効果ガス削減 徴 日本初の造粒乾燥方式による燃 料化施設 総エネルギー 又は施設規模 事業費 特 − 宮城県土木部下水道課 (1)はじめに 宮城県の下水道は、明治32年に仙台市が東京都、大阪市に次いで全国で3番目に事業着手したの が始まりで、昭和22年に塩竃市が戦災復興と伝染病対策として着手し、次いで昭和40年代からは、 市街化が進む大崎市(旧古川市)、気仙沼市などが単独公共下水道に着手している。また、県が主体 で整備を進めている流域下水道は、昭和47年度に東北初の流域下水道として仙塩流域下水道事業に 取り組んだのを手始めに、昭和49年度には阿武隈川下流流域下水道に着手し、現在は7流域におい て下水道事業を実施している。現在宮城県では、31市町村(12市18町1村)で下水道事業を行 っており、下水道普及率は、平成18年度末で、74.1%となっている。 (2)導入目的 下水汚泥は、年間を通じて発生する量や質が安定し、かつ集積性に優れていることから、きわめて 優位な資源となると期待されている。県南浄化センターにおいては、これまで汚泥処分として、埋め 立て(平成17年度末まで)、焼却及びセメント原料化等を行っていたが、今回平成19年度より燃 料化事業に着手し、50t/日の汚泥を、造粒乾燥方式により燃料化して販売することにより、地球 - 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